タグ別アーカイブ: マクドナルド

マクドナルド不振の本当の理由

マクドナルドの不振の引き金を引いたのは、コンビニコーヒー?

マクドナルドの2015年1~9月期連結決算が、292億円の赤字(前年同期75億円の赤字)に達したそうです。日本で一番大きかった原宿表参道店の閉店も決まり、ネット界隈では「いよいよか」といった感じのコメントが見られます。

マクドナルドが2004年に原田泳幸氏が社長に就任してから8年もの間、増収増益を達成していたものの、それ以降は減収減益に転じた要因を過去にブログで分析したことがありました。

なぜ増収増益から減収減益に転じたのか、以前のエントリで分析したことを簡単にまとめると以下2点になります。

1 コンビニコーヒーが台頭してきたせい(⇒で、来店者数が少なくなった)
2 高価格商品が売れなくなったせい(⇒で、顧客単価が減少した)

これが2大要因になるのですが、原田体制になったマクドナルドがまずしたことは、低価格帯の商品で来店を促進することでした。これを100円マックで実施していたのですが、プレミアムローストコーヒーが導入された2008年以降はコーヒーが来店促進の主役となります。(7年くらい前を思い出すと、お昼前後、みなこぞってマックにコーヒーを買いに行っていませんでしたか?)
しかし、2012年前後にコンビニ各社がコーヒーに力を入れ始めたため差別化が出来なくなり、マクドナルドの2013年の来店者数はガクッと減っています。さらに、コーヒーで集客していたお客さんに高価格帯の商品を提供して利益を出していたのですが、それらが売れなくなった結果、顧客単価が減少して利益が出ない状態になるというダブルパンチとなったのです。(高価格帯の商品を購入させるためにメニューの撤去を行う等の迷走もありました。)

これがマクドナルドが減収減益となり、さらに赤字に転じた直接の原因だと思うのですが、マクロの視点で見ると大きな一つの背景があると思うのです。

マクドナルドとモスバーガーの定義は異なる

その背景とは「ハンバーガーというワンコンセプトのお店が、巨大外食チェーンとして存在することが難しくなった」ということかと思います。よくモスバーガーは頑張っているのにマクドナルドは…という意見がネットで見られますが、そもそも売上規模がものすごく違います。モスバーガーの売上は年間650億円前後ですが、マクドナルドは売上が落ちたとはいっても4千4百億円もあります。その差、7倍近くです。さらに、年間の来店者数は2011年時点の数字ですが、モスバーガー1.06億人に対して、マクドナルドは9.25億人です。
モスバーガーは「ハンバーガー好きな人が、たまにハンバーガーを食べに行くところ」ですが、マクドナルドは「日本人が年に何回かは定常的に食事をとる飲食店」ということで、定義が違うのです。

さらに、外食チェーンの大手というと牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーが思い浮かびますが、ゼンショーの牛丼カテゴリは2015年3月期の売上が1,735億円ですから、2014年の売上が4,463億円であったマクドナルドは2.5倍も売上規模が大きいのです。インフォグラフィックで売上を比較するとこのように開きがあります。
比較 グラフ

ということで、マクドナルドが凋落した最大の要因は「ハンバーガーというワンコンセプトによる、売上5,000億円規模の外食チェーンの存在が、食の嗜好の多様化により難しくなった」という背景があるのではないかと思います。「すき家」や「モスバーガー」は商品開発などに力を入れて、客単価の向上などに努めているようですが、それはマクドナルドよりも数倍売上規模が小さいからこそ効く施策なのです。

今後のマクドナルドについて考えると、上記の理由から売上の減少は下げ止まらないことが予測されます。現在、店舗が続々閉店しているようですが、売上規模を大幅に落として、他の外食チェーンのように顧客の嗜好に合わせた商品を開発して利益を出すという流れになるかもしれません。(しかし、マクドナルドは商品開発においてグローバルの規制が激しいという話も聞くので、どうなんだろうとも思いますが。)

マクドナルドもホンダもほぼ日も!?偶然生まれたビジネスモデル

マクドナルドの隆盛は、偶然の産物だった!?

マクドナルドが2000年代半ばからどのように栄光を極めて、そして凋落していったかというブログを書いたのですが、原田泳幸社長が就任して以降のマクドナルドは、原田マジックなど言われて素晴らしい戦略だと賞賛されていました。

ブログではマクドナルドの売上と利益の推移をグラフで見ながら、要因を探っていたのですが、来客数のアップからの単価アップという流れるようにきれいな戦略になっています。

1 100マックの低価格戦略でお客を取り戻した!(来客数アップ)
2 えびフィレオ大ヒットに続く高価格帯商品も大当たり(単価アップ)

しかし、これは元々そういう戦略を考えていたわけじゃなくて、えびフィレオのヒットは偶然だったらしいんですね。(そもそもえびフィレオを手掛けたのは、カサノバ氏だそう)

「今だから話せますが、100円マックを始めた頃は、そんなフェーズ1・2・3なんて戦略を詳細にはつくっていませんでした。客数は上がるが、絶対客単価が落ちるので、なんとか少しずつ収益を戻すということを段階的にせざるを得ないなと思ったぐらいです。具体的に何をいつ発売するかは決まっていなかったのです。戦略がないと言ったら、それこそ記者から叩かれますからね。」
原田泳幸の実践経営論「大きく、しぶとく、考え抜く。」より

ホンダの小型バイクが北米市場を席巻したのはショッピングセンターの担当者のおかげ?

