月別アーカイブ: 2013年12月

「ジャパゾン(仮)」は、既得権益の濃縮100%ジュースだ

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店頭まで行かないと買えない謎の電子書籍

いや、100%ポッカレモンだ。

このトリブログのテーマとして、時事ネタに手を出さないというポリシーがありました。が、今回ばかりは開いた口が塞がらないを通りこして、ポカーンです。

ここ数日「ジャパゾン」という名称が独り歩きしてますが、国内の大手書店、電子書店、取次13社が業界団体を作り、電子書籍事業に共同で取り組むことを発表しました。(ちなみにジャパゾンは、朝日新聞社の記者がそう揶揄しただけで、当人が名乗っているわけではないようです。)

店頭で買う電子書籍という矛盾!ジャパゾンという名称の謎。

そう、このまとめを見てもらうと分かるのですが、店頭まで行かないと電子書籍を買えない仕組みなのです。何ですか、その仕組み・・・。

この3連休、欲しい書籍を求めて書店を3店舗くらい周りながら、未来について思いをはせていました。amazonで買えばすぐに届くことは分かっていましたが、わざわざ手間ひまをかけて書店で探していました。その間、3日ほどインターネット断ちしていて、昨日このニュースを見てしまいました。これってこのトリブログで幾度となく書いてきた既得権益の悪いところをギュっと濃縮したようなケースですね。ということで、過去のエントリを引っ張り抱いて突っ込んでいきたいと思います。

過去のエントリを引っ張りだしてツッコミたい5つのポイント

1.勝ちパターンを探すとか、競合を意識するとかって顧客を無視した姿勢だと思うんですよね。
勝ちパターンを探すという顧客無視の姿勢

2.で、実際にそのサービスを自分で使いますか?わざわざ書店に出かけて、電子書籍を買いますか?
とりあえず「自分だったらどうするか」考えてみよう

3.アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスが起こしたイノベーションとは書店へ行くという行程を省いたことです。むしろこの手間を増やして何がしたいんですかね?
イノベーションとは、面倒くさい手間を省くこと

4.さらに、この取組を「ダメでしょ、誰も使わないよ」って言う人いなかったんですかね。組織内の空気を読みすぎですよね。
ミもフタもないことを言えない、空気を読む日本人

5.最後に、自分たちの組織を守ろうとするあまり、顧客に最適解が示せなかったことなんだと思います。
組織への所属意識が強いと、顧客に最適解を示せないという話

顧客にとって良いことは、泥くさくて時間がかかる

アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが来日してインタビューを受けた際、アマゾンは徹底した顧客主義の会社であると言っていました。

ベゾス:「地上で最も顧客中心の会社」が私たちのビジョンです。そして、望んでいるのは、まったく異なる業界からもアマゾンが手本にされるようになること。「あのような卓越した顧客経験を我々の産業でも実現したい」と言われるようになりたいですね。

そして、顧客中心と言いつつ、実際は自分たちの利益を考えている会社は、競合他社について言及する傾向があると述べています。

顧客を中心に考えていると言い張る会社の行動を見て下さい。実際に何を言っているのか、何をしているのかを見れば、決して顧客中心でないことが分かるでしょう。メディアに対して最大の競合他社の名前を挙げる。これは競争相手中心であることの明らかな兆候です。

国内の業界団体で13社でタッグを組む時点で、アマゾン(競合)を意識しまくりですよね。

アマゾンは創業当時、ただのWEBショップであって在庫を持っていませんでした。競合にも、在庫を持っている会社なんて一社もありませんでした。それがWEB上で展開する新興ECコマースの強みであると思われていたからです。しかし、ジェフ・ベゾスは在庫を持たなければ顧客により早いスピードで求める商品を提供出来ないという根本的な課題にぶちあたり、巨大な倉庫を持ちます。その際、もちろん投資家や競合他社からは、冷ややかな目で見られ、累積赤字は日本円にして1兆円に及びました。

顧客にとって良いことは、基本的にシンプルなことであるけれど、それをやるにはお金と時間がかかることが多いのです。それを無視して、小手先の政治的囲い込みでなんとかやろうとする一連の動きを見ていると、茫然の一言しかありません・・・。

▼累積赤字1兆円になったAmazonの経営についての過去エントリ
Amazonが最強な理由は「待てる経営」だから

多様性のはき違え

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自分と異なる意見を取り入れないのは・・・


最近多様性について、はき違えてたなーと思うんですね。
例えば私は事業を作る際には顧客志向という考え方を採用したくて、サービスを開発する時もリーン開発モデルが最上だと思っているのです。

