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多角化経営か弾丸経営のみが生き残る?

富士フィルム3

多角化経営で売り上げが1.5倍に

本当に変化のスピードが速いなと思うのです、IT業界。しかし、スマホというハードデバイスの登場により、携帯メーカー、カメラメーカー、ゲームメーカー等、IT業界以外も影響を受けるようになってしまいました。

速すぎるスピードの中、今後は、多角化経営か弾丸経営の両極になるような気がします。「無理ゲーを勝ち抜いて、売上を1.5倍にした富士フィルム」というブログでも書いたのですが、フィルムがヤバいと気づいた富士フィルムは、フィルム現像から事業を多角化しまくりました。カメラ技術を活かして医療用のカメラを開発したり、写真フィルムの技術を活かした化粧品「アスタリフト」を開発して化粧品分野に乗り出しています。

その結果、フィルム事業は2000年をピークにその後10年で10分の1にまで縮小しており、競合であったコダックは2012年に経営破たんをしています。しかし、富士フィルムは1兆4403億円であった売上高を2012年度は2兆2147億円と1.5倍にしているのです。

多角化経営とは、恐るべきイノベーションが現れて事業の一部が痛んでも、他の事業でカバーするポートフォリオ型の経営になります。ゆえに体力がある会社が取りやすい方針です。

既存事業との関連とポートフォリオ戦略が重要

しかし、やみくもに多角化すれば良いというわけではなく(現に国内のメーカーも多角化しまくって、逆に苦境に陥っています)、そこには既存事業との関連とポートフォリオ戦略が必要になります。

既存事業の関連とは、富士フィルムようにフィルム現像というコア事業の技術を用いて、全く別の事業に転用していくことです。この場合、ベースとなる技術開発におけるコストが安く済み、技術に関してのノウハウが社内に蓄積されているので進出しやすいのです。

また、ポートフォリオ戦略とは、いくつの事業をどこまで広げるかという戦略になります。例えば、先日「ピザーラ」を経営する株式会社フォーシーズの淺野社長がTVに出演していましたが、ピザーラのフランチャイズ社長に対して、同社が参加に収める串揚げ屋の社長を兼務することを薦めています。

何故かというと、宅配ピザの需要は雨の日などに高まりますが、串揚げ屋の需要は雨の日には低くなります。逆に、晴れている日は宅配ピザの需要が低くなりますが、串揚げ屋の需要は高まるのです。このように、天気によって顧客の需要が変動し、売り上げにバラツキが出ることを2店舗経営させることによって防いでいるのです。しかも、串揚げ屋は通常の飲食店に比べて設備投資のコストが安いというのもポイントです。

事業同士が、外的要因による売り上げのヘコみをカバーできるかが、ポートフォリオ戦略のキモになるのです。

弾丸経営とは、その時の成長市場に飛び込んでいくこと

多角化経営に対して、弾丸経営とはその時その時の成長市場に飛び込んでいくことです。これは、人数の少ない小規模の企業が取りやすい施策になります。特にITの分野に多いと思いますが、こないだまでは広告会社だったのにソーシャルゲームを作っていますとか、主力事業がどんどん変わっていく経営方針です。

この場合、所属するメンバーが特定のスキルに依存すると業態が変えられないため、メンバーの柔軟性とスピード、変化することを恐れない気質が重要になります。

そして、両者を会社の中に両者を内在させるタイプの会社もあるります。例えば、製造など原価率が高く先行投資がかかる場合は既存事業を活かした多角化経営になりますが、ITで完結する事業であれば、投資がほぼ人件費になるので弾丸型の経営がやりやすくなります。企業全体としては多角化によるシフトを行い、特定部門を弾丸部門にするということも考えられます。

サイバーエージェントなどは、社員数の割に弾丸セクションの多い会社だと思います。しかもこの1、2年はスマートフォンに振り切るという大きい賭けをして、2012年度の総売上げ1,624億円のうち915億円がスマートフォンの売上だといいます。

ということで、勝ち組の会社はこの2極化かハイブリット型だと思うのですが、あなたの会社はどういう経営ですか?