MBAの教科書に載るような成功が、実は戦略ではなくて偶然だったというのは他にもあります。先日「君に友達はいらない」を読んでいたら、ホンダがかつて小型バイクでアメリカ市場を席巻したという話題についてこう書かれていました。

「それまでアメリカのバイク市場は、ハーレーダビッドソンが独占していた。同社のバイクは趣味性が高く、オートバイを愛する男たちに熱烈な支持を受けていた。その市場に乗り込むにあたり、ホンダは同じ土俵で闘うのではなくて、”気軽に乗れる機能性の高い実用的な乗り物”として自社のバイクを位置づけることにした。そのリポジショニング戦略がうまく行って、ハーレーほかのアメリカンバイクのメーカーの市場を大幅に奪ったのである」
(「君に友達はいらない」講談社刊より)

しかし、同書によるとリチャード・パスカルさんというスタンフォード大学の教授がホンダの北米進出を手掛けた人物に話を聞いたところ、戦略なんて全くなかったそうなのです。当時は、ハーレーダビッドソンに習って大型バイクを売り込んでいたものの全く売れず、ショッピングセンターの担当者が、たまたまホンダの営業担当者が乗っていた「スーパーカブ」を見て「そっちの小さいのだったら売ってもいいよ」というのが始まりだったそう。

物販サイトとなった「ほぼ日刊イトイ新聞」のはじまり

さらに、月間約139万人の訪問者数を誇る「ほぼ日刊イトイ新聞」ですが、直近1年の売上が30億円(決算期変更による参考値)を超えており、ものすごい物販サイトとなっています。しかし、同社CFOの篠田真貴子さんによると、物販をし始めたのは偶然だったそうです。

そうした中、商品という形で売り上げを立てたのは、偶然の産物でした。最初の商品は1999年秋に販売したTシャツでした。当時、事務所スタッフが少人数だったので、大学生のサークルがユニフォームを作るような感覚でお揃いのTシャツを作ろうという企画が持ち上がったとき、メンバーの一人が「読者にも売ったら喜ばれるのでは」というので、Webサイトで通信販売してみました。すると、3000枚を超える申し込みがあり、「自分たちも物販でやっていけるのでは」と思うきっかけになりました。その後、オリジナルのハラマキ、永久かみぶくろ、手帳と、1つずつ商品を開発しました。

http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1308/21/news023.html

漫然と待っているだけでは、良い偶然は訪れない

ということで、マクドナルド、ホンダ、ほぼ日刊イトイ新聞と、大成功を納めているビジネスでも、最初からきれいに戦略を描いたわけではなく、やり続けることで偶然の幸運に巡り会うことも多いようです。
しかし、一方でそのチャンスをただ漫然と待っていたわけではなく「天は自ら助くる者を助く」ということわざの通り、フィソロジー(哲学)を持って地道に準備をしています。

マクドナルドの例でいえば、起爆剤となった「えびフィレイオ」が誕生したのは偶然ですが、原田社長は就任後に「メイド・フォー・ユー」というスローガンのもと、キッチンの大改革を行なっており、これがなければ「えびフィレイオ」ほかに続く高価格帯の商品は生まれませんでした。ホンダの例も、そもそもホンダが小型のバイクを開発できる技術力と実績があったからこそ、ひょんなきっかけで一気に小型バイク市場が広まることになったのです。
さらにほぼ日刊イトイ新聞も、物販が順調なのはメディアに共感するファンが一定量存在するからです。サイトが始まった当初から「自分たちがおもしろいと思うことをする」という信念のもと、1度も広告を入れたことはないと言い、様々な運用ポリシーを貫いています。

このように、ある種の事業には、きれいに描いた戦略ではなくて、自分たちのフィソロジーに基づいて着々と準備をして「いつか訪れる偶然を待つ」という行為が求められるのかもしれません。

▼Twitterよかったらフォローしてください
https://twitter.com/toriaezutorisan

マクドナルドはなぜ減収減益に転じた?【3】〜マクドナルドの未来〜

カサノバ氏にCEOが交代。業績は回復に転じるか?

さて、前回の記事では、マクドナルドが減収減益に転じるまでを解説した。まとめると以下のようになる。
    • 来店促進のキラーだったコーヒーが、コンビニに模倣されて効果を失う
    • 季節限定メニュー廃止で単価が下落
    • マクドナルドの都合による施策が、顧客に不利益をもたらして客足が遠のく
さて、サラ・カサノバ氏に交代して、業績は回復するのだろうか。断言しても良いが、回復しないと思う。まず、2014年に入り、1月〜3月までがどうなっているかを見ると、来店数が大幅に減少した2013年の前年同月比率よりもさらに減少している。顧客単価については前年同月比よりも回復しているが、2013年の1〜3月は意図的に季節商品を止めた時期なので、季節商品を復活させている現在は回復していて当たり前だ。