しかし、一方でSWOT分析みたいに自社の強みはなんぞっていう分析をして、自社の強みを生かしたサービスを作ろうとする人もいます。
あるいは「顧客になんか聞いてたらイノベーションは生まれないよ。アーティストがイノベーターとしてまだないサービスを発表するのさ」と言う人もいます。

私としては、このような意見を冷静に、ロジカルにバッサリと切り捨てたいのです。しかし、異なる意見やバックグランドの人たちとの融和を図る多様性って大事だよねという流れ(ダイバーシティというのですかね)であるとか、中国の古典などを見ていると自らと異なる意見を取り入れてこそ、真の政治みたいな記述もありまして、自分には異なる意見に耳を傾ける部分が足りないのかなと思い悩んでいたりしました。

心ののりしろを持つ


そして、最近気づいたのですが、やはり先ほど例に出した顧客志向ではない意見はどちらも間違ってると思うんですよ。世の中のサービスや商品は、それを使ってくれる顧客がいてこそ成り立つのですから、やはり顧客至上主義で正解なのです。自分は正しい。しかし、その考え方は正解だと思わないけれど、そう考える人がいても良いんじゃないかと認めることが、多様性を保持することなのかと思い当たりました。

小さいユニットで一緒にサービスを作ろうとしたら、同じ顧客志向の人たちじゃないと一緒に作業をしたくないのですが、自分のユニットではないところで顧客志向じゃない人たちがいて、そういう人たちが自分らの主義に従って何かをしているのはオーケーだと思う。っていう余白というかのりしろを持った思考を持つというのが、良いのではないかと。

もちろんこれが政治であれば、異なる人たちの融和をとっていく必要があるので、決定にも時間をかけ、異なる要素のうち、どれをどの分量だけ取り入れるかを熟考しなければならないと思います。

と、考えると、極論を言ってる人を「極論だ!」とたたくのではなく、「そういう考えの人もいるんだなぁ」という心ののりしろを持っておくことが、ひとつの多様性だと思うんですね。

むちゃくちゃな昔の映画、マーケティングな現代の映画

打ち上げ花火

昔のドラマを現代で放映したら一発アウト

Huluで「蒲田行進曲」を見ました。最初は作業用BGMのつもりでかけていたのに、わりと面白くてちゃんと全部見ました。「バトルロワイアル」の深作欣司監督作品なのですが、つかこうへいさんの舞台が元になっていて、蒲田にあった撮影所を舞台に、銀幕の新進スター銀ちゃんとその女である落ち目の女優小夏、銀ちゃんの舎弟的存在である大部屋俳優のヤスをとりまく群像劇です。
子夏を妊娠させてしまった銀ちゃんがヤスに押し付けるというむちゃくちゃな展開なのですが、映画を観終わった後「2013年現在ではありえない映画だな」と思いました。今の映画ってマーケティング臭がするっていうか、お金の感じが見えるというか、原作モノばかりで洗練されてるんですよね。なんというか、遊びの部分とか余白がない。マーケティング的に設計されたマーケティングのためのマーケティング要素を詰め込まれた感じ。

最近Huluに昔のTBSドラマが入ってきて観てるんですが、やっぱり昔のドラマもむちゃくちゃなんですよ。「高校教師」とか、絶対今やったらPTAあたりから怒られるでしょうし、「ケイゾク」もグロい。「ケイゾク」と同じチームが作ったという「SPEC」は、けっこう丁寧にグロくならないようにしています。そういえば「同窓会」という、ゲイをテーマに描いたドラマなんかもありました。あれも、今だったら一発アウトですね。

気が付いたら、どんどんドラマも最適化されて、マーケティングのためのマーケティングによる・・・(以下略)。

レジスタンス精神から生まれた「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 」

今では半期に一回くらいになりましたが「世にも奇妙な物語」は、元々週1回放送の3話構成のオムニバスでした。新人作家の登竜門と言われていて、岩井俊二監督も参加していました。岩井俊二監督といえば、「世にも奇妙な物語」の後シリーズとなった「ifもしも」で放映された「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 」が、TVドラマなのにも関わらず日本映画監督協会新人賞を受賞し、再編集版が劇場公開されています。

メイキングを見たことがあるのですが、当初岩井監督は“主人公が異なる2つの選択を選んだ末にたどりついた2つの結末”というルールを破って、1つしか結末を用意しなかったそうで、フジテレビ側は難色を示したそうです。(結局、打ち上げ花火~の結末は2つあるのですが、主人公がやり直したパターンはNGという掟は破ることになります)

