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「孤独のグルメ」や散歩番組のヒットの背景ある、みんな疲れてる現象

2000年代に入ってから人気となった「孤独のグルメ」。好調な散歩番組。

ドラマのシーズン5が放送され、視聴率が1%代から2%代になったという「孤独のグルメ」ですが、90年代に連載をしていた時は3刷で絶版になるなど、まったくだったようです。2000年代に入り、文庫版が発売されてからは増刷が年に2回づつかかるようになり、2015年に第2巻が発売(なんと1巻から18年ぶり)されました。
また、「孤独のグルメ」の原作者、久住さんが手がけるグルメ漫画「花のズボラ飯」も好調で、累計発行部数は60万部に達しています。
さらには「おとりよせ王子 飯田好実」なんていう、26歳の青年エンジニアがお取り寄せグルメを楽しむという漫画もあり、こちらもドラマ化されています。
これらの漫画に共通するのが「ただひたすら、主人公が素朴なグルメを食す」ことにスポットを当てているという点です。ひたすら主人公が目の前のグルメ(高級ではない)を食べるシーンを綴っているのです。「食べること」ことに焦点をあてた、非常にプリミティブな構成となっています。
“ただ○○しているところを写し続ける”という意味でいうと、散歩番組も好調です。出演者たちが散歩している様を放送する番組が多くなっています。「正直さんぽ」や「モヤモヤさまぁ~ず2」に加え、加山雄三の「ゆうゆう散歩」の後継番組「じゅん散歩」も始まりました。
これらの番組に共通しているのは、視聴者が何も考えずに、番組に登場する人たちの追体験をするような構成になっているということです。

スマートホンによって、集中力が細切れに分散

90年代あたりのテレビ番組を振り返ると、過剰な番組が多かったように思います。熱湯芸人が悲惨な目に合うお笑いや、強気なおばさんタレントがホストをつるし上げたりと、えげつない演出も多数ありました。
しかし、現在ヒットしている番組を見ると「ただ○○しているところを単調に放送する」という素朴な構成がウケているのです。
背景のひとつとして、みんな疲れているのではないかなと思います。2010年以降はスマートフォン時代になり、色々なものが細分化されました。情報もTwitterでつぶやけるコンテンツに細切れにされ、スマホをいじる時間も数分単位と細かく区切りられ、ソーシャルゲームは1駅間に1ターンが終わるように設計されています。
先日深夜0時の駅のホームで回りを見渡してみたのですが、7割の人がスマートフォンを触ってうつむいた状態でした。しかも、LINEを立ち上げてメッセージを返したり、Twitterでメンションを確認したり、Facebookで友達の投稿をみたりと、1つの作業を数分、いや数秒単位で行っています。
ひたすらスマートフォンに来る通知を気にして、私たちの集中力は細切れにされて、慢性的に神経過敏状態にあるのではないかという気すらします。
一方、テレビはスマホに比べたら受動的に長尺のコンテンツを楽しむメディアです。そこの人気コンテンツとして、プリミティブで淡々としたものがウケているというのは、人々の神経が疲れている反動のような気がしてしまうのです。
出典
http://www.jprime.jp/tv_net/tv/19641
 

無理ゲーを勝ち抜いて、売上を1.5倍にした富士フィルム

富士フィルム3

10年間で10分の1に縮小したフィルム市場

昨日、市場を根こそぎ持っていく競合は、想定しないところか急に現れるので、防ぎようがないという話をしました。そんな中でデジタル化によって既存のメイン事業が縮小したのに、売上自体を10年で倍にした企業があります。富士フィルムです。

富士フィルムといえば、映ルンですのCMが印象深いですが、化粧品「アスタリフト」のCMを見た時は「なぜ写真の会社が化粧品を!?」と思いました。でも歴史を紐解くと、化粧品等の事業に進出せざる追えなかったというのが正しいようです。フィルム事業は2000年をピークに、その後10年で10分の1にまで縮小しており、競合であったコダックは2012年に経営破たんをしています。しかし、富士フィルムは1兆4403億円であった売上高を2012年度は2兆2147億円と1.5倍にしているのです。

コダックとの売上高の比較のグラフを見ると象徴的です。いったいこの2社の運命を分けたのはなんだったのでしょうか。
富士フィルム

フィルム事業がピークであった2000年当時は、フィルム部門の担当役員が会社を支配していたと言います。この体制に疑問を持っていた古森重隆氏が2000年に社長兼CEOに就任すると、90億ドルをかけて40社を買収した上、1年半の間に2500億円をかけてリストラを含む社内改革を行ったといいます。

