月別アーカイブ: 2015年11月

男性向け「モノマガジン」が、若年層に受け入れられる理由

男性誌の中でも、安定した部数を保つ”モノマガジン”

先日からこの7年の間に部数を増やした雑誌と、そうでない雑誌の違いについて書いてきたのですが、男性向けの「モノマガジン」も比較的部数が安定しています。

「Begin」(世界文化社)が2008年に13万8千部だったのが、2015年に10万8千部と3万部の減少、「デジモノステーション」(エムオン・エンタテインメント)が2008年に10万部だったのが2015年に9万部と1万部の減少となっています。
男性向けモノマガジンの部数が安定しているのも、先日のブログで書いた「Hanako」が安定している理由と近いかもしれません。男性は女性よりも、モノに対して機能以上の感性的価値を感じて、物語性のあるモノを好んで使う傾向があります。ここで例をあげた2つの雑誌は、紙媒体として世界観を形成しやすいカテゴリを選んでいると言えます。

消費をしなくなったと言われるミレニアルズ世代

この2誌以外にもモノマガジンはあるのですが、部数を8万部近く減らして7年前の半分になってしまった雑誌もあります。これらの雑誌の特徴を見ると、以下のような特徴があります。

・モノの定量的な情報に終始している(インターネットに置き換えられる)
・ターゲットとする年齢層が高い(30代後半〜40代以降)

雑誌の傾向として、年齢層が高めに設定されている雑誌の方が部数を伸ばしているのですが、モノマガジンに関しては20代〜30代向けの先ほどの2誌の方が安定しています。
日本でも「若者の○○離れ」や「さとり世代」などという言葉をよく聞きますが、アメリカにはミレニアルズ世代という世代観があります。1980年代以降に生まれて、現在20〜30代になっている若者のことで、消費をしない世代ということで知られています。
日本でも同年代層の消費が乏しいということで話題になる層ですが、そもそも可処分所得が減っているので、消費傾向が絞られるのは必然です。ただし、日常の消費は渋るものの、自分が良いと思ったモノにはお金を出す傾向があります。そういった意味で、少し高いけれどちょっと良いモノをセレクトした「モノマガジン」を読むということは、「Hanako」を雑貨として楽しむ女子と同じように、その雑誌を読んでいる空間や時間込みで価値を感じているのかもしれません。

また、例に挙げた2誌はそれぞれウェブメディアにも力を入れており、「デジモノステーション」については「デジモノ!」という専用のキュレーションサイトまで立ち上げています。解析ツールで見ると、月間の訪問者数が「Begin」は数万人程度、「デジモノ!」は30万人以上あるようで、雑誌の世界観をウェブでも展開しています。(というところから、やはり20代〜30代前半がターゲットであることが分かります。)

「Begin」
http://www.e-begin.jp/

「デジモノ!」
http://www.digimonostation.jp/

男性版「北欧暮らしの道具店」を目指せる?

そして、モノマガジンが成立するのであれば、そのままEC化しても親和性が良さそうですが、海外の面白いガジェットを販売する「RAKUNEW」というECサイトがあります(https://www.rakunew.com/)。
売上は不明ですが、月間訪問者数は数十万程度はあるようで、解析ツールを見ると直接訪問が3割に上っており、リピート率の高さがうかがえます。(サイトへの直接訪問が多いということは、お気に入り等から再訪している経路が多いことを指します。サイトの規模にもよりますが、通常は10%以内におさまります。)

こういった男性向けのモノECが、逆にメディア化する可能性もあるかもしれません。北欧の雑貨を販売するECサイト「北欧暮らしの道具店」は、ECサイトに「読み物」というコーナーをつけて自社メディア化を行い、今では「おしゃべりノオト」と「暮らしノオト」という冊子も定期刊行しています(1冊280円)。

感性価値を伴うモノ情報は、「消費は押さえるけれど、気に入ったものにはお金を使う」というミレニアルズ世代のスタイルにはマッチしています。女性向けの「北欧暮らしの道具店」が、EC→メディア化したEC→定期刊行物の発行と進んだように、男性のモノ市場にも同じチャンスがあるかもしれません。