つまり、今もまだ厳しい状況が続いており、回復の兆しが見えていない。

それでは、マクドナルドのIR資料からカサノバ氏が打ち出した戦略を見てみよう。マクドナルドの独自性を強化すると題して、以下の3点が強調されている。
  1. キッズ&ファミリー&ホスピタリティ
  2. ホット&フレッシュブレックファスト
  3. バリュー(お得感)
まず、1点目の関してはファミリー向けの商品やサービスを強化していくということだ。しかし、ファミリー層を狙うというのは藤田田社長だった時代から掲げられていることだが、おそらくはファミリー路線に切り替えたすき家の成功を見て、商品開発をよりファミリー向けに特化させていくという意図だと思われる。そしてホスピタリティは、カサノバ氏の就任直後に社員に向けて発信されたメールでも言及があったという。前述のマクドナルド側の都合により、顧客に押し付けてしまった不利益(メニューがなくて見づらい、注文時間の短縮等)を改善していくということだろう。

また、2点目については朝マックを強化しますよということである。朝マックの強化は継続的に行われており、昨年はシャンプーや洗顔料などが特典でついてくるキャンペーンも行っていた(そしてネットで迷走と叩かれた)。
最近、ビッグブレックファストというメニューがテコ入れ策の一環として導入されたが、Twitterなどで評判を見てみると「エッグマフィンの方がいい」「高い」などの声が目につく。実際に食べた人が写真をあげているのだが、本当に外食産業におけるオペレーションの難しさを思い知らされる。プレート商品は盛り方によって、見た目がかなり変わってしまうが、きれいに盛られているプレートと、スクランブルエッグがハンバーグにかかって汚らしく見えるものとが混在している。

3点目のバリューに関しては、100円マックがフィーチャーされていたが、これは特に目新しい施策ではない。それでは、何か目新しい施策があるのかと言うと、資料でさらに2点が強調されていた。

既存店舗への積極投資と、デリバリーサービスの拡大である。既存店舗への積極投資に関しては、2013年度の投資活動のキャッシュフローを見ると「有形固定資産の取得による支出が170億円」もある。これは店舗の改造なのか、土地の取得なのかは分からないが「お客様にゆっくり寛いでいただく」的な店舗改造は危険だと思っている。
コーヒーチェーン各社がスターバックスの成功を受けて、こういったコンセプトの新業態店舗を次々と拡大しているからカニバってしまう。しかも、ゆっくりくつろぎたい人が、マックを選ぶか、コーヒーチェーンを選ぶかと考えたら確実に後者だろう。過去にも2度ほどカフェに特化した新型店舗の拡大を図っているが失敗している。

つまり、既出でない新しい施策はデリバリーサービスだけだ。これは中食市場の拡大を受けた施策だと思われる。しかし、この施策も現段階では成功しないと思う。なぜならば、デリバリーはただの顧客へどう商品を届けるかというチャネルである。

○マクドナルドの商品を食べたいー店舗に行く
                ーデリバリーサービスを使う

という、図式であって、そもそもマクドナルドの商品を食べたいという需要がなければ、デリバリーサービスも頼まないのだ。そして、前述のように季節限定商品に力がなくなっている以上、その需要も薄くなっており、わざわざデリバリーをマクドナルに頼むのかという問題になる。また、価格も1500円以上から宅配で300円の手数料(税抜き)となっており、最低でも3人がセットメニューを食べようと思わないと頼めない価格である。利用想定が深夜残業している会社員くらいか思いつかないのだが、どうなのだろうか。

このままマクドナルドの業績は下降するのか

それでは、何か他の手があるかと言えば、それは魅力的な新商品の開発(及び、それにかかる設備やオペレーションコストの投資)になると思う。なぜならば、他外食チェーンも新商品の成功、あるいは店舗をリッチにして空間を提供するという手法でしか勝っていないからだ。そして、それはマクドナルド自身も既に分かっているからこそ、季節商品を復活させている。しかし、新商品の成功はある意味ギャンブルであり、常にリスクを伴う。そして、未だ結果は伴っていない。

もしくは、コーヒーのように来店を常態化させるキラーコンテンツがあるかどうかである。100円マック、そしてプレミアムローストコーヒーに変わる何かだ。おそらくマクドナルドはこれを「朝食」に定めたのかもしれないが、今の状況を見ると難しいだろう。

マクドナルドと資本主義

ここまで3回に分けてマクドナルドの10年ついて振り返ってみた。正直調べるのにも時間がかかったし、このテキストを書くのにも非常に時間がかかった。それでもこれだけの時間を費やしてマクドナルドについて書いたのは、何かひっかかるものがあったからだ。このテキストを書きながら、そしてマクドナルドが成長戦略に乗るためにはどうしたら良いかを考えながら、常に胸に浮かぶ一つのひっかかりがあった。

そもそも、成長し続ける必要があるのか?

