マクドナルドはなぜ減収減益に転じた?【2】〜成功ロジックは何処で崩れたのか〜

2013年純利益が前年の半分以下。原因は来店者数?単価減少?

前回のエントリでは、2004年の原田氏就任後、2010年に営業利益が約4倍の281億8000万になるまでを振り返った。今回はその後、好調だったマクドナルドの業績に暗雲が立ちこめ、2012年から2年連続の減収減益に転じた理由を振り返ってみたい。

まずは売上高の推移を見てみよう。

uriagedaka

マクドナルドHPより

グラフは直営店とフランチャイズ店を合計した全店売上高だが、2011年以降は前年割れが続いており、特に2013年は前年より約250億円も減少している。
純利益のグラフを見ると2012年に128億円もあった純利益が2013年には51億円と半分以下になっている。ざっと決算書を見たところ、売上げのヘコみがそのまま利益にまで反映されているものと思われる。
(ちなみに2010年の純利益も約78億と減少しているが、これは大規模に不採算店舗を閉鎖するなどして特別損失を計上しているためである。)

売上げが減少するということは、来店数が減っているか、顧客単価が下がっているかどちらかである。まず、2011年の来店数を見てみると9.28億人と、前年2010年の9.38億人から減少していることが分かる。

そして、2012年はグラフがないので、月次セールスリポートで前年同月比との比較を参照した。すると、2012年は12ヶ月中3ヶ月で来店数が前年比割れをしているが、2011年より回復していることが分かる。しかし、単価は12ヶ月中11ヶ月で前年比割れ。顧客単価が大幅に下落している。

続く2013年は12ヶ月中11ヶ月で来店数が前年比割れ。顧客単価は12ヶ月中4ヶ月が前年比割れだが、そもそも2012年の顧客単価がかなりの割合で下がっているので、ベースとして顧客単価も減少傾向にあるといえる。まとめると以下のようになる。

●2011年
来店数は減少。
顧客単価は不明。

●2012年
来店数は前年より回復したものの、前年のベースが低いので低調傾向。
顧客単価は大幅に下落。

●2013年
来店数は大幅に前年割れ。
顧客単価の低調傾向が続く。

ターニングポイントは2011年にあった?

マクドナルドの業績がみるからに悪化した2012年の下期以降を分析する記事がよく見られるが、ターニングポイントは2011年にあると思われる。まず、来店者数減少の要因だが、原田氏はインタビューで何度か、中食の需要が増えているのが要因だと語っている。

「食生活には「外食」と、デリバリー(宅配)やテイクアウト(持ち帰り)、コンビニのお弁当などの「中食」、家庭で調理する「内食」があります。震災後、中食にシフトしているんです。エネルギー節減で家での調理を控えるため内食からも中食にシフトしています。そのためコンビニやスーパーが調理済みの商品を増やしていて、その分、外食が減っています。」
2012年時のインタビューより

調べてみたところ、中食市場が前年比2年連続で成長しているのが確認出来た。しかし、外食産業もそこまでへこんでいるわけではない。

2011年3月は確かに震災要因でファーストフード業界の来店数は全体で前年比9割強になっていたようだが、5月にはほぼ回復している。2012年のファーストフードの動向も以下のように全体としては拡大している。

ファストフード(21業態)は3兆793億円(3.3%増)。12年は首位マクドナルドの不振からハンバーガーが低迷したが、ギョーザ、立ち食い・セルフ式そばうどん、回転ずし、ラーメン、牛丼などの業態が順調で市場は拡大した。

Logistics Todayより

そもそも3兆円の市場規模のうち、5000億円はマクドナルドが占めるので、マクドナルドの売上が大幅にヘコむとファーストフード市場がシュリンクするというニワトリ、タマゴの関係になってしまうが、それを補ってもなお他業態のチェーンが健闘していたようである。

それでは何故来店数が2011年以降減少傾向に入ったのか。仮説の域を出ないが、かなりの割合で「コーヒー」のせいだと思っている。前回の記事にて100円マックなどの低価格商品で来店を促進しているという戦略を説明した。そして、その来店促進のためのキラー商品は2008年以降プレミアムローストコーヒーに取って変わったと思われる。思い起こすと、周囲の人たちは皆、昼食時になるとコーヒーを買いにマックを訪れていた。

しかし、そんな好調ぶりを見せつけられたコンビニ各チェーンは、相次いで挽きたてコーヒーの参入を図る。コーヒーというコンテンツがいかに力を持っているかは、その後のコンビニチェーンの好調さを見て推して図るべしである。最も参入が遅かったセブンイレブンでさえ、参入から一年強で5億杯を売り上げている。各チェーンのコーヒーへの参入時期を調べてみたが、マクドナルドの来店数が減少しだした2011年と開始時期が合致する。

