マクドナルドはなぜ減収減益に転じた?【3】〜マクドナルドの未来〜

カサノバ氏にCEOが交代。業績は回復に転じるか?

さて、前回の記事では、マクドナルドが減収減益に転じるまでを解説した。まとめると以下のようになる。
    • 来店促進のキラーだったコーヒーが、コンビニに模倣されて効果を失う
    • 季節限定メニュー廃止で単価が下落
    • マクドナルドの都合による施策が、顧客に不利益をもたらして客足が遠のく
さて、サラ・カサノバ氏に交代して、業績は回復するのだろうか。断言しても良いが、回復しないと思う。まず、2014年に入り、1月〜3月までがどうなっているかを見ると、来店数が大幅に減少した2013年の前年同月比率よりもさらに減少している。顧客単価については前年同月比よりも回復しているが、2013年の1〜3月は意図的に季節商品を止めた時期なので、季節商品を復活させている現在は回復していて当たり前だ。

つまり、今もまだ厳しい状況が続いており、回復の兆しが見えていない。

それでは、マクドナルドのIR資料からカサノバ氏が打ち出した戦略を見てみよう。マクドナルドの独自性を強化すると題して、以下の3点が強調されている。
  1. キッズ&ファミリー&ホスピタリティ
  2. ホット&フレッシュブレックファスト
  3. バリュー(お得感)
まず、1点目の関してはファミリー向けの商品やサービスを強化していくということだ。しかし、ファミリー層を狙うというのは藤田田社長だった時代から掲げられていることだが、おそらくはファミリー路線に切り替えたすき家の成功を見て、商品開発をよりファミリー向けに特化させていくという意図だと思われる。そしてホスピタリティは、カサノバ氏の就任直後に社員に向けて発信されたメールでも言及があったという。前述のマクドナルド側の都合により、顧客に押し付けてしまった不利益(メニューがなくて見づらい、注文時間の短縮等)を改善していくということだろう。

また、2点目については朝マックを強化しますよということである。朝マックの強化は継続的に行われており、昨年はシャンプーや洗顔料などが特典でついてくるキャンペーンも行っていた(そしてネットで迷走と叩かれた)。
最近、ビッグブレックファストというメニューがテコ入れ策の一環として導入されたが、Twitterなどで評判を見てみると「エッグマフィンの方がいい」「高い」などの声が目につく。実際に食べた人が写真をあげているのだが、本当に外食産業におけるオペレーションの難しさを思い知らされる。プレート商品は盛り方によって、見た目がかなり変わってしまうが、きれいに盛られているプレートと、スクランブルエッグがハンバーグにかかって汚らしく見えるものとが混在している。

3点目のバリューに関しては、100円マックがフィーチャーされていたが、これは特に目新しい施策ではない。それでは、何か目新しい施策があるのかと言うと、資料でさらに2点が強調されていた。

既存店舗への積極投資と、デリバリーサービスの拡大である。既存店舗への積極投資に関しては、2013年度の投資活動のキャッシュフローを見ると「有形固定資産の取得による支出が170億円」もある。これは店舗の改造なのか、土地の取得なのかは分からないが「お客様にゆっくり寛いでいただく」的な店舗改造は危険だと思っている。
コーヒーチェーン各社がスターバックスの成功を受けて、こういったコンセプトの新業態店舗を次々と拡大しているからカニバってしまう。しかも、ゆっくりくつろぎたい人が、マックを選ぶか、コーヒーチェーンを選ぶかと考えたら確実に後者だろう。過去にも2度ほどカフェに特化した新型店舗の拡大を図っているが失敗している。

つまり、既出でない新しい施策はデリバリーサービスだけだ。これは中食市場の拡大を受けた施策だと思われる。しかし、この施策も現段階では成功しないと思う。なぜならば、デリバリーはただの顧客へどう商品を届けるかというチャネルである。

○マクドナルドの商品を食べたいー店舗に行く
                ーデリバリーサービスを使う

という、図式であって、そもそもマクドナルドの商品を食べたいという需要がなければ、デリバリーサービスも頼まないのだ。そして、前述のように季節限定商品に力がなくなっている以上、その需要も薄くなっており、わざわざデリバリーをマクドナルに頼むのかという問題になる。また、価格も1500円以上から宅配で300円の手数料(税抜き)となっており、最低でも3人がセットメニューを食べようと思わないと頼めない価格である。利用想定が深夜残業している会社員くらいか思いつかないのだが、どうなのだろうか。

このままマクドナルドの業績は下降するのか

それでは、何か他の手があるかと言えば、それは魅力的な新商品の開発(及び、それにかかる設備やオペレーションコストの投資)になると思う。なぜならば、他外食チェーンも新商品の成功、あるいは店舗をリッチにして空間を提供するという手法でしか勝っていないからだ。そして、それはマクドナルド自身も既に分かっているからこそ、季節商品を復活させている。しかし、新商品の成功はある意味ギャンブルであり、常にリスクを伴う。そして、未だ結果は伴っていない。

