日別アーカイブ: 2014年1月10日

クリエイティブな人も、政治している

転職

押井守監督の勝敗論

前回のエントリは、組織内で最も実用性のある能力とは、政治力を身につけるなんじゃという話題でした。でも「政治なんかやりたくないやい!」という人もたくさんいると思うんですよね。なにを隠そう私もそうです。

しかし、企業の中にいる限りは政治というのは避けて通れない問題です。一見めちゃくちゃクリエイティブなことをしている人だって政治をしています。「攻殻機動隊」シリーズ等で有名な押井守監督も「押井守監督の「勝つために見る映画」という連載を昨年までしており、古今東西の映画を紹介しながら、組織論や勝敗論を解説しています。
この連載から引用した以下コメントを見ても、押井監督って組織のことがよく分かってるんだなぁと思います。

押井:そう考えると、今の日本の企業なんて、みんな中間管理職が支えてるんだよ。上にはコロコロ変わる経営陣がいて、下には使えないダメな社員たちの大群がいて、誰がこの会社を守るんだって(笑)。部長とか課長が頑張ってるんだよ。出版社で言ったら編集長は基本的にはお飾りで、実際には副編が踏ん張ってるんじゃないかな。編集長は責任を取るためにいるだけで。

ゴールにたどりつけば、騙したことにならない

巨額のお金を動かして映画を作るには、たくさんの政治が必要なのですね。出資元やプロデューサーやらいろんな人たちが口を出してくる。その中でいかに人を動かして作品を守るか。更に以下のコメントからも、押井監督の政治的手腕が伝わってきます。人は正論では動かない。だから、あえて聞かれてないことは答えない、ある意味で、まわりを騙すことが必要だと言います。

僕らで言うならひとつの映画、会社で言うならひとつのプロジェクトを請け負って、部下を動かさなきゃいけない。だいたい部下というのはどうしようもない連中ばっかりで、文句言うだけの奴とか不満分子とか自分だけ楽しようとする奴とかそういうのばっかりなんだけど、でもそいつらがいないと仕事ができない。どんな戦争も兵隊なしでは戦えないんです。

「どうやってこいつを動かそうか」って言うときには、希望を与えなきゃダメなんです。何かを保証してあげなきゃいけない。でもその希望には何の根拠もない、そのときあなたはどうする? っていうさ。

相手に正論を振りかざすよりも、政治的手腕を駆使してゴール地点にたどり着く。ゴール地点にたどり着ければ、嘘は嘘ではなくなり、騙していないことになる。

逆に言えば、正直にお答えして玉砕することが目的じゃないんですよ。言わなくていいことまで言って轟沈したいのか。敢えて黙っているのはその時点では詐欺みたいなもんだけど、映画が完成してみたら、時間が経ってみたら騙してなかった、というふうに努力するべきなんです。

そして、それをこそ「勝負」と言うんです。真っ向から激突してノックアウトされるのは、勝負とは言わない。日本人はそういうの好きだけど。「負けるとわかってる勝負でも、男は立たねばならぬ」とか言ってるからダメなんだって!

勝つためには宮本武蔵みたいに大遅刻して心理戦をやってもいいし、全員を騙してもいい。監督は自分のスタッフとも戦うし、何よりも「自分の雇い主とも戦う」んだよ。

ということで、押井監督はクリエイティブでありながら同時に組織の指揮官なのだと思うんですね。このように一見クリエイティブに見える仕事も実際は組織論や勝敗論が重要になってくるのです。次回のエントリでは、それでも、そういった組織から離れて個人で好きなようにやることは可能なのかを考えてみたいと思います。