サークルKサンクス 2009年
ミニストップ  2010年11月
ファミリーマート 2012年9月
ローソン 2012年(推定)
セブンイレブン 2013年1月
※各公式サイトより。ローソンについては開始時期不明だが2012年時のリリースにて言及がある。

マクドナルド自体もコンビニが参入したことにより、コーヒーを無料で配布するキャンペーンなど対応策は打っていたように思うが、いかんせん追いつかなかった。利用者ニーズを考えれば、マクドナルドにコーヒーを買いにいくよりはコンビニに行く方が気安い上に、コンビニチェーンを合計した店舗数の方がマクドナルドより上なので立地の面でも不利だ。今まで100メートル歩いてマックにコーヒーを買いに行ったとしても、50メートル以内のコンビニが取扱いを始めればそちらに切り替えるだろう。

「100円マック」→「コーヒー」に続く来店促進のキラー商品の代替えが存在しなかったため、セオリーが崩れてしまったのではないだろうか。

そして、2012年は大幅に顧客単価が下落する。単価を押し上げていたのは、季節限定メニューだ。2012年を振り返るインタビューで、原田氏は以下のように答えている。(2013年時のインタビュー)

「季節限定のメニューでも、もうかるものともうからないものがある。短期間に膨大なマーケティングコストがかかる割には、売れ行きの予測が難しく、廃棄のリスクも高くなる。(中略)検証の結果、その年だけの新しいメニューはやめて、期間限定のディスカウントもやめた。そして、利益の軸足をビッグマックに移すと決めた。それが売上げを削ることになった要因だ。ビッグマックの売上げ増は時間がかかるから、1〜3付きは過渡期と見ていて、4月以降に回復が始まる。」

(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

「今までのやり方が正しかったのかを2012年に検証した」という前置きの後に上記のコメントが続くのだが、今までのやり方の費用対効果を検証していたということは、2011年時点で既に高単価商品が売れなくなっていた可能性が高い。そして翌年の2012年には高単価商品がいっそう売れなくなり、初の減収減益となるのだ。

実際、季節商品を振り返ると2009年のクォーターパウンダーの後は2010年ビッグアメリカン、2011年ビッグアメリカン2と前年の焼き直しになっている。そして、2012年は何だったのだろうかと公式サイトを見に行ったらビッグアメリカン再び!と、3年連続して同じようなことをやっていた。なんだか、ジリ貧になると大きなカケに出られず安全策しか取れなくなっていた昔のマクドナルドを思い起こしてしまう。

先ほどのインタビューにあったように、2013年前半は季節限定メニューを廃止してビッグマックに注力するのだが、この施策は大失敗する。来店数が大幅に落ち込み、顧客単価も低調なままだった。後に、この施策は失敗だったと、以下のように語っている。

「大きかったのは、今年(2013年)の1月、2月の既存店の売上高が、マイナス17%とマイナス12%だったことです。もちろん、マイナスになるとは思っていました。
でも正直、2桁も下がるとは誰も思っていなかった。そこで猛烈に戦略を見直してみたわけです。でも、やっぱり季節限定の乱発はやってはいけない。そこは選択と集中で、季節限定商品の数は少なくていいから、よりインパクトのある強烈なものをやらないと。
お客さんはやはり、新しい価値やサプライズを求めています。乱発抑制と新商品投入の、バランスを取ることが大事だということがわかったので、そこから猛烈に企画を立て始めて、6月からのキャンペーン(サッカーの本田圭佑選手をイメージキャラクターにした大がかりな販促戦略)に至ったわけです。」
原田泳幸 日本マクドナルドHD 会長兼社長に聞く より

しかしこの後、大幅なプロモーションも功を奏さずに来店客数は前年比割れのまま、結局通期で大幅にを売上げを落としてしまう。高価格帯の商品が売れなくなってしまった理由は何なのだろうか。それはひとえに、売れる季節商品を出せなかったことだと思う。先ほども記述したが、ビッグアメリカンという同じキャンペーンを3年も連続して行っている。みんな、メガマックやクォーターパウンダーくらいまでは記憶があると思うが、ビッグアメリカンというキャンペーンやっていた印象すらないと思う。「ちょっと食べてみたい」という興味を喚起できていないのだ。

これは外食産業市場規模のシュリンク云々ではなくて企画力とそれを実現するオペレーションが出来るかという問題だ。実際に成熟市場である牛丼チェーンのすき家も、やり方に問題があるにせよ(深夜の1人勤務など)、魅力的な新商品を投入することで成長してきた。

