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WEB広告を出稿する前後にやっておくべきこと6点

WEB広告をなんとなく出稿てしまって、結果が良かったのか悪かったのかがふんわりしていることが多いと思います。WEB広告を出稿する前と、その後にやっておくべきことを解説します。

出稿前にやっておくべきこと

■1 顧客あたりの広告予算を決めておく

広告を出稿した後は、費用対効果を分析する必要があるので、まず顧客ひとりにかけられる広告予算を設定します。saasなどのサブスクリプションのサービスであれば、1人あたりの顧客が生み出す収益を割り出し、そこから原価と利益を引いた額の何割かを広告予算に割り当てて良いと言うことになります。

▼saasなどのサブスクリプションサービスにおける1顧客あたりの広告予算
下記を割り出した上で販売管理費のうち、1顧客にかける広告予算を決定する。

LTV(顧客あたりの月額売上÷月間退会率)ー1人あたりにかかる原価=1人あたりの販売管理費+利益
→広告費は販売管理費に含まれるため、販売管理費から広告予算を按分する。

■2 カスタマージャーニーから広告フローを作成する

カスタマージャーニーというのは、顧客が商品の購入に至るまでの思考、行動、感情などをモデル化したものです。ユーザーへのインタビューなどを通して作成します。例えば旅行代理店であれば、旅行への申し込みをするまでのユーザーの行動をモデル化します。例えば、ユーザーが旅行に行く前には「〇〇(目的地) 格安」といったクエリで検索するという情報が得られれば、広告においてはリスティング広告が必須だということが分かり、さらに有効な検索クエリへの手がかりも得られることになります。

カスタマージャーニーは顧客のペルソナごとに何種類か作成することをおすすめします。その上で、最終的に広告フローを作成します。商材によっては、直接コンバージョンに影響しなくても、認知のみを取る広告を組み合わせる必要がある場合があります。(主に不動産や車などの高価格商材が当てはまります。)
認知を取る広告、認知後の顧客を誘導する広告、コンバージョンに直接影響する広告など、AISASのモデルに沿って広告をフロー化していきます。

カスタマージャーニーで得られた顧客とのタッチポイントを整理した上で、広告フローに落とし込み、認知獲得の広告にいくらかけるか、コンバージョンに繋がる広告にいくらかけるかを割り振ります。

ただし、このステップについては、特に顧客単価が高い商材について有効なので、商材が数千円程度の化粧品であったりした場合は、簡易にやって良いステップだと思います。

■3 広告代理店に委託するか判断する

自前で広告を運用するか、それとも広告代理店に委託するかを判断します。自前で運用する場合は、自社にノウハウは溜まるというメリットはありますが、人材をアサインする必要があるのと、ノウハウが溜まるまでにトライ&エラーが生じるというデメリットがあります。代理店に委託した場合は、運用人材はアサインしなくても良くなり、短期間で効果が出やすいというメリットがありますが、自社に細かいノウハウは溜まりづらい、代理店フィーが出稿額の15~30%程度かかるというデメリットがあります。

また、広告代理店に委託する場合はミニマムの出稿金額が決められているため、月額の出稿金額が100万円に満たない場合は、自前ではじめられることをおすすめします。

■4 広告流入ごとの成約(コンバージョン)が計測できる設定をしておく

意外と広告流入ごとの成約(コンバージョン)を計測していないケースがあります。アプリプロモーションの場合は、広告代理店に委託すると、自動的にadjustなどのコンバージョンが計測できるツールの導入前提で出稿することが多いのですが、WEBプロモーションの場合はアナリティクスなどの計測ツールにて、コンバージョン設定を自社で行わなければなりません。
例えばダイレクトレスポンス系の商材であれば、申込完了ページにコンバージョンを設定しておきます。そして、WEB広告への出稿URLに流入先を判別するためのUTMパラメータを付与することにより、コンバージョンに到達したユーザーの流入元が分かります。

出稿後にやっておくべきこと

■5 広告レポートの把握と次回アクションの設定

出稿が完了したら、広告レポートの把握と次回アクションの設定をする必要があります。チェックポイントとアクションは下記の通りです。
  • 広告ごとのコンバージョン件数を割り出し、広告ごとの獲得単価を計算
    (ただし、広告モデル作成時に認知を取るために指定していた広告はそもそもKPIがコンバージョンではなくて閲覧数などになるため、この限りではない。)
  • 広告ごとの獲得単価が、顧客あたりの広告予算を超えていないかチェックする
  • 広告ごとのインプレッションやCTR(クリック率)を計測して、広告クリエイティブの最適化を行う
    →代理店に委託している場合は、この点のレポートや提案をもらうことが出来ます。
  • 上記の結果から広告予算の再調整や、ランディングページの改修、クリエイティブ最適化などを行う。

■6 広告流入ごとのユーザーの継続率を計測する

saasなど顧客の継続率が重要な商材の場合は、広告流入ごとにユーザーの継続率を数か月単位で追った上で、予算を再分配した方が効率的な場合があります。単月で見て顧客あたりの単価が安く抑えられていたとしても、他の広告に比べて解約が早ければ、結果的に一件単価が高く見える他の広告の方が効率が良くなるからです。

コンバージョンの前提が会員登録である場合は、登録時に広告パラメータを会員データベースに紐づけて、広告ごとの退会率を取れるようにするのがベストです。特に会員登録がなく、単純にサイトへの再訪という観点での継続率を取りたい場合は、アナリティクスで集計するには以下の2つの方法があります。

