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もしも、女性向けファッション誌がなくなったら、失われること

ファッション誌の売上が、ものすごい勢いで急降下しています。

特に雑誌は店頭の売り上げが落ち込み、女性誌ファッション誌が前年比88.2%、ティーンズ誌が同92.3%だった。雑誌の休刊が相次ぎ、創刊91誌に対して休刊177誌になり、販売部数の減少が売り上げ減少に響いた。
出典:https://www.wwdjapan.com/business/2016/06/03/00020687.html

前年比の88%の売上レベルとなっており、毎年この比率を続けたら10年後にファッション誌が存在しているのかと思ってしまうほどです。しかし、ファッション誌(というかCancamなどに代表される赤文字系ファッション誌)がなくなってしまったら、失われてしまうことがあります。

1.ファッションのトレンド発信

シーズンごとのファッショントレンドは、主にテレビ等のマスメディアによって拡散されますが、情報の出所はだいたい雑誌です。シーズンごとに各ブランドが世界各地でパリコレなどのコレクションを披露し、そのトレンドに沿った大量の既製服が作られます。そのトレンドを「今シーズンのトレンドはコレ」といった形でファッション誌が特集し、テレビにも取り上げられるのです。ゆえに、ファッションのトレンドはブランドによって製品が作られ、ファッション誌によって啓蒙されるのです。

最近は、ファッションのベーシック化が進み、シーズンごとのトレンドの差異が少ないように思いますが、それでもファッション誌がなくなってしまったら、1次情報の発信元としてトレンドを啓蒙する存在がなくなってしまいます。
しかし、この点においてはWebのファッションメディアでも代替え可能かもしれません。

2.ファッション誌バズワードの発信

かなり前に赤文字系ファッション誌のWebに関わっていたことがあり、毎号の目次を凝視していたのですが、そのコピーライティングのセンスにはうなるものがあります。一番うなったのはクリスマスシーズンの号に掲載されていた「おねだリング」というワードです。彼氏や旦那に買ってもらいたい指輪のことです。ファッション誌は昔から、アイテムの使用用途に合わせたバズワードを作るのが上手です。ヘビロテ服(ヘービーローテーションする着回せる服)や、こやし靴(安めで使い勝手の良い靴)、最近ではおフェロ顔(チークなどを効果的に使ったフェロモンたっぷりの顔)などなど、トレンドを現すバズワードの発信元もファッション誌です。
エビちゃんが流行していたときは、エビちゃんOLというようなワードもありましたね。

ファッション誌がなくなったら、こういったバズワードはどのように生み出されるのでしょうか。今のところ、Webのファッションメディアは、ファッション誌のトレンドやバズワードを後追いで編集し直している部分が多いかと思います。今後ファッション誌出身の編集者がWebメディアへと移動し、Webメディアからこういったワードが発信されていく可能性はあります。(ただし、社会現象になるほどのワードになるためには、テレビの力が必要ですが。)

ひとつの仮説としては、今後はこういったワードがソーシャル上で強い力を持つ個人から発信される可能性があるのかなと思います。ファッション誌の専売特許といえばモデルやタレントのファッションスナップでしたが、いまやモデルやタレントたちは、インスタグラムで日常的に自身の写真を投稿しています。同様に、ソーシャル上で強い力を持つインフルエンサーによってバズワードが生み出され、それがテレビで拾われる形になるかもしれません。例えば最近「プロ彼女」というワードが流行しましたが、最初のこのワードを用いていたのはコラムニストの能町みね子さんでしたね。

3.赤文字系ファッション誌特有のストーリープレイ

「ストーリープレイ」というのは、私が今名付けたのですが、つまりは赤文字系雑誌にたいてい載っているこちらのページです。

赤文字系雑誌 「赤文字系ファッション誌」にたいてい載っているストーリープレイ。気になる先輩や後輩が出現し、最後には告白されるパターンが多い。

主人公が登場し、1週間のコーデを披露します。そして、その1週間には必ず彼氏や彼氏候補(だいたい職場の先輩か後輩)が登場するのです。
この「ストーリープレイ」が赤文字系ファッション誌を赤文字系たらしめているコンテンツです。このようにファッションに対して、異性の目線を取り入れますよと高らかに宣言しているのです。逆に青文字系ファッション誌は、自分のためのオシャレなので、この「ストーリープレイ」に相当するコンテンツを見たことがありません。少なくともこの20年近くは、ずっと赤文字系ファッション誌に掲載され続けているコンテンツなので、需要はあるのでしょう。