データドリブンで、大衆化していくファストファッション

ランキングやデータドリブンは、コンテンツを均一に収れんする

ランキングは、コンテンツの種類と質を均一に収斂する性質を持っています。例えば、ニコニコ動画には動画ランキング機能がありますが、少し前までゲーム実況の上位を「スーパーマリオメーカー」が占めていました。ランキングが可視化されていると、人気のコンテンツが何か分かるので、ランキングを見た人が「自分もマリオメーカーの実況を上げてみよう」とお手本にしようとします。そうやって、ランキング上位のものを皆が真似るようになり、プラットフォーム全体のコンテンツが似たり寄ったりに収れんされていくのです。

ランキングが存在すると、そこの土壌に異端な物は生まれにくくなります。だいたいみんな80点くらいのクオリティとなり、逆に20点や100点のものが生まれづらくなるのです。

データドリブンでマーケティングしても、同じごとが起こります。Webのメディアなどは、数値データが容易に取れるため、人気のあるコンテンツに寄せようとすると、だいたいのコンテンツが犬か猫になったりするわけです。

さて、前回のブログは、ファッションはコンサバ(赤文字)とアバンギャルド(青文字)の垣根がなくなり、ベーシックの時代になったという話題だったのですが、これもファストファッションによるデータドリブンの影響が強く出ているのかもしれません。

ファストファッションの大手ブランドは、SPAといって製造から流通、小売りを一気通貫で手掛けています。その中でも業界最大手の売上げを誇るZARAは、普通のアパレル・メーカーがシーズン中は既存在庫の売切りに注力しているのに対して、シーズン突入後に売れ行きを見ながら数週間単位で商品を作り足していると言います。

ユニクロを含め、通常のアパレル・メーカーは新シーズンに向けて1年前から準備を進め、半年前に意思決定を下し、シーズン突入後は作った商品を売り切ることだけに力を注ぎます。ところが、ZARAの場合は、シーズン突入後が勝負。生産量を必要最低限に抑え、デザイナーの想定を店舗で検証しながら、デマンド・チェーンを3週間単位で回していき、商品を作り足していくのです。

http://news.mynavi.jp/articles/2015/02/25/uniqlo_zara/

「プラダを来た悪魔」で鬼編集長が指摘したトレンドと資本主義

アン・ハサウェイ主演の「プラダを着た悪魔」といえば、老舗ファッション誌の鬼編集長の元で働く事になった若い女性を描いた映画で、働く女子のバイブル的存在になっています。ファッション誌で働くようになってもファッションに興味を持てない主人公が、撮影するドレスに合わせるベルトの色がどれも同じに見えて、笑ってしまうシーンがあります。そこで、編集長(ヴォーグ編集長 アナ・ウィンターがモデルと言われる)は、主人公の着ているセーターについて、こう言うのです。

「緑とも青ともちがうターコイズブルーのこの色は、ファッション業界を席巻した。流行は資本主義市場に波及し、マーケットの服飾売り場で売られるような安いセータにも及んだ。あなたが着ているそのセータにも。ファッションに興味がないとあなたは思っているでしょうが、あなたは安い服売り場でその色のセーターを手に取り、着ている。そして、その色は私たちが「こんなこと」をしてつくった色なのよ」

http://sho-kao.jugem.jp/?eid=32

ZARAを始めとするH&Mなどのファストファッションがお手本にするのは、もちろんパリコレなどの海外のコレクションです。そこで発信されたトレンドを「コピー」して大量のデザイナーが製品を手掛けます。

そのため、ZARAでは約350名(北半球250人+南半球100人)ものデザイナーを擁し、かつ、「顧客の声を聞き、顧客の欲しいものを作り、配送し、売る」というデマンド・チェーンを短いサイクルで回している。
http://news.mynavi.jp/articles/2015/02/25/uniqlo_zara/

