月別アーカイブ: 2016年7月

スティーブ・ジョブズは、なぜ子供たちにiPhoneを持たせなかったか

スティーブ・ジョブズが子供達にiPhoneを触らせないと言ったのは有名な話ですが、ドワンゴの会長の川上さんもインタビューにて子供にはスマートフォンを触らせないと言っていました。イノベーターの人たちが、こぞって自分の子供たちにはスマートフォンを触らせないというのは象徴的な気がします。

スマホやタブレットに慣れると、本を読むことがきつくなる!?


数年前、当時大学生だった男の子と話をする機会がありました。彼は、大学の授業にはタブレットを持ち込んで授業のメモを取っていて、ペーパーレスな生活を送っていたそうです。しかし、ある時気付いたら、前はよく読んでいた本を読むことが苦痛になり、授業の内容も頭に入ってこなくなったそうです。それ以降、タブレットを持ち歩くのをやめ、代わりにカバンに文庫本を数冊入れて持ち歩くようにしたのだとか。

先日もIT業界の人と話していて「静止しているテキストを読むことが辛くなった」という話題になりました。フェイスブックやツイッターは見るたびに情報が更新されていく動的な情報群です。目の前を流れていくフローの情報を延々眺めていることに慣れると、本のようにそこに変わらぬ情報が静的に存在する文章を読み込むことが辛くなるのです。

体系的な知識を身につけるためには、ストックの知識が必要


どんな学びもそうですが、何かを真剣に学ぶためにはストックの知識を貯めることが必要です。英語を学ぶためには、文法や単語をひたすら暗記するというストックの知識を地道に積み重ねなければなりません。ストックの知識が積み重なって知識の土台ができると、学問についての体系的な知恵が身につくため、フローの知識を入手した際に、その体系的な箱のどこかに情報を組み込んで活用することができます。
逆に言うと、ストックの知識という土台による体系的な知識の枠組みがなければ、目の前を流れるフローの情報は、そのまま頭の中を素通りして通り過ぎていきます。
例えば何処かの会社の株価が急騰した。というニュースを見たとしても、その株価の急騰が何を意味するのかを判断するには、株価に対する基本的な知識やその会社の過去の株価の経緯、競合他社の動きなどの構造的な知識がなければ、その情報の価値が判断できません。

このようにストックの知識を身につけることは、フローの情報の価値を判断する上でも大切なことです。ニュースキュレーションアプリのNewsPicksでも、プロピッカーと呼ばれる専門家の方々によるニュースの解説が面白いのは、バックグランドにある膨大なストックの知識に裏打ちされたコメントだからです。

しかし、冒頭のように恒常的にインターネットに接していると、ストックの知識を身につけることが苦痛に思えるようになり、ひたすらフローの情報を追うようになります。しかし、体系的な知識の枠組みがなければフローの情報を活用することが出来ないため、ひたすらその情報単体でインパクトのある情報を追い求めるのです。

よくその人の賢さは質問力に出るといいますが、これはコメント力にも当てはまることです。何かの情報に対してコメントするということは、その情報に対しての体系的な知識を持っているかが試されるからです。
この体系的な知識を持っているかどうかを、うやむやにするコメントが「後で読む」「良記事」などの語句になります。(そして、しばしばインターネット漫画などでそれらのコメントが揶揄されます。)

ということで、インターネットは基本的にフローの情報の洪水社会です。この洪水から、価値のある情報を見極める目を養う上でも、ストックの情報をみにつけて体系的思考を身につけることは重要だと思います。

ポケモンGOの次に、AR化されそうな人気ゲームを調べてみた

社会現象化しているポケモンGOですが、この成功を受けて人気のゲームタイトルが続々とAR化されそうです。ということで、AR向けのスマホゲームとして移植されそうなゲームタイトルを調べてみました。

カメラで霊を封印するホラーゲーム「零」シリーズ

12249428924903252c4310b出典:http://matome.naver.jp/odai/2133006840490598401/2133009074491549803
主人公は射影機(しゃえいき)という特殊なカメラで霊を封印する


