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ただの駅ビルじゃない好調ルミネ。最大のキラーコンテンツとは。

前回のブログでは、百貨店とショッピングモールの違いを、定義、ハード(建物・箱)、ソフト(商品・サービス)の違いから説明をしたのですが、今回は順調に収益を伸ばす駅ビル、ルミネについて考えてみます。

収益を見てみてると、JR東日本ショッピングオフィス事業の2015年3月期が2,549億円と、前年比39億円ほど増えています。営業収益の増加要因としてルミネの売上が21億円増となっており、既存店が好調なことが強調されています。(2016年第二四半期においても+10億円となっており、引き続き収益を伸ばしているようです。)

前回はショッピングモールという形態が、あらゆる世代の人々にマッチするようにハード(建物、箱)とソフト(商品・サービス)が設計されているという話をしたのですが、ルミネに関していうとハード(建物、箱)は、百貨店と変わらない(上にやや小さい)立方体のビルなのです。

若い女性にターゲットを絞り込んだプロモーションと商品

それでは、百貨店と何が違うのかと言えば、ターゲットが若年層の女性であるということです。しばしば話題にのぼるルミネの広告コピーですが「試着室で思い出したら、本物の恋だと思う。」など、徹底的にF1層あたりの女性に絞り込んだコピーになっています。

そして、ソフト(商品・サービス)はユナイテッドアローズやロン・ハーマンなど、割合価格帯のファッションブランドが揃っています。この点から定義を整理すると以下のようになります。

ソフト(商品・サービス)→ユナイテッド・アローズやロン・ハーマンなど高価格帯のファッションブランド
ハード(建物、箱)→立方体の建物。目的の階へと移動し、目的を果たしたら外に出やすい構造。
定義→F1層に向けた高価格帯の衣料を提供するファッションビル

そもそもルミネを経営するのはJR東日本なので、必ず建物が駅の改札からすぐそばにあり、集客において高いアドバンテージを持っています。その中で、ファッションに対して出費をするF1層にターゲットを絞りまくったソフト(商品・サービス)を提供し、動揺に広告の内容もターゲットに的を絞り込んだコピーになているのです。

しかし、これだけではルミネの定義を全て拾えていません。むしろ、この点がルミネ最大の強みかと思うのですが、ルミネのもう一つの定義は

定義→F1層に向けて、友達や恋人と休日のカフェを楽しむ場を提供

なのです。例えば、横浜ルミネには、土日になると店舗に続く階段まで行列が並ぶケーキカフェ「HARBS」があり、新宿のルミネには世界一の朝食というキャッチコピーでフレンチトーストが楽しめるカフェ「サラベス」があります。さらに有楽町ルミネには「HARBS」の他、可愛いカップケーキのお店や「DEAN & DELUCA」のカフェなどが入っているのです。商業施設において、一番要となるのは集客です。「マクドナルド」が2000年代半ばに経営をV字回復させることになった施策は、100円マックによる来店数の回復でした。
ルミネは立地からして来客数は取りやすいのですが、ビル内にターゲットとするF1層がわざわざ行きたくなるようなスイーツやカフェの店舗を入れて、ショッピング以外の目的の女性の来店を促しているのです。しかも、休日にカフェに訪れる多くは2人組なので、カフェタイムの前後でビル内を回遊して目的外の商品を購入してもらえるきっかけが生まれます。ということで、定義、ハード、ソフトを再度整理するとこのような形になります。

ソフト(商品・サービス)→わざわざ行きたくなるような人気のスイーツショップやカフェ。ユナイテッド・アローズやロン・ハーマンなど高価格帯のファッションブランド
ハード(建物、箱)→立方体の建物。目的の階へと移動し、目的を果たしたら外に出やすい構造だが、人気のカフェ店舗を誘致することで前後の時間帯の回遊性を上げる。
定義→F1層に向けたトレンドのカフェで集客し、高価格帯の衣料を提供するファッションビル

ターゲット(F1層女性)、集客方法(ターゲットが好むスイーツやカフェを用意。女性に向けたコピー広告)、商品・サービス(高価格帯のアパレルファッション)が一環しているんですね。

徹底した顧客満足主義をトップ自らが喧伝

さて、マーケティング的にいくら優れていても、本質は運用そのものにあるものです。「ユナイテッドアローズ 心に響くサービス」(2006年) という本の中で、ルミネがこのように紹介されています。