1.コホート分析
2.UTMパラメータにてセグメント設定を行い、当該期間におけるユーザー数とセッション数の割合を見る

1番目のコホート分析は、UTMパラメータで設定しておいた広告経由ごとの継続率が見られます。2番目はUTMパラメータでセグメント設定をしておき、当該期間にてユーザー数とセッション数を比べるとどの程度のユーザーが再訪しているかが分かります。例えば広告A経由のセグメント設定をしたとして、このセグメントにおける3か月のユーザー数が1,000、セッション数が3,000とすると、1ユーザーにつき平均3回訪問していることになります。

ということで、WEB広告を出稿する前と後にやっておくべきことでした。

落語とミステリー小説が似ている理由

ミステリーの叙述トリックのごとく、情報を欠落させる落語

落語家の立川志の輔さんの新春落語を観に行ったのですが、はじめて落語を観たんですね。そして、大変に面白かったのですが、立川志の輔さんが「落語って不思議なもので、実態がないんですよ。舞台装置もなくて、人も一人しかいない。じゃあ実態はどこにあるのかってお客さんの頭の中にしかない。」っていう話をされていて、確かにそうだなと思いました。

落語は派手な舞台美術もなく、落語家さんが一人で座布団の上に座って、話をするだけなんですね。だから、落語という芸能において、コンテンツはどこに存在するのかと言われると、お客さんの頭の中にあります。
落語のしくみは、落語家さんが話の情報をわざと欠落させた上で、お客さんの想像の裏をかいて笑わせるというものです。立川志の輔さんの落語のワンシーンでこんなものがありました。

「先生、最近毎朝コーヒーを飲むたびに目が痛いんです。そんな病気あるんでしょうか。」
「コーヒーを飲んで目が痛い?どれ、毎朝どんな感じでコーヒーを飲んでいるか、ここでやってみてください。はー、なるほど、コーヒーカップに、コーヒーの粉を入れて、お湯を注いで、かきまぜて、飲む、飲む、飲む・・・。ってあなた、原因が分かりましたよ。」
「原因が分かったんですか?」
「そりゃ、目が痛くなりますよ。あなた、コーヒーを飲むときは、スプーンを取って飲みなさいよ。」

ということで、オチはコーヒーカップをかきまぜたスプーンを取らないから、それが飲むときに目に刺さっていたということなんですね。ここで興味深いのは、ミステリーの叙述トリックのごとく、さりげなくコーヒーをかきまぜるという表現によってスプーンの存在を示唆するものの、明示はしてないんですね。コーヒーを飲んでいる人の情景を見ている側(先生)が描写することによって、観客はこういう風に飲んでいるんだろうなという情景を想像するようになります。
観客の想像の中ではコーヒーのスプーンという存在は欠落しており、最後の先生の一言のせいで、自分の想像の中にコーヒースプーンが目に刺さっているという状況が足りなかったことに気づき、その意外性の落差によって笑いが生まれるのです。

ということで、落語はあえて「言わない、見せない」ことによって、観客の想像力にゆだねて、最後のオチでその想像の裏をかいて意外性で笑わせるという構図になっています。

コンテンツが明示して存在しないことにより、お客さんの頭の中にコンテンツが生まれるのです。

落語は演者が一人、小道具もセンスと手ぬぐいだけ、さらに演者はざぶとんに座っているので上半身のアクションしか取れないという、究極にコンテンツが省かれた演芸です。逆にいうと、その分お客さんの想像という余白が入る余地が大きいので、そこに笑いが生まれる余地があるということになります。

これに、下半身の動きを加えて演者をもう一人増やすことにより、表現領域が広がったものが漫才とかコントなのだと思います。

小説なども同じく、あえてコンテンツの箇所を抜いて余白を作ることにより、読み手に想像させるという作りになっています。例えばこのような文章があったとします。

A氏はエレベーターに乗り込むと5階へ向かうボタンを2、3度連打した。エレベーターのドアは朝晩開閉されるお城の門のように、重々しく締まった。A氏は3分前にも眺めた腕時計に再び視線を落とした。エレベーターの乗降スピードはまるで亀の歩みのように感じられた。

この文章中には、A氏は急いでいてイライラしている。という直接的な表現はありませんが、A氏のしぐさや比喩の表現により、A氏が急いでいてイライラしている情景を想像することが出来るのです。

こういった表現からA氏の心情を察することは文脈を読む力であり、国語のテストでも「A氏のこの時の気持ちを次の4つから選べ」みたいな問題が出てきます。

ちなみに、前にも日本人は特に言葉遊び好きで文脈を読むことに長けているというブログを書いたことがあるのですが、近年は文脈を紡がないでそのまま描写するコンテンツが増えてきているように思います。ライトノベルや電子コミックで人気の漫画などを見ると、読者の想像にゆだねる余白はなくて、全てを書き切っている、イメージです。主人公が悲しい時は主人公に悲しいと言わせ、くやしいときはくやしいと言わせるんですね。

落語のようにコンテンツの引き算(余白)がない場合は、コンテンツの強さそのもので表現することになり、過激な方向に進む傾向があるように思います。電子コミックの人気タイトルもデスゲームとかグロなどの、存在自体が強いコンテンツになっていると思うのです。食べ物に例えると落語はだしをひいたおすまし、電子コミックは豚の背油が入ったラーメンでしょうか。

ということで、コンテンツを100%表現しきるか、あるいは表現を間引くことによりお客さんの頭の中に存在させるのかというお話でした。