第1作目が2001年にテクモ(現コーエーテクモゲームス)からPS2にて発売されたホラーゲームシリーズです。主人公は、屋敷を探索しながら幽霊を写すことができる特殊なカメラを使ってヒントを集めていき、カメラで撮影することによって霊を封印します。シリーズの累計発売本数は130万本となっており、ARにマッチした世界観と言えるでしょう。
もしAR化された場合は、街に出現する霊をカメラを使って封印していくという仕組みになりそうですが、この後に続く「デッド・ライジング」とともに、ホラーゲーム特有のある問題があります。

ゾンビを次から次へとなぎ倒す「デッド・ライジング」

wall_1024_14出典:http://www.capcom.co.jp/deadrising/main.html
大量のゾンビをなぎ倒すのが快感だという声も

2006年にXbox 360用のゲームとして第1作目が発売され、今までにシリーズ3作品が発売されている人気タイトルです。全シリーズ通して、街中にゾンビが大量発生するという設定の中、ショッピングモールなどの隔離された場所に主人公たちが閉じ込められるというストーリーになっています。特徴的なのが、レベルが上がっていくと主人公がかなり強くなるという点で、ショットガンなどの銃器で敵を狙い撃ちするFPS的な要素があったり、車やバイクなどに乗ってゾンビを轢き殺すタイムアタック的なミニゲームがついていたりします。
もしAR化された場合は、街中に溢れるゾンビや、街角からそっと覗くゾンビをショットガンで狙うなどの世界観が考えられます。

しかし、ホラーゲームについてはARゲーム化しにくい特有の事情があります。ホラーゲームは、おどろどろしい世界観があって初めて成り立つものです。目の前に霊やゾンビが出現しているのに、その周辺を近所のおばちゃんが何食わぬ顔で歩いていたら、雰囲気がぶち壊しになります。ということを考えると、この辺りの「ホラー系AR」については、USJなどのグローズドな環境で行うのが良いのかと思います。実際USJではハロウィンホラーナイトという名でゾンビを徘徊させるイベントや、バイオハザードなどのアトラクションも行っており、親和性が高そうです。
逆にエリアを限定しないのであれば、ソーシャルゲームで流行した「ゾンビファーム」系のゲームのように、デフォルメしたゾンビたちを登場させるなどの工夫が必要でしょう。

恋愛シミュレーションゲーム「ラブプラス」

514750NPSAL出典:amazon
デートスポットを増やしていくシステムも搭載

2009年にコナミデジタルエンタテインメントから、ニンテンドーDS向けに第1作が発売された恋愛シミュレーションゲームです。恋愛シミュレーションゲームといえば、意中の相手とデートを重ねながら好感度を上げるプロセスが欠かせません。好感度が上がると、特定のイベントが発生するのも楽しみの一つです。もしAR化された場合は、意中の相手と実際にデートスポットに出かけることが出来て、限定のイベントが見られるというような仕掛けが想像できます。「ラブプラス」ではゲーム内にデートスポットを増やす機能が入っていたようなので、実際にデートスポットに訪れると限定イベントが起こるというのは親和性が高いように思います。

お気に入りのペットとお出かけ「どこでも一緒」

8tnu010000021j76 出典:http://www.jp.playstation.com/dokodemoissyo/index.html
ポケットステーションという持ち歩き専用のモバイル端末も発売された

1999年にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたPlayStation用ゲームです。ネコのトロなど、動物のキャラクターたちとのコミュニケーションを楽しむゲームです。ポケットステーションという専用の持ち歩き用のモバイル端末に入れて一緒にお出かけをすることが出来ます。実際にAR化された場合は、スマホの中で一緒にお出かけをし、外出先で記念撮影が出来るなどの機能が考えられます。基本的には「仮想の誰か」を現実に投影するという点で恋愛シミュレーションゲームと同じカテゴリになります。

