Youtubeからレシピ動画まで。急成長する動画プラットフォーマーたち。

2012年あたりから、毎年動画元年と言われて来ましたが、2017年の今になり、動画プラットフォーマーたちが台頭してきています。現状の動画コンテンツにおけるプレイヤーと、今後の市場予測をしてみました。

Youtube「アマチュア×短尺」から、Netflix「プロ×長尺」までの歴史

現状の動画コンテンツのプレイヤーを「プロ×アマチュア」「短尺×長尺」のマトリックスにすると、このような形になります。


まず、最初に立ち上がった動画コンテンツのプラットフォームは左下の「アマチュア×短尺」でした。Youtubeが2005年にサービスを開始し、翌年に日本でニコニコ動画が立ち上がります。
一般の投稿者が動画をアップするCGMプラットフォームとして2000年代後半以降ユーザー数を伸ばし、今日でのYoutube巨大なの利用者数は10億人を超えており(※1)、動画プラットフォームとして存在を確立しています。

次に著しい成長を見せたのが右上の「プロ×長尺」のエリアです。月々定額を支払うだけで映画やテレビ番組が見放題になる「Netflix」が1999年に月額定額制を開始、「Hulu」が2011年にサービスを開始しています。2017年現在「Netflix」の全世界における会員数は9,000万人を超えており、いまなお会員は拡大しています。
この「プロ×長尺」のエリアにおいては、映画やテレビの版権の獲得など、莫大な投資を必要とするためプレイヤーがしぼられます。(こちらの記事によると、2016年はNetflixはコンテンツに50億ドルを投資し、2017年はそれを越える60億ドルを投資する予定だそうです。)ストックの動画コンテンツにおける世界的な勝者は「ネットフリックス」と見て良いのではないでしょうか。
さらに国内では2016年4月に「AbemaTV」が開始され、開始から1年で週刊利用者数が500万人を突破するまでに伸びています。(※2)国内プレイヤーである「AbemaTV」においても年間200億円の投資をすると発表しているため、版権の買い付けやコンテンツの制作費に莫大な投資が必要であることが分かります。

これらのプレイヤーに共通するポイントは、テレビや映画などの版権モノを獲得して放送しつつも、近年ではオリジナルコンテンツに力を入れている点です。
特に「Netflix」においてはその傾向が顕著であり、ケヴィン・スペイシー主演、デヴィッド・フィンチャーが監督を務めるハリウッド映画ばりのオリジナルコンテンツ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」など独自のコンテンツに注力しているのです。
「ハウス・オブ・カード」の制作にあたっては、視聴者層に認知度のある主役をデータの面から探るなどマーケティングに注力しており、契約者数獲得のために第1シーズン全13話を一気に配信するなどの大胆な施策を行っています(※3)。

先ほどの「AbemaTV」においても、バラエティ番組などのオリジナルコンテンツに力を入れています。これらのプレイヤーたちが、オリジナルコンテンツに注力し、コンテンツホルダーとしての力をつけるということは、テレビ局や映画会社の立ち位置が相対的に弱まるということになります。
これらのプレイヤーの最終目標は、テレビというプラットフォームの代替えを目指しているのです。(そしてNetflixはアメリカ国内においてはすでに、5,000万を超える契約を獲得しています※4)

また、この領域における次のトレンドは「ライブ配信」です。スポーツ動画の配信を行う英国発のサービス「DAZN」は、Jリーグの全試合中継の配信を開始しています。「AbemaTV」もサッカーチャンネルを開設しています。「AbemaTV」の人気コンテンツを観ると上位を占めているのはアニメ作品、もしくはアーティストやアイドルなどのライブ配信なので、今後ともライブ配信は動画コンテンツにおける重要なファクターとなるでしょう。

SNSの分散型メディアの追い風が吹く「プロ×短尺」の動画

ここに来て勢いを増しているのが「プロ×短尺」の動画プラットフォームです。国内の主なプレイヤーは女子向けのハウツー動画の「C CHANNEL」や料理レシピ動画の「クラシル」、「デリッシュキッチン」などがあります。

いずれのプレイヤーも大型の資金調達を行っており(C CHANNEL=13億円、クラシル=総額37億円、デリッシュキッチン=6.6億円※5※7)、月間再生数を大きく伸ばしています(C CHANNEL=6億6000万回(うち5億回が海外)、クラシル=1億2000万回)。