無理ゲーを勝ち抜いて、売上を1.5倍にした富士フィルム

富士フィルム3

10年間で10分の1に縮小したフィルム市場

昨日、市場を根こそぎ持っていく競合は、想定しないところか急に現れるので、防ぎようがないという話をしました。そんな中でデジタル化によって既存のメイン事業が縮小したのに、売上自体を10年で倍にした企業があります。富士フィルムです。

富士フィルムといえば、映ルンですのCMが印象深いですが、化粧品「アスタリフト」のCMを見た時は「なぜ写真の会社が化粧品を!?」と思いました。でも歴史を紐解くと、化粧品等の事業に進出せざる追えなかったというのが正しいようです。フィルム事業は2000年をピークに、その後10年で10分の1にまで縮小しており、競合であったコダックは2012年に経営破たんをしています。しかし、富士フィルムは1兆4403億円であった売上高を2012年度は2兆2147億円と1.5倍にしているのです。

コダックとの売上高の比較のグラフを見ると象徴的です。いったいこの2社の運命を分けたのはなんだったのでしょうか。
富士フィルム

フィルム事業がピークであった2000年当時は、フィルム部門の担当役員が会社を支配していたと言います。この体制に疑問を持っていた古森重隆氏が2000年に社長兼CEOに就任すると、90億ドルをかけて40社を買収した上、1年半の間に2500億円をかけてリストラを含む社内改革を行ったといいます。

古森社長いわく、「自動車が売れなくなったトヨタ、鉄が売れなくなった鉄鋼会社をイメージし欲しい」、「我々が直面した危機はそのくらい恐ろしいインパクトがあった」、「辛い経験だった」、「状況をありのままに見れば生き残れる状態ではなかった」、「だから我々はビジネスモデルを再構築しなければならなかった」Electronic Journal 2012年6月号より

10年間に2回も市場が大きく縮小するという無理ゲー

そして、現在の富士フィルム―、2012年度の売上と営業利益の内訳(グラフ右)を見ると、このようになっています。
富士フィルム2

富士フィルムが2000年時に主力としてきた写真のフィルム現像等のイメージングソリューションは、なんと22億円の赤字。営業利益を支えているのは、2000年以降に始まった医療用フィルムや内視鏡等を販売するインフォメーションソリューション(アスタリフトの売上もココに含まれます)と、富士ゼロックスによるプリンター販売や保守等をするドキュメントソリューションです。
特に、医療関係の製品と化粧品「アスタリフト」の売上が好調で、増収増益となっています。
もし2000年当時に大改革に踏み切っていなかったと思うと・・・完全にやばかったのですね。

細かく決算資料を見ていて気付いたのが、赤字であるイメージングソリューションの中でもフォトブックを展開して単価をあげようとしていたり、デジタルカメラの販売なども注力してきたということです。フィルム業界は、市場そのものが揺らいでしまう大波を今までに2回もかぶっています。2000年頃にデジタル化の波が訪れフィルム事業がどんどん縮小されていった時と、2008年以降にスマートフォンの登場によってデジタルカメラの市場自体が縮小したことです。この10年間に、2回も市場そのものを揺るがす変化が起こったなんて、「どんな無理ゲーだよ」という感じですよね。

もしも富士フィルムの改革が、「フォトブックに対応して単価をあげる」「デジタル化に対応するためにデジタルカメラ販売」等の写真市場のみに絞られていたとしたら、やはり大変なことになっていたしょう。医療用フィルムや医療器具、まさかの化粧品販売という会社の構造そのものを変える事業拡大を行ったからこそ、スマートフォンの影響を受けても、屋台骨が揺るがない企業になったのです。

改革を断行した古森社長には、おそらく激しい逆風が吹いたのだろうと思いますが、危機感を持った人間がトップになり改革を行うということが、いかに重要か思い知らされますね。

参考文献:Electronic Journal 2012年6月号