ということだ。第1回のエントリに書いた数字をもう一回振り返ってみたい。いくらマクドナルドが売れなくなった、来店数が減った、顧客単価も減少したといっても、全店舗売上げ高はそれでもまだ5000億円を超えている。来店数も2011年時に9.28億人が来店していたということは減収減益となった2013年でも8億人後半くらいはあったはずである。8億人だ。日本国民が年間6回以上はマクドナルドに行っている計算である。そして、日本国民が年間6回マクドナルドに行ったとしても、減収減益だと叩かれてしまうのだ。

売上高は、8年間で3867億円から5350億円にまで成長している。つまり、8年間かけて、年間1483億円も増えているのである。

8年間で、年間1483億円である。

要因は、冒頭に述べたように、メイド・フォー・ユー導入であるが、当時を振り返るインタビューで以下のように語っている。

「初年度は、メイド・フォー・ユー導入と外食産業の基本中の基本であるQSC(味というQuality、接客などのService、清潔さを意味するCleanlinessの略)の見直しだけけを「やれ」と指示して、それ以外は「やるな」と言いました。これだけで、顧客の増加という結果につながったのです。」
(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

原田氏の主張は常にシンプルで、問題の根っこを抑えたらそれを順番に解決していく。何をやるかよりは、むしろ何をやらないかを決めることが経営者だと語っている。最初はその戦略により、一気に売上が拡大する。しかし、さらに売上を拡大しなくてはならない。なぜならばそれが資本主義だから。売上を拡大するために、営業時間を広げて24時間営業にする。店員は深夜に働かなくてはいけなくなる。朝の商品を拡充してリッチにする。単価を上げるために限定商品やプレート商品を用意する。ファミリー向けに、子供用のファミリーセットを用意する。現場のオペレーションはさらに、難しくなる。頑張ってどんどん売上げを拡大させても、さらに成長しなければならない。既に打つべき施策は打っている。これ以上ぞうきんをしぼれない。でも、どこからか数字を引っ張ってこなければいけない。

規模が大きくなれば、1%の係数の狂いも大きな数字となって跳ね返る。1000円に1パーセントを掛けても1001円だけれども1000億円に1パーセントをかけたら1001億円だ。注文時間をあと数秒短縮できれば、回転率が数パーセント上昇する。数パーセントの係数の上昇は、数億円になって利益に跳ね返る。だから店頭からメニューを撤去する。

お客さんに来てもらうために、魅力的な限定商品を用意する。限定商品がなくなると、お客さんは来てくれなくなる。限定商品は特別じゃなくて常態化する。常に新しくてみんながビックリする商品を常態的に作り続けなければならない。特別にした施策が、特別じゃなくて普通になっていく。その普通にお客さんは慣れる。だから、もっと特別なことを用意しなくてはいけない。でも、その特別もやがて普通になる。

お客さんが毎日来てくれるきっかけになる、コーヒーというキラー商品を見つける。しかし、すぐに他社にマネをされる。他社も普通じゃない特別の状況を、普通にして頑張っている。すき家も拡大するために、24時間営業にした。今や巨大外食チェーンの24時間営業は当たり前だ。他社はやっている。うちも、やるしかない。しかし、すき家は、人件費を気にして夜中に店員を1人しか配置しなかったために、強盗に狙われた。新商品もぞくぞく開発する。しかし、店頭でそれを作る人は一人しかいない。現場のオペレーションが難しくなっても、増員するわけにはいかない。利益が減るからだ。

これが、延々マクドナルドについて原稿を書きながら頭の中をめぐっていたことである。飲食業の他にもアパレルや小売りなどの成熟してコモディティ化した市場は同じようなことをしている。みんなが無理をしているのだから、自社も無理をしなければ他社にシェアを奪われてしまう。それが資本主義の競争原理なのだ。

そして、8年間で年間1483億円も売上げを延ばした社長も、たった2年間減収減益になっただけで、代表の座を下ろされてしまう。それが資本主義なのだ。
競争が過熱するというが、本当に温度が高いように思う。熱を放ちながら競争を続け、果たしてどこにたどり着くのだろう。

マクドナルドはなぜ減収減益に転じた?【2】〜成功ロジックは何処で崩れたのか〜

2013年純利益が前年の半分以下。原因は来店者数?単価減少?

前回のエントリでは、2004年の原田氏就任後、2010年に営業利益が約4倍の281億8000万になるまでを振り返った。今回はその後、好調だったマクドナルドの業績に暗雲が立ちこめ、2012年から2年連続の減収減益に転じた理由を振り返ってみたい。

まずは売上高の推移を見てみよう。

uriagedaka

マクドナルドHPより

グラフは直営店とフランチャイズ店を合計した全店売上高だが、2011年以降は前年割れが続いており、特に2013年は前年より約250億円も減少している。
純利益のグラフを見ると2012年に128億円もあった純利益が2013年には51億円と半分以下になっている。ざっと決算書を見たところ、売上げのヘコみがそのまま利益にまで反映されているものと思われる。
(ちなみに2010年の純利益も約78億と減少しているが、これは大規模に不採算店舗を閉鎖するなどして特別損失を計上しているためである。)

売上げが減少するということは、来店数が減っているか、顧客単価が下がっているかどちらかである。まず、2011年の来店数を見てみると9.28億人と、前年2010年の9.38億人から減少していることが分かる。

そして、2012年はグラフがないので、月次セールスリポートで前年同月比との比較を参照した。すると、2012年は12ヶ月中3ヶ月で来店数が前年比割れをしているが、2011年より回復していることが分かる。しかし、単価は12ヶ月中11ヶ月で前年比割れ。顧客単価が大幅に下落している。

続く2013年は12ヶ月中11ヶ月で来店数が前年比割れ。顧客単価は12ヶ月中4ヶ月が前年比割れだが、そもそも2012年の顧客単価がかなりの割合で下がっているので、ベースとして顧客単価も減少傾向にあるといえる。まとめると以下のようになる。

●2011年
来店数は減少。
顧客単価は不明。

●2012年
来店数は前年より回復したものの、前年のベースが低いので低調傾向。
顧客単価は大幅に下落。

●2013年
来店数は大幅に前年割れ。
顧客単価の低調傾向が続く。

ターニングポイントは2011年にあった?

