コーヒーとジブリ作品。2つのキラーコンテンツにおける共通点。

1日100杯売れるコンビニコーヒー、ヒット作品を連発してきたジブリ

コーヒーというのは、誰もが認めるキラーコンテンツです。コンビニエンスストアのコーヒーはヒットコンテンツと言われていますが、2014年見込数値で1,756億円(前年比率52.8%増)の市場規模となっています。(※1)

数字が大きすぎて分からないよという方のために、1年前に書いたブログ「セブンイレブンの凄さが分かる、5枚のインフォグラフィック」がこちらです。なんと、1日に売れるコンビニコーヒーはセブンイレブン1店舗あたりで100杯です。



カフェチェーンを見てみると、スターバックスの売上高は年々右肩上がりになっています。2014年3月期には1,256億6千6百万円と前年比108%増、経常利益も109億9千6百万円と前年比8.8%増となっています。店舗数も同期間において1034店舗を超えており、国内で1,000店舗を突破しているんですね。(※2)
(2015年3月の上場廃止以降、米国本社による子会社化の過程でバランスシートは債務超過に陥っているようですが2016年9月期は売上高1606億円、営業利益150億円を記録しています。※3)

スターバックスの売上推移



ということで、コーヒーがキラーコンテンツであるということは、ゆるぎない事実だと思います。

同時にジブリ作品がキラーコンテンツであるというのも、国民誰しもが認めることです。興行収益304億円を記録した「千と千尋の神隠し」や、興行収益196億円の「ハウルの動く城」など、ヒット作品を連発しています。

歴代興行収益1位の「千と千尋の神隠し」



さて、コーヒーとジブリ作品という強力なキラーコンテンツには、ある共通点があるのですが、何でしょうか。

顧客によって表情や役割を変える、多重構造となっている

コーヒーもジブリ作品も顧客によって表情や役割を変える、多重構造となっているのです。

例えば、コンビニコーヒーを飲みたい時って、どういう時でしょうか。条件をあげてみましょう。

▼コンビニコーヒーを買う顧客の目的
  • 朝食用のパンとともにコーヒーを飲みたい
  • 昼食を食べた後にコーヒーを飲みたい
  • 仕事の気分転化がてら、コンビニにコーヒーを買いに行きたい
  • おやつのコンビニスイーツとともに、コーヒーを飲みたい
  • 夜の残業中、目を覚ますためにコーヒーを飲みたい
と、このようにコーヒーは様々な目的を包括的に飲み込むことの出来るコンテンツなのです。朝食としていただくパンとも合うし、食後の1杯にも向いている、もちろんスイーツにも合うし、カフェインが入っているので眠気覚ましににもなる。
顧客の様々な目的を包括的に飲み込む多重構造になっているのです。
そして、コーヒーを飲みたいからコーヒーを買ったというよりは、気分転換にコンビニに出かけたので、ついでにコーヒーを買うという人も多いのではないでしょうか。
この場合は、気分転換という目的の副次的要素としてコーヒーが存在しています。これがスターバックスなどのカフェスペースになると、もっと副次的要素としてのコーヒーの価値が高まります。

▼スターバックスを訪れる顧客の目的
  • コーヒーを飲みたい
  • 軽食を取りたい
  • 仕事の打ち合わせを行いたい
  • 休憩を行いたい
  • 勉強や作業をしたい
  • 放課後友達と暇をつぶしたい
このように、スターバックスというカフェチェーンは、多様な目的の顧客の目的を網羅しているのです。逆に、ドトールコーヒーチェーンは、このうちの「仕事の打ち合わせ」や「勉強や作業をしたい」「放課後友達と暇をつぶしたい」の目的をカバー出来ていませんでした。店内の回転率をあげるために、座席やテーブルを狭くするなどを実施していたためです。
ここ数年は座席間にゆとりのある店舗が増えており、これらの目的をカバー出来ています。
(しかし、フラペチーノなど若年層へのキラーコンテンツがないため、放課後友達と暇をつぶしたいのニーズをカバーするのは、まだ難しいでしょう。)