ルールを破るなんて、レジスタンス精神旺盛です。こういうレジスタンス精神が、余白を生むと思うんですね。で、超絶面白いものとか、イノベーションとかって、そういう余白から出て来ると思うのです。


勝ちパターンを探すという顧客無視の姿勢

今までストーリー風の例を用いて説明してきたのですが、事業立案において「他社から勝ちパターンを探せ」とか「売れるためのベストプラクティスを探そう」とか言うのは、顧客無視というか顧客への冒涜です。勝ちパターンがあるなら、誰でも勝ちパターンを駆使して儲かります。

ということで、勝ちパターンを探すダメな人の思考法はこうです。
顧客無視
「他社ECで儲かっているのは、ポイント還元に力を入れてキュレーションコマースをしているところ」

こうやってその時市場で流行っているバズワードをベストプラクティスに設定して「コレをやればイケる」みたいな理論になります。

で、説明するまでもなく顧客無視なんですよ。顧客はなぜこのECサイトでモノを買っているのかという考察がないのです。いくらポイント還元されても取り扱ってるアイテムが年に1回しか買わないようなものだったら、いつまで経ってもポイントは貯まりません。また、顧客がわざわざ目的買いしにくるような商材だったら、キュレーションコマースなんて入れられても邪魔です。むしろ検索インターフェースを充実させるべきです。

つまり、顧客は何が欲しくて、どういう気持ちでここに来ているかが解かっていないのです。対して、そういうことが分かっている人の思考法はコレです。
顧客満足
・顧客は誰?:アパレルやインテリア、アートなど、感性に訴えかけるアイテムを見る、買うことが好き
・何を求める?:他のコマースにはない感性に訴えるアイテム。アート、雑貨、ファッション。
・どのように?:指名買いではなく、商品をを眺めるようなインターフェースで

これは、米で驚異的な成長を遂げているECコマース「Fab」の例です。1300万人以上の登録数を誇り、リピート率は7割超え、創業から2年未満で2億5千万ドルを売り上げたと言います。
このECは完全に顧客視点から出発しています。日用雑貨から洋服まで多種多様な商品ラインナップを取りそろえるAmazonをコモディティ(一般化)コマースと位置づけ、自分たちは買い物のワクワク感を顧客に与える「エモーショナル・コマース」だと位置づけているのです。顧客から見て、満ち足りてなかったECの潜在需要を喚起し、エモーショナルコマースというコンセプトを出発点に、プロダクト、インターフェースなど全ての要素がそのコンセプトを満たすために設計されています。

CEOのジェイソン・ゴールドバーグ氏は顧客に何を提供すべきかを、顧客目線で把握しています。顧客が1番目に求めるのは、ここでしか出会えないユニークな商品、そして2番目に求めるのは最高の買い物の体験です。(この順番が分かってない人は、妙にUIにこだわってみたり、関係ないところをいじくりまわします。)

1番目の要望を満たすために、Fabの扱う商品の99%はアマゾンでは売っておらず、2番目の要望を満たすためにカスタマーサポートに全体の10%以上の社員を費やしていると言います。

そしてポイントは、顧客の要望を満たすことは本当に大変でめんどくさいということです。amazonが扱わない商品を仕入れるのも、顧客をケアするためにカスタマーサポートの体制を組むのも一朝一夕にはできません。しかし、この方針を地道に日々続けることが、顧客の需要を満たすことに繋がるのです。

ということで、勝ちパターンとかベストプラクティスとか言ってる人は、言い換えると「楽して儲けたい」と聞こえるというわけです。

ちなみにこれを書こうと思ったきっかけは、「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」を読んで感銘を受けたことです。

コンサルタント、田所洋司の憂鬱(後編)

たどころ2前回のあらすじ
文具メーカー△△社の山下太郎は、自社の文具を扱うECサイトの売上向上のため、他社ECを調査し、伸びているサービスが導入していた「ポイント還元」と「キュレーションコマース」を導入することにした。しかし、会議の場でコンサルタントの田所洋司が突然立ち上がり、否定しはじめた・・・。

田所洋司は席を立つと、ゆっくりと山下のところへ向かい、睨みつける山下の横を通り過ぎてホワイトボードの前に立った。田所は、会議に参加した10名のメンバーの目をひとりひとり見つめると、全員に話しかけるような口調で話し始めた。