マクドナルドの業績がみるからに悪化した2012年の下期以降を分析する記事がよく見られるが、ターニングポイントは2011年にあると思われる。まず、来店者数減少の要因だが、原田氏はインタビューで何度か、中食の需要が増えているのが要因だと語っている。

「食生活には「外食」と、デリバリー(宅配)やテイクアウト(持ち帰り)、コンビニのお弁当などの「中食」、家庭で調理する「内食」があります。震災後、中食にシフトしているんです。エネルギー節減で家での調理を控えるため内食からも中食にシフトしています。そのためコンビニやスーパーが調理済みの商品を増やしていて、その分、外食が減っています。」
2012年時のインタビューより

調べてみたところ、中食市場が前年比2年連続で成長しているのが確認出来た。しかし、外食産業もそこまでへこんでいるわけではない。

2011年3月は確かに震災要因でファーストフード業界の来店数は全体で前年比9割強になっていたようだが、5月にはほぼ回復している。2012年のファーストフードの動向も以下のように全体としては拡大している。

ファストフード(21業態)は3兆793億円(3.3%増)。12年は首位マクドナルドの不振からハンバーガーが低迷したが、ギョーザ、立ち食い・セルフ式そばうどん、回転ずし、ラーメン、牛丼などの業態が順調で市場は拡大した。

Logistics Todayより

そもそも3兆円の市場規模のうち、5000億円はマクドナルドが占めるので、マクドナルドの売上が大幅にヘコむとファーストフード市場がシュリンクするというニワトリ、タマゴの関係になってしまうが、それを補ってもなお他業態のチェーンが健闘していたようである。

それでは何故来店数が2011年以降減少傾向に入ったのか。仮説の域を出ないが、かなりの割合で「コーヒー」のせいだと思っている。前回の記事にて100円マックなどの低価格商品で来店を促進しているという戦略を説明した。そして、その来店促進のためのキラー商品は2008年以降プレミアムローストコーヒーに取って変わったと思われる。思い起こすと、周囲の人たちは皆、昼食時になるとコーヒーを買いにマックを訪れていた。

しかし、そんな好調ぶりを見せつけられたコンビニ各チェーンは、相次いで挽きたてコーヒーの参入を図る。コーヒーというコンテンツがいかに力を持っているかは、その後のコンビニチェーンの好調さを見て推して図るべしである。最も参入が遅かったセブンイレブンでさえ、参入から一年強で5億杯を売り上げている。各チェーンのコーヒーへの参入時期を調べてみたが、マクドナルドの来店数が減少しだした2011年と開始時期が合致する。

サークルKサンクス 2009年
ミニストップ  2010年11月
ファミリーマート 2012年9月
ローソン 2012年(推定)
セブンイレブン 2013年1月
※各公式サイトより。ローソンについては開始時期不明だが2012年時のリリースにて言及がある。

マクドナルド自体もコンビニが参入したことにより、コーヒーを無料で配布するキャンペーンなど対応策は打っていたように思うが、いかんせん追いつかなかった。利用者ニーズを考えれば、マクドナルドにコーヒーを買いにいくよりはコンビニに行く方が気安い上に、コンビニチェーンを合計した店舗数の方がマクドナルドより上なので立地の面でも不利だ。今まで100メートル歩いてマックにコーヒーを買いに行ったとしても、50メートル以内のコンビニが取扱いを始めればそちらに切り替えるだろう。

「100円マック」→「コーヒー」に続く来店促進のキラー商品の代替えが存在しなかったため、セオリーが崩れてしまったのではないだろうか。

そして、2012年は大幅に顧客単価が下落する。単価を押し上げていたのは、季節限定メニューだ。2012年を振り返るインタビューで、原田氏は以下のように答えている。(2013年時のインタビュー)

「季節限定のメニューでも、もうかるものともうからないものがある。短期間に膨大なマーケティングコストがかかる割には、売れ行きの予測が難しく、廃棄のリスクも高くなる。(中略)検証の結果、その年だけの新しいメニューはやめて、期間限定のディスカウントもやめた。そして、利益の軸足をビッグマックに移すと決めた。それが売上げを削ることになった要因だ。ビッグマックの売上げ増は時間がかかるから、1〜3付きは過渡期と見ていて、4月以降に回復が始まる。」

(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

「今までのやり方が正しかったのかを2012年に検証した」という前置きの後に上記のコメントが続くのだが、今までのやり方の費用対効果を検証していたということは、2011年時点で既に高単価商品が売れなくなっていた可能性が高い。そして翌年の2012年には高単価商品がいっそう売れなくなり、初の減収減益となるのだ。