もしくは、コーヒーのように来店を常態化させるキラーコンテンツがあるかどうかである。100円マック、そしてプレミアムローストコーヒーに変わる何かだ。おそらくマクドナルドはこれを「朝食」に定めたのかもしれないが、今の状況を見ると難しいだろう。

マクドナルドと資本主義

ここまで3回に分けてマクドナルドの10年ついて振り返ってみた。正直調べるのにも時間がかかったし、このテキストを書くのにも非常に時間がかかった。それでもこれだけの時間を費やしてマクドナルドについて書いたのは、何かひっかかるものがあったからだ。このテキストを書きながら、そしてマクドナルドが成長戦略に乗るためにはどうしたら良いかを考えながら、常に胸に浮かぶ一つのひっかかりがあった。

そもそも、成長し続ける必要があるのか?

ということだ。第1回のエントリに書いた数字をもう一回振り返ってみたい。いくらマクドナルドが売れなくなった、来店数が減った、顧客単価も減少したといっても、全店舗売上げ高はそれでもまだ5000億円を超えている。来店数も2011年時に9.28億人が来店していたということは減収減益となった2013年でも8億人後半くらいはあったはずである。8億人だ。日本国民が年間6回以上はマクドナルドに行っている計算である。そして、日本国民が年間6回マクドナルドに行ったとしても、減収減益だと叩かれてしまうのだ。

売上高は、8年間で3867億円から5350億円にまで成長している。つまり、8年間かけて、年間1483億円も増えているのである。

8年間で、年間1483億円である。

要因は、冒頭に述べたように、メイド・フォー・ユー導入であるが、当時を振り返るインタビューで以下のように語っている。

「初年度は、メイド・フォー・ユー導入と外食産業の基本中の基本であるQSC(味というQuality、接客などのService、清潔さを意味するCleanlinessの略)の見直しだけけを「やれ」と指示して、それ以外は「やるな」と言いました。これだけで、顧客の増加という結果につながったのです。」
(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

原田氏の主張は常にシンプルで、問題の根っこを抑えたらそれを順番に解決していく。何をやるかよりは、むしろ何をやらないかを決めることが経営者だと語っている。最初はその戦略により、一気に売上が拡大する。しかし、さらに売上を拡大しなくてはならない。なぜならばそれが資本主義だから。売上を拡大するために、営業時間を広げて24時間営業にする。店員は深夜に働かなくてはいけなくなる。朝の商品を拡充してリッチにする。単価を上げるために限定商品やプレート商品を用意する。ファミリー向けに、子供用のファミリーセットを用意する。現場のオペレーションはさらに、難しくなる。頑張ってどんどん売上げを拡大させても、さらに成長しなければならない。既に打つべき施策は打っている。これ以上ぞうきんをしぼれない。でも、どこからか数字を引っ張ってこなければいけない。

規模が大きくなれば、1%の係数の狂いも大きな数字となって跳ね返る。1000円に1パーセントを掛けても1001円だけれども1000億円に1パーセントをかけたら1001億円だ。注文時間をあと数秒短縮できれば、回転率が数パーセント上昇する。数パーセントの係数の上昇は、数億円になって利益に跳ね返る。だから店頭からメニューを撤去する。

お客さんに来てもらうために、魅力的な限定商品を用意する。限定商品がなくなると、お客さんは来てくれなくなる。限定商品は特別じゃなくて常態化する。常に新しくてみんながビックリする商品を常態的に作り続けなければならない。特別にした施策が、特別じゃなくて普通になっていく。その普通にお客さんは慣れる。だから、もっと特別なことを用意しなくてはいけない。でも、その特別もやがて普通になる。

お客さんが毎日来てくれるきっかけになる、コーヒーというキラー商品を見つける。しかし、すぐに他社にマネをされる。他社も普通じゃない特別の状況を、普通にして頑張っている。すき家も拡大するために、24時間営業にした。今や巨大外食チェーンの24時間営業は当たり前だ。他社はやっている。うちも、やるしかない。しかし、すき家は、人件費を気にして夜中に店員を1人しか配置しなかったために、強盗に狙われた。新商品もぞくぞく開発する。しかし、店頭でそれを作る人は一人しかいない。現場のオペレーションが難しくなっても、増員するわけにはいかない。利益が減るからだ。

これが、延々マクドナルドについて原稿を書きながら頭の中をめぐっていたことである。飲食業の他にもアパレルや小売りなどの成熟してコモディティ化した市場は同じようなことをしている。みんなが無理をしているのだから、自社も無理をしなければ他社にシェアを奪われてしまう。それが資本主義の競争原理なのだ。

そして、8年間で年間1483億円も売上げを延ばした社長も、たった2年間減収減益になっただけで、代表の座を下ろされてしまう。それが資本主義なのだ。
競争が過熱するというが、本当に温度が高いように思う。熱を放ちながら競争を続け、果たしてどこにたどり着くのだろう。

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