素材を集めて合成する錬金術「アトリエ」シリーズ

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出典:http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0103npjj00121_000000000000000001.html
素材を集取し、合成して錬金術を行う

1997年に発売された「マリーのアトリエ」など、一人前の錬金術士を目指す主人公が、いろいろな素材を集めて合成していくゲーム「アトリエシリーズ」です。この「収集」と「合成」というキーワードが一番ARに向いているゲームシステムのように思います。(「ポケモンGO」も収集のゲームですね。)実際にAR化された場合は、錬金術に使う素材を街に収集しに出かけ、合成をして錬金術のレベルを上げていくというシステムが想像できます。

おそらく今後ARのスマホゲームで最も多くなるのは、この収集系のゲームになるのではないかと思います。
レストラン経営系のゲームは、スマホのアプリゲームでも人気のジャンルですが、食材を各地に収集しに行くというシステムは親和性が高い機能です。
ただ、収集されるアイテムの数が限定される場合は、汎用性が低くなるのであまり向きません。例えば「ドラゴンボール」は7個しかボールが存在しないため、入手が非常に困難になります。「ドラゴンボール」など個数が限定される場合も、先ほどのホラーゲームと同様にUSJなどのクローズドな環境で行うアトラクションには向いていると言えるでしょう。

リアルAR人狼

これは既存ゲームタイトルの移植というわけではないですが、人狼のようにリアルで行うテーブルゲーム的なゲームも、ARに向いているかもしれません。例えば人狼はプレイヤーの中に潜んでいる人狼を見つけ出すゲームですが、プレイヤーには与えられた役があり、占い師の役が与えられた人はプレイヤーが人狼かどうかを見破ることができます。これをARで行って、人狼であった人が実際に人狼の顔に変化するなどしたら面白いかもしれません。
リアルボードゲームもARの演出によってさらに楽しくなる可能性があります。

ARを使ったゲームの種類まとめ

ここまでARの活用でスマホに移植されそうなゲームタイトルを挙げてみましたが、基本的にARの活用は以下のパターンに分けることができそうです。
  • 探索して攻撃(ホラーゲームやFPS)
  • 仮想キャラと時間を共有(恋愛ゲーム、どこでも一緒)
  • 収集する(ポケモンGO、アトリエシリーズ)
  • 特定の場所でイベント(ポケモンGO、恋愛ゲーム)
このARを活用した基本のパターンに、さらにゲームシステムが乗っかってきます。例えばポケモンGOであれば、このよう感じです。

▼ARの活用
  • 収集する(ポケモンを収集)
  • 特定の場所でイベント(ジムでポケモンを戦わせる、ポケスポット)
▼乗っかってくるゲームシステム
  • 強化する(ポケモンの強化)
  • 合成する(ポケモンの合成)
ということで、しばらくは収集する系のARを活用したゲームのリリースが相次ぐのではないでしょうか。そして、同様にホラー系ARなど世界観を重視したAR系のゲームアトラクションが、半年以内にUSJさんで開催されるような気がします。

ポケモンGOに見る、テクノロジーよりもコンテンツファーストな件

海外で先行リリースし、日本でのリリースがまだかまだかと言われていたポケモンGOが本日リリースされました。既に任天堂の株価急騰がYahoo!トピックスを飾っており、日本でも社会現象になることは間違いなさそうです。

今回の件を見ていて思うのが、テクノロジーが流行してブレイクスルーする時は、テクノロジーファーストではなくて、コンテンツファーストであるということです。

ポケモンGOは現実世界のマップとリンクし、目の前の現実に現れるポケモンをゲットするというAR(拡張現実)を使ったアプリです。ARといえば、テクノロジーのトレンドワードとしてAI(人口知能)なみに聞かれる言葉ですが、これまでもARを使ったサービスはけっこうあったように思います。ARを利用したアプリとして最も有名だったのはセカイカメラですが、残念ながら少し前にサービスを終了しています。これはセカイカメラが、ARというテクノロジーの活用のほうにに重きを置いていたからではないかと思います。