実際、季節商品を振り返ると2009年のクォーターパウンダーの後は2010年ビッグアメリカン、2011年ビッグアメリカン2と前年の焼き直しになっている。そして、2012年は何だったのだろうかと公式サイトを見に行ったらビッグアメリカン再び!と、3年連続して同じようなことをやっていた。なんだか、ジリ貧になると大きなカケに出られず安全策しか取れなくなっていた昔のマクドナルドを思い起こしてしまう。

先ほどのインタビューにあったように、2013年前半は季節限定メニューを廃止してビッグマックに注力するのだが、この施策は大失敗する。来店数が大幅に落ち込み、顧客単価も低調なままだった。後に、この施策は失敗だったと、以下のように語っている。

「大きかったのは、今年(2013年)の1月、2月の既存店の売上高が、マイナス17%とマイナス12%だったことです。もちろん、マイナスになるとは思っていました。
でも正直、2桁も下がるとは誰も思っていなかった。そこで猛烈に戦略を見直してみたわけです。でも、やっぱり季節限定の乱発はやってはいけない。そこは選択と集中で、季節限定商品の数は少なくていいから、よりインパクトのある強烈なものをやらないと。
お客さんはやはり、新しい価値やサプライズを求めています。乱発抑制と新商品投入の、バランスを取ることが大事だということがわかったので、そこから猛烈に企画を立て始めて、6月からのキャンペーン(サッカーの本田圭佑選手をイメージキャラクターにした大がかりな販促戦略)に至ったわけです。」
原田泳幸 日本マクドナルドHD 会長兼社長に聞く より

しかしこの後、大幅なプロモーションも功を奏さずに来店客数は前年比割れのまま、結局通期で大幅にを売上げを落としてしまう。高価格帯の商品が売れなくなってしまった理由は何なのだろうか。それはひとえに、売れる季節商品を出せなかったことだと思う。先ほども記述したが、ビッグアメリカンという同じキャンペーンを3年も連続して行っている。みんな、メガマックやクォーターパウンダーくらいまでは記憶があると思うが、ビッグアメリカンというキャンペーンやっていた印象すらないと思う。「ちょっと食べてみたい」という興味を喚起できていないのだ。

これは外食産業市場規模のシュリンク云々ではなくて企画力とそれを実現するオペレーションが出来るかという問題だ。実際に成熟市場である牛丼チェーンのすき家も、やり方に問題があるにせよ(深夜の1人勤務など)、魅力的な新商品を投入することで成長してきた。

しかし、原田氏のインタビューを総括すると、あえて季節限定メニューを止めたと語っている。定番メニューを据えて、それを売ることがあるべき姿だという方針を示しているのだ。
2013年初頭にビッグマックを主力に据える宣言にも違和感を覚えた。消費者側の視線から見ると、ビッグマックのインパクトはメガマックやクォーターパウンダーに遥かに劣るわけで、いくらマクドナルドがビックマックを売りたくても消費者が食べてみたいと思わない限りは売れないのである。
広告宣伝費がかからず、廃棄率が予想しやすいビックマックに売れて欲しいという売り手側の都合を、消費者に押し付けているようにも見える。また、高付加価値の商品を作るために、戦略的に専用キッチンを持たない店舗を閉鎖してきた体制とも逆行するようにも見えるのだ。
しかし、マクドナルドはグローバル企業なので、これは原田氏の思惑というよりはむしろ本社の意向なのかもしれない。Appleは日本だけにカスタマイズした商品は売らない。グローバル企業は、世界向けに開発した一つの商品を、複数の国で売る。

また、2011年以降は「売り手側の都合」というワードが目に見えて出てくる。私が最初に違和感を感じたのは2011年に原田氏がカンブリア宮殿に出演した際のコメントだった。

10秒キャンペーンに続く系譜か。OTタイムとは。

2011年時はまだマクドナルドの不振は目に見えていなかったので、番組の流れはマクドナルドの再建手法を紹介したものだった。そこで一瞬「?」と感じたのがスタッフが注文を取る時間を指標とするOTタイムだ。

ベテランクルーによるトレーナーミーティングで話し合われていたのがOTタイム。クルーが一人の客の注文を取るのにかかる平均時間=オーダーテイク(OT) タイム、これが議題に。
マクドナルドでは、一人のクルーのOTタイムが計れるしくみが導入されています。このOTタイムが短くできれば、ドライブスルーでの台数が稼げ、その結果売上アップにつながります。

ミーティング終了時の店長のコメント:
〈(クルーの応対が) おっとりというか『ハーイ』みたいなとこがあるから、そこをちょっとでも『ハイ』ときっちりと区切るだけでも(OTタイムが) 早くなっていくし、それの積み重ねだと思うから。そうしたら、もっとドライブスルーの台数取れると思う。〉

くそねこ にゃんにゃん ニャンコロリンのリン  徒然猫 雑記 より

この施策は顧客というよりは、むしろマクドナルド側の都合である。昼食などの混雑時に1人でも早くさばくための指標だと思うが、この教育を徹底してしまうと、スタッフにとってはいかに早くオーダーを取るかが至上命題になりかねず、お客さんの言葉を遮ったりすることもあるのでは?という疑問を抱いた。
そして、一度不快感を感じてしまった顧客は、多分二度と店には行かないだろう。

