日別アーカイブ: 2016年1月23日

なぜ私たちは、こんなにもSMAPに特別な感情を抱くのか

1988年に結成された「SMAP」。最初は普通のアイドルだった。

私はSMAPの熱狂的なファンではないし、一度もライブにも行ったこともない。でも、今回の解散報道を見ていて、私を含める多くの人が何とも言えない鬱屈とした気持ちになったと思う。熱烈なファンではないけれど、それでもSMAPを取り巻くコアなファン越しに、彼らを遠くから見ていた者からすると、SMAPとは何なのだろうと思う。

最初にSMAPという名前を聞いたのは、近所に住むお姉さんからだった。まだまだ光GENJIが全盛の時代で、彼女は駆け出しだったSMAPの追っかけをしていたらしい。当時は本人たちから声をかけられることがたまにあり、中居くんファンだったそのお姉さんは、中居くんはファンにはクールなので声をかけてもらったことはないけれど、木村くんは割合ファンに気遣いの声をかけてくれると言っていた。

私がテレビでスマップを観るようになったのは、テレビ東京で放映していた「愛ラブSMAP」からだと思う。wikipediaを観ると1991年10月スタートとあるので、1988年の結成の3年後から始まったということになる。
この「愛ラブSMAP」は、番組のコーナー内でミニドラマをやったり料理コーナーがあったりと「SMAP×SMAP」の前身のような内容だった。元メンバーの森くんの料理コーナーがあったり、今では信じられないことだけれど、木村拓哉が街頭レポートのロケをしたりしていた。こういったアイドルファンのためのバラエティ番組というのはこれ以前にもあっただろうし、今も続いている流れだと思う。

1994年には「シュート!」というメンバー全員が出演する映画が公開された。当時、近所の映画館に舞台挨拶に来るということで、友達が観に行っていた記憶がある。映画上映中に、舞台袖からメンバーが顔をのぞかせたりして会場が大いに沸いたそうだ。
ちなみにこの映画の撮影中に、メンバーの一人が髪の毛を散髪してしまい、映画の前半と後編で明らかに髪の毛の長さ違うという現象が起きていたそうだ。監督に注意されたが、言い返して口論になったと、後にエピソードとして語っているのを聞いたことがある。それまでのアイドルは「完璧な部分しか見せない」というところがあったけれど、こういう等身大のエピソードを公開してしまうところもSMAP以降の現象なのではないかと思う。

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SMAP初主演映画「シュート!」(1994)

司会業、俳優。多角化するメンバーそれぞれの活動

とはいえ、このあたりまでSMAPは王道のアイドルの型内にいたと思う。今日のSMAPの形に至るターミングポイントは、1994年前後ではないだろうか。木村拓哉が1993年、ドラマ「あすなろ白書」に出演し、ヒロインを後ろから抱きしめて言うセリフ「俺じゃダメか」が、流行ワードとなった。これ以降、ドラマ出演が相次いでだんだんと俳優方面の活躍が多くなっていく。

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「俺じゃダメか」が流行した「あすなろ白書」1993年

一方、中居くん、慎吾ちゃん、草なぎくんの3人は1994年4月から「笑っていいとも!」のレギュラーメンバーとなる。今日の「バラエティで活躍するアイドル」という型を作るための布石は、この「笑っていいとも!」が大きかったと思うし、さらに中居くんが司会者として数々の番組を仕切っているのも、この「笑っていいとも!」の歴史が大きく影響していると思う。

「笑っていいとも」出演当初のイメージは、とにかく本番中の発言が少ないということだった。増刊号になると、それぞれSMAPのエピソードなど、面白いトークを披露するのだが、平日の生放送中は、かなり静かだったと思う。(後の「笑っていいとも」最終回では、中居くんが、出演当初はあれも話そう、これも話そうと画策していたものの、上手い具合に話すことが出来なかったと振り返っている。)その状況を見守るタモリさんの度量もすごいなぁと思うが、時間の経過とともにトーク量が増えて、コーナーの司会などもこなしていくようになる。

このあたりで印象深いのが、慎吾ちゃんが似顔絵を描くというコーナーから、稲垣吾郎の似顔絵を歌いながら描くという「五郎ちゃん絵描き歌」が生まれるエピソードだ。


針のように細い 髪が垂れる
糸のような目鼻立ち 後ろ体重~


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五郎ちゃん絵描き歌の五郎ちゃん


どこかミステリアスで耽美的な雰囲気さえ漂う五郎ちゃんを徹底的に「イジる」という、アイドルらしからぬバラエティのお作法によって、メンバーそれぞれがどんどんキャラクターナイズされていったのだった。