今回ポケモンGOの大ヒットについては、ポケモンという絶対的なコンテンツが存在しており「冒険をしてポケモンをゲットしにいく」というコンテンツの普遍的なテーマに、ARというテクノロジーがマッチしたからこその爆発的な普及に繋がっているのだと思います。何かのテクノロジーが爆発的に普及する時は、テクノロジーそのものではなくコンテンツやユーザーの課題、顕在化しているニーズが伴う時に起こるというシンプルな事実を意外と忘れがちです。

よく用いられる例えですが、ハードの普及はエロとセットになっており、VHSデッキの普及も家でエロビデオを観たかったせいというのがあります。これもエロという強いコンテンツと、家でこっそり観たいというユーザーのニーズがマッチしたために爆発的に広まったのです。

ということで、今も昔もこれからも、一番力を持っているのはコンテンツなんだと思うんですね。2010年前後はプラットフォーマーの時代などと言われて、プラットフォーム(場)を支配した側が一番強いと言われていましたが、プラットフォームが乱立した今となっては、やはりコンテンツイズキングだと言われています。

ということで、思考の順番は、コンテンツやユーザーのニーズから始まり、それにマッチしたテクノロジーがあるか、という順番なのではないかと思います。

H&Mの売上が500億円規模に。ファストファッションが奪った市場とは?

上陸から7年で売上が500億円規模になったH&M

国内の主立ったアパレルブランドや小売りチェーンにおける、この5年間の売上を比較して、アパレルブランドの動向がどのように変化しているかを調べてみました。

ブランドはオシャレな人が好きなブランド代表のユナイテッドアローズと、同じくオシャレな人に支持されつつも価格帯はアローズよりも安めのナノユニバース、OLさんに愛用されているナチュラルビューティー、そしてラグジュアリーブランドのポールスミス、最後に忘れてはいけないファストファッション代表のH&Mで比較してみました。

ということで、その比較の結果がこちらです。
sales01 H&M(グラフの赤い線)の伸び率がすごいの一言に尽きるのですが、2008年の上陸以降、2015年にはH&Mの年間売上は525億円に登っています。もうすぐユナイテッドアローズを抜いてしまう勢いです。H&Mは2015年末時点で57店舗ですが、ZARAは100店舗前後日本に出店しているようなので、ZARAの売上は1,000億円を超えていても不思議ではありません。ということは、ファストファッション全体でいえば、すでに1,500億円〜2,000億円程度の市場規模があると見て良いのではないでしょうか。

次に注目したいのが、ユナイテッドアローズ(オレンジ)とナノユニバース(黒)の売上が前年比増で推移していることです。この2ブランドに関しては、ある程度ファッションに趣向がある消費者が対象であるため、すぐにファストファッションにシェアを持ってかれるという影響を受けにくいのかもしれません。

次にナチュラルビューティー(灰色)とポールスミス(紫)は、この3年間は横ばいからの微減になっていますから、ブランドのファンが一定量はいてついてきているものと思われます。

ユニクロの直営店売上は、年間7千億円を超える

このあたりはファッションに感度の高いブランドの比較ですが、ここにユニクロ(国内直営店)としまむらの売上を重ねてみるとこんな形になります。
sales02
ユニクロ(国内直営店)の売上は年間7千億、しまむらは年間5千億円を超えているため、もはやファッションというよりは生活必需品の域に達しています。例えるならユニクロやしまむらはお米で、前述したブランドはデリという感じでしょうか。
ユニクロは2016年前後は暖冬や価格引上げの影響で前年比割れする月が続いたようですが、最近では価格の調整を行い売上が回復していきているようです。そして、2015年に至るまで前年比増で売上が推移しています。

と、ここで見て来たアパレルブランドや小売りは皆、前年比増か横ばいで推移しています。H&MやZARAといったファストファッションの市場規模拡大に伴い、シェアを奪われているブランドはどこにあるのでしょうか。
それはここに列挙したブランド以外の、ブランドのファン層が薄いアパレルたちのようです。2015年以降、各アパレルメーカーが相次いでブランドの閉鎖を発表しています。