「山下室長、まずポイントを還元するという手法ですが、山下室長はポイントを貯めるためにECを使ったことは?」
「ぐぬぬ。」
山下室長は、原哲夫の漫画に出て来る悪役のような声を出した。
「むろん、私は使ったことがあります。」
戦略室主任の河口は、山下をフォローするように言った。
「なるほど。河口主任がお使いのサイトは何ですか?」
「楽天です。」
「楽天で何をお買いに?」
「色々ですよ・・・。飲料水や、洋服、靴も買うことがあります。」
「なるほど」
田所は、ゆっくり頷いた。
「河口主任は、生活必需品から洋服まで多ジャンルに渡る様々な品物を楽天で買っている。理由の一つは楽天ポイントを貯めたいから。それで間違いないですね。」
「ああ、みんなだって楽天ポイントは貯めたいだろう。」
河口は吐き捨てるように言った。田所は気にせず続ける。
「なぜポイントを貯めたいかと言えば、自分が買いたいと思う物がポイントで買えるからです。なぜポイントが貯まるかと言えば、購入する回数が多いからです。つまり、楽天は日常で使う消費財からアパレルまで、ありとあらゆるジャンルの商材を扱う総合モールです。そこに買いたいと思う物があるからこそ、そこで使えるポイントを貯めるのです。楽天が消費財を扱っているからこそ、購入回数が多くなりポイントが貯まるのです。この循環で顧客をサイトに繋ぎとめていると言っていいでしょう。しかし」
田所は、河口の方へと向き直った。
「御社のサイトは文具専門サイトですね。人が文具を購入する回数は年に何回でしょうか。ポイントが貯まるのに年単位かかってしまったら、もはやそのサイトでポイントを貯めるモチベーションは失せるでしょう。ポイント還元は、顧客が高頻度で買い物をするというステップがなければ、良い循環は生まれないのです。

「しぇー。」
河口は、赤塚不二夫の漫画に登場する出っ歯のような声を出した。田所は気にせずに続けた。

「それからキュレーションコマースですが、キュレーターが商品を選りすぐってパッケージングするコマースというのは、確かにキュレーターに影響を受ける商材だったら有効でしょう。例えば、カリスマモデルがファッションアイテムをキュレーションする、著名人が書籍をキュレーションするといった具合にです。しかし、繰り返しますが、御社は文具メーカーです。いったい文具のキュレーターとは、誰なんですか。文具のスペシャリストがシャープペンシルと消しゴムをセットで進めたら、顧客が買うというシチュエーションが想像できるのですか!?」

「あ、あひぃ・・」
山下と河口は、「この店の焼売は本当の焼売じゃない」と海原雄山に指摘された店主のような声を出した。

田所は、「とりあえず私からは、以上です。」
田所はそうつぶやくと、冷静に席へ着席した。

<おわり>

ということで、田所に糾弾されてしまった山下室長と河口主任ですが、この2人みたいなこと言う人って本当に多いんですよ。次回エントリでは、この2人の何が悪かったかを体系的に解説していきます。ちなみにこれを書こうと思ったきっかけは、「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」を読んで感銘を受けたことです。



 

コンサルタント、田所洋司の憂鬱(前編)

たどころ田所洋司は、カップホルダーのフチをひとさし指の爪で弾いていた。カツカツ音がするなと思ったら、自らの爪で黒いプラスチック製のカップホルダーを弾いていることに気づいたのだ。ホルダーの中にセットされたカップには、すっかり冷めたコーヒーが入っている。田所は小さくため息をついたが、目の前にいる事業開発部戦略室室長の山下太郎は、会議室の机に並んだ10名の社員たちに淡々と話続けている。

「来期でさらに10億の売上を積まないといけない。他社のECで伸びているところは・・・」

「〇〇社です。」

「そうだった、〇〇社や××社が非常に伸びている。これらに共通の勝ちパターンはなんなのか。それを研究して、まとめてもらったのが、先ほど河口くんにプレゼンしてもらった通りだ。これらに共通する法則は何か、河口くん、もう一度話してみてくれ。」

戦略室主任河口は、ゆっくりと立ち上がるとホワイトボードの前まで戻ってきた。先ほど使ったプレゼン用のスライドを数枚戻して、まとめのページを投射する。

「先ほどもご説明させて頂きましたが、まずはポイント還元による顧客囲い込みです。ポイントシステムを導入して、還元率の引き上げを行うことにより、顧客を弊社のコマースに固定化します。
それから、先ほどの2社はキュレーションコマースを採用しています。発言力の高いインフルエンサーに、お気に入りの商品を集めてサイト上で陳列してもらえれば、購買率が飛躍的に高まります。」