そして、売り場に並んだ後は売れ行きや顧客の声をフィードバックしながら、デザイナーが改良版を作って3週間のうちに売り場に並ぶというサイクルを繰り返すのです。
ファッションブランドのコレクションを「コピー」して作られた洋服は、売れ行きと顧客の反応というデータドリヴンによって、大衆向けに収れんされていくのです。その目的は、最も多くの人に受け入れられる最大公約数のアイテムを作成することです。最後に、ファッションジャーナリストの方のコメントを見ると、ファストファッションブランドンの目指したマーケティングがかいま見られる気がします。

ZARAやH&Mは、そのターゲットを、トレンドをおいかけるアーリー・アダプターではなく、それにあこがれるアーリー・マジョリティを中心に、レイト・マジョリティのごく一部をカバーするマジョリティでもクリエイティブよりに設定しました

http://toyokeizai.net/articles/-/34844?page=2

 

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10万部も伸ばしたファッション誌「CLASSY」に見る、コンサバの終わり

8年で10万部近く伸びたファッション誌

前回のブログでは「Webに置き換えが可能な雑誌は、著しく部数を減らしている」というテーマを掲げつつ、雑誌を雑貨として見立てて成功した「Hanako」の事例を紹介しました。

前回「Hanako」をひとつの成功事例として紹介しつつも、実はこの8年のうちに10万近く部数を伸ばしている雑誌があります。
光文社の「CLASSY」というファッション誌です。2008年時には19万8千部でしたが、2015年には29万7千部となっています。同じく光文社の「VERY」も2008年時の23万7千部から2015年には31万1千部と大きく部数を伸ばしています。特徴は、どちらも30代以降のためのファッション誌であるということです。「CLASSY」は20代後半〜30代前半のアラサー世代を対象にしており、「VERY」は40前後の既婚女性を対象にしています。この2つの雑誌の発行部数を見るとこのように、右肩上がりになっているのです。

グラフ1

さて、部数を伸ばし続けた要因として考えられるのは「雑誌世代だった20代の読者が大人になり、30代以降向けの雑誌に移ってきた」ということかと思います。試しに、20代向けのファッション誌「ViVi」と「JJ」の発行部数を、さきほどの2誌のグラフに重ねて見ると、20代向けの雑誌の落ち込みと比例して入れ替わりに部数が伸びているように見えます。

グラフ2

雑誌に慣れ親しんだ世代の一定量は、そのまま30代向け、40代向けのファッション誌にシフトしているのです。

コンサバの時代が終わり、ベーシックが台頭した。

「CLASSY」と「VERY」、その他のファッション誌を見ていて思う事は、コンサバが終わりベーシックの時代が来たということです。コンサバの定義とは、かつて80万部を誇っていたころの「Cancam」のエビちゃんに代表される「男受けを意識したコンサバティブ(保守的)なファッションスタイル」を指します。このコンサバティブの反対語はアバンギャルド(前衛的)です。つまり、コンサバファッションというのは、アバンギャルドなファッションに対してポジション取りといえます。当時は原宿系という個性的なファッションが台頭しており「sweet」も発刊当初はもっと原宿系のファッションを扱った青文字系雑誌であったと記憶しています。
コンサバファッション(保守的)を扱う赤文字系雑誌に対応して、アバンギャルド(前衛的)なファッションを扱う青文字系雑誌というポジション分けがあったのです。

2000年代後半には、このコンサバ(赤文字系)とアバンギャルド(青文字系)の境目は薄れていき、やがて消滅します。2000年代後半から赤文字系ギャル雑誌「ポップティーン」の看板モデルだった益若つばさが「渋原ミックス」という渋谷と原宿をミックスした着こなし(109のショップの服だけでなく、ラフォーレ原宿内のショップのファッションも組み合せる)をするようになり、やがて両者の垣根は消えていくのです。
そして、アバンギャルド(青文字系)なファッションもシュリンクしていきます。この雑誌の代表格である「Zipper」は15万9千部の部数がありましたが、2015年には6万2千部と半分以下に部数を減らしており、ライバル誌だった「CUTiE」は廃刊しています。現在のファッションのメインストリームは、アバンギャルド(前衛)に対してのコンサバ(保守)ではなく、総じてベーシックになっているのです。

