マーケティングは、誰かのビオトープをぶっ壊すかもしれない件

美味しいビールと適当なドイツ料理を出していたビール工場のレストランは今…

横浜にキリンビール工場がありまして、その入り口付近に「スプリングバレー」というレストランがあります。工場の作り立てのビールが飲めて、さらにオリジナルの地ビールも飲めるということで夏場はけっこう混んでたのですが、冬に行くとガラガラだったりしていました。

前からこのレストランがけっこう好きで、たまに行ってはビールを飲みながらチーズフォンデュをつついたり、酸っぱいキャベツ(ザワークラウト)をつまんで、オリジナルビールを楽しんでいました。ビールの種類もそんなに多くなかったのですが、一度にたくさん飲めるわけじゃないですし、その「美味しいビールと適当にドイツっぽい料理出してますよ」感が好きだったのです。

そして先日、かなり久しぶりにこのレストランを訪問して驚愕しました。
「なんじゃこりゃ」って、のどまで出かかりました(というか出ました。)適当な感じで美味しいビールを提供していたレストランが、マーケティングのマーケティングによるマーケティングのためのマーケティングが施されていたのです!

数種類しかなかったビールも6種類のテイストビールとフードのペアリングとかいう、オシャレくさいラインナップになっており(ペアリングってなんだ)それぞれのビールの解説カードもついてきます。(6つのうち、だいたい2つはまずい。ゆずビールとは何なのか)
2015062500046_2 出典:http://dot.asahi.com/aera/2015062500046.html

料理も適当な感じで出してたチーズフォンデュが消えて、オシャレなカリカリチーズの何かみたいなのがメニューリストを占拠しており、左を見ても右を見てもあのザ・テキトーなドイツ料理は消え失せていたのです。
お店のWebサイトも、以前は工場の公式サイトの一部に控えめに「さりげなくやってますよ」的な立ち位置で掲載されていたのに、オシャレによるオシャレのためのオシャレなウェブサイトになってしまいました。

▼ザ・オシャレサイト
http://www.springvalleybrewery.jp/yokohama/

「しまいました。」って、しまいましたと思っているのは私だけなのですが、きっとこのマーケティングによるマーケティングの…(以下略)には、巨額の投資がなされプロのマーケターたちがコンセプト立案からフードやビールのメニューから店内の云々に至るまでをプランニングし、美味しいビールを出す適当レストランは、マーケティングによるビールを中心としたアミューズメントスポット的なレストランに生まれ変わってしまったのです。
しかもけっこう混んでるので、売上もついてきているのでしょう。(食べログも3.5だってさ。)

ということで、個人的なビオトープだった場所とかモノとかコトが、マーケィングによる…によってぶっ壊される自体というのは往々にしてよくあります。直近の例でいうと「ku:nel(クウネル)」のリニューアルなんかそうでしょう。

このAmazonレビューなんて、まさに「ku:nel(クウネル)」をお気に入りのレストランのメタファーとして描いています。

お気に入りの小さなビストロが、改装のためしばらく休んでいた。
新装開店で行ってみたら、店名が同じだけの別の店になっていて。
素材にこだわって丁寧につくられていたメニューは一新されて、
よその店でも食べられるような個性のない料理が並んでいる。
客層もがらっと変わってしまって、目をキラキラさせた韓流おばさんばかり。
バブルの頃に一世を風靡したシェフを呼んできたらしいから、
その頃のファンが集まるような店にしたのかも。
そういえば店内も、ひと昔かふた昔前のオシャレを演出してる感じ。
なんとなく安っぽく感じるのは気のせいかな。
壁にはシェフの知り合いらしい有名人のサインがベタベタ貼ってある。
「みっともない」思わずつぶやきとため息が漏れた。
前は落ち着いてじっくり考えごとができる、素敵なお店だったのに。
私が大好きだったあの小さなビストロは、もうどこにもないんだな。
お気に召さないお客様はけっこうです、とシェフが言っているみたい。
そんなこと言われなくても、もう二度と来ませんから。
でもね。
最後にせめて、かわいいマスコットくんに「さよなら」が言いたかったよ。
http://www.amazon.co.jp/nel-%E3%82%AF%E3%82%A6%E3%83%8D%E3%83%AB-2016%E5%B9%B4-03-%E6%9C%88%E5%8F%B7/product-reviews/B019P1VY1S

しかしポイントは、リニューアルした「ku:nel(クウネル)」がけっこう売れているという情報もあり、マーケティング…によって常連さんたちが置き去りにされたとしても、確実に新たな客層をつかんでいるんですね。
「スプリングバレー」も「ビール好きが落ち着いてビールを飲みにいくところ」ではなく「平日や週末に友達や恋人と行きたいアクティビティスポット」みたいに顧客の定義を切り直した結果、顧客の母数が広がったわけです。

それはそれで営利企業として正しい行為だし、売上があがったならば万々歳だと思うのですが、置いてけぼりにされてしまった方は「あなたは、もうそこにはいないのね…」と一抹の寂しさを感じてしまうのでした。

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