「なるほど、ドキドキ、ワクワク感の演出だな。」
山下はもっともらしく頷きながら、口をはさんだ。

「これが、私たちが調査をした結果導き出されたベストプラクティスです。ポイントによる顧客囲い込みと、インフルエンサーによるキュレーションコマース。この2点を軸に現状のECサイトを一新します。」

河口はもっともらしく頷くと、席に戻った。山下は、会議室に着席した10名の社員に視線を向ける。
「何か、質問があるかね?」

田所洋司は、プラスチック製のカップを脇に寄せると、スっと立ち上がった。
「すみません、2点ほど質問があるのですが」

山下は、田所に視線を投げた。どうせ社長の友達のコンサルもどきが、金めあてにプロジェクトに転がり込んできた。山下の目がそう語っている。田所は、気にせずにつづけた。

「一点目は、現状御社のECコマースサイトは、御社で扱われている文具のみでしょうか。」
「そうだが。」
「御社の文具は、自社で商品開発を手掛けられていると伺いましたが、正直あまり特徴があるようには見えませんね。」
山下は、田所を睨みつけた。
「確かに特徴はない。しかし、うちの売れ筋商品「何の変哲もない消しゴム」などは、何の変哲もないながらも、よく消えると30万個のヒット商品だ。」
「もう一点お伺いしたいのですが、キュレーションコマースをされると言いましたが、現在扱っている自社製品から扱い点数を拡張する予定は?」
山下は、腕を組んでぶぜんとした表情で答えた。
「ない。」
田所は、腕を組んだまましばし考えた。
「少々、お話させてよろしいでしょうか?」
そして、山下の答えを待たずに田所は話はじめた。

「あなた方が今しがた説明したこの戦略は破綻している!
・・・いや、こんなの戦略とは呼べない!」

後半に続く
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ということで、急に小芝居が始まってビックリしたと思うのですが、この会議の流れの何が間違っているか、解りましたでしょうか?だいたい、解ってない人ってこの例の山下と河口みたいになります。
最近読んだ「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」に感銘を受けて書いてみました。

「口コミの正体」の補足~100Mの巨人現る~

巨人※画像出展:http://cgworld.jp/regular/animecg/cgw178-kyojin.html

口コミの図は、複雑系ネットワークといふ

今年の6月に書いた「口コミの正体」が、佐々木俊尚さんのおかげでたくさんの方に読んで頂けました。ちょっと補足して色々説明しようと思います。

このエントリでご紹介したハブ(インフルエンサー)から情報が広まる図ですが、この図はインターネット以外の情報伝達においても同じ経路になります。この情報伝達のネットワークのことを「複雑系ネットワーク」と呼びます。kuchi_03モノゴトが広まる影には、何事もハブ(インフルエンサー)が重要な役割を果たしているのです。例えば、面白いことを知っても友達に伝えるのは1人か2人というのが普通ですが、ハブ(インフルエンサー)は、10人や20人、100人以上に伝達を行うのです。

噂や病気など、人から人に伝わる伝達は、必ずこの複雑系ネットワークと呼ばれる経路を経由しているのです。また、これをインターネットのサイトに置き換えても同じことが起こります。Yahooはハブ(インフルエンサー)で、大量に他のサイト(ノード)にリンクを貼っています。インターネットの構図を上から俯瞰しても、やはりこの複雑系ネットワークの形になるのです。

インターネットの登場が、身長100mの巨人を編み出した

インターネット登場以前は、いくら知り合いが多いといっても、1人あたりの知り合いの数なんてたかが知れていました。せいぜい数百人から数千人です。これをグラフにするとベル型カーブになります。知り合いが1人しかいない、あるいはいないという人はごく少数、そして平均的な数の知り合いを保有する人々が一番多く、数百人以上の知り合いを持つ人はほんのわずかです。このベル型カーブは、クラスメイトの身長分布や50M走のタイムでも姿を現します。
ベル型カーブ

左:ベル型カーブのグラフ 右:べき乗型カーブのグラフ

しかし、インターネットの登場により、身長100Mの巨人が練り歩くような世界になりました。ベル型カーブが崩壊し、身長100Mの巨人が現れるようになったのです。(これをべき乗のグラフ(右側)と言います。)つまり、フォロワーが数人しかいない人々がたくさんいて、フォロワー数が100万人以上いる強力なインフルエンサーがごく少数いるのです。インターネット以前は、100万人もの人たちに一瞬で情報を伝えるツールなどありませんでした。