ファストファッションの台頭とベーシック化がもたらしたもの

最近ファッションブランドのショップを見ていて思うのが、どこに行っても商品のラインナップがさほど変わらないということです。例えばこのブログを書いているのは2015年の冬ですが、今ショップに行ったら間違いなくチェスターコートがどのショップにも並んでいるでしょうし、スカートはハリ感のあるおおぶりのスカートがラインナップされているはずです。昔はブランドごとの特徴がもっとあったように思いますが、どこのショップを覗いても陳列されているアイテムが均一化されていて、ブランドごとの差異がなくなっているように思えます。ある意味アパレルブランド全体がファストファッション化しているように見えるのです。

ベーシックとファストファッションはニワトリと卵のような関係です。ファストファッションの店舗には、ベーシックで均一化されたアイテムが並んでいます。ベーシックアイテムがマジョリティになったからファストファッションが台頭したのか、それともファストファッションが台頭したからベーシックが広まったのか、ニワトリと卵のような関係なのです。

赤文字系 そして”ベーシック”は先ほどの「CLASSY」に高頻出で登場する単語です。過去には「ベーシックって素晴らしい!」という特集も出しています。そして、「CLASSY」をはじめとする女性誌に近年よく登場するワードがこの2つです。

・こなれ感
・抜け感

こなれ感は、コーディネイトにナチュラルさを出すという意味で、ワントーンのスタイルの腰にチェックのシャツを巻いたり、キレイめの格好をしてわざと足元だけスニーカーを着用するなどのワンポイントの工夫を指します。
抜け感は、コーディネイトにリラックスしたポイントを作ることで、オフショルダーのニットを着用たり、わざと足首を見せるなどの着こなしを指します。
そして、これらは全て「細部のニュアンスを現した言葉」なのです。以前は服のジャンルやブランドごとの特徴がはっきり別れていたものの、今は洋服のほとんどがベーシックでくくられるため、コーディネイトとはすなわち、いかに細部で特徴を出すかというテーマにシフトしているのです。

可処分所得の低下と雑誌メディアの関係

以前は雑誌メディアといえば、読者の憧れの生活を投影するまさに「媒体」でした。しかし、可処分所得の低下とともにファッションに使える金額は減り、ユニクロやその他ファストファッション等の利用機会が増えます。「CLASSY」と「VERY」が上手なのは、高価格帯のアイテムを入れつつも、手が届く数千円台の安いアイテムをコーディネイトに取り込んでいることです。この2誌と同じ年齢層の読者を想定していながらも、何万部も部数を減らしてしまった雑誌があります。そういった雑誌を手にとると、登場する商品が、のきなみ高額なのです。

ユナイテッドアローズは、割合高価格帯のアイテムがラインナップされていますが2015年度通期の売上げは524億円(前期は525億)もあります。ファストファッションが台頭しているとはいえ、全ての手持ちの洋服をファストファッションでまかなっているわけではなく、たまには高価格帯の商品を1点買いすることもあるわけです。
「CLASSY」は高価格帯のアイテムと、低価格帯のアイテムのバランス配置が上手くいっているため、雑誌として「安っぽくないけれど手が届かないわけではない」という絶妙な構成になっているのです。
(過去には、「頼りにしてます!ZARA・GAP・PLST・UNIQLO」というキャッチが表紙を飾ったこともあります。)

今後部数を伸ばして行く雑誌とは?

