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シーチキンでマーケティングしみてる。マーケティングの考え方とは。

日常の気づきからマーケティングがはじまる

ある日、シーチキンってすごいやつなのではないかと思いました。シーチキンを使った有名レシピ、無限ピーマンをご存知でしょうか。ピーマンにシーチキンをまぜてチンしたものです。
世の中には、シーチキンを使った美味しいレシピがあふれています。シーチキンを食べている時に、実はシーチキンってすごいのではないかという気付きを得ます。マーケティングの起点は、日常の気づきや違和感から出発するのです。

気づきをデータで確かめる

しかし、気づきは気づきでしかありません。マーケティングの重要な要素として、気付きをファクトデータを持って正確にとらえるという作業に移行します。
シーチキンという商品カテゴリはすでに成熟市場でしょうから、シーチキンを販売している会社内での売上シェアを調べてみます。(ここで、ググった結果、シーチキンという名称ははごろもフーズだけが使える名称であり、正しく商品カテゴリを表すのであればツナ缶であるということが判明します。しかし、ツナ缶におけるシーチキンのシェアは5割を超えているようなので、シーチキンはツナ缶カテゴリを代表するもので良いでしょう。)

ということで、はごろもフーズのIRを見てみましょう。
(マーケティングにおける情報収集において、有効なデータのひとつがIR情報です。売上や利益の推移のみならず、各事業の主要KPIが決算報告書にて開示されている場合が多いからです。)

ということで、2018年3月期のはごろもフーズのIRを見てみます。

はごろもフーズ株式会社
平成30年3月期決算短信
https://file.swcms.net/file/hagoromofoods/dam/jcr:7edf4618-7cc0-43b9-a918-1f58514ef87e/140120180514437179.pdf

はごろもフーズにおける家庭用食品売上高は635億5,111万円ですが、そのうちツナカテゴリの売上は342億7245万円です。家庭用食品売上に占める割合は43%にのぼります。
シーチキンのツナ缶におけるシェアが5割以上ということは、ざっと計算して700億前後のツナ缶が年間に流通しているということになります。こちらの市場調査レポートによるとツナカテゴリの2017年の市場規模は790億円となっています。

多種多様な志向に対応した商品の育成進む
農産・畜産・水産加工品・乳油製品74品目の加工食品国内市場を調査
https://www.fuji-keizai.co.jp/market/17028.html

この結果を見ても、シーチキンはすごいやつと言えそうですが、比較対象の軸を増やす必要があります。それは、同じような商品セグメントとの比較をすることです。データは、比較をして初めて意味が生じます。

先ほどのレポートの中で、20品目の水産加工品(魚肉ハム・ソーセージや海苔など)の2017年の市場規模は8,703億円となっています。ということは、ツナは20品目の水産加工品全体の市場規模の9%を占めるということになります。ということは、ツナ以外の水産加工品に比べて、単純計算でツナは2倍すごい(流通している)ということになるうですね。

これで肌感覚で感じた「ツナってすごいやつなんじゃないか」が、ファクトデータによって「すごいやつだった」ことが実証されました。

得られたファクトを、仮説を以って抽象概念化する

さて、ツナがすごいやつであることが分かりました。だいたいのリサーチやマーケティングレポートは、ここで終了していることが多いです。ツナはすごいやつでした。以上。

マーケティングにおいて重要なのは、この後です。日常の気づきや違和感をデータで確かめ、事実として確定させる。その後、このファクトを仮説を以って抽象概念化するのです。
なぜツナは水産加工品セクションにて、強い商品カテゴリになっているのでしょうか。以下のような仮説が導き出されます。

・副菜の具として、ツナ缶が向いている

ツナ缶を使う時、何に使うでしょうか?ふつうはサラダに入れたり、炒め物に混ぜたりします。そう、ツナ缶はそれ単体で主役になることはありません。だいたい主菜に加えるもう1品として、副菜に活用されることが多いのです。
副菜に使われるということは、食材の登場回数が多いということになります。週に2回以上夕飯にハンバーグを食べることは少ないと思いますが、ツナ缶は副菜に”投入される”ものなので、月曜はサラダに混ぜて、金曜日は炒め物に混ぜて、と週に2回以上食卓に登場してもおかしくありません。

この点を中小概念化すると、ツナの強みのひとつは

〇副菜に対する混ぜ物である=ゆえに食卓での登場回数が主菜よりも多くなる

という仮説が立てられます。

さらに、ツナに対してもうひとつの仮説が導き出されます。無限ピーマンのレシピにおいて、ツナは具のひとつですが、味付けとしても機能しているのです。ツナはマグロの油缶なので、オイルとともに塩味が足されています(最近はノンオイルも流行りですが)。ゆえに、ツナ缶は、具のみならず味付けの調味料としての役割もになっているのです。

これを補間するデータもあります。以下の総務省のデータを見ると、年間支出額が成長軌道にのっているのはお酢とドレッシングの2つのみです。お酢は健康志向のトレンドが影響していると思われますが、ドレッシングは買ってきてそのまま野菜にかけられる調味料です。オイルや食塩を混ぜ合わせてドレッシングを作るよりは、買ってきてそのまま使えるドレッシングが使われているということです。

調味料への支出
http://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/23_9.pdf

また、下記データによると2014年頃まで合わせ調味料の市場が伸びていることが分かります。個々の調味料を使うよりは、それひとつで済ませられる調味料の利便性があがっているのです。

メニュー用調味料、成長加速 市場規模5%増 640億円規模へ
https://www.ssnp.co.jp/news/seasoning/2014/09/1409290003518850.html

ということで、ツナのふたつめの強みとして以下があげられるでしょう。

〇他の食材と合わせることで、調味料にもなる

抽象概念化を、具体化して転用する

ということで、ツナ缶が強い理由について、下記の抽象化した仮説が得られます。

〇副菜に対する混ぜ物である=ゆえに食卓での登場回数が多くなる
〇他の食材と合わせることで、調味料にもなる

この抽象化した概念を他の市場や商品に当てはめて、具体的に転用することではじめて今までのリサーチやマーケティングの概念が生きてきます。

例えば、同じ水産加工品の缶詰といえば「鯖缶」があげられます。「鯖缶」も人気の缶詰であることは間違いありませんが、流通量でいえばツナ缶よりは劣るでしょう。
先ほどの抽象概念を「鯖缶」に当てはめると、2つとも条件として欠落しています。その理由は何でしょうか。仮説になりますが、それは鯖缶の形状に寄ります。
ツナ缶はフレーク状ですが、鯖缶はサバの形状をとどめており、自分で身をほぐせば混ぜ物にも出来ますが、どちらかというと主役感が強いのです。
ツナ缶はフレーク状にすることで、暗に「混ぜ物ですよ」アピールが出来ているんですね。

この公式に当てはめると、鯖缶もフレーク状にして混ぜ物であることをアピールすれば、食卓での登場回数が多くなる可能性がありそうです。

さらに、これは魚介類ではなくて他の食品カテゴリに当てはまるとどうなるでしょうか。例えば、漬物を作っているメーカーがこの概念に注目して商品開発をした場合、漬物を細かく粉砕し、つけ汁ごと商品化することが考えられます。漬物が細かく粉砕されているのでおにぎりの具にもなりますし、炒め物やサラダのアクセントにもなります。そして、つけ汁が調味料の役割を果たしてくれるのです。

このように、マーケティングは日常の気づきや違和感からはじまり、その気づきのデータによるファクト化、抽象概念化、概念を具体化して転用するというステップを踏みます。

この抽象概念を引き出しにたくさん入れておくことが、すぐに役立つアイデアの引き出しとなります。