マクドナルドはなぜ減収減益に転じた?【1】〜営業利益が4倍になるまで編〜

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8年間の増収増益の後、2年連続の減収

マクドナルドがヤバいと言われ始めたのは2012年の後半だった。2004年に社長に就任した原田泳幸氏は、それから8年間もの間、増収増益を実現してきた。その間、売上高は3867億円から5350億円にまで成長し、その手腕は原田マジックと呼ばれ賞賛されたが2012年に初めて減収減益に転じる。翌2013年には60秒以内に商品が出てこなければクーポンがもらえる「enjoy60秒キャンペーン」でネット上で叩かれ、ことあるごとに施策が槍玉に上がるようになった。そして、2013年はさらに減収減益となり、営業利益は前年より5割も減少してしまう。原田泳幸社長は事実上解任され、サラ・カサノバ氏が就任した。

こうなった理由を分析している記事や社説が無数にあるが、それぞれ短いタームで見ているため、季節要因であったり、財務上の問題や細かいマーケティングの戦略ミスに要因を求めている物が多い。マクドナルドの歴史を今一度振り返っておくことにより、もっと構造的な問題が見えてくるように思い、3回に分けてその経緯をたどってみることにした。初回は、原田社長就任後、どのようにマクドナルドが成長軌道に乗ったのかを振り返る。

2年連続の赤字を救った救世主

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マクドナルド決算短信より作成

まずは2001年から2013年までの売上げ高と営業利益をグラフにしてみた。1990年代、デフレ時代の勝ち組と呼ばれ拡大路線を続けてきたマクドナルドは2000年代に入り売上げが不調となる。2002年には営業利益ベースでは利益が出ているが最終的には赤字に転じ、翌2003年も赤字となった。

しかし、2004年に原田社長が就任すると売上げは急激に回復し、営業利益も年々増えている。2008年以降の売上げがガクンと減っているのは、マクドナルドが店舗のフランチャイズ化を押し進めたため、フランチャイズ化された店舗自体の売上げが含まれておらず、代わりにフランチャイズによる手数料が計上されているためである。実際全店舗の売上げ高を見ると年間5000億円を超えており、2010年には過去最高となる5400億円を突破。外食チェーンで5000億円の売上げを初めて突破するという快挙を成し遂げた。

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マクドナルドHPより引用

フランチャイズの促進は経営のスリム化が目的であったが、実際冒頭のグラフを見ると本業の儲けを示す営業利益は2011年まで増えている。原田社長就任時の2004年の営業利益は約72億4000万に対して2011年は281億8000万となっており、8年で利益を約4倍にも押し上げているのだ。

改めて見るとものすごい実績だが、それではこの8年間の間にどういう施策が取られたのだろうか。

最初にしたのは、ハンバーガーを美味しくすることだった

原田社長就任直前の状況を振り返ると、以下に集約されると思う。
  • 安売りが浸透しすぎて、低価格が当たり前となり、来店数が伸びなくなっていた
  • まずい
  • 不採算店が大量にあり、オペレーションがバラバラだった
低価格路線による失敗はよく語られているところで、平日半額キャンペーンを実施し、ハンバーガーが65円で売られていた。これが常態化すると65円という価格が普通になり、それを魅力に感じて店舗に行こうとする人が減ってしまう。

しかし、一番の問題はハンバーガーがまずいことだ。この「まずい」と「不採算店が大量にあり、オペレーションがバラバラ」という問題は表裏一体になっていた。当時、マクドナルドのハンバーガーは作り置きのものをレンジでチンして販売していた。出来立てを提供するという一連のオペレーションが確立されておらず、店舗によってバラバラだったのである。オペレーションがバラバラだけならまだしも、勝手にショートケーキやおにぎりを売っていた店舗も存在していたと後に原田氏は語っている。社長に就任した後、新製品を試食した時に次のように感じたそうだ。

「たとえば、私の入社前から開発していた新製品を食べてみたら、どんでもなくまずい。それは、トマトを挟んだバーガーで、電子レンジで温めるものでした。」
(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

まずは「ハンバーガーを美味しくする」ことが至上命題となる。今聞くとものすごく当たり前の話に聞こえるが、当時ものすごく頭の良い人たちが経営に参画していただろうに、その基本原理に立ち返る人は、原田社長が来るまで誰もいなかったのである。続いて原田社長はこう振り返っている。

