タグ別アーカイブ: ファストファッション

H&Mの売上が500億円規模に。ファストファッションが奪った市場とは?

上陸から7年で売上が500億円規模になったH&M

国内の主立ったアパレルブランドや小売りチェーンにおける、この5年間の売上を比較して、アパレルブランドの動向がどのように変化しているかを調べてみました。

ブランドはオシャレな人が好きなブランド代表のユナイテッドアローズと、同じくオシャレな人に支持されつつも価格帯はアローズよりも安めのナノユニバース、OLさんに愛用されているナチュラルビューティー、そしてラグジュアリーブランドのポールスミス、最後に忘れてはいけないファストファッション代表のH&Mで比較してみました。

ということで、その比較の結果がこちらです。
sales01 H&M(グラフの赤い線)の伸び率がすごいの一言に尽きるのですが、2008年の上陸以降、2015年にはH&Mの年間売上は525億円に登っています。もうすぐユナイテッドアローズを抜いてしまう勢いです。H&Mは2015年末時点で57店舗ですが、ZARAは100店舗前後日本に出店しているようなので、ZARAの売上は1,000億円を超えていても不思議ではありません。ということは、ファストファッション全体でいえば、すでに1,500億円〜2,000億円程度の市場規模があると見て良いのではないでしょうか。

次に注目したいのが、ユナイテッドアローズ(オレンジ)とナノユニバース(黒)の売上が前年比増で推移していることです。この2ブランドに関しては、ある程度ファッションに趣向がある消費者が対象であるため、すぐにファストファッションにシェアを持ってかれるという影響を受けにくいのかもしれません。

次にナチュラルビューティー(灰色)とポールスミス(紫)は、この3年間は横ばいからの微減になっていますから、ブランドのファンが一定量はいてついてきているものと思われます。

ユニクロの直営店売上は、年間7千億円を超える

このあたりはファッションに感度の高いブランドの比較ですが、ここにユニクロ(国内直営店)としまむらの売上を重ねてみるとこんな形になります。
sales02
ユニクロ(国内直営店)の売上は年間7千億、しまむらは年間5千億円を超えているため、もはやファッションというよりは生活必需品の域に達しています。例えるならユニクロやしまむらはお米で、前述したブランドはデリという感じでしょうか。
ユニクロは2016年前後は暖冬や価格引上げの影響で前年比割れする月が続いたようですが、最近では価格の調整を行い売上が回復していきているようです。そして、2015年に至るまで前年比増で売上が推移しています。

と、ここで見て来たアパレルブランドや小売りは皆、前年比増か横ばいで推移しています。H&MやZARAといったファストファッションの市場規模拡大に伴い、シェアを奪われているブランドはどこにあるのでしょうか。
それはここに列挙したブランド以外の、ブランドのファン層が薄いアパレルたちのようです。2015年以降、各アパレルメーカーが相次いでブランドの閉鎖を発表しています。

ファッション関連の大手企業でブランド・事業の見直しが相次いでいる。今月15日にはTSIホールディングスが子会社2社を含めた11ブランド、18日にはワールドが過去最大規模となる不採算10〜15ブランドの廃止を発表。
http://www.fashionsnap.com/news/2015-05-19/brand-apparel-fashion/

ブランドのアイテムを指名買いするような固定ファンがいない場合は、ファストファッションの競合になることになり、価格の面で不利になる可能性が高いのです。
まとめると現在の消費者動向はこのようになっているのではないでしょうか。

▼顧客全体
・ユニクロやしまむらなどで、ベーシックな衣料品を購入。
・ファッション感度が低い顧客の場合は、ここで全て済ませることも。

▼ファッション感度が高い顧客
・お気に入りのブランドで、好みのアイテムがあるかチェックする
・併用して、ファストファッションにてシーズンごとのトレンドのアイテムを取り入れる

現在も夏のセール中のようですが、セールに出掛けた知人に「戦利品は獲得出来たのか?」と尋ねてみるとこのような返答がきました。

「いやまったく。
なんていうかドキドキする服は伊勢丹で一着みただけだったなー。
なので、口紅を買う事にしました。
あとはZARAでいいやとおもって。」

このコメントが現在の状況を現していると思うのですが、ファッション感度が高い顧客は一応お気に入りのブランドを眺めた上で、気に入るアイテムがなければ「ZARAでいいや」「H&Mでいいや」とファストファッションで保険をかけているのです。つまり、お気に入りのブランドに食い込むことが出来れば、流しそうめんの上流に位置する事になりますが、魅力的な商品を提案できなければ、ファストファッションへ流れてしまうのです。
そして、以前は「○○でいいや」の受け口となっていた価格設定が安めの中小のブランドは、全てファストファッションに代替えされつつあるのです。

EC転化率が進みつつも、ラグジュアリーブランドは横ばい

最後に、ユナイテッドアローズグループと前述のナノユニバースなどを有するTSIグループ、そしてラグジュアリーブランドを抱える三陽商会におけるECの売上の推移をグラフにしてみました。
sales03 やはりECの伸びが著しいことが分かりますが、注目なのは三陽商会のEC売上は微増となっており、ラグジュアリーブランドはEC化が進んでいないことが分かります。

ちなみにユナイテッドアローズグループの全体売上高とEC売上を比較してみましたが、全体の13%がECよりの売上となっており、ECへの転化はまだまだ進むものと思われます。
(ユナイテッドアローズグループにおけるEC売上はZOZOTOWNと自社サイトが大きく占めるようです。)
sales04ユナイテッドアローズグループ全体におけるECの比率

