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「星のドラゴンクエスト」の広告が、素晴らしい理由

武田鉄矢さんが出演するスマートフォンアプリ「星のドラゴンクエスト」の駅広告を新宿駅の構内で見た時、素晴らしいなと思ったんですよね。なぜ、この広告が素晴らしいかを解説していきます。

幅広い世代に訴求しなければならないドラクエ

ドラゴンクエストの第1作目の発売は1986年ですから、当時小学校3年生だった子供たちはもう40前後になっているわけです。ドラクエが小学生のみならず、中高学生までをカバーしていたと思えば、一番上のドラクエ世代はすでに50歳前後です。

しかし、ドラクエシリーズは今にいたるまで続々とシリーズ化されているので、もちろん若年層にもファンはいるわけです。
ということは、ドラゴンクエストの新シリーズが発売された場合は、小学校低学年から50前後の世代すべてに訴求する広告を打たないといけないということになります。

化粧品や整髪料など、だいたいの商品はそれを使う世代、年齢、性別がある程度セグメント出来ますが、ドラクエシリーズは訴求する年齢層が幅広すぎるため、特定の年代にターゲティングした広告を作るとその他に響かないということになるのです。

駅に掲示された広告の内容は、学生時代に起こるイベント(恋や友情)などを「冒険」ととらえて、冒険の数々をパネルで並べて、最後に騎士の姿をした武田鉄矢さんが黒板の前でほほ笑むという構図になっています。

この広告は、見る世代によって2通りの見方が出来るのです。

2通りの見方が可能な広告

まず、「星のドラゴンクエスト」の広告を大人が見た場合はこのような認識になります。

・大人から見たら場合→武田鉄矢さんが先生役の広告

この広告を大人側から見た場合は、武田鉄矢さんが先生役で出演している「ドラクエ」の広告という見え方になります。30前後以降であれば武田鉄矢さんが金八先生であることは周知の事実なので「ああ、金八先生がドラクエの格好をしている」という風に印象に残りやすいんですね。
そして、大人は一通りの青春を過去に体験しているため、学生時代のイベントに「懐かしい」という良い印象を抱くことが出来ます。

では、学生などの若年層側から見るとどう見えるでしょうか?

・若年層から見た場合→学校をテーマにした広告に、テレビでたまに見るおじさんが出ている広告

若年層から見ると武田鉄矢さんへの認知度は高くないものの、学校生活をテーマにした広告ビジュアルであるため、これは自分たちの世代に向けられた広告であると認識できます。そして、学校生活のキーワードのあとに「冒険しよう」というメッセージとともに「ドラゴンクエスト」が視界に入り、最後に戦士の格好をした武田鉄矢さんを認識します。
若年層から見ると、メインテーマは学校生活の青春を、ドラクエの冒険になぞらえたメッセージを主軸に受け取るので、武田鉄矢さんはサブに見えるのですね。
(しかし、CMを見ると武田鉄矢さんがメインになっているため、どちらかというと大人寄りの広告のようですが。)

多重構造を持つと、幅広い層をカバーできる

このように「星のドラゴンクエスト」の広告は多重構造になっており、見る属性によって2通りの見方が可能であるため、幅広い層をカバー出来ているのです。

少し話はそれますが、多重構造という意味でいうとスタジオジブリのアニメもそれに当てはまるように思います。「崖の上のポニョ」は、子供向けの可愛いキャラクター、ポニョの冒険を描いた子供向け映画と取ることが出来ます。しかし同時に、物語上に神話を示唆するような深いメッセージが込められているという意見もインターネット上で見受けられます。

「崖の上のポニョ」以外のジブリ作品にも概ねこの傾向があり、普通のエンタテインメント作品として楽しめるけれど、奥があるという多重構造の物語は、幅広い年代に受け入れられるのです。

ということで、異なる年代にとっても、多重構造を持っておくと受け入れられやすいという話でしたが、上手い具合にやらないと、どちらかの年代に違和感が発生することになります。
例えば、「星のドラゴンクエスト」のCMでもしも武田鉄矢さんが戦士の格好をせずに、普通の武田鉄矢さんとして先生的に登場していたらどうでしょうか。
大人世代は金八先生だと分かるので受け入れることが出来ますが、若年層は「誰このおっさん」ということになります。武田鉄矢さんに戦士の格好をさせることは、若年層に違和感を与えない上で必要なのです。

ちなみに先日「GU」の売り場に行ったのですが「GU」も10代から40代付近までをカバーする幅広いアパレルです。現在のイメージキャラクターは若年層に人気のモデル中条あやみさんと内田有紀さんなのですが、10代の女の子が店頭の内田有紀さんのパネルを見て「誰、この変な髪型の女の人」と言っていたのですね。
このように、ある種の世代では確実に認知がある人も、ちがう世代では全く認知がないということになるため、どちらの方向からも違和感を感じない世界観の設計というところが重要であるようです。

星のドラゴンクエスト公式サイト
http://www.dragonquest.jp/hoshidora/tvcm/