ルミネが本格的にCS(顧客満足)に取り組み始めたのは9年ほど前からである。”脱駅ビル作戦”がきっかけだ。駅ビルは、さしたる努力をしなくても売上確保が可能というめぐまれた立地にある。しかし、立地に甘えた商売に進歩はない。駅ビルは商業施設として魅力を欠いていた。テナント選定も中途半端で特化・専門性にとぼしく「通過客のついで買い」に依存する体質があった。ルミネはそこからの脱却を図ったのである。以降、MDに優れた専門性の高いテナントを誘致、接客サービスの向上に全力投球で取り組んだ。UAをはじめとする有力専門店や希少価値の高い店をテナントに迎え、CS推進室を設置、CS研修の体系化を図っていった。
(「ユナイテッドアローズ 心に響くサービス」日本経済新聞出版社 )

ルミネはテナントに対して、CS(顧客満足)を高めるための多種多様な研修やプログラムを用意していますが、驚くのは
2006年当時、1600に登るテナントを全て覆面調査していたということです。50点満点で評価され、35点以下の店舗は、店長と本部長以上の職員の研修が必須となります。さらに点数の低いワースト店舗は、ルミネの当時の社長である花崎淑夫氏が1時間をかけて対面で話し合いをしていたというのです。

花崎淑夫氏はその後会長となり、現在は会長職からも退かれているようですが、会長時代の2010年に行なわれたインタビューを見ると、やはり今日のルミネが戦略的に作られたのであるということがよく分かります。

「前面通行量に『偶然』を掛け算して売り上げを想定するのは、ドラッグストアやファストフード業界の常識です。駅のコンコースだけならそれでいい。しかしルミネは立体的なビルであり、少しでも多くの方に上の階に来ていただかないといけないのです。偶然に頼らずデスティネーション(目的)型に変えていかなければなりません。
わざわざ来ていただくためには、対象を明確にする必要があります。ルミネは建物がそれほど大きくないため、百貨店のように客層を幅広くというフルライン展開は不可能です。ターゲット顧客層が通勤帰りだけでなく休日にも足を運んでくださるためには、わざわざ来ていただくに値する店舗と商品展開が必要となるのです」


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出典
http://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/201503guide1.pdf
http://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/201509guide1.pdf
http://www.buaiso.net/interview/buaisointerview/4907/

百貨店の不調とショッピングモールの好調を、mixiとFacebookの違いで説明する

3兆円以上売上を減らした百貨店。一方ショッピングモールは好調。

三越伊勢丹ホールディングスの社長さんのインタビューが掲載されていたのですが、百貨店市場はこの25年間で3兆円以上売上を減らしており、衰退の路線をたどっているようです。

日本の小売業全体では約140兆円の売上規模がある。うち百貨店の売上高は約6.2兆円で、全体の4.4%にすぎない。バブル経済が崩壊する前の1990年頃は、10兆円近くの売上高と6%のシェアがあった。まさに「衰退の四半世紀」であったのだ。

一方、ららぽーとなどの複合型ショッピングモールや、六本木ヒルズ、渋谷ヒカリエなど巨大な駅ビル施設が、この四半世紀の間に続々とオープンしました。
ららぽーとや川崎ラゾーナを展開する三井不動産の「賃貸事業収益内訳、商業施設」の部を見ると、2015年3月期の第2四半期823億円に対して2016年3月期の第2四半期は937億円となっており、1年で114億円も伸びています。

さらに、ファッションビルであるルミネの業績を見ても、2014年3月時の営業収益653億円に対して2015年3月時には677億と103.2%も伸長しており、ショッピングモールやファッションビルが売上を伸ばしている一方で、百貨店はシュリンクしている模様が伺えます。

百貨店とショッピングモールの違いを、3つのレイヤーに分けて考える

この百貨店不振については、冒頭のインタビューの中でも語られていますが、施設の定義、ハード(建物、箱)、ソフト(商品)に分けて考えると分かりやすいのではないかと思います。

まず、百貨店についてこの3つの定義を考えるとこのようになります。

ソフト(商品・サービス)→比較的単価が高めのアパレル。最上階には飲食店。地下には食品街。
ハード(建物、箱)→立方体のビル。エスカレーターで位置を確認して、目的の階へと向かう
定義→休日に家族が出掛けて楽しめるアミューズメントスポット(→から、可処分所得が高い層のショッピングスポットへ)


次に、ららぽーとやラゾーナなどのショッピングモールについてこの3つの定義を考えると次のようになります。

ソフト(商品・サービス)→単価の高いアパレルからユニクロまで。飲食店の他、フードコートを完備。映画館やゲームセンターも。
ハード(建物、箱)→フロアの概念に縛られない回遊性を意識した円状の構造物
定義→休日に家族や恋人、友達と出掛けて楽しめるアミューズメントスポット


shopping
まず、定義を比較するとショッピングモールは家族や恋人、友達をターゲットにしたアミューズメントスポットであり、百貨店の家族向けスポット(からの可処分所得が高い層へのショッピングスポット)という定義を包括しています。

