日別アーカイブ: 2017年11月6日

任天堂が、市場に欠けているピースを見つけるのが上手い理由

新規の事業やサービス、プロダクトを作る際に重要なのは、今起こっている現象において「欠けているピース」を見つけることです。例えば、どこかの街で八百屋さんを始めようと思ったとします。その街での野菜の消費量のデータを見たところ、とびぬけて大根の消費量が高かったとしましょう。すると、たいていは大根が売れているようだから、たくさん大根を仕入れよう、という結果になりますが「欠けているピース」を探すのがうまい人は「大根がたくさん売れているのは、単に産地が近くて安いという理由だから、その他の野菜も仕入れルートを開拓して値段を下げれば大根に飽きている人たちに、たくさん売れるはず」と、目の前に見えている現象に欠けていることをさぐろうとします。

任天堂は常にゲーム機においてコレをやってきたと思うのです。ニンテンドーWiiは、プレイステーションなどのゲーム機がどんどん高機能化し、マニアックなゲームユーザー向けになっている現象を見て、お母さんや子供たちも一緒に遊べる家庭用ゲーム機のピースが欠けていることに気づいて投入されたゲーム機です。

その後、スマートフォンの普及を受けてソーシャルゲーム全盛となり、もうコンソール機の需要はなくなるのではないかと言われている中で「本当のゲーム好きが遊べるハードウェアがない」という欠けているピースに対して発表したのが「ニンテンドーSwitch」なのだと思います。

任天堂以外にも、急成長を遂げる会社というのはこの「欠けているピース」を探すことに長けています。「欠けているピース」は人々の直感に反する(家庭用ゲーム機が売れるわけがない、ソーシャルゲーム全盛の時代にハードウェアなど買わない)ため、大企業が資本を投下して入りにくいからです。
例えばLINEもスマートフォン時代になってからメールというソリューションが遅れていることに気づいた会社ですし(正確に言うと先行のカカオトークの方がより先にそれに気づいていたわけですが、その市場が爆発的に成長すると確信して資本を投下し続ける決定が出来たのはLINEですね)、同じくメルカリもスマートフォン時代になってからオークションではなくて簡単にモノのやり取りをしたいと気づいた会社ですね(これもLINEと同じくすでにフリマアプリの競合は数社存在していましたが、市場の爆発的な伸びを最も確信していたのはメルカリでしょう。)

このように、急成長を遂げるためには欠けているピースを見つける力が非常に重要です。ペイパル創業者の一人であるピーターティールが著書の「ZERO TO ONE」にて「競争するな、独占せよ。」「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」と問いかけているのは、まさにこのことだと思います。

このピースを見つけることが上手い条件のひとつとして「物事を構造化してとらえられる体系的な知見」が挙げられますが、加えて最も強いのは自分自身が顧客であるという当事者の場合です。
例えばアメリカで急成長と遂げたチャットサービス「スナップチャット」は、投稿から一定期間で投稿した写真やテキストが消えるというサービスでした。チャットサービスがすでに爆発的に流行っているという現実だけ見ると、もはや参入余地がないように見えますが、それを使っていた当事者の若者にとっては「バカみたいな写真とか、うんこって送ったらずっと履歴が残るのは嫌だなあ」というニーズがあったわけです。

そして、任天堂も同じくこの当事者である顧客の視点を持ち続けていることが非常に強いことなのであろうと思います。それゆえにハードウェアにおいて時折失敗をしつつも、当事者視点がブレないため、その時において欠けているピースに気づき、そこのハマるプロダクトを提供し続けることが出来るのです。

それは創業者である山内溥氏の「任天堂は娯楽の会社で、娯楽以外はしないほうがいい。」という言葉にも現れています。徹底的に娯楽を扱い、娯楽についての当事者意識を持っているからこそ、娯楽を求める顧客にとって大切な価値を気づけるのでしょう。

これは「儲かっている市場に投資して、儲かるのであればどんな事業であってもやる」という昨今の新興企業とは異なるフィソロジーです。企業が長期的に存続し続けるためには、ある市場において企業文化レベルで当事者になることが出来るフィソロジーが重要なのかもしれません。