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興行収入は年間1200億円以上!?それでも邦画が面白くない理由

最近、よく邦画がつまらなくなったと言われます。公開される邦画は人気の漫画や小説、テレビドラマなどの原作モノばかりで、出演している俳優はネームバリュー中心で演技力もないという意見が多いようです。しかし、邦画の興行収入は2000代半ばに洋画を逆転しており、2015年は1,204億円と、洋画の968億円を上回っています。「つまらない」と言われつつも、原作モノありきの邦画は、収益が伴うのですね。

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出典:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5666.html

では、収益を考えずに「邦画がつまらなくなったか?」と聞かれたら「つまらなくなった」と思います。加えて、面白い映画を探そうという熱量が人々から失われたような気がします。面白い映画が作られなくなったから探そうと思わなくなったのか、それとも忙しくて映画を観なくなったから面白い映画がなくなってきたのか。これはニワトリタマゴの関係ですが、ミニシアターの減少と都市に根付いた映画カルチャーの衰退が要因のように思います。

ミニシアターの減少と都市に根付いた映画カルチャーの衰退

カルチャーというのは、都市とは切り離せない関係だと思います。お互いに影響を及ぼしながら、カルチャーが根付いた都市には吸引力のようなモノが生まれ、さらに人を引きつけてカルチャーを強固なものにしていきます。例えばきゃりーぱみゅぱみゅを筆頭とするカワイイカルチャーは「原宿」という都市に根ざしています。「原宿」という都市はカワイイカルチャーのシンボルとなり、共感した人たちを都市に引きつけてさらに強固なものしていくのです。
2000年代前半までの渋谷や銀座、新宿あたりにはたくさんのミニシアターがあり、映画ファンの人たちを呼び寄せる映画のシンボル的な役割を果たしていました。

2001年に行定勲監督の初期の長編作「贅沢な骨」をテアトル新宿に観に行った時、満員で立ち見が出る勢いでした。劇場から座布団が配られて、通路に座布団を敷いて見た記憶があります。
ミニシアターにもそれぞれの劇場の色があり、この劇場はフランス映画、この劇場はシュールでアートっぽい作品が多いなど特徴がありました。しかし、2000年代後半以降、ミニシアターはどんどん閉館していき、映画文化圏的なものが失われていくのです。
現在では、以前はミニシアター系の作品はそのまま全国のシネコンチェーンにて上映されているようです。しかし、都市が分散されて中心地が存在しないということは、カルチャーとしての熱量と継続性を持ち辛いのです。

若手映像監督の登竜門の消失

小さい箱で上映するミニシアターが消えるということは、若手映像監督の登竜門の消失にも繋がります。先ほどの行定勲監督も、「贅沢な骨」以降、「世界の中心で愛を叫ぶ」や「北の零年」などの大作を手掛けています。

また、多数の俳優や映画好きから支持をうける監督に岩井俊二さんがいます。「リリイ・シュシュのすべて」等を手掛けている独特の映像美が特徴的ですが、ブレイクのきっかけとなったのはフジテレビのドラマ「ifもしも」内で手掛けたドラマ「if もしも~打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」が高い評価を受けたことがきっかけでした。
この頃は、「if もしも」や「世にも奇妙な物語」など、オムニバスドラマ枠などで若手の映像作家の登竜門が用意されていたのです。「世にも奇妙な物語」からは他にも北川悦吏子さんや君塚良一さんなど多数の大御所が参加していました。君塚さんはwikipediaによると、自主映画を作るようにやっていたそうで、ゴールデンタイムの番組で若手の映像作家たちに大きな「のりしろ」が与えられていたのだなと思います。

1990年代前半に、落合正幸監督とのコンビで『世にも奇妙な物語』を多数手がけた。落合とは「王道じゃなくて、ひねったやつをやろう」という合意があり、「自主映画を作るようにやってた」と後に回想している

人々は「良い映画」を求めていないのか

ミニシアターが閉鎖されていったり、若手クリエイターの登竜門が減っていたりと、ドラマにしろ映画にしろ、確実に当たると思うコンテンツを、確実に当たると思う監督とキャストで提供する姿勢が見え、のりしろが少なくなっているように思います。面白い映画を作るというよりは、確実にヒットをするためのマーケティングの邦画が重要視されるのは、邦画の興行収入が実際に伸びている以上しょうがないのかもしれません。しかし、人々は本当に「良い映画」を求めていないのでしょうか。
先日岩井俊二監督の新作映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」が全国28館で公開されました。これが上映時間3時間という、映画的にヒットしないと言われる長尺の作品になっています。出演しているキャストも他の邦画に比べると地味で、内容も筋書きにしてしまうとすぐ説明が終わってしまうようなストーリーです。しかし、これが割にヒットしていて21館が追加されて全国49館公開になり、ロングランとなりました。私も劇場に足を運びましたが、久しぶりに「良い映画」を観たなあという印象です。観ている間にスクリーンに没入して視点としての自分が「ふわふわ」としているような、これが映画だよなあという手応えがある作品です。
やはり一部の人々は、いまもまだ「良い映画」を求めているのではないかなと思います。