このコンテンツは、上記の2点に比べてWebメディアへの移行がおそらなくないので、もしもファッション誌がなくなってしまったら、このコンテンツもそのまま消滅してしまう可能性があります。

ということで、もしもファッション誌がなくなったら失われる3つのことについて考えてみました。いずれにせよ、紙媒体と比べてWeb媒体は細分化しやすいメディアであり、ひとつの大きなトレンドを提起するには不向きなので、トレンドの提案が今後どのようになっていくのかが気になるところです。

女性誌のウソばかりと、小悪魔agehaの誠実さ

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ウソはついてないけど、本当のことも言ってない

雑誌を立ち読みするのが好きなので、週に2回は本屋さんに行きます。そして、女性誌やら男性誌やら経済誌やらを節操なく上から下へと手にとってパラパラしてみるのですが、雑誌を見ていると、ウソとは言わないまでも本当のことではないことが結構載っています。

例えば、あるコーディネイトが載っていました。ベージュのタイトスカートに白いシャツ、白い靴下にベージュのラウンドトゥのパンプスを履いている写真です。そこに、ショッキングピンクのカーデを羽織って、ビビッドな指し色の着こなしみたいなことになってました。しかし、最近はもう暑いので、シャツを着ていたらカーディガンを着るのは無理だと思うのです。しかし、ピンクのカーデを抜いてしまうと、ベージュと白で構成されたぼんやりしたコーデだと思うんですよ。(これをまたペールトーンコーデとか言っちゃうわけですが、似合うのは細身のスタイルよい人限定だったり・・・)
ということは、ファッションのために我慢してカーディガンを着るか、肩に巻くかですが、ちょっと年齢層が高めの場合は肩巻きは危険かと思うのです。

ということで、ウソとは言わないけれど、それって実用なのかというのが結構あります。

雑誌の誠実が試されるヘアアレンジ特集

一番多いのがヘアアレンジ。何故かと言えば、紙面のスペースが限られているので、よく見ると行程を省略したなというのが割とたくさんあるんですね。例えば、前髪付近のサイドの髪を垂らした無造作なポニーテールヘアがあったのですが、前髪付近のサイドをあらかじめ選り分けておく行程が載っていません。ヘアアレンジに慣れた人なら完成図を見れば推測できますが、初心者は「なんでこの通りやったのに、こうならないんだろう」現象が起こります。

こういうのって、10人が同じ誌面を見ても9人はほとんど気づかないのです。ヘアアレンジも、実際にやってみようと思った人だけが気づいてしまう。でも、紙面を作ってる側は、確実に分かっててやってると思うんですよね。かくいう私も経験があります。バレンタイン特集と称して、ハート形のチョコレートケーキのレシピを載せました。しかし、実際やってみると、ハートの型から外すのが存外に難しい。そのへんに置いてあったヘラみたいな物を駆使して外したのですが、ヘラでこそげとる写真は、絵的に美しくない。だから、掲載用にスムーズにそのまま外れている写真を撮るわけです。

見ている人に対して丁寧に説明するのであれば、ここは外れやすいから注意!みたいな注意書きを加えて、実際にどう外せば良いかを注釈するべきなのです。
メディアを編集している人は「この説明を入れないと分かりにくいけど、まあいいや」となってしまった経験があるのではないでしょうか。

逆に、すごく手抜きをしていなくてスゴいなと思った雑誌がありました。廃刊してしまいましたが「小悪魔ageha」です。雑誌が雑誌だけに、ヘアアレンジなどはコテを駆使するすごく複雑なものなのですが、行程を省かずに丁寧に説明してあるなと思いました。全盛期には月間30万部を誇ったそうですが、名物編集長としてフィーチャーされていた中條さんのインタビューを見ても、ああ、本当に雑誌を作るのが好きなんだなぁと思いました。

「小悪魔ageha」が売れた時、その要因をマーケティング的に分析した記事をいくつか見た気がしますが、実際は「誠実にちゃんとやってるから」という、それに帰結する気がします。

この誠実な紙面作りが、見てくれてる読者との信頼関係を築くのです。成功しているメディアを語る時、ニッチなターゲットがいたとか、外部要因に論拠を求めがちなのですが、土台はこの誠実さにつきるのではないでしょうか。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀を」見てても思うのですが、プロとアマの境界線って、パッと見分からないその1%に気持ちを入れられるかということだと思います。自戒も込めてですが。