おまけに、リアル世界の口コミには、距離による物理的制約がありました。しかし、インターネットは、その物理的制約を飛び越えることが出来ます。
身長100Mの巨人が現れて、距離による物理的制約が外れた結果、何が起こってもおかしくない世界になったのです。このへんは、「ブラックスワン」等に詳しい記述があります。

何が起こるわ分からないけれど、起こったらすごい

ということで「複雑系ネットワーク」と「ブラックスワン」を読み込んでもらうと分かるのですが、今の世の中は「何が起きるか想像しづらいが、いったん起こると破壊的」な世界になりました。私たちは、常に良い方の破壊的な可能性に身をさらす努力を必要とされているのです。





 

Facebookがmixiを超えて普及した3つのステップ

mixiロゴ

そろそろこのテーマを総括しておくタイミングかなと思いました。2009年に行われたFacebookセミナーで、参加者の一人がスピーカーの人にこう質問していました。

「Facebookがmixiを抜くとは、どう考えてもないと思うんですが」

そう、2009年末頃はまだまだmixiが圧倒的でした。iPhoneが流行るとは思えないくらい、Facebookが流行るとは思えなかったのです。

STEPその1 サービスの核(コア)を絞った

Facebook→必殺KPIで新機能2年ストップ
mixi→収益化にふみきり多機能化

元Facebookのグロースハッカー、Andrew Johns氏によるとFacebookは以下の経緯をたどった結果、2年間新機能の開発をストップして「登録から10日以内に7人以上の友人と繋がる率」をKPIに設定し、KPIの向上のみに絞ったそうです。

・大量の機能を追加したが、ユーザーの獲得数増大には大きな成果なし
・全機能について新規ユーザーのリテンションに繋がったかを計測
・「追加した機能はリテンションに繋がっていない」という結論に
・リテンションとなるのは「友人とつながること」そのものだと仮定
・2年間、新機能の開発をストップして検証
・「登録から10日以内に7人以上の友人と繋がる率」をKPIに設定
・その数値目標を達成するための施策のみに絞って実行

http://www.find-job.net/startup/event_growth0726

Facebookの核(コア)を決めて、それのみに注力するという選択と集中です。かたや、mixiはご存じのように収益を高めるにために、様々な機能をリリースして多機能化していました。mixiのみならず「myspace」など競合SNSはみな多機能化していました。多機能化した結果、サービスの核(コア)が分からなくなり使いづらくなっていったのです。

■STEPその2 インターフェースの違い

Facebook→フロー型のインターフェース
mixi→ストック型のインターフェース

Facebookはツイッターと同じくフロー型のインターフェースでした。フロー型のインターフェースの良いところは、様々な情報が一つのタイムラインに集約されることです。対してmixiは旧来のストック型のインターフェースであり、1つのコンテンツを見にいっては自分のホーム画面に戻るという導線になります。

先ほどFacebookが「登録から10日以内に7人以上の友人と繋がる率」をKPIに設定したという話をしましたが、2009年当時すでにアメリカの平均的なFacebookの友達数は200を超えていました。この人数もフロー型であればこそ、実現できる人数です。mixiで友達が200人いたとしても、いちいちリンク先を見にくインターフェースでは疲れてしまいます。

■STEPその3 日常の行動導線に食い込むツールに


Facebook→日常のツールと化した
mixi→あくまでも趣味の範囲だった

Facebookを使い慣れてくると、だんだんタイムラインよりはメッセージのありがたみが増してきます。仕事のやりとりはFacebookで行うという人も多いのではないでしょうか。さらに、グループを作ってファイル共有をすることも可能なので、プロジェクトのメンバーと一緒にやりとりをしながらファイル共有をすることも可能です。仕事以外でもイベントという機能によって飲み会などの日程を設定し、場所を周知することも出来ます。

このようにツール化した結果、日常の習慣に食い込んでいくので、たとえタイムラインを見ていて「Facebook疲れ」を起したとしても、Facebookから離れづらくなるのです。

対してmixiはあくまでも趣味の範囲で、仕事のやり取りをしたり飲み会の連絡をmixi上でするということが、ありませんでした。つまり、mixi上の交流に飽きたら離脱してしまう仕組みになっていました。

結局mixiはどうすれば良かったのか


今になってmixiはどうすれば良かったのかと考えると、2つ思い浮かびます

その1:2009年あたりで方向性を実名に踏み切る
Facebookが流行る前に、Facebookになって日常のツールと化しちゃうのです。一時期、足あとを廃止したりと実名制に歩み寄ろうとしていましたが、いかんせん中途半端でした。古参のmixiユーザーは猛反発したでしょうが、過去にはgreeも実名SNSからゲームプラットフォームに踏み切るためにプロフィール写真を廃止して、アバター化した過去などもあります。方向転換をするときは、思い切りが重要なのです。