ファッション関連の大手企業でブランド・事業の見直しが相次いでいる。今月15日にはTSIホールディングスが子会社2社を含めた11ブランド、18日にはワールドが過去最大規模となる不採算10〜15ブランドの廃止を発表。
http://www.fashionsnap.com/news/2015-05-19/brand-apparel-fashion/

ブランドのアイテムを指名買いするような固定ファンがいない場合は、ファストファッションの競合になることになり、価格の面で不利になる可能性が高いのです。
まとめると現在の消費者動向はこのようになっているのではないでしょうか。

▼顧客全体
・ユニクロやしまむらなどで、ベーシックな衣料品を購入。
・ファッション感度が低い顧客の場合は、ここで全て済ませることも。

▼ファッション感度が高い顧客
・お気に入りのブランドで、好みのアイテムがあるかチェックする
・併用して、ファストファッションにてシーズンごとのトレンドのアイテムを取り入れる

現在も夏のセール中のようですが、セールに出掛けた知人に「戦利品は獲得出来たのか?」と尋ねてみるとこのような返答がきました。

「いやまったく。
なんていうかドキドキする服は伊勢丹で一着みただけだったなー。
なので、口紅を買う事にしました。
あとはZARAでいいやとおもって。」

このコメントが現在の状況を現していると思うのですが、ファッション感度が高い顧客は一応お気に入りのブランドを眺めた上で、気に入るアイテムがなければ「ZARAでいいや」「H&Mでいいや」とファストファッションで保険をかけているのです。つまり、お気に入りのブランドに食い込むことが出来れば、流しそうめんの上流に位置する事になりますが、魅力的な商品を提案できなければ、ファストファッションへ流れてしまうのです。
そして、以前は「○○でいいや」の受け口となっていた価格設定が安めの中小のブランドは、全てファストファッションに代替えされつつあるのです。

EC転化率が進みつつも、ラグジュアリーブランドは横ばい

最後に、ユナイテッドアローズグループと前述のナノユニバースなどを有するTSIグループ、そしてラグジュアリーブランドを抱える三陽商会におけるECの売上の推移をグラフにしてみました。
sales03 やはりECの伸びが著しいことが分かりますが、注目なのは三陽商会のEC売上は微増となっており、ラグジュアリーブランドはEC化が進んでいないことが分かります。

ちなみにユナイテッドアローズグループの全体売上高とEC売上を比較してみましたが、全体の13%がECよりの売上となっており、ECへの転化はまだまだ進むものと思われます。
(ユナイテッドアローズグループにおけるEC売上はZOZOTOWNと自社サイトが大きく占めるようです。)
sales04ユナイテッドアローズグループ全体におけるECの比率

※売上等の数値資料はIR資料より抜粋していますが、決算期が会社によって異なるため、取得期間に数ヶ月の誤差があります。
※H&Mの2011年〜2013年の売上はスウェーデンの通過クローナを現時点でのレートで日本円に換算しているため、当時の計算とは異なります。

出典:
UA http://www.united-arrows.co.jp/ir/lib/data/slide_data.html
TSI http://www.tsi-holdings.com/financial.html
三陽商会 http://www.sanyo-shokai.co.jp/company/ir/statement.html
H&M https://www.wwdjapan.com/business/2015/01/28/00015198.html https://www.wwdjapan.com/business/2016/01/28/00019455.html http://about.hm.com/ja/About/Investor-Relations/Financial-Reports/Annual-Reports.html
しまむら http://www.shimamura.gr.jp/finance/results/
ユニクロ http://www.fastretailing.com/jp/ir/library/factbook.html