しかし、原田氏のインタビューを総括すると、あえて季節限定メニューを止めたと語っている。定番メニューを据えて、それを売ることがあるべき姿だという方針を示しているのだ。
2013年初頭にビッグマックを主力に据える宣言にも違和感を覚えた。消費者側の視線から見ると、ビッグマックのインパクトはメガマックやクォーターパウンダーに遥かに劣るわけで、いくらマクドナルドがビックマックを売りたくても消費者が食べてみたいと思わない限りは売れないのである。
広告宣伝費がかからず、廃棄率が予想しやすいビックマックに売れて欲しいという売り手側の都合を、消費者に押し付けているようにも見える。また、高付加価値の商品を作るために、戦略的に専用キッチンを持たない店舗を閉鎖してきた体制とも逆行するようにも見えるのだ。
しかし、マクドナルドはグローバル企業なので、これは原田氏の思惑というよりはむしろ本社の意向なのかもしれない。Appleは日本だけにカスタマイズした商品は売らない。グローバル企業は、世界向けに開発した一つの商品を、複数の国で売る。

また、2011年以降は「売り手側の都合」というワードが目に見えて出てくる。私が最初に違和感を感じたのは2011年に原田氏がカンブリア宮殿に出演した際のコメントだった。

10秒キャンペーンに続く系譜か。OTタイムとは。

2011年時はまだマクドナルドの不振は目に見えていなかったので、番組の流れはマクドナルドの再建手法を紹介したものだった。そこで一瞬「?」と感じたのがスタッフが注文を取る時間を指標とするOTタイムだ。

ベテランクルーによるトレーナーミーティングで話し合われていたのがOTタイム。クルーが一人の客の注文を取るのにかかる平均時間=オーダーテイク(OT) タイム、これが議題に。
マクドナルドでは、一人のクルーのOTタイムが計れるしくみが導入されています。このOTタイムが短くできれば、ドライブスルーでの台数が稼げ、その結果売上アップにつながります。

ミーティング終了時の店長のコメント:
〈(クルーの応対が) おっとりというか『ハーイ』みたいなとこがあるから、そこをちょっとでも『ハイ』ときっちりと区切るだけでも(OTタイムが) 早くなっていくし、それの積み重ねだと思うから。そうしたら、もっとドライブスルーの台数取れると思う。〉

くそねこ にゃんにゃん ニャンコロリンのリン  徒然猫 雑記 より

この施策は顧客というよりは、むしろマクドナルド側の都合である。昼食などの混雑時に1人でも早くさばくための指標だと思うが、この教育を徹底してしまうと、スタッフにとってはいかに早くオーダーを取るかが至上命題になりかねず、お客さんの言葉を遮ったりすることもあるのでは?という疑問を抱いた。
そして、一度不快感を感じてしまった顧客は、多分二度と店には行かないだろう。

このOTタイムは、その後の「ENJOY!60秒キャペーン」に繋がっていると思う。これは60秒以内に商品が出てこなければクーポンがもらえるという施策だったが、スタッフが急ぐあまり雑に包装されたバーガーの写真がネット上に出回ることになった。これも顧客のためというよりは、商品提供時間を短くすることによって、1人でも多くさばこうとするマクドナルド側の都合で考えられた施策であろう。

これは2007年以降目立った施策をまとめた表であるが、上が「顧客へのサービス」に分類されるもの、下が「マクドナルド内部施策」となっている。

sisaku

しかし、中間の「???」については、一見顧客への施策に見えるが、実は自社の都合だ。悪名高くなってしまった「レジメニューの撤去」導入も、高価格帯の商品が売れなくなったタイミングと呼応する。高価格帯の商品を買って欲しいがために、手元のメニューを排除して店内のディスプレイでセットメニューを選ばせようとした施策なのだと思う。そしてもちろん、客が熟考する時間が減るためOTタイムも短縮できる(はずだった)。

こういったマクドナルド側の都合による施策が積み重なり、顧客がないがしろにされた結果、少しづつ店へ行く気がなくなっていった。雑に包装されたバーガーが出てきたら嫌だとか、メニューがないから頼みづらいとか、そもそも食べてみたいと思う商品がないという理由で。これが客離れを引き起こした構造的要因ではないだろうか。
原田氏もこの失敗に気づき、顧客はサプライズを求めていると先述のインタビューでも語っている。その反省から「QUARTER POUNDER JEWELRY」と題して1000円の高級バーガーを1日限定で販売するなど、初心に帰ろうとしていたように思われる。しかし、残念ながら時間切れとなりサラ・カサノバ氏にバトンを渡すこととなった。

さて、カサノバ氏はマクドナルドを再び成長軌道に乗せることが出来るのか。次回はマクドナルドの今後について考えていきたい。

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