成長の追い風となっているのが、各種SNSなどでも動画を公開しており、分散型メディアになっている点です。特に各社ともFacebookには力を入れており、現状のFacebookのいいね数はC CHANNEL=845万、クラシル=113万、デリッシュキッチン=142万となっています。
以前にブログでも書いたのですが、動画コンテンツにとって最も後押しになった要因は、高速回線の普及もありますが、再生ボタンを廃止したことだと思っています。「動画アプリ「Vine」が流行ったのは、再生ボタンを廃止したから動画アプリ「Vine」が流行ったのは、再生ボタンを廃止したから」にもあるのですが、6秒動画を投稿出来るCGMプラットフォームとして盛り上がったVineは、再生ボタンを廃止しており、スクロールして動画にフォーカスされると自動的に動画が再生されるインターフェースになっていました。
Facebookなどが、動画に注力した際も、このVineの成功を見て同じようなインターフェースを採用したのではないかと思っています。動画にフォーカスすると、自動的に動画が再生されて動きが出るため、動画の閲覧率が飛躍的に上がります。もしもここに再生ボタンがついていたら、再生率は10倍以上違ったことでしょう。

ということで、今最も注目されている動画プラットフォーム「プロ×短尺」の動画のカテゴリですが、全て「暇つぶしになるハウツー動画」であることがポイントです。現在ガールズ、レシピ動画という2つのジャンルしか出現していないため「暇つぶしになるハウツー動画」のジャンルが数年以内にいくつか登場するかもしれません。

また、「プロ×短尺」の動画はFacebookなどでの訴求がしやすいため、海外展開も考えられます。実際に「C CHANNEL」の6億6000万回の月間再生数のうち5億回は海外となっています。(※6)

順風満帆ではない動画プラットフォーマー

このようにまとめると見ると、動画プラットフォーマーは順調に成長しているように見えますが、順風満帆ではありません。「Netflix」も2016年度第4四半期で国内外合わせて500万人の会員が増加し、投資家の予想を上回りましたが2016年中は投資家の「Netflix」への成長は懐疑的であり、株価は低迷していました

「C CHANNEL」も、サービス開始当初は今のようなハウツー動画がメインとなるコンテンツの構成ではありませんでした。クリッパーと呼ばれるインフルエンサーの女子たちの動画がメインで、今のようにハウツー動画として作りこみはされていなかったのです。

再生数のグラフを見ても、2015年中は再生数が伸び悩んでおり、2015年12月以降にオリジナルのハウツー動画を強化したところから再生数が急に伸びているようです。



このように、順調に再生数を伸ばしているように見えても順風満帆ではなく、以下コンテンツとプレイスにおける以下の条件が揃って初めて成長軌道に乗ったようです。

・コンテンツ=数分で見られる暇つぶしのハウツー動画
・プレイス=各種SNS(Facebookなどが動画ソリューションに注力)

このように動画や新しい技術などが来る来ると言われる場合、全ての条件を待っているうちに、競合に越されてしまうため、見切り発車のままスタートしてコンテンツをチューニングし、サービス拡大のための外部条件が揃うタイミングを待つ、ということが必要になるのですね。
2012年にnanapiさんが若手社会人向けのハウツー動画サービス「nanapi Biz」をリリースしていました。新しい技術を要するコンテンツはタイミングが早すぎても遅すぎてもダメと言いますが、これはタイミングが早すぎた例だったのかもしれません。

次の成長領域はどこか?

動画プラットフォームにおける次の成長領域をまとめると、このようになります。

「プロ×長尺」
・オリジナルのコンテンツ化が進み、テレビとの代替えがはじまる
・ライブ配信が加速し、ライブ配信における新しいプレイヤーが出現する可能性も

「プロ×短尺」
・「暇つぶしになるハウツー動画」において新たなプレイヤーが出現する可能性
・海外展開が加速

そして、この4象限において「アマチュア×長尺」のプレイヤーが出現していないことに注目です。「素人に尺の長いクオリティの高いコンテンツを作れるはずがない」というバイアスがここに存在しています。ビジネスデザイナーの濱口秀司さんはバイアスの裏を突く「ブレイク・ザ・バイアス」を提唱されてフラッシュメモリの開発に成功されています。

この「アマチュア×長尺」のエリアについてブレイクを起こせるコンテンツの在り方を考えてみるのもありかもしれません。

※1
https://www.youtube.com/yt/press/ja/statistics.html
※2
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/info/detail/id=13182
※3
http://toyokeizai.net/articles/-/38551
※4
https://news.yahoo.co.jp/byline/satohitoshi/20170418-00070057/
※5
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000019382.html
http://jp.techcrunch.com/2016/06/09/every-raised/
http://thestartup.jp/?p=16980
※6
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO15495750Z10C17A4000000?channel=DF180320167066
http://www.mylifenews.net/food/2017/04/delykurashirutvcm.html
※7
http://jp.techcrunch.com/2017/01/19/20170118netflix-blows-out-the-fourth-quarter-after-setting-itself-up-for-a-huge-end-of-the-year/

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