しかし「CLASSY」と「VERY」がこのまま部数を伸ばすかといえばそんなことはなく、やがて年を重ねた読者たちは次の世代の雑誌へと移っていきます。この5年以内で40代後半向け以降の雑誌の部数が伸びることはあるかもしれませんが、現在の若年層は雑誌を読まない層になっているため、30代〜40代向けの雑誌の部数は、下降していく可能性が高いように思えます。

ファッションのトレンドが「ベーシック」に移り、コーディネイトが「ディテールへのこだわり」にシフトしている以上、ビジュアルで見せる誌面よりは、ECサイトの着こなし見本やキュレーションサイトの着こなし術の記事などで事足りてしまうことも、大きい要因だと言えるでしょう。

ということで、最後が暗い終わり方になって恐縮ですが、それでもこの「ベーシック」の流れをとらえて、高低両方の単価を折り混ぜた紙面構成は見事だと思うのです。

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出典
http://www.j-magazine.or.jp/magadata/?module=list&action=list
http://www.unitedarrows.co.jp/ir/finance/sales.html
http://www.cyzowoman.com/2014/02/post_11307.html

80万部が11万部になった「cancam」。売れない雑誌の共通点とは?

とりわけ売れない雑誌が持つ、3つの特徴

出版不況の中でも特に雑誌は落ち込みが激しいと聞きますが、2008年以降からの雑誌の発行部数を調べると、全体としてシュリンクしているのはもちろんのこと、とりわけ落ち込みが激しいジャンルがありました。以下のような特徴を持った雑誌です。

・インフルエンサー(モデルや読モ)が主体になっているギャル誌
・情報単位で流通できる内容となっている情報誌
・20代前半〜後半向けのファッション誌

この3つの共通点をもった雑誌について、フカボリしてみました。各カテゴリに属する雑誌の発行部数をグラフで見ると、このようにいずれも部数を大きく減らしていることが分かります。

グラフキャプチャ

インフルエンサーが自ら発信するようになってしまったギャル誌

インフルエンサー(モデルや読モ)が主体となっている雑誌といえば、ギャル誌が筆頭です。益若つばさなど、専属モデルたちのライフスタイルを掲載することによって支持を得てきました。読者と同世代のインフルエンサーの影響を最も受けやすいのは、10代後半の若い層なのです。しかし、雑誌不況によって一番影響を受けたのが、このギャル誌です。
先ほどの益若つばさが専属モデルであった「ポップティーン」は、彼女が結婚、引退を発表した2008年2月号で41万部の売上を記録しているものの、2014年4月では11万3千部と最高時の4分の1となっています。他紙では廃刊も相次いでおり、ギャル誌の草分け的存在の「エッグ」や「BLENDA」、「EDGE STYLE」などが廃刊になっています。
このギャル誌の不況のもとは、インフルエンサー(モデルや読モ)が、インターネットを使って自分で発信しはじめ、同年代の読者がそちらをフォローし始めるようになったためだと思います。10代後半の若年層を中心に人気のブログサービス「デコログ」や「クルーズブログ」が台頭し、インフルエンサーたちは自分のライフスタイルをそちらで発信するようになります。さらに、若い女性を中心に人気のインスタグラムも2015年時点で利用者が810万人に達しており、Twitterを使ってリアルタイム動画を配信できるツイキャスも登録者が2015年時点で1000万人を突破したといいます。
以前は雑誌がカリスマとなる読者モデルを発掘して、紙面上でそのライフスタイルを発表していたのに、インフルエンサー足りうる人たちが雑誌というメディアを介さないで直に情報を発信するようになったのです。

食べログやキュレーションサイトに代替えされた情報誌。愛や恋を語らなくなった「anan」

また、ギャル雑誌に次いで落ち込んでいるのが、情報単位で流通できる内容をサマリーにした雑誌です。映画館情報など、地域情報誌の草分け的存在であった「ぴあ」は2011年に廃刊していますし、「東京ウォーカー」は2008年時点では10万部程度の部数がありましたが、2015年には3万3千部と3分の1以下になっています。
情報誌は、映画、飲食店などの定量的な情報をサマリーにして掲載してたため、映画の上映情報はウェブの映画サイトに代替えされ、飲食店の情報は「食べログ」などの膨大なデータベースに代替えされてしまうのです。
さらに、恋だの愛だのという「情報」を提供してきたマガジンハウスの「anan」も例外ではなく、2008年時点では27万7千部あった部数は、2015年時点に19万6千部と10万部以上も部数を落としています。「anan」が得意としていた恋愛や結婚といった情報コンテンツは、ウェブの「男子が気になる女の子のしぐさ5選」みたいなネットニュースやキュレーションメディアの記事に代替えされてしまったのです。
最近では方向転換を図っているらしく、最新号が「幸せを呼ぶ「笑い」のレッスン。」、その前は「観るといい映画。」、「秋の週末京都」、「食べても食べても太らないカラダ」となっており、ライフスタイル提案型の内容に切り替えを図っているようです。