古森社長いわく、「自動車が売れなくなったトヨタ、鉄が売れなくなった鉄鋼会社をイメージし欲しい」、「我々が直面した危機はそのくらい恐ろしいインパクトがあった」、「辛い経験だった」、「状況をありのままに見れば生き残れる状態ではなかった」、「だから我々はビジネスモデルを再構築しなければならなかった」Electronic Journal 2012年6月号より

10年間に2回も市場が大きく縮小するという無理ゲー

そして、現在の富士フィルム―、2012年度の売上と営業利益の内訳(グラフ右)を見ると、このようになっています。
富士フィルム2

富士フィルムが2000年時に主力としてきた写真のフィルム現像等のイメージングソリューションは、なんと22億円の赤字。営業利益を支えているのは、2000年以降に始まった医療用フィルムや内視鏡等を販売するインフォメーションソリューション(アスタリフトの売上もココに含まれます)と、富士ゼロックスによるプリンター販売や保守等をするドキュメントソリューションです。
特に、医療関係の製品と化粧品「アスタリフト」の売上が好調で、増収増益となっています。
もし2000年当時に大改革に踏み切っていなかったと思うと・・・完全にやばかったのですね。

細かく決算資料を見ていて気付いたのが、赤字であるイメージングソリューションの中でもフォトブックを展開して単価をあげようとしていたり、デジタルカメラの販売なども注力してきたということです。フィルム業界は、市場そのものが揺らいでしまう大波を今までに2回もかぶっています。2000年頃にデジタル化の波が訪れフィルム事業がどんどん縮小されていった時と、2008年以降にスマートフォンの登場によってデジタルカメラの市場自体が縮小したことです。この10年間に、2回も市場そのものを揺るがす変化が起こったなんて、「どんな無理ゲーだよ」という感じですよね。

もしも富士フィルムの改革が、「フォトブックに対応して単価をあげる」「デジタル化に対応するためにデジタルカメラ販売」等の写真市場のみに絞られていたとしたら、やはり大変なことになっていたしょう。医療用フィルムや医療器具、まさかの化粧品販売という会社の構造そのものを変える事業拡大を行ったからこそ、スマートフォンの影響を受けても、屋台骨が揺るがない企業になったのです。

改革を断行した古森社長には、おそらく激しい逆風が吹いたのだろうと思いますが、危機感を持った人間がトップになり改革を行うということが、いかに重要か思い知らされますね。

参考文献:Electronic Journal 2012年6月号

「気をつけろ、上から来るぞ!」的なマーケティングの世界

上から来るぞ

スマートフォンに市場を食われたハードウェアたち

よくニコニコ動画のゲーム実況とかを見ていると「気をつけろ、上から来るぞ!」というコメントが見られます。これは、ゲームに登場するキャラクターの視界外から敵が降ってきたりすることに対しての揶揄です。

で、2000年代以降のマーケィングの世界もこれと同じことが起こっているかなぁと思っています。

・デジタルカメラ
・ノートブック
・音楽再生プレイヤー
・コンソールゲーム機
・カーナビゲーション

これらは、スマートフォンの普及に伴って市場を食われたと言われる業種です。これらの企業が提供してきた機能は、スマートフォンというたった1台のデジタル端末に全て集約されてしまいました。おそらくiPhoneが普及しだした2008年においても、それから数年でここまで市場が食われてしまうとは思わなかったでしょう。
スマフォに市場食われた
米国の名だたるマーケターや識者もそう言っていましたし、日本においてはガラケー文化が強すぎて絶対流行らない、と言われてました。

日本の通信キャリアもプラットフォームを持っていかれる

気づいたら、先述のハードウェア市場は次々とスマフォに市場を食われてしまい、デジタルカメラに関してはコダックが破たんしており、コンソールゲーム機においても任天堂の業績が不調だったりと、目に見える形で次々影響が出ています。しかもハードウェアの分野のみならず、ガラケー時代は通信キャリアが担っていたソフトウェアのプラットフォーマーとしての立ち位置も、根こそぎ持っていかれようとしています。スマフォを入手した人たちは、GoogleplayかAppstoreをメインで使うからです。

と、いうことで、iPhoneからはじまったスマートフォンの爆発的普及は誰にも予測できなかったし、いくらマーケティングしてもスマートフォンを「競合」として位置付けるのは難しかったでしょう。目に見えない競合が気づいたら目の前に現れるという、「気をつけろ!上から来るぞ!」の時代に入っているわけです。