SMAP5人がキャラクターナイズされているがゆえに、創作物でも描きやすいという側面もあった。コバルト文庫の「いきなりミーハーシリーズ」というライトノベルには、SMAPそっくりの男子たちが登場する。彼らと主人公の女子高生2人組が、毎回色々な冒険を繰り広げるという内容なのだ。この文庫の内容を読んでいても、イケメンで完璧で優しい木村拓哉、ムードメーカーで仕切る中居くん、ミステリアスな五郎ちゃん、お互いにじゃれあう慎吾ちゃんとつよぽんという図式が出来上がっている。


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「SMAP」そっくりの5人組が登場するコバルト文庫「いきなりミーハーシリーズ」

5人の中で最も特異なキャラクターなのは、草なぎくんだと思う。草なぎくんはアイドルにしては「ふつう」に「いい人」という印象で、特出した特徴がなかったように思う。しかし、SMAPの人気が高まっていくにつれて、キャラクターの濃いメンバーの中においての相対として「ふつう」に「いい人」というキャラクターが確立した。ドラマ「いいひと。」でもいい人として主演を務め、その後も「僕の生きる道」など、良作にめぐまれて俳優としてもキャリアを積み重ねていく。

「SMAP」というコンセプト。2000年代はメンバーそれぞれの活動に

それぞれのキャラクターが際立ちながらも「SMAP」というコンセプトとしてまとまっているのも大きい特徴だと思う。2000年代に入るまでは、SMAPとして前衛的なドラマに出演することもあった。例えば「世にも奇妙な物語 SMAPの特別編」では、5つのエピソードの主演をそれぞれ努めており、いずれも良作だった。特に木村拓哉が主演を務めた「BLACK ROOM」は、映画「スマグラー おまえの未来を運べ」などを手掛けたフィルムメイカーの石井克人氏が監督を務めており、スタイリッシュすぎる映像と俳優(我修院達也)によるコントすれすれの作品でとても良かった。

さらにはドラマ「古畑任三郎」でも、「古畑任三郎 vs SMAP」という回でSMAP本人として出演していた(少しSMAP自体の設定を変えていたけれど)。ドラマ中、古畑任三郎がSMAPのメンバーに「ファンなんです。○○を見ていました。」と言いながら、メンバーの微妙なキャリアを披露するシーンがある(例えば慎吾ちゃんなら「赤ずきんチャチャ」のリーヤ役でしたよね)など、ファンが見ていて、くすぐられる内容だったと思う。

2000年以降は、メンバー単体の活動が目立っていく。木村拓哉はより俳優としての活躍が多くなり、出演するドラマはいずれも高視聴率を記録。中居くんは「笑っていいとも」の知見を活かしてバラエティの司会業を、草なぎくんはドラマも良作にめぐまれて俳優としてキャリアを積みながら「ぷっすま」などバラエティでも看板番組を持つようになる。慎吾ちゃんは「SmaSTATION!!」など司会もするようになり、「新選組!」で大河ドラマの主役にも抜擢され、五郎ちゃんは五郎ちゃんのスタイルを貫いて、今日にいたる。

ちなみに中居くんの司会者としての手腕は、時折エピソードつきで称賛されるが、2011年に生放送の音楽番組「カミスン!」にて放送事故と言われる事象が起こったことがある。「神聖かまってちゃん」というバンドのボーカル「の子」が、音楽が流れても歌いださず、急になるとを取り出してカメラに張り付けるなど、奇行に走ったのだった。この時、中居くんの対応は冷静で、淡々と進行をすすめていた。「の子」の行動を突っ込んでバラエティ方向に振る事をせずに、音楽番組の司会者として、彼らをアーティストとして扱っていたからだと思う。

私たちがSMAPを観る目線において他のスターと異なる点は、それぞれのキャラクターや背景を斟酌している点だと思う。例えば、例えば極度の人見知りでめったに電話番号を教えないけれど、草なぎくんとは小学生の時からのずっと仲良しであるとか、木村拓哉はスーパースターであるけれども「SMAP×SMAP」のスタジオ入りが誰よりも早く、スタッフと会話するなど気遣いが厚い事など、それぞれのパーソナリティについての情報を私たちは斟酌している気がする。(「嵐」は国民的アイドルではあるけれども、彼らのコアなファンではない限り、彼らのそれぞれのキャラクターをSMAPほど把握はしていないと思う。)

なぜ私たちは、SMAPに特別な感情を抱くのか

なぜ私たちが、彼らのキャラクターや背景を斟酌しているかと言えば、それはSMAPが率直であるからだと思う。その率直さが顕著に表れたのが、2年前の「笑っていいとも」の最終回だった。かつてレギュラーメンバーだった「ダウンタウン」や「ウッチャンナンチャン」といった豪華ゲストがコーナーごとに出演してタモリさんと思い出を語るという番組構成はずだったが、さんまとタモリさんのトークにダウンタウンとウッチャンナンチャンが急に加わった。そこに、爆笑問題やとんねるず、ナインティナインが突然現れて、一同が同じ舞台に介するという事件となった。誰も仕切ることが出来ない状況の中、自然と仕切りをまかされたのが中居くんだった。このメンバーの中では、お笑い芸人が仕切るわけにはいかず、それぞれのタレントと親交があり、かつ仕切り力のある中居くんが壇上に上がらされた。めちゃくちゃ進行が難しい事案だったと思うが、この環境の中で自然と仕切ることをまかされたのだ。