その2:ニコニコ動画的なサブカルチャー的な立ち位置を取る
先ほどmixiが「あくまでも趣味の範囲だった(日常のツール化しなかった)」と書きましたが、弱みと強みは表裏一体なので、逆にこのポイントに限ってFacebookにない要素でした。mixiには数百万ものコミュニティがあり、芸能人などのファンコミュニティも活発でした。こういう日本ならではのサブカルカルチャーを活かして、ニコニコ動画的に共有できるスペースに方向転換を図ることは可能だったのかもしれません。

ということで、3つのステップにまとめてみましたが、みなさんはどう思いますか?

解決力を養うためには

ハムスター

ハムスターの処遇をどうするか

昨日のエントリで、体系的思考が低下している気がしているという話題を出しました。エントリの最後で、例題に使った問題を出してみたのですが、いかがでしたでしょうか?

問題を再掲しておきます。

みつこさんは3年B組の学級委員長です。みつこさんは、3月に行われた学期末の学級会において教室で飼育しているハムスターの係を決めるべきだと議題を出しました。3年B組では、ハムスターの世話を担任のよしこ先生が行っていたのです。クラスメイトののぶおくんは、引き続きよしこ先生が世話をするべきだと言いました。さとこさんは、みつこさんに賛成で係りを決めるべきだと言いました。よしこ先生は自分が引き続き世話をすると言いました。

さて、今のところ「ハムスターの係を決める」派と「先生が世話をする」派の2つで対立しています。このいずれかの意見に賛同するか、第3の意見がある方はなぜその主張になるのか理由を考えてみてください。

・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・。

正解発表なのですが、いずれの意見にしろこの段階で答えを出してしまう時点で全部間違いです。といういじわる問題なのですが、この問題を考えるあたっては前提となる情報が不足しているのです。よって「解答を出すための前提条件が不足している」という答えが正解なのです。

冒頭に「3月に行われた学期末の学級会において」というくだりがあります。もしも3年B組が中学校か高校であったら卒業してしまいますね。小学生だったにしろ、3月の学期末ですからクラス替えがあるかもしれません。ということで、3年B組が4月以降どういう形態になるかによって、ハムスターの処遇が変わってきます。

欠けている物に気づけるか

前提情報の欠如に気づけなくて、主観で判断して水掛け論になることがよくあります。

「ハムスターの係りを決めた方がいいよ!自主性が大事だ!」
「いや、ハムスターのことを考えたら先生にまかせるべきだよ!」

みたいに。

そして経験上、9割以上の人が前提条件の欠如に気づけないきがします。私たちは、あまりにも与えられたパーツの中で答えを出すことに慣れ過ぎているのです。義務教育を通して、与えられた情報以外の情報を取りに行き、ものごとの解を求めることは一切ありませんでした。

ということで、昨日のエントリに戻りますが、ここでもやはり体系的思考が大事なのです。体系的思考の棚を頭の中に作れば、どの棚が空っぽなのかが分かるのです。

このへんは、小宮 一慶さんの「ビジネスマンのための「解決力」養成講座」が非常に勉強になりますので、ご一読をおすすめします。

体系的思考のテスト~ハムスターをめぐる問題~

ハムスターをめぐる3年B組の問題

体系的思考が低下している気がするのです。唐突に結論から入ったのですが、まずは以下の文章を読んでみてください。

みつこさんは3年B組の学級委員長です。みつこさんは、3月に行われた学期末の学級会において教室で飼育しているハムスターの係を決めるべきだと議題を出しました。3年B組では、ハムスターの世話を担任のよしこ先生が行っていたのです。クラスメイトののぶおくんは、引き続きよしこ先生が世話をするべきだと言いました。さとこさんは、みつこさんに賛成で係りを決めるべきだと言いました。よしこ先生は自分が引き続き世話をすると言いました。

さて、3年B組のハムスターをめぐる状況を整理してみてください。

体系的思考をする人が、どういうルーツをたどって記憶していくかを図解してみます。

【みつこさんは、3月に行われた学期末の学級会において教室で飼育しているハムスターの係を決めるべきだと議題を出しました。】
まず、冒頭においてみつこさんの主張がぽつんと置かれます。

hamu_05

【3年B組では、ハムスターの世話を担任のよしこ先生が行っていたのです。】
みつこさんの議題に対して、現状がどうなっているかの解説です。事実として脇において置きましょう。
hamu_04