最盛期の80万部から11万部まで部数を減らした「cancam」

そして、最後になりましたが最も部数を減らしているのは、20代前半〜後半向けのファッション誌です。例えば、「cancam」も、エビちゃんや押切もえが看板モデルだった2006年当時は80万部にせまる発行部数があったと言いますが、2013年には11万5千部と驚異の落ち込みを見せています。そのほかにも「with」が2008年時には50万部を超えていたものの2015年時には21万部と半分以下に、「MORE」も2008年時に50万部となっていたのが2015年には27万8千部と約半分になっているのです。

考えられる要因としては、以下が挙げられると思います。

・若い人の雑誌離れが顕著なので、20代前半〜後半ターゲットの雑誌は部数の落ち込みが著しい
・ファストファッションの台頭により、雑誌を見なくてもある程度着こなしができるようになった
・ファッションコーデを閲覧できるアプリや、ファッションについてのキュレーションサイトなどウェブで無料閲覧できるサービスが増えた

部数が8年間でほぼ減っていない雑誌「Hanako」

発行部数を著しく落としている雑誌に共通しているのが、「提供している価値がウェブに置き換えられているかどうか」ということがポイントかと思います。
逆に言うと「雑誌でないと提供できない価値」を提供することが、大事であると言えます。そのうちの1つの手法として雑誌付録があると思いますが、むしろこちらは付録に付随した雑誌というような、雑誌がの方がおまけになっている感が否めません。
もう一点、雑誌できないと提供できない価値として、ブランディングが出来ているかという点があります。雑誌にコンセプトがあり、読者が価値を感じて購入してれば、雑誌のファンが形成されていきます。

その1つの例が、マガジンハウスの「Hanako」です。2008年時に9万部だった発行部数は2015年時に8万7千部とさほど部数を減らしていません。
カフェの特集や自由が丘などスポットガイドなど、一件東京ウォーカーのような情報誌と同様に見えますが「よりビジュアルを重視し、雑誌を雑貨化する」というコンセプトで2009年にリニューアルをかけたそうです。2009年時のインタビューでブランディング担当副編集長の方が以下のように語っています。

ビジュアルを重視することで、「雑誌の“雑貨化”が起こる」(中略)「単に情報を得るための媒体ではなく、“眺めていて楽しい”“生活空間に置いておきたい”“何度でも触れたい”と思わせることに成功したのが今回のリニューアル。つまり『雑誌の雑貨化』を起こした」。(中略)「雑誌メディアの特性であるストーリー性、紙の触感、めくるリズム、所有することで喚起される気分」を強調することとなった。

今まで情報重視であった「Hanako」を、雑貨と定義することで手触りのある雑誌でしかなしえない価値を提供しているのです。同じコンセプトの成功モデルとして、雑誌ではないですが旅行ガイドの「ことりっぷ」も累計発行部数が1000万部を超えています。

ということで、最後に成功事例を出してみたものの、「Hanako」はそもそも10万部を超えていないので、かつては100万部を超えていたファッション誌があったことを考えると、もはや雑誌はメインストリームから外れた感は否めません。
あるプラットフォームや技術が枯れると、それはアートになる(写真から動画に移行するときに、写真はアートとなる。映画からテレビに移行するときに、映画はアートになる。)という言葉がありますが、今後雑誌はその路線をたどり、メインストリームの媒体からアートへと進んでいくのかもしれません。

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つづき「10万部も伸ばしたファッション誌「CLASSY」に見る、コンサバの終わり」