このOTタイムは、その後の「ENJOY!60秒キャペーン」に繋がっていると思う。これは60秒以内に商品が出てこなければクーポンがもらえるという施策だったが、スタッフが急ぐあまり雑に包装されたバーガーの写真がネット上に出回ることになった。これも顧客のためというよりは、商品提供時間を短くすることによって、1人でも多くさばこうとするマクドナルド側の都合で考えられた施策であろう。

これは2007年以降目立った施策をまとめた表であるが、上が「顧客へのサービス」に分類されるもの、下が「マクドナルド内部施策」となっている。

sisaku

しかし、中間の「???」については、一見顧客への施策に見えるが、実は自社の都合だ。悪名高くなってしまった「レジメニューの撤去」導入も、高価格帯の商品が売れなくなったタイミングと呼応する。高価格帯の商品を買って欲しいがために、手元のメニューを排除して店内のディスプレイでセットメニューを選ばせようとした施策なのだと思う。そしてもちろん、客が熟考する時間が減るためOTタイムも短縮できる(はずだった)。

こういったマクドナルド側の都合による施策が積み重なり、顧客がないがしろにされた結果、少しづつ店へ行く気がなくなっていった。雑に包装されたバーガーが出てきたら嫌だとか、メニューがないから頼みづらいとか、そもそも食べてみたいと思う商品がないという理由で。これが客離れを引き起こした構造的要因ではないだろうか。
原田氏もこの失敗に気づき、顧客はサプライズを求めていると先述のインタビューでも語っている。その反省から「QUARTER POUNDER JEWELRY」と題して1000円の高級バーガーを1日限定で販売するなど、初心に帰ろうとしていたように思われる。しかし、残念ながら時間切れとなりサラ・カサノバ氏にバトンを渡すこととなった。

さて、カサノバ氏はマクドナルドを再び成長軌道に乗せることが出来るのか。次回はマクドナルドの今後について考えていきたい。

マクドナルドはなぜ減収減益に転じた?【1】〜営業利益が4倍になるまで編〜

mcdonalds_logo

8年間の増収増益の後、2年連続の減収

マクドナルドがヤバいと言われ始めたのは2012年の後半だった。2004年に社長に就任した原田泳幸氏は、それから8年間もの間、増収増益を実現してきた。その間、売上高は3867億円から5350億円にまで成長し、その手腕は原田マジックと呼ばれ賞賛されたが2012年に初めて減収減益に転じる。翌2013年には60秒以内に商品が出てこなければクーポンがもらえる「enjoy60秒キャンペーン」でネット上で叩かれ、ことあるごとに施策が槍玉に上がるようになった。そして、2013年はさらに減収減益となり、営業利益は前年より5割も減少してしまう。原田泳幸社長は事実上解任され、サラ・カサノバ氏が就任した。

こうなった理由を分析している記事や社説が無数にあるが、それぞれ短いタームで見ているため、季節要因であったり、財務上の問題や細かいマーケティングの戦略ミスに要因を求めている物が多い。マクドナルドの歴史を今一度振り返っておくことにより、もっと構造的な問題が見えてくるように思い、3回に分けてその経緯をたどってみることにした。初回は、原田社長就任後、どのようにマクドナルドが成長軌道に乗ったのかを振り返る。

2年連続の赤字を救った救世主

uriagechushakutuki
マクドナルド決算短信より作成

まずは2001年から2013年までの売上げ高と営業利益をグラフにしてみた。1990年代、デフレ時代の勝ち組と呼ばれ拡大路線を続けてきたマクドナルドは2000年代に入り売上げが不調となる。2002年には営業利益ベースでは利益が出ているが最終的には赤字に転じ、翌2003年も赤字となった。

しかし、2004年に原田社長が就任すると売上げは急激に回復し、営業利益も年々増えている。2008年以降の売上げがガクンと減っているのは、マクドナルドが店舗のフランチャイズ化を押し進めたため、フランチャイズ化された店舗自体の売上げが含まれておらず、代わりにフランチャイズによる手数料が計上されているためである。実際全店舗の売上げ高を見ると年間5000億円を超えており、2010年には過去最高となる5400億円を突破。外食チェーンで5000億円の売上げを初めて突破するという快挙を成し遂げた。

uriagedaka
マクドナルドHPより引用

フランチャイズの促進は経営のスリム化が目的であったが、実際冒頭のグラフを見ると本業の儲けを示す営業利益は2011年まで増えている。原田社長就任時の2004年の営業利益は約72億4000万に対して2011年は281億8000万となっており、8年で利益を約4倍にも押し上げているのだ。

改めて見るとものすごい実績だが、それではこの8年間の間にどういう施策が取られたのだろうか。

最初にしたのは、ハンバーガーを美味しくすることだった

原田社長就任直前の状況を振り返ると、以下に集約されると思う。
  • 安売りが浸透しすぎて、低価格が当たり前となり、来店数が伸びなくなっていた
  • まずい
  • 不採算店が大量にあり、オペレーションがバラバラだった
低価格路線による失敗はよく語られているところで、平日半額キャンペーンを実施し、ハンバーガーが65円で売られていた。これが常態化すると65円という価格が普通になり、それを魅力に感じて店舗に行こうとする人が減ってしまう。

