80万部が11万部になった「cancam」。売れない雑誌の共通点とは?

とりわけ売れない雑誌が持つ、3つの特徴

出版不況の中でも特に雑誌は落ち込みが激しいと聞きますが、2008年以降からの雑誌の発行部数を調べると、全体としてシュリンクしているのはもちろんのこと、とりわけ落ち込みが激しいジャンルがありました。以下のような特徴を持った雑誌です。

・インフルエンサー(モデルや読モ)が主体になっているギャル誌
・情報単位で流通できる内容となっている情報誌
・20代前半〜後半向けのファッション誌

この3つの共通点をもった雑誌について、フカボリしてみました。各カテゴリに属する雑誌の発行部数をグラフで見ると、このようにいずれも部数を大きく減らしていることが分かります。

グラフキャプチャ

インフルエンサーが自ら発信するようになってしまったギャル誌

インフルエンサー(モデルや読モ)が主体となっている雑誌といえば、ギャル誌が筆頭です。益若つばさなど、専属モデルたちのライフスタイルを掲載することによって支持を得てきました。読者と同世代のインフルエンサーの影響を最も受けやすいのは、10代後半の若い層なのです。しかし、雑誌不況によって一番影響を受けたのが、このギャル誌です。
先ほどの益若つばさが専属モデルであった「ポップティーン」は、彼女が結婚、引退を発表した2008年2月号で41万部の売上を記録しているものの、2014年4月では11万3千部と最高時の4分の1となっています。他紙では廃刊も相次いでおり、ギャル誌の草分け的存在の「エッグ」や「BLENDA」、「EDGE STYLE」などが廃刊になっています。
このギャル誌の不況のもとは、インフルエンサー(モデルや読モ)が、インターネットを使って自分で発信しはじめ、同年代の読者がそちらをフォローし始めるようになったためだと思います。10代後半の若年層を中心に人気のブログサービス「デコログ」や「クルーズブログ」が台頭し、インフルエンサーたちは自分のライフスタイルをそちらで発信するようになります。さらに、若い女性を中心に人気のインスタグラムも2015年時点で利用者が810万人に達しており、Twitterを使ってリアルタイム動画を配信できるツイキャスも登録者が2015年時点で1000万人を突破したといいます。
以前は雑誌がカリスマとなる読者モデルを発掘して、紙面上でそのライフスタイルを発表していたのに、インフルエンサー足りうる人たちが雑誌というメディアを介さないで直に情報を発信するようになったのです。

食べログやキュレーションサイトに代替えされた情報誌。愛や恋を語らなくなった「anan」

また、ギャル雑誌に次いで落ち込んでいるのが、情報単位で流通できる内容をサマリーにした雑誌です。映画館情報など、地域情報誌の草分け的存在であった「ぴあ」は2011年に廃刊していますし、「東京ウォーカー」は2008年時点では10万部程度の部数がありましたが、2015年には3万3千部と3分の1以下になっています。
情報誌は、映画、飲食店などの定量的な情報をサマリーにして掲載してたため、映画の上映情報はウェブの映画サイトに代替えされ、飲食店の情報は「食べログ」などの膨大なデータベースに代替えされてしまうのです。
さらに、恋だの愛だのという「情報」を提供してきたマガジンハウスの「anan」も例外ではなく、2008年時点では27万7千部あった部数は、2015年時点に19万6千部と10万部以上も部数を落としています。「anan」が得意としていた恋愛や結婚といった情報コンテンツは、ウェブの「男子が気になる女の子のしぐさ5選」みたいなネットニュースやキュレーションメディアの記事に代替えされてしまったのです。
最近では方向転換を図っているらしく、最新号が「幸せを呼ぶ「笑い」のレッスン。」、その前は「観るといい映画。」、「秋の週末京都」、「食べても食べても太らないカラダ」となっており、ライフスタイル提案型の内容に切り替えを図っているようです。