「これ、自分の家で作るならおいしくできるよね?店でも同じようにおいしくするには、どうすればいいの?」と社員に聞いてみたんです。
その社員は「注文を受けてから作り始めるメイド・フォー・ユーというシステムがある。その仕組みで作れば、おいしくできるはず」と答えてきましたが、「ただし、世界中で全店導入したところはなく、米国でも少しずつやり始めている段階」とも言う。だったらやろうじゃないか、と。キッチンを全部入れ替えようと、私はすぐに指示しました。

(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

このメイド・フォー・ユーこそマクドナルドの増収増益を支えてきた根っこになる方針である。何を最初にただすべきか(まずいハンバーガーを美味しく)→何をすれば良いか(メイド・フォー・ユー導入)というシンプルな方程式の元、就任1年でほぼ全店でこの仕組みが実現したという。しかし、言うがやすしで、原田社長が方針を提示した後は社内の反発にあったという。

「ところが、トップマネジメントたちは皆反対。「あそこが問題です」「あれが課題です」と理由を並べてくる。どうすればその課題を乗り越えられるか、発想がまるで出てこなかったのです。(中略)
でも私は「世界でいちばん優秀なやとわれ社長」という自負を持っているから、反対する社員にも情熱を持ってやろうと訴えた。そうすればほとんどの人がついてきてくれるんです。課題を乗り越えることが仕事なんだから、と言い続けたら、後ろ向きの声はなくなってきました。」

(マクドナルドはどこへ行く? 17万従業員の命運握る原田改革の正念場より)

美味しくなった後に、低価格商品でお客を取り戻す

ハンバーガーが美味しくなった後、2005年に100円マックを投入する。「低価格路線で失敗したんじゃないの?」というツッコミが入りそう(実際、そのような質問を記者からされている)だが、これは一度離れてしまったお客さんにもう一度マクドナルドに来てもらうための施策だったという。つまり、【安かろう悪かろう】という印象がついてしまったマクドナルドを【安い割に美味しい】と感じてもらうための100円マックだったのだ。「価格を超えた満足感を提供する」ということは、常に原田社長が言っていることで2011年にカンブリア宮殿に出演した際も「やっていることは、Apple時代と変わらない。常に顧客の想像を超えていくこと」という発言をしている。

100円マックでお客を呼び戻した後、付加価値の高いメニューを投入することによって客単価を向上させている。そのきっかけとなった商品が2005年に発売されて大ヒットとなった「えびフィレオ」だ。(ちなみに「えびフィレオ」販売時も、メイド・フォー・ユー導入時と同様にリスクが高いという社内の大反対があった。)
こうして一気に増収増益の体制へと転じるのだが、この後の戦略も基本的にこれの反復になっている。

低価格商品(価格以上の魅力)投入で来店促進→高付加価値のメニューで単価向上

2008年にはプレミアムローストコーヒーが導入され、来店促進の大きな呼び水となる。一方の高付加価値のメニューもメガメニューの火付け役となった「メガマック」や2009年に日本発情率した「クォーターパウンダー」など、続々とヒット商品が続く。
きれいに弧を描くような美しい戦略だ。しかし、実はこれは計算し尽くされたわけではなく、偶然の産物だったという。

「今だから話せますが、100円マックを始めた頃は、そんなフェーズ1・2・3なんて戦略を詳細にはつくっていませんでした。客数は上がるが、絶対客単価が落ちるので、なんとか少しずつ収益を戻すということを段階的にせざるを得ないなと思ったぐらいです。具体的に何をいつ発売するかは決まっていなかったのです。戦略がないと言ったら、それこそ記者から叩かれますからね。」

原田泳幸の実践経営論「大きく、しぶとく、考え抜く。」より

ちなみに、えびフィレオを手がけたのも現CEOのカサノバ氏だそうで、これが偶然大ヒットしたため、高付加価値のメニューを連続して投入するという戦略が編み出されたのではないだろうか。
しかし、いずれにしろこの戦略の成功は「メイド・フォー・ユー」があることが前提であり、この仕組みが導入されていなければ「えびフィレオ」はヒットしていなかったかもしれない。就任直後に最も根幹となる方針を打ち出したからこその、偶然と言える。

ということで、2010年まではこの戦略の車輪が非常にスームズにまわり、増収増益を続けていた。そこから減収減益となった2013年までにいったい何が起こったのだろうか。次回はその点について振り返ってみたい

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