【クラスメイトののぶおくんは、引き続きよしこ先生が世話をするべきだと言いました。】
よしこ先生が世話すべきという、みつこさんと真逆の主張を持つのぶおくんが現れました。みつこさんと反対のことを言っていますから、対極に置きます。
hamu_03

【さとこさんは、みつこさんに賛成で係りを決めるべきだと言いました。】
みつこさんの意見の支援者が出てきました。みつこさんの近くにおきます。それとともに、現状は「ハムスター係を決める」という主張と「先生がやる」という2つの対立した主張が存在します。ここで、登場した人々の意見をこの二つの主張に分ける大見出しをつけます。
hamu_02

【よしこ先生は自分が引き続き世話をすると言いました。 】
よしこ先生の意見はのぶおくんと同意見です。前のステップでつけた大見出しのうち、「先生がやる」派の意見ですので、そちらのグループに入れます。
hamu_01

ということで、最終的にこういう図が出来上がりました。これが体系的思考が出来る人の情報整理術です。ここに新たに美術の先生がきて「生徒の自主性を重んじて係を作るべきだ」と発言しても、美術の先生を「ハムスター係を決める」派に投入すれば良いのです。最初に状況を整理した図を頭の中に作っておけば、その後の情報量が増えても体系的に処理が出来ます。
また「先生がやる」という意見の人は何人?と聞かれてもすぐに答えられるのです。

体系的思考ができない人

では、体系的に情報を整理できない人はどう考えるでしょうか。これら一つ一つの情報は、思考の棚に入れられないまま、目の前を流れるベルトコンベアのように通過していくのです。ゆえに、登場人物が増えれば増えるだけ混乱していきます。おまけに、意見の違いと利害関係の構図が理解できないので、ここから状況を整理することが出来ません。

体系的思考をするためのポイントは二つです。まず一つ目は、真っ白な頭の画用紙に情報をひとつ置くことから始めることです。この例でいえば、【みつこさんは、3月に行われた学期末の学級会において教室で飼育しているハムスターの係を決めるべきだと議題を出しました。】という情報がはじめに置かれます。
その事実から出発して、関連した情報をどんどん紐づけていくのです。

そして、二つめのポイントは、ある程度情報量がたまったら情報を抽象化して再構成すること。【さとこさんは、みつこさんに賛成で係りを決めるべきだと言いました。】のくだりです。このくだりで、異なる2つの主張がぶつかっていることが分かります。ここで両者の意見の見出しをつけることにより、その後の情報がさらに分類しやすくなり、大局観が分かりやすくなるのです。

なぜ体系的思考ができなくなったのか

なぜこんなことを思ったかというと、ちょっと前に行った実験が原因です。少し前に「解るニュース」というコンテンツを考えました。ニュースを図解にして、テキストを恋愛ゲームのインターフェースでポチポチ小出しにしていき、画像部分に対応した図解が表示されるというものです。

ここで数十人に見てもらって気づいたのが、一番目に見た情報を記憶として蓄積できず、2番目、3番目以降の情報もどんどんダダモレてしまう人がけっこういたのです。

ここでは、ハムスター係を例に出しましたが、国際情勢などはこの図が更に複雑になったようなものです。

シリアのアサド大統領がいました。
アサド大統領は国民を弾圧しているので、デモが発生しました。
一部の過激派とアサド大統領側の軍隊がぶつかり、国際問題となっていきます。
欧米諸国は民主化を目指すために国民の味方ですが、中国やロシアなどはアサド大統領を支援しています。
シリア

このように、シリアのアサド大統領を起点に頭の中の情報を更新していくのですが、思考の棚が築けずに「アサドって誰だっけ?」と、相関関係が分からなくなってしまうのです。

しかも、思考の棚が築けないのは20代前半の若年層(結構良い大学を出ている)に多いようでした。私見ですが、この現象にはツイッターが一役買っているような気がします。ツイッターは体系的思考がなくても単体で刺激的なコンテンツが目の前をベルトコンベアのようにどんどん流れていきますから。
ツイッターに限らず、スマートフォンの作りは体系的思考を求めないベルトコンベア型(フロー型)がほとんどなのです。

ということで、一番の訓練はとにかく本を読むです。特に物語は、登場人物とそれぞれの利害関係を把握するには、最も役にたつツールなのです。

■最後に
そして、皆さんはハムスターをどうするのが最適化だと思いますか?生き物係を作りますか?それとも先生が引き続き世話をしますか?
正解は、次回のブログで・・・。

※関連エントリ
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体系的思考の養い方