観る人によって、作品の深さが変わる「ジブリ作品」

コーヒーが顧客の目的によって、その姿を変容させているのは分かって頂けたかと思います。そして「ジブリ作品」もまた、観る人によって作品の深さが変わる構造になっているのです。

例えば先述の「千と千尋の神隠し」は、千尋というひとりの少女が湯屋での冒険を通して成長していく物語です。しかし、このまとめにもあるように、カオナシの存在や、設定に隠されたエピソードなどの様々な考察を生んでいます。

【マニアも知らない】”千と千尋の神隠し”の都市伝説集【ジブリ】
https://matome.naver.jp/odai/2140461009927693001?&page=1

子供たちが見れば、愉快なキャラクターたちがたくさん出てくるアニメ映画ですが、大人たちが見るとこのように考察の対象となる深い設定があるのです。

そして、最も多重構造であると言われているのが、宮崎駿監督がその当時においての引退作だった「風立ちぬ」です。世界大戦当時に戦闘機を設計した堀越二郎の人生を描いた作品です。
岡田斗司夫さんの映画評によると、この作品を観たままで評するのであれば堀越二郎の人生と病床の妻との悲恋を描いた映画です。しかし、実はこれは宮崎駿監督の作家性が反映された美しくも残酷な物語であると評されています。

岡田斗司夫の「風立ちぬ」評が鳥肌立つレベルで素晴らしい
http://bloggingfrom.tv/wp/2013/08/23/11182

真偽のほどは別として「風立ちぬ」はそういった見方も可能な構造になっている、多重構造のコンテンツなのです。
ジブリの作品は、テレビで何度も放映されているのにも関わらず、視聴率が低下しない(むしろ上昇したりする)ことで有名です。バルス!でTwitterのサーバーが落ちることで有名な「天空の城ラピュタ」もテレビ初放映の1988年4月2日12.2%に対して、14回目のテレビ放映となる2013年8月2日はなんと18.5%となっています。

金曜ロードショー「ジブリ映画」視聴率ランキング
https://matome.naver.jp/odai/2142398692870491801

それは、作品が幾重にも重なる多重の構造を持っており、観るたびに物語中でフォーカス出来る新しい側面を発見できるからではないでしょうか。

息が長いコンテンツは、多重構造になっている

このように、コーヒーやジブリ作品といったコンテンツは多重構造になっており、顧客が接触するたびにその役割や表情が変わります。多重構造を持っているコンテンツは、浅くも深くも接することも可能なのでマスをターゲットに出来ます。
そして、何回接触してもその表情をどんどん変えていくため、息が長いコンテンツになります。現存しているコンテンツで、もっとも多重構造を持っているのは「カラマーゾフの兄弟」や「アンナ・カレーニナ」などのロシア文学ではないかと思っています。これらの書籍が数百年経った今も読み継がれているのは、このような理由ではないでしょうか。

村上春樹さんの「眠り」という短編小説には、睡眠を全く取ることが出来なくなってしまった主婦が、アンナカレーニナを夜な夜な読む描写があります。

”私は最初の一週間かけて「アンナ・カレーニナ」を続けて三回読んだ。読みなおせば読みなおすほど、私は新しい発見をすることができた。その長大な小説には様々な発見と謎が満ちていた。細工された箱のように、世界の中に小さな世界があり、その小さな世界の中にもっと小さな世界があった。そしてそれらの世界が複合的に宇宙を形成していた。その宇宙はずっとそこにあって、読者に発見されるのを待っていたのだ。かつての私にはそれをほんのひとかけらしか理解することができなかったのだ。”

出典:「TVピープル」文春文庫刊

好みが細分化した現代においては、マスを囲えるコンテンツはこのように多重構造を有しているか、もしくは万人に分かりやすいかのどちらかの条件が必要です。しかし、万人に分かりやすいコンテンツは息が短いのです。「家政婦のミタ」や「半沢直樹」を何回も観直したいと思う人がいったいどれだけいるでしょうか。万人に分かりやすいコンテンツというのは、一度咀嚼すれば事足りるため、永続的なコンテンツになるのは難しいのです。

※1
https://www.fuji-keizai.co.jp/market/15002.html
※2
http://www.starbucks.co.jp/ir/highlight/
※3
http://toyokeizai.net/articles/-/156999








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