最盛期の80万部から11万部まで部数を減らした「cancam」

そして、最後になりましたが最も部数を減らしているのは、20代前半〜後半向けのファッション誌です。例えば、「cancam」も、エビちゃんや押切もえが看板モデルだった2006年当時は80万部にせまる発行部数があったと言いますが、2013年には11万5千部と驚異の落ち込みを見せています。そのほかにも「with」が2008年時には50万部を超えていたものの2015年時には21万部と半分以下に、「MORE」も2008年時に50万部となっていたのが2015年には27万8千部と約半分になっているのです。

考えられる要因としては、以下が挙げられると思います。

・若い人の雑誌離れが顕著なので、20代前半〜後半ターゲットの雑誌は部数の落ち込みが著しい
・ファストファッションの台頭により、雑誌を見なくてもある程度着こなしができるようになった
・ファッションコーデを閲覧できるアプリや、ファッションについてのキュレーションサイトなどウェブで無料閲覧できるサービスが増えた

部数が8年間でほぼ減っていない雑誌「Hanako」

発行部数を著しく落としている雑誌に共通しているのが、「提供している価値がウェブに置き換えられているかどうか」ということがポイントかと思います。
逆に言うと「雑誌でないと提供できない価値」を提供することが、大事であると言えます。そのうちの1つの手法として雑誌付録があると思いますが、むしろこちらは付録に付随した雑誌というような、雑誌がの方がおまけになっている感が否めません。
もう一点、雑誌できないと提供できない価値として、ブランディングが出来ているかという点があります。雑誌にコンセプトがあり、読者が価値を感じて購入してれば、雑誌のファンが形成されていきます。

その1つの例が、マガジンハウスの「Hanako」です。2008年時に9万部だった発行部数は2015年時に8万7千部とさほど部数を減らしていません。
カフェの特集や自由が丘などスポットガイドなど、一件東京ウォーカーのような情報誌と同様に見えますが「よりビジュアルを重視し、雑誌を雑貨化する」というコンセプトで2009年にリニューアルをかけたそうです。2009年時のインタビューでブランディング担当副編集長の方が以下のように語っています。

ビジュアルを重視することで、「雑誌の“雑貨化”が起こる」(中略)「単に情報を得るための媒体ではなく、“眺めていて楽しい”“生活空間に置いておきたい”“何度でも触れたい”と思わせることに成功したのが今回のリニューアル。つまり『雑誌の雑貨化』を起こした」。(中略)「雑誌メディアの特性であるストーリー性、紙の触感、めくるリズム、所有することで喚起される気分」を強調することとなった。

今まで情報重視であった「Hanako」を、雑貨と定義することで手触りのある雑誌でしかなしえない価値を提供しているのです。同じコンセプトの成功モデルとして、雑誌ではないですが旅行ガイドの「ことりっぷ」も累計発行部数が1000万部を超えています。

ということで、最後に成功事例を出してみたものの、「Hanako」はそもそも10万部を超えていないので、かつては100万部を超えていたファッション誌があったことを考えると、もはや雑誌はメインストリームから外れた感は否めません。
あるプラットフォームや技術が枯れると、それはアートになる(写真から動画に移行するときに、写真はアートとなる。映画からテレビに移行するときに、映画はアートになる。)という言葉がありますが、今後雑誌はその路線をたどり、メインストリームの媒体からアートへと進んでいくのかもしれません。

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つづき「10万部も伸ばしたファッション誌「CLASSY」に見る、コンサバの終わり」

■グラフ数値出典
http://www.j-magazine.or.jp/magadata/?module=list&action=list

■参考、引用サイト一覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/CanCam
http://www.j-cast.com/2013/03/31171489.html?p=all
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090324/1024851/?P=3
http://gaiax-socialmedialab.jp/media/369
http://crooz.co.jp/wp-content/uploads/2011/08/%E5%B9%B3%E6%88%9022%E5%B9%B43%E6%9C%88%E6%9C%9F%E7%AC%AC3%E5%9B%9B%E5%8D%8A%E6%9C%9F%E6%B1%BA%E7%AE%97%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99.pdf
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01HMS_R01C15A0TI5000/
http://jp.techcrunch.com/2013/11/28/twitcasting-passed-4-million-mark/
http://markezine.jp/article/detail/22297
http://www.j-magazine.or.jp/magadata/?module=list&action=list
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%8A%E8%8B%A5%E3%81%A4%E3%81%B0%E3%81%95

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