この定義の差別要因となるのがソフト(商品・サービス)です。百貨店は比較的単価が高めのアパレルが入っていますが、ショッピングモールはユニクロ等の安めの衣料品から割合高いアパレルブランドまでラインナップが幅広く取り揃えられています。そして、飲食店街の他にフードコードを設置することによって、子供が騒ぎがちで周囲の目が気になるファミリーや、食事にお金をかけたくない学生、若いカップルなどをカバーしています。さらに映画館やゲームセンターなどのアミューズメント施設を入れることによって、モール内での滞在時間を伸ばし、来場のきっかけを生んでいます。つまり、ショッピングモールはターゲットが幅広いため、全方位にウケる商品とサービスをソフトとして兼ね備えているのです。

最大の違いはハード(建物、箱)の作り。mixi型の百貨店とFacebook型のショッピングモール

そして、最大の違いがこのソフト(商品・サービス)を提供するためのハード(建物、箱)の作りの違いです。Webサービスで言えば、ここがUIにあたるのですが、百貨店は立方体のビルにエレベーターやエスカレーターが設置されており、婦人服売り場や飲食店など、目的のフロアとショップのある位置を選んで、目指す階数に移動するインターフェースです。つまり、何か目的が終わり次第、建物の外に出るという導線になります。

一方、ショッピングモールは、吹き抜けで上下の階が見渡せるようになっており、そこをエスカレーターで移動する流れです。ビルの階数を意識させない平面的な設計が多く、建物の入り口が不明瞭で、一度モールの中に入るとグルグルと回遊するような作りとなっています。つまり、目の前に現れる景色を眺めながら進む設計になっており、なかなか終わりが区切りにくいインターフェースなのです。

ショッピングモールについての対談集「ショッピングモールから考える: ユートピア・バックヤード・未来都市 (ゲンロン叢書)」という本ではこのように語られいます。

「ショッピングモールはエスカレーターだらけですよね。ショッピングモールはエスカレーターによって「フロア」の概念を無効化している。なかを歩いていても、そこが何階かを気にする事はあまりない。これが百貨店だと「○階は書籍売り場」、「△階は紳士服」とフロアごとの区切りがきわめて明確です。モールが平面的に展開するのに対して、百貨店は垂直に積み重なっている。」

さらに、同著ではこうも語られています。

「さて、ぼくが前回お話したなかで一番面白かったのは「モールは内装でできている」ということです。(中略)たとえばラゾーナ川崎では、川崎駅の改札口を出て渡り廊下を越えると、いつの間にかモールのなかにいる。外を見る機会がないんです。そのあとなかをぐるぐると見て、用が住んだら同じ渡り廊下を通って帰る。すると、まったく外観を見るタイミングがない。」

つまり、ショッピングモールは外観や全体間を把握させない作りになっているため、来場者は全体間を把握することなく建物内を周回するイメージになります。このスキームであれば、モールへの滞在時間が伸びる他、来場者が本来目的外だったショップに目を留めさせることが出来る可能性があります。
そして、目の前に現れるショップを回遊しながら閲覧するというこのスキームは、Facebookのタイムラインに類似しています。逆に、全体間が把握できており、目的のショップで用を済ませたら建物外に出る設計の百貨店は、かつてのmixiのようです。mixiはトップページにコンテンツのリンクが並んでおり、目的のリンクをクリックして閲覧したら、トップページに戻るかそのまま離脱する仕組みでした。
一方、Facebookは、ご存知のようにタイムラインを延々と眺める作りになっています。どちらの可処分時間が長いかは、肌間で分かってもらえるのではないでしょうか。

ということで、ショッピングモールは百貨店のターゲットを全て包括しており、全てのターゲットに向けたソフト(商品・サービス)を提供している上に、回遊性を意識したハード(建物、箱)によって滞在時間を伸ばす設計になっているのです。こういった仕組みによってショッピングモールがアミューズメントパークとしての側面を備えている以上、来場者が百貨店ではなくモールを選択するのは自然な流れと言えるのではないでしょうか。次回は、好調なファッション駅近ビル、ルミネについて解説してみたいと思います。

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出典参考
http://diamond.jp/articles/-/83913
http://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/201503guide1.pdf
http://mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/finance/segment/lease/index.html