ギャル文化とギャルブランドが廃れても、セシルマクビーは生き残った理由

相次ぐギャル雑誌の廃刊や、渋谷から姿を消したギャルなどと、ギャル文化は廃れたと言っても過言ではないかと思います。それと同時に、90年代後半から2000年代前半に一斉を風靡した数々のギャルブランドも、姿を消したようです。

そんな中、渋谷109ブーム以降、年間200億円以上の売上(2009年1月期)を誇るブランド、セシルマクビーがあります。渋谷109で13年連続の売上1位を記録したこのブランドは、なぜ生き残ることが出来たのでしょうか。

他のギャルブランドと違い、品揃えのコンセプトを一本化しなかった

ギャルブランドの特徴といえば、ショップ全体でコンセプトが一本化されていることです。カワイイ系やセクシー系など、ショップごとの系統が明確に決められており、ブランドの大ヒット商品をギャルの大多数が持っているというのが、90年代後半によく見られた光景でした。女子高生たちは「me Jane(ミ ジェーン)」のショップバックをみんな肩から下げていましたし、夏になると「ALBA ROSA(アルバローザ)」のハイビスカス柄のワンピースを着たギャルが渋谷をよく歩いていました。お尻にブランドロゴが入った「COCO LULU」のショートパンツも、多くのギャルが持っていたアイテムでした。多くの売れているギャルブランドは、ショップのブランドコンセプトを絞った上で、みんなが持っている大ヒット商品生み出す構造になっていたのです。しかし、セシルマクビーは取扱うコンセプトを一本化せずに、基本的にはセクシーでありながら、エレガンスやカジュアルなど多岐にまたがる商品ラインナップを取り揃えていました。ギャル文化が衰退し「1つの大ヒットアイテムをみんなが持っている時代」が終わってからも、多様な商品ラインナップを備えていたため、ギャルに限らず若年層女性が好むファッションブランドとしての地位を確立出来たのです。

「渋原ミックス」に見るギャルファッションの衰退

一方、その他のギャルブランドはギャルファッションの衰退とともに、姿を消していきます。ギャルファッションとそれ以外のファッションの境界線があいまいになってきたと感じたのは、2008年頃からです。当時ポップティーンを卒業しつつも、まだまだギャルのカリスマだった益若つばささんが「渋原ミックス」というファッションスタイルを提唱していました。渋谷109のショップの洋服に、古着や原宿ラフォーレの洋服を合わせるという着こなし提案をしていたのです。これまでは、渋谷系は渋谷系、原宿系は原宿系として両者のカルチャーが混ざることはありませんでした。しかし、このあたりからギャルファッションの垣根が消滅し、やがてギャルブランドはその他のアパレルを含んだ多くのブランドのうちのひとつになっていきます。みんながひとつのブランドのヒットアイテムを持っている時代が終わったのです。

ファストファッションと渡りあえる構造

ひとつのヒットアイテムをみんなが持っているという構造が終わったタイミングは、ファストファッションの台頭と重なります。H&Mが2008年9月に日本初出店となる銀座店をオープンして以来、店舗を拡大しており、日本での2015年度の売上は前年112%増の約525億円となっています。H&MやZARAなどのファストファッションが日本でも台頭したことにより「安くてカワイイ」がテーマのギャルブランドは、ダイレクトに顧客を奪われることになります。さらに、これらのファストファッションの特徴は品揃えの豊富さと、そのラインナップの入れ替わりの早さにあります
生産から小売りまでを一貫して行うSPAという方式をとっており、商品開発から売り場に並ぶまでのリードタイムが非常に短いのが特徴です。店頭の商品が数週間で入れ替わるため、顧客はその場で気に入った服があればすぐに購入するモチベーションが生まれます。一部の人気商品が売れ筋であったギャルブランドとは、対照的な構造です。ファストファッションがあるから、消費者が多種多様な製品を買うようになったのか、消費者の多種多様な商品が欲しいというニーズにファストファッションがマッチしたのかはニワトリタマゴの関係です。いずれにせよ消費傾向はみんなが持っているアイテムを購入することではなく、自分に合った安くてカワイイと思うアイテムを購入する方へとシフトしたのです。
多くのギャルブランドは、このトレンドが変わるサイクルの早さに追随できなかったように思いますが、セシルマクビーはファストファッションに負けないスピードで商品を投入していたようです。2012年に行なわれた代表取締役会長の木村達央氏のインタビューでは次のように語っています。

