月別アーカイブ: 2013年9月

良いプロダクトだけではダメ?「Path」2年半で1000万DLの背景

path

LINEは1億ダウンロードまで2年


家族や仲の良い友達だけでコミュニケーションを楽しむクローズドSNS「Path」が全世界でユーザー1000万を突破しているようです。
マネタイズに踏み切るようですが、このニュースを見て色々と複雑な気持ちになりました。

まず、1000万を超えるために2年と2カ月を要したということですが、これは現状の他サービスを比較すると明らかに遅いです。
以前にメインフレームコンピュータが出来てから今にいたるまでを年表でまとめてみたことがあります。


この年表によると、Facebookが一般に公開されてから5億人を突破するまでに僅か4年しかかかっていません。
スマートフォン発売以降はさらにこの流れが加速し、写真加工アプリのInstagramは1年で1000万ユーザー、LINEも1億人ユーザーに達するまでわずか2年です。

ねずみ算式の構造を備えたサービスか?


これは明らかにクローズドSNSの特性によるものです。「Path」は繋がれる友達数を50人に限定していました。つまり、1人入会した場合、そのユーザーがサービスに友だちを連れてこれる数は50人になります。しかし、Facebookは友達の数は無限であるため、1人入会してもその人の友達が多ければ数百人が入会してくれるかもしれません。
この構造的な特性により、クローズドSNSは成長率が普通のSNSに比べて当然鈍くなるのです。成長率の鈍さに気づいたPathは、50人に限定していた友達数を150人に拡大しました。
ここで大きな矛盾が生まれるのですが、クローズドSNSは「Facebook」などの繋がりすぎるSNSに嫌気がさした人たちが使いだしたものです。
気の置けない友人たちと心地よいコミュニケーションを図るためのソリューションであったのに、友達数を150人に拡大するということは、Facebookとなんら変わりないSNSになってしまったということです。

一連の現象を、Pathの構造上のデメリットより普及が遅かったと見ることも出来るのですが、果たしてどうなのでしょうか。普通に考えたら2年と2カ月で1000万ユーザーを抱えるってとても速いことですよね。逆に考えると、「Path」の普及が遅すぎたわけではなく、その他のサービスが早すぎたとも言えます。
コンピューターの歴史をもう一度見ると、デバイスやプラットフォームの普及までに要する時間がどんどん短くなっています。

つまり、マジョリティのサービスになるためには、良いプロダクトであるというだけでなくFacebookのように急速に拡大できる「ねずみ算」的構造を持っている必要があります。
変化のスピードが速すぎて淘汰される自然界の現象のようです。

それとともに、マーケットの変化も急激になっており、インターネット界隈のサービスはそれについていくのに必死ですし、むしろついていけない会社の方が多い。ソーシャルゲームも半年先のヒットは読めず、今までのセオリーに従ったゲームを開発していたらパズドラみたいな黒船が登場するという状況になっています。

いずれは製造業にも波及


この急激なスピードは、いずれ製造にも波及するでしょう。パソコンの普及に比べてスマートフォンの普及が早かったのは、OSが完成されていて、インターネット環境も整っていたからです。パソコンの時代は、ブロードバンドの整備とOS95の発売という通信インフラとデバイス側の条件が整うまで一般消費者に普及しづらい環境だったのです。

インフラとデバイスの条件が整って、デバイスの普及も一気に広がるようになった今日、次はこの急激なスピードはIT化を果たした製造にも波及することが想像できるのです。

良い製品を作っているだけではダメ。そういう時代がもう来ています。

ファーストフードコンテンツと思考の棚の関係

すぶり

何かを楽しむには、楽しくない素振り期間が必要

どんなスポーツでも、楽しむには素振り期間というものが必要です。中学生の時、テニス部に所属していましたが、最初の一か月は素振りしかさせてもらえませんでした。
その後、素振りから、目の前の壁にボールを打つ壁打ちを経てやっとコートに立てるのですが、素振りをちゃんとやっておかないと、フォームが変になって行きずまります。

スポーツ以外の事柄でも割とそういうことがあります。英単語をひたすら丸暗記するのは苦痛ですが、英語を話せるようになるまでは避けて通れない素振り的プロセスです。

さらに、趣味の世界でも、極めようとすると素振り的プロセスが必要だったりします。例えばワインだったら、産地や地方によって味や風味が異なり、ひたすらワインを飲んで産地を勉強していく必要があります。知識が蓄積されると、頭の中に相対的なマッピングが出来上がります。
〇〇地方は××品種だから力強い味わいとか、△△地方は□□品種だから繊細な味わいといった感じです。

素振りを潜り抜けると思考の棚が出来る

素振りは、非常にめんどくさく退屈なプロセスですが、これを経て初めて獲得できる知恵や喜びというものがあります。
先ほどのワインの例でいうと、基礎知識を蓄積して相対マッピングが出来ると、思考の棚が頭の中に設置されます。新しいワインに出会っても、その思考の棚の中に格納されて、ワインとワインの間に自分なりの文脈を作ることが出来るのです。
以前にも出現したキーワードですが、これが知識を蓄積した末に出来る体系的な思考の一端です。