■グラフ数値出典
http://www.j-magazine.or.jp/magadata/?module=list&action=list

■参考、引用サイト一覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/CanCam
http://www.j-cast.com/2013/03/31171489.html?p=all
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090324/1024851/?P=3
http://gaiax-socialmedialab.jp/media/369
http://crooz.co.jp/wp-content/uploads/2011/08/%E5%B9%B3%E6%88%9022%E5%B9%B43%E6%9C%88%E6%9C%9F%E7%AC%AC3%E5%9B%9B%E5%8D%8A%E6%9C%9F%E6%B1%BA%E7%AE%97%E8%AA%AC%E6%98%8E%E8%B3%87%E6%96%99.pdf
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01HMS_R01C15A0TI5000/
http://jp.techcrunch.com/2013/11/28/twitcasting-passed-4-million-mark/
http://markezine.jp/article/detail/22297
http://www.j-magazine.or.jp/magadata/?module=list&action=list
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%8A%E8%8B%A5%E3%81%A4%E3%81%B0%E3%81%95

おそ松さんに見る、オタクの心をつかむ秘訣

ふざけすぎてテレ東の社長が謝罪

「おそ松さん」というテレビ東京のアニメが色々と物議を醸しています。「おそ松くん」から時を経て、青年になったおそ松兄弟たちを描いたアニメです。
これが、色んなアニメや映画のパロディまみれになっていて(アンパンマンや、saw、進撃の巨人など)、原作へのリスペクトがないという理由でテレビ東京の社長が謝罪することになりました。(世間というのは、ふざけたものに不寛容だとナンシー関さんが言っていたのですが、確かにそうだなと思います。)
それはさておき、知人がこの「おそ松さん」にハマっており、面白いからちょっと見てみてくれと言われました。実際に見てみて、色々ふざけているので面白いは面白いのですが、その知人がどこにハマっているのかというと、一件同じに見える「おそ松」兄弟のキャラクターなのです。
「○松は実は髪の毛がちょっとボサボサで、○松は眼がちょっと眠くて、○松だけはアホ毛がなくて…」
と、一件同じに見える兄弟たちが。実は描き分けられていることを熱心に説明していたのですが、とどのつまり、
「こんな描き分けの難しいキャラに、それぞれ差をつけてちゃんとキャラクター設定として成立してるのがすごい」というあたりがハマったポイントだというのです。
それを聞いた時に、ああ、これってAKBとか地下アイドルとかラブライブ!を好きになる理由と同じなのかなと思いました。

素人には分からない、細かい違いが大事!?

AKBのコンセプトとして「自分が見つけたお気に入りのアイドル」というテーマがあったと聞いたことがあります。48人以上居る女の子の中から、自分が良いなと思うメンバーを見つけて、その成長を見守るというスキームです。AKBに興味がない人から見ると、あまりメンバーの差異が分からなかったりするわけです。しかし、ファンにとっては、自分のお気に入りのメンバーと、それ以外の区別がついているわけです。
この両者に共通する「興味のない人から見ると、だいたい同じに見えるのだけど、ファンが見ると明確な違いがある」というのが、ある種自分だけがそれを発掘できたという快感をくするぐるのかなと思いました。
AKBもクラスの2番目か3番目に可愛いというテーマで選抜されたといいます。ゆえに、おそ松さんと同じく、意識的に差別化ポイントを最小化したのかなと思うのです。
という意味でいうと「ラブライブ!」も皆同じ表情に見えてしまうのですが、よくよく研究すると細かな差異がけっこうあるのだろうなと思います。
そして、オタク度の高いファンを獲得するには、それらが必須条件なのかなと思います。誰にでも分かる絶対的な差異(1000年に1人のアイドルとか)というのは、オタク心をくすぐらないのです。
ちなみに「おそ松さん」も、オリジナルではおそ松くんたちよりは、むしろチビ太やイヤミがフィーチャーされていました。しかし、今回のアニメでは「おそ松」兄弟を細かい設定分けで描き分けており、かつそれぞれにアイドル声優を起用していることから、かなりオタク女子に対して意識的な構成になっているなという気がしました。