雑誌とウェブメディアの編集者に求められるスキルの違い

近頃雑誌の休刊が相次いでいます。ファッションなど趣味嗜好の情報を雑誌のみに頼っていた時代が終わり、多くの人はウェブメディアで情報を手に入れるようになりました。
雑誌とウェブの違いを比較した上で、編集者に求められるスキルの違いを考えてみました。
(ここでいうウェブメディアは、中堅程度のキュレーションメディア等を指します。例えばNewsPicksのように、独自の取材記事などがメインになるメディアはウェブメディアというよりは、雑誌メディアのウェブ化のように感じます。)

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■視点・切り口
雑誌メディア=トレンドや媒体が先導
ウェブメディア=読者目線

この「視点・切り口」の違いが、雑誌とウェブの最大の違いです。雑誌で扱うテーマは常にトレンドや媒体が先導してきました。つまり、雑誌自体が「いろいろなブームを先導してきた」のです。例えば「Cancam」はエビちゃんOLというブームを巻き起こしましたし、その昔、雑誌「Hanako」の読者層が時代を象徴する女性像となり、1989年にはHanako族という言葉が流行語大賞にもなりました。
雑誌がトレンドを先取りしてブームを作り、雑誌に載っているモノやライフスタイルを追い求めているという図式が出来上がっていたのです。

対して、ウェブメディアに求められるのは読者目線です。ウェブメディアは読者が日常気になっていた課題を解決するような記事が好まれます。例えば、女性向けメディアであれば「伸ばしかけの前髪のアレンジ方法」や「可愛すぎない大人の花柄モチーフコーデ」などです。前者の記事は、前髪を伸ばしかけの女性の課題を解決し、後者は花柄モチーフが流行していても、可愛すぎて着れないと思っている女性の課題を解決します。

このように、雑誌メディアが「これを買うといいですよ。こういう生活が素敵です。」と、ライフスタイルの提案をしてきたのに対して、ウェブメディアは「あなたの課題を解決しますよ」という読者に寄り添った切り口になっているのです。
この両者の違いは、集客方法の違いに起因します。ウェブメディアの集客導線の多くは未だに検索流入です。検索の集客を最大化するということは、すでにある課題(=検索ワード)への回答を用意することが最適解だからです。

■ビジュアル
雑誌メディア=ビジュアルはコンテンツそのもの
ウェブメディア=ビジュアルはテキストのアイキャッチ

雑誌メディアにおける写真などのビジュアルは、コンテンツそのものです。これは、雑誌のサイズが大きいというハコの形状が影響しています。
雑誌におけるビジュアルはカメラマンが撮影したり、イラストレーターが専用に描き起こすため、非常にクオリティの高いものになっています。

対して、ウェブメディアのビジュアルは、テキストのアイキャッチ的役割が強くなっています。文章中に差し込まれた写真を目で追いながら、合間のテキストを流し読みする構造になっています。
ウェブメディアでも今後はビジュアルがコンテンツの主軸になっていく可能性はありますが、1記事あたりにお金をかけられないというウェブメディアの特性があるため、多くのウェブメディアはゼロからビジュアルを起こすということは、あまりしていません。
また、ウェブの世界は限りなく「視点・切り口」が読者寄りになっているため、プロが撮った完璧な写真よりは、消費者が撮った生活感のある写真の方が好まれたりもします。

■ライティング
雑誌メディア=正確性、専門知識
ウェブメディア=大量生産、個々の要素をまとめる力

雑誌メディアにおけるライティングには、正確性と専門知識が求められます。一度紙に刷ってしまうと修正が出来ないため、ことばの表記や「てにをは」など、厳密にチェックされます。そして、正確性とともに専門知識も重要です。映画媒体であれば、年間映画を10本しか観ない人よりは、年間映画を100本観る人の方が中身が厚い記事を書くことが出来ます。
ファッションについてもトレンドの源流になっている海外コレクションの最新情報や、ファッションの体系的情報を得ている人の方が中身の濃い記事を書くことができます。

一方、ウェブメディアのライターには記事を大量に生産することが求められ、編集者にはそれを管理する能力が求められます。先の理由により、ウェブメディアの集客はSEOが主軸なので、1記事あたりのアクセス数から逆算すると、記事を量産する必要があるからです。
そして、記事のジャンルとしてまとめ記事がメインになってくるため、一見脈絡のないものを一つのテーマでまとめる力が求められます。例えば、今年の旬のファッションアイテムがニットセットアップであれば、ニットセットアップのビジュアルを探して出してまとめたり、「意外とご飯のお供にしたら美味しかったモノ」というくくりを与えて食材のまとめ記事を作るなどです。

雑誌メディアが専門知識を使った深堀りを得意とするのに対して、ウェブメディアは分かりやすい解説やまとめに主軸においています。

■求められる重要なスキル
雑誌メディアの編集者=読者を引きつける取材、文章力
ウェブメディア編集者=マーケティング(SEO、ソーシャル)、コスト管理

ということで、これらをふまえた上でそれぞれの編集者に求められるスキルを整理すると、このようになります。雑誌メディアの編集者に求められるのは、そのまま「編集」スキルです。しかし、ウェブメディアの編集者には、マーケティングとコスト管理という全く異なるスキルが求められます。
ウェブメディアは特性上、1本あたりの原稿で出来るだけ多くの人を集客しなければなりません。ですから、SEOを考えて記事の原稿タイトルを決めたり、出来るだけソーシャルで拡散しやすい題材という集客から逆算をしたコンテンツの設計をする必要があります。かつ、大量の原稿を作成する必要があるため、1本あたりいくらという厳しいコスト管理が求められるのです。

雑誌メディアが編集に徹していられるのは、収益とコンテンツが切り離されているからです。雑誌は雑誌全体でブランディングされ、想定される購買読者層がおり、その購買層にリーチしたい広告主がいます。雑誌は、どのページがどのように読者に響いたのかという効果測定をしません(というか出来ません。)
しかし、ウェブメディアは1ページあたりのユニーク数やPV数が測定できるため、収益とコンテンツが直結しており、コンテンツが収益のために最適化されていきます。この最適化をするのがマーケティングなのです。

ということで、雑誌メディアとウェブメディアの編集者に求められるスキルの違いを解説してみました。この違いの根幹にあるのは「収益とコンテンツが分離しているか否か」及び「1本の原稿あたりにかけられる費用」の違いです。
つまりウェブメディアが雑誌メディア並みにリッチな媒体になるには「収益とコンテンツが分離している」状態を作り(=メディア全体としてのブランディング)、「1本の原稿あたりにかけられる費用が雑誌並みに高くなる」必要があります。

そういう意味では、課金モデルで収益化を実現している「News Picks」は「1本の原稿あたりにかけられる費用が雑誌並みに高くなっている」状態にあると思いますし、話題のニュースを掘り下げ、専門性の高い記事を提供している「Buzz Feed」は「収益とコンテンツが分離している」状態を目指しているのかなと思います。

このように雑誌メディアのウェブ化とも言えるウェブメディアが増えてきているように思います。私も雑誌世代として育った年代なので、こういうったメディアが増えたほうが、読みごたえがあるなと思う次第です。

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