感性が鋭く、移り気な若い女性向けファッションなので、商品回転も速く、年間20回転もする。そのため取引先メーカーは、商品によっては「依頼を受けてから3~5日でファーストサンプルを納品する」(取引先)という早さだ。メーカー側は、事前に生地や小物材料もストックしておく。サンプル納品後の急ぎの部分修正も多い。
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=57821

さらに、流行のSPA方式ではなく、取引先アパレルメーカーが製造を提案した商品を揃える「品ぞろえ型」の手法を貫いているそうです。

品ぞろえ型を追求する理由を、木村さんはこう説明する。
「このビジネスモデルは、昔から変わらない手法です。『SPAでないとこれからのアパレルは生き残れない』といわれた時期もありましたが、当社は50社近いアパレルメーカーとの共同作業で、その神輿(みこし)に乗っているのです。1人のデザイナーが商品を考えるよりも、50人で考えたほうが、いい商品ができると思っています」
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=57821

顧客至上主義のこだわらない経営

木村氏は、現場や社員への権限委譲を大きくとった「任せる経営」を貫いてきたといいます。そして、セシルマクビーがギャルブーム終焉後も残った最も大きな要因として、顧客にあわせてブランドを変遷させていく「こだわらない経営」があるようです。

ジャパンイマジネーションでは、入社を希望する応募者に伝えることがある。「ウチはアパレルではなく、小売業です」という言葉だ。
同社がファッションビジネスで重視することは、送り手としてのこだわりではなく、受け手の視点で考えること。お客が何を求めているかで、ブランドのテイストもどんどん変えていく。
「経営者のこだわりが強すぎる会社はダメになる」というのも、木村さんの持論だ。
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=57821

顧客の動きをいち早く察知するには現場主義の姿勢が重要であり、それ故に現場や社員に大きく権限委譲を取っているようです。
多くのギャルブランドが「ギャルブランド」というカテゴリへのこだわりを捨てきれなかったからこそ、衰退していってしまったのかもしれません。対してセシルマクビーは、顧客の反応を見ながらどんどんブランドのテイストを変遷させ、今日にいたるのです。

しかし、そんなセシルマクビーも安泰ではなく、2014年時のニュースを見ると、売上が減少し続けており、15年1月期に入っても全店ベースの売り上げが、前年比10%以内で減少する月が続いているとあります。
いまだに売上が伸びつつけるファストファッションや顧客の趣向の多様化が進んでおり、近年では売上に苦戦している様子が伺えます。
2016年には会長職に退いていた木村達央氏が代表取締役社長に復帰するというニュースもあり、これからブランドのテコ入れを図っていくようです。

■参考・出典URL
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160128-00010002-wwdjapan-bus_all
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=57821
https://www.wwdjapan.com/business/2016/02/19/00019681.html

USJに学ぶ、もうダメだと思ってからがアイデアの出しどころ

ハリーポッターのアトラクション導入よりも前に、年間来場1,000万人を突破していた

USJ復活の立役者と言われる森岡毅さんが書かれたマーケティングの本を読んで、とても感銘を受けました。
USJは01年3月の開業以降、初年度は1000万人を超える来応者数を記録したものの、その後業績が悪化して02年度の来場者数は764万人まで激減、04年には事実上の破綻に陥っています。
米国ユニバーサルから社長が招聘され、その方にマーケティングの責任者として引き抜かれたのが森岡毅さんです。2010年の就任以降、来場者数をV字回復をさせ、2013年には来場者数1,000万人を突破、2015年の来場者数は1390万人とディズニーリゾート(1360万人)を抜いているのです。