※売上等の数値資料はIR資料より抜粋していますが、決算期が会社によって異なるため、取得期間に数ヶ月の誤差があります。
※H&Mの2011年〜2013年の売上はスウェーデンの通過クローナを現時点でのレートで日本円に換算しているため、当時の計算とは異なります。

出典:
UA http://www.united-arrows.co.jp/ir/lib/data/slide_data.html
TSI http://www.tsi-holdings.com/financial.html
三陽商会 http://www.sanyo-shokai.co.jp/company/ir/statement.html
H&M https://www.wwdjapan.com/business/2015/01/28/00015198.html https://www.wwdjapan.com/business/2016/01/28/00019455.html http://about.hm.com/ja/About/Investor-Relations/Financial-Reports/Annual-Reports.html
しまむら http://www.shimamura.gr.jp/finance/results/
ユニクロ http://www.fastretailing.com/jp/ir/library/factbook.html

データドリブンで、大衆化していくファストファッション

ランキングやデータドリブンは、コンテンツを均一に収れんする

ランキングは、コンテンツの種類と質を均一に収斂する性質を持っています。例えば、ニコニコ動画には動画ランキング機能がありますが、少し前までゲーム実況の上位を「スーパーマリオメーカー」が占めていました。ランキングが可視化されていると、人気のコンテンツが何か分かるので、ランキングを見た人が「自分もマリオメーカーの実況を上げてみよう」とお手本にしようとします。そうやって、ランキング上位のものを皆が真似るようになり、プラットフォーム全体のコンテンツが似たり寄ったりに収れんされていくのです。

ランキングが存在すると、そこの土壌に異端な物は生まれにくくなります。だいたいみんな80点くらいのクオリティとなり、逆に20点や100点のものが生まれづらくなるのです。

データドリブンでマーケティングしても、同じごとが起こります。Webのメディアなどは、数値データが容易に取れるため、人気のあるコンテンツに寄せようとすると、だいたいのコンテンツが犬か猫になったりするわけです。

さて、前回のブログは、ファッションはコンサバ(赤文字)とアバンギャルド(青文字)の垣根がなくなり、ベーシックの時代になったという話題だったのですが、これもファストファッションによるデータドリブンの影響が強く出ているのかもしれません。

ファストファッションの大手ブランドは、SPAといって製造から流通、小売りを一気通貫で手掛けています。その中でも業界最大手の売上げを誇るZARAは、普通のアパレル・メーカーがシーズン中は既存在庫の売切りに注力しているのに対して、シーズン突入後に売れ行きを見ながら数週間単位で商品を作り足していると言います。

ユニクロを含め、通常のアパレル・メーカーは新シーズンに向けて1年前から準備を進め、半年前に意思決定を下し、シーズン突入後は作った商品を売り切ることだけに力を注ぎます。ところが、ZARAの場合は、シーズン突入後が勝負。生産量を必要最低限に抑え、デザイナーの想定を店舗で検証しながら、デマンド・チェーンを3週間単位で回していき、商品を作り足していくのです。

http://news.mynavi.jp/articles/2015/02/25/uniqlo_zara/

「プラダを来た悪魔」で鬼編集長が指摘したトレンドと資本主義

アン・ハサウェイ主演の「プラダを着た悪魔」といえば、老舗ファッション誌の鬼編集長の元で働く事になった若い女性を描いた映画で、働く女子のバイブル的存在になっています。ファッション誌で働くようになってもファッションに興味を持てない主人公が、撮影するドレスに合わせるベルトの色がどれも同じに見えて、笑ってしまうシーンがあります。そこで、編集長(ヴォーグ編集長 アナ・ウィンターがモデルと言われる)は、主人公の着ているセーターについて、こう言うのです。

「緑とも青ともちがうターコイズブルーのこの色は、ファッション業界を席巻した。流行は資本主義市場に波及し、マーケットの服飾売り場で売られるような安いセータにも及んだ。あなたが着ているそのセータにも。ファッションに興味がないとあなたは思っているでしょうが、あなたは安い服売り場でその色のセーターを手に取り、着ている。そして、その色は私たちが「こんなこと」をしてつくった色なのよ」

http://sho-kao.jugem.jp/?eid=32

ZARAを始めとするH&Mなどのファストファッションがお手本にするのは、もちろんパリコレなどの海外のコレクションです。そこで発信されたトレンドを「コピー」して大量のデザイナーが製品を手掛けます。

そのため、ZARAでは約350名(北半球250人+南半球100人)ものデザイナーを擁し、かつ、「顧客の声を聞き、顧客の欲しいものを作り、配送し、売る」というデマンド・チェーンを短いサイクルで回している。
http://news.mynavi.jp/articles/2015/02/25/uniqlo_zara/

そして、売り場に並んだ後は売れ行きや顧客の声をフィードバックしながら、デザイナーが改良版を作って3週間のうちに売り場に並ぶというサイクルを繰り返すのです。
ファッションブランドのコレクションを「コピー」して作られた洋服は、売れ行きと顧客の反応というデータドリヴンによって、大衆向けに収れんされていくのです。その目的は、最も多くの人に受け入れられる最大公約数のアイテムを作成することです。最後に、ファッションジャーナリストの方のコメントを見ると、ファストファッションブランドンの目指したマーケティングがかいま見られる気がします。

ZARAやH&Mは、そのターゲットを、トレンドをおいかけるアーリー・アダプターではなく、それにあこがれるアーリー・マジョリティを中心に、レイト・マジョリティのごく一部をカバーするマジョリティでもクリエイティブよりに設定しました

http://toyokeizai.net/articles/-/34844?page=2

 

▼Twitterよかったらフォローしてください
https://twitter.com/toriaezutorisan