そのてんやわんやの後、タモリさん対してひとりひとりメッセージを贈るコーナーでは、中居くんはタモリさんに、このようなメッセージを伝えている。

やっぱり、バラエティって非常に残酷なものだなとも思います。
おかげさまで歌もやらさせてもらって、お芝居もやらさせてもらって、バラエティもやらさせてもらって、
歌の世界っていうのは、いずれライブとかやれば最終日があって、
ドラマもクランクアップがあって、映画もオールアップがあって、
始める時に、そこのゴールに向かって、それを糧にして進んでるんじゃないかなって思います。
でもバラエティは、終わらない事を目指して、進むジャンルなんじゃないかなと。
覚悟を持たないと、いけないジャンルなんじゃないかなと思いながら、
いいともに出させてもらったのをきっかけに、僕は、
バラエティを中心に、SMAPとして、やらさせてもらおうかなと。

非常にやっぱり、バラエティの終わりは…寂しいですね。

他のジャンルは評判がよかろうが、悪かろうが、終わりがあるんですけど、
バラエティって…ゴールないところで、終わらなければならないので、
こんなに…残酷なことがあるのかなと、思います。

当時、俺と香取で、ほんと何も出来なかったんですね。
「今日はこれやろう」「今日はこの話やろう」って言って何も出来なかったんですけど、
でも、番組を、タモさんをアシストする事が、
楽しい番組を、娯楽を提供する手段の一つでもあるという事を僕は学びました。

引用:http://drifter-2181.hateblo.jp/entry/2014/04/01/005932

まさに、タモさんのアシストをするという出すぎない体制そのものが、この直前にあった「てんやわんや」を仕切れる司会力が身についた原点なのだと思う。

さらに、慎吾ちゃんの話も印象的なものだった。

ちょっと我慢できず言います。
答えはいらないですが…そもそも何で終わるんですか?
(中略)
ツヨポン(草なぎ剛)がすごく仲良くて
タモさんち行ったりすんのすげーずっと羨ましかったです
あと、ぼく、あの何か携帯の番号教えたりとか、そうゆうの苦手な人で
なかなかタモさんと話す時間もなかったりして、
中居くんとかはそういうのもすごくするんですけど、
で、中居くんとか食事よく行ったりしてんのも知ってて、
『あ、そうなんだ』と言いながらも僕も行きたかったです。
(中略)
えー、あと、あの、生放送で毎週20年間出させていただいて、
テレビに出ている僕ですけど、スマップでも辛かったり
苦しい時があって、そんな時に笑ってなきゃいけないのが
辛い時もあって、『笑っていいとも!』って言うのが
辛い苦しい時もあったりするんだけど、始まったら笑顔になってる
自分がいて、苦しかったりする時に昼間にいいとも見ると、
タモさんやってたり、みんなまたやってる…

ごめんなさいホント…ほんとにありがとうございました…
タモリさん、これからも、辛かったり苦しかったりしても、
笑っててもいいかな?

(タモリさん、間髪入れずに)「いいとも!」

引用:http://utsu-kyushoku.net/column/%E6%9C%AC%E9%9F%B3%E3%81%A7%E8%A9%B1%E3%81%99%E5%87%84%E3%81%95-%E7%AC%91%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%A8%E3%82%82%E6%9C%80%E7%B5%82%E5%9B%9E-%E9%A6%99%E5%8F%96%E6%85%8E%E5%90%BE.html

自分から連絡先を聞くことが出来ない性格だけれど、本当は草なぎくんのことがすごくうらやましかった。そして、未だに笑っていいともが終わるということを飲み込めていないという、本音のメッセージだった。

番組中では、木村拓哉と五郎ちゃんも登場して、タモリさんを囲んで「ありがとう」を歌うという一幕もあった。

今こうやって「SMAP」の一連の思い出をつらつらと思い返していて、なんとなく分かった気がする。「ああ、だからSMAPは特別なんだなー」と。彼らのコアなファンでなくとも、私たちはひとりひとり彼らのパーソナリティを知っていて、それはひとえにSMAPの率直さというところから来ているのだと。

タモリさんを囲んで歌うメンバーの表情を見ていると、本当にタモリさんのことが好きなのだろうなと思うし、タモリさんに向けたコメントの率直さは、彼らの飾り気のない姿なのだ。だからこそ、私たちはSMAPに対して、ただの芸能人以上の何かを感じていて、陽のあたるところにいつまでもいて欲しいと、その率直さを失わないで欲しいと思っているのだと。

ありがとう




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