森岡毅さんが書かれた本を2冊読んだのですが、本当にマーケティングの勉強になります。本を読むと、多くの人はUSJ復活の理由をハリー・ポッターのアトラクションのおかげだと言うものの、実はハリー・ポッターがオープンする前の3年間も、予算のない中で来客数を増やし続けているのです。(ハリー・ポッターに当時の年間売上高約800億円の半分にあたる450億円の投資を行なったため、本当に使えるお金がなかったそうです。)

テーマパークなのに使えるお金がないという大きな制約条件の中、集客の大きなタイミングであるハロウィンシーズンに「ハロウィン・ホラー・ナイト」というイベントを開催します。これは、テーマパーク全体をお化け屋敷化して、特殊メイクをほどこしたゾンビたちがパークに突如出現するというものです。かかる費用はゾンビたちの稼働代と元々持っていた特殊メイクの技術を活かせば良いだけなので安価に済むのです。このイベントだけでなんと40万人を集客したのです。

大型アトラクションが導入される直前は、お客さんの行き控えが起こるといいます。ハリー・ポッターのエリアがオープンする前年も集客減が危ぶまれました。しかし、目標の来場者数1,000万人を達成するため、予算をやりくりして様々なイベントを考えます。新しいアトラクションを作る金銭的余裕がないので、既存のアトラクションのバージョンアップを図るアイデアを試行錯誤するのですが、なかなか良いアイデアが降りて来ない。たくさんのアイデアを思いついては捨てを繰り返し、最終的には、パークの人気アトラクションである絶叫コースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」を、逆走させるというすごいアイデアを思いつくのです。

そして、各部署の反対に合いながらも、安全基準などをクリアしてコースターを逆走させることに成功、追加の費用を抑えて集客に成功します。

この本からは、マーケティングについての考え方やフレームワーク、アイデアの発想方など大事なことがたくさん学べるのですが、一番腹に落ちたのが「もうダメかもしれない」と思ってからが、アイデアの出しどころなんだなという件です。

制約条件があるからこそ、アイデアを練ることが出来る

だいぶ前のことになりますが、アバターサイトを扱っていたことがあります。有名なキャラクターライツのアイテムも多数取扱い、サービスへの集客も十分すぎるほどに出来ていました。しかし、一点問題があって、政治的な理由でこのサービスにはコミュニティ機能を入れてはいけないという縛りがあったのです。コミュニティ機能を入れられないということは、ユーザー同士がトークをするような交流が図れないため、自分のアバターを豪華にしようというモチベーションが働きません。コミュニケーションがキモであるアバターサービスにおいて、致命的ともいえる足かせがありました。
細かな施策は打ったものの、結局サービスとして大きくブレイクすることはありませんでした。そのときは、まあ色々やったのだから仕方ないと思ったのですが、今思うとまだまだやれることがあったなと思います。

例えば、アバターアイテムは充実していたので、ファッション系のショップの店長になった設定で、ゲーム化を図るという方法があります。
その際に、プレイヤー同士でアイテムの授受や、ポイントに換算できる「あいさつ」の仕組みをいれるなど、ノンバーバル(非言語)のコミュニケーションを入れることは可能です。

お金や政治的事情などによる制約条件が課されて「もうダメかもしれない」と思って後に、いかに考え抜くかが大事であるということとを、この本を読んでいるとしみじみと思います。もしもUSJに潤沢に資金があったのならば、新型アトラクションを次々投入したはずです。しかし、お金がないという制約条件が課されたことにより、パークを練り歩くゾンビたちは絶叫コースターの逆走という画期的なアイデアを生み出すことが出来たのです。

森岡毅さんは、この絶叫コースターを逆走させるアイデアを延々考え続け、なんとコースターが逆走する映像を夢で見て思いついたそうです。
やはり、夢に見るくらいに頭をしぼって考え続けないと、最高のアイデアというのは降りてこないのですね。

■参考URL
http://www.j-cast.com/2016/05/27268003.html
http://diamond.jp/articles/-/55955