しかし、一番の問題はハンバーガーがまずいことだ。この「まずい」と「不採算店が大量にあり、オペレーションがバラバラ」という問題は表裏一体になっていた。当時、マクドナルドのハンバーガーは作り置きのものをレンジでチンして販売していた。出来立てを提供するという一連のオペレーションが確立されておらず、店舗によってバラバラだったのである。オペレーションがバラバラだけならまだしも、勝手にショートケーキやおにぎりを売っていた店舗も存在していたと後に原田氏は語っている。社長に就任した後、新製品を試食した時に次のように感じたそうだ。

「たとえば、私の入社前から開発していた新製品を食べてみたら、どんでもなくまずい。それは、トマトを挟んだバーガーで、電子レンジで温めるものでした。」
(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

まずは「ハンバーガーを美味しくする」ことが至上命題となる。今聞くとものすごく当たり前の話に聞こえるが、当時ものすごく頭の良い人たちが経営に参画していただろうに、その基本原理に立ち返る人は、原田社長が来るまで誰もいなかったのである。続いて原田社長はこう振り返っている。

「これ、自分の家で作るならおいしくできるよね?店でも同じようにおいしくするには、どうすればいいの?」と社員に聞いてみたんです。
その社員は「注文を受けてから作り始めるメイド・フォー・ユーというシステムがある。その仕組みで作れば、おいしくできるはず」と答えてきましたが、「ただし、世界中で全店導入したところはなく、米国でも少しずつやり始めている段階」とも言う。だったらやろうじゃないか、と。キッチンを全部入れ替えようと、私はすぐに指示しました。

(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

このメイド・フォー・ユーこそマクドナルドの増収増益を支えてきた根っこになる方針である。何を最初にただすべきか(まずいハンバーガーを美味しく)→何をすれば良いか(メイド・フォー・ユー導入)というシンプルな方程式の元、就任1年でほぼ全店でこの仕組みが実現したという。しかし、言うがやすしで、原田社長が方針を提示した後は社内の反発にあったという。

「ところが、トップマネジメントたちは皆反対。「あそこが問題です」「あれが課題です」と理由を並べてくる。どうすればその課題を乗り越えられるか、発想がまるで出てこなかったのです。(中略)
でも私は「世界でいちばん優秀なやとわれ社長」という自負を持っているから、反対する社員にも情熱を持ってやろうと訴えた。そうすればほとんどの人がついてきてくれるんです。課題を乗り越えることが仕事なんだから、と言い続けたら、後ろ向きの声はなくなってきました。」

(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

美味しくなった後に、低価格商品でお客を取り戻す

ハンバーガーが美味しくなった後、2005年に100円マックを投入する。「低価格路線で失敗したんじゃないの?」というツッコミが入りそう(実際、そのような質問を記者からされている)だが、これは一度離れてしまったお客さんにもう一度マクドナルドに来てもらうための施策だったという。つまり、【安かろう悪かろう】という印象がついてしまったマクドナルドを【安い割に美味しい】と感じてもらうための100円マックだったのだ。「価格を超えた満足感を提供する」ということは、常に原田社長が言っていることで2011年にカンブリア宮殿に出演した際も「やっていることは、Apple時代と変わらない。常に顧客の想像を超えていくこと」という発言をしている。

100円マックでお客を呼び戻した後、付加価値の高いメニューを投入することによって客単価を向上させている。そのきっかけとなった商品が2005年に発売されて大ヒットとなった「えびフィレオ」だ。(ちなみに「えびフィレオ」販売時も、メイド・フォー・ユー導入時と同様にリスクが高いという社内の大反対があった。)
こうして一気に増収増益の体制へと転じるのだが、この後の戦略も基本的にこれの反復になっている。

低価格商品(価格以上の魅力)投入で来店促進→高付加価値のメニューで単価向上

2008年にはプレミアムローストコーヒーが導入され、来店促進の大きな呼び水となる。一方の高付加価値のメニューもメガメニューの火付け役となった「メガマック」や2009年に日本発情率した「クォーターパウンダー」など、続々とヒット商品が続く。
きれいに弧を描くような美しい戦略だ。しかし、実はこれは計算し尽くされたわけではなく、偶然の産物だったという。

「今だから話せますが、100円マックを始めた頃は、そんなフェーズ1・2・3なんて戦略を詳細にはつくっていませんでした。客数は上がるが、絶対客単価が落ちるので、なんとか少しずつ収益を戻すということを段階的にせざるを得ないなと思ったぐらいです。具体的に何をいつ発売するかは決まっていなかったのです。戦略がないと言ったら、それこそ記者から叩かれますからね。」

原田泳幸の実践経営論「大きく、しぶとく、考え抜く。」より

ちなみに、えびフィレオを手がけたのも現CEOのカサノバ氏だそうで、これが偶然大ヒットしたため、高付加価値のメニューを連続して投入するという戦略が編み出されたのではないだろうか。
しかし、いずれにしろこの戦略の成功は「メイド・フォー・ユー」があることが前提であり、この仕組みが導入されていなければ「えびフィレオ」はヒットしていなかったかもしれない。就任直後に最も根幹となる方針を打ち出したからこその、偶然と言える。

ということで、2010年まではこの戦略の車輪が非常にスームズにまわり、増収増益を続けていた。そこから減収減益となった2013年までにいったい何が起こったのだろうか。次回はその点について振り返ってみたい