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百貨店の不調とショッピングモールの好調を、mixiとFacebookの違いで説明する

3兆円以上売上を減らした百貨店。一方ショッピングモールは好調。

三越伊勢丹ホールディングスの社長さんのインタビューが掲載されていたのですが、百貨店市場はこの25年間で3兆円以上売上を減らしており、衰退の路線をたどっているようです。

日本の小売業全体では約140兆円の売上規模がある。うち百貨店の売上高は約6.2兆円で、全体の4.4%にすぎない。バブル経済が崩壊する前の1990年頃は、10兆円近くの売上高と6%のシェアがあった。まさに「衰退の四半世紀」であったのだ。

一方、ららぽーとなどの複合型ショッピングモールや、六本木ヒルズ、渋谷ヒカリエなど巨大な駅ビル施設が、この四半世紀の間に続々とオープンしました。
ららぽーとや川崎ラゾーナを展開する三井不動産の「賃貸事業収益内訳、商業施設」の部を見ると、2015年3月期の第2四半期823億円に対して2016年3月期の第2四半期は937億円となっており、1年で114億円も伸びています。

さらに、ファッションビルであるルミネの業績を見ても、2014年3月時の営業収益653億円に対して2015年3月時には677億と103.2%も伸長しており、ショッピングモールやファッションビルが売上を伸ばしている一方で、百貨店はシュリンクしている模様が伺えます。

百貨店とショッピングモールの違いを、3つのレイヤーに分けて考える

この百貨店不振については、冒頭のインタビューの中でも語られていますが、施設の定義、ハード(建物、箱)、ソフト(商品)に分けて考えると分かりやすいのではないかと思います。

まず、百貨店についてこの3つの定義を考えるとこのようになります。

ソフト(商品・サービス)→比較的単価が高めのアパレル。最上階には飲食店。地下には食品街。
ハード(建物、箱)→立方体のビル。エスカレーターで位置を確認して、目的の階へと向かう
定義→休日に家族が出掛けて楽しめるアミューズメントスポット(→から、可処分所得が高い層のショッピングスポットへ)


次に、ららぽーとやラゾーナなどのショッピングモールについてこの3つの定義を考えると次のようになります。

ソフト(商品・サービス)→単価の高いアパレルからユニクロまで。飲食店の他、フードコートを完備。映画館やゲームセンターも。
ハード(建物、箱)→フロアの概念に縛られない回遊性を意識した円状の構造物
定義→休日に家族や恋人、友達と出掛けて楽しめるアミューズメントスポット


shopping
まず、定義を比較するとショッピングモールは家族や恋人、友達をターゲットにしたアミューズメントスポットであり、百貨店の家族向けスポット(からの可処分所得が高い層へのショッピングスポット)という定義を包括しています。

この定義の差別要因となるのがソフト(商品・サービス)です。百貨店は比較的単価が高めのアパレルが入っていますが、ショッピングモールはユニクロ等の安めの衣料品から割合高いアパレルブランドまでラインナップが幅広く取り揃えられています。そして、飲食店街の他にフードコードを設置することによって、子供が騒ぎがちで周囲の目が気になるファミリーや、食事にお金をかけたくない学生、若いカップルなどをカバーしています。さらに映画館やゲームセンターなどのアミューズメント施設を入れることによって、モール内での滞在時間を伸ばし、来場のきっかけを生んでいます。つまり、ショッピングモールはターゲットが幅広いため、全方位にウケる商品とサービスをソフトとして兼ね備えているのです。

最大の違いはハード(建物、箱)の作り。mixi型の百貨店とFacebook型のショッピングモール

そして、最大の違いがこのソフト(商品・サービス)を提供するためのハード(建物、箱)の作りの違いです。Webサービスで言えば、ここがUIにあたるのですが、百貨店は立方体のビルにエレベーターやエスカレーターが設置されており、婦人服売り場や飲食店など、目的のフロアとショップのある位置を選んで、目指す階数に移動するインターフェースです。つまり、何か目的が終わり次第、建物の外に出るという導線になります。

一方、ショッピングモールは、吹き抜けで上下の階が見渡せるようになっており、そこをエスカレーターで移動する流れです。ビルの階数を意識させない平面的な設計が多く、建物の入り口が不明瞭で、一度モールの中に入るとグルグルと回遊するような作りとなっています。つまり、目の前に現れる景色を眺めながら進む設計になっており、なかなか終わりが区切りにくいインターフェースなのです。

ショッピングモールについての対談集「ショッピングモールから考える: ユートピア・バックヤード・未来都市 (ゲンロン叢書)」という本ではこのように語られいます。

「ショッピングモールはエスカレーターだらけですよね。ショッピングモールはエスカレーターによって「フロア」の概念を無効化している。なかを歩いていても、そこが何階かを気にする事はあまりない。これが百貨店だと「○階は書籍売り場」、「△階は紳士服」とフロアごとの区切りがきわめて明確です。モールが平面的に展開するのに対して、百貨店は垂直に積み重なっている。」

さらに、同著ではこうも語られています。

「さて、ぼくが前回お話したなかで一番面白かったのは「モールは内装でできている」ということです。(中略)たとえばラゾーナ川崎では、川崎駅の改札口を出て渡り廊下を越えると、いつの間にかモールのなかにいる。外を見る機会がないんです。そのあとなかをぐるぐると見て、用が住んだら同じ渡り廊下を通って帰る。すると、まったく外観を見るタイミングがない。」

つまり、ショッピングモールは外観や全体間を把握させない作りになっているため、来場者は全体間を把握することなく建物内を周回するイメージになります。このスキームであれば、モールへの滞在時間が伸びる他、来場者が本来目的外だったショップに目を留めさせることが出来る可能性があります。
そして、目の前に現れるショップを回遊しながら閲覧するというこのスキームは、Facebookのタイムラインに類似しています。逆に、全体間が把握できており、目的のショップで用を済ませたら建物外に出る設計の百貨店は、かつてのmixiのようです。mixiはトップページにコンテンツのリンクが並んでおり、目的のリンクをクリックして閲覧したら、トップページに戻るかそのまま離脱する仕組みでした。
一方、Facebookは、ご存知のようにタイムラインを延々と眺める作りになっています。どちらの可処分時間が長いかは、肌間で分かってもらえるのではないでしょうか。

ということで、ショッピングモールは百貨店のターゲットを全て包括しており、全てのターゲットに向けたソフト(商品・サービス)を提供している上に、回遊性を意識したハード(建物、箱)によって滞在時間を伸ばす設計になっているのです。こういった仕組みによってショッピングモールがアミューズメントパークとしての側面を備えている以上、来場者が百貨店ではなくモールを選択するのは自然な流れと言えるのではないでしょうか。次回は、好調なファッション駅近ビル、ルミネについて解説してみたいと思います。

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出典参考
http://diamond.jp/articles/-/83913
http://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/201503guide1.pdf
http://mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/finance/segment/lease/index.html