この素振り的プロセスを身に着けるには、ある程度の時間と努力を要します。淡々と知識を蓄え続けて、思考の筋肉を養うのです。
しかし、現在ではまとまった時間を確保するのを妨げるソリューションやサービスがたくさんあります。

あなたが目を話した1分の隙に友達がFacebookをあげているかもしれないし、Twitterも更新されているかもしれません。push通知でLINEのメッセージがきたり、あなたに最適化されたニュースも配信されてきます。

こうしてあなたの時間は細切れになり、目の前の情報を短い時間で処理していくうちに、素振り的プロセスで何かを獲得するという行為を苦痛に感じるようになります。

思考の棚がなくても、咀嚼できるコンテンツ

もしも、みんなが素振り的プロセスを止めたらどうなるでしょうか?知識の蓄財による思考の棚を必要としないコンテンツしか消費されなくなります。なんの前提も知識を持たなくとも、面白いと感じられるコンテンツです。

美しい世界遺産の写真、一瞬見ただけで笑ってしまうような画像、偉人の名言、死ね、消えろといった強い言葉たち。

そう、インターネットで流れてくる風景は、思考の棚を持たなくても噛み砕けるコンテンツばかりなのです。そして、それらには強い中毒性があります。面白い写真はずっと見ていたくなります。強い言葉で綴られるテキストから得られる刺激を求めて、延々見続けることになります。

インターネットの世界に限らず、世の中のコンテンツはこの流れの中にあります。お笑いは「エンタの神様」の登場以降ネタの時間が短くなり、ついには「レッドカーペッド」で数十妙にまで細分化されます。数十秒で笑いを取るためには、過剰なアクション、過剰なキャラクターが必要です。

気が付いたら細かい文脈をくみ取るようなお笑いが消え、やがて「レッドカーペッド」自体も終了していて、気が付いたらお笑いのネタ番組がほとんどなくなっていました。

安きに流れるコンテンツは、一様に観客に迎合し、スポイルされ、やがてコンテンツそのものが衰退していくのです。
版権モノばかりしか扱わなくなった日本映画やドラマ、イケメンしか出なくなった子供向けのヒーロー番組など、どんどんコンテンツが安きに流れ、文化はスポイルされていきます。

無意識に本物を求める人々

ファーストフード的コンテンツに食傷気味となった人々は、「本質的なモノ」を求めているのではないでしょうか。思考の棚がなくとも、頭の中のブラックボックスに入って感情を喚起してくれるコンテンツを。

ジブリの映画や村上春樹の作品といった本物のコンテンツが、立て続けにヒットを飛ばすのはそういう欲求の現れのように思えてなりません。

この状態が進むと、ほんの一握りの本物と、細分化されたファーストフードコンテンツの二極になるように思えるのです。

iWatchでもたらされるコンテンツプロバイダーの憂鬱

iwatch

次の主流デバイスは、ウェアラブルになるか!?

AppleのiWatchなど、身につける系のいわゆるウェアラブルデバイスがどんどん登場しています。時計型で言うとAppleの「iWatch」、SAMSUNGの「Galaxy Gear」、メガネ型で言えばgoogleの「Google Glass」、井口尊仁さんの「Telepathy One」等です。

随分前からデバイスの主流は、ウェアラブルに移行すると言われていました。コンピューターの歴史を紐解くと、IBMが開発したメインフレームからパーソナルコンピュータへ、そしてノートパソコンからモバイルへとコンピューターはどんどん人間の体に近くなっているのです。そして次の主流は、身につけるウェアラブルデバイスであると言われています。(ちなみに、ウェアラブルの次は、脳に直接接続をするといSFチックな予想があったりします。)

このウェアラブルデバイスが普及して主流となった場合、コンテンツプロバイダー(以下CPと呼ぶ。SAP等も包括してCPと呼びます。)たちは激しい競争にさらされることになります。

iモードと蜜月だったコンテンツプロバイダ

日本のCPのはじまりは、1999年のiモードというプラットフォームの誕生からでした。iモード用にコンテンツを提供するCPが大量に登場し、他の通信キャリアも同様のプラットフォームを立ち上げ、市場はぐんぐん成長し、CPも次々と上場します。最終的には、5500億※1もの巨大市場となりました。

1999年以降の10年間は、日本の通信キャリアとCPにとってまさに蜜月の期間でみんなが幸せでした。全ては日本のモバイル市場がガラパゴっていた上に、夏野さんらのメンバーがiモードを立ち上げてくれたおかげです。日本ではモバイルコンテンツが隆盛していましたが、海外では皆無でした。

いつまでも続くと思われた平和な時間が流れた後、2007年にAppleの「iPhone」が発売となり、翌2008年にはgoogleの「Android」が発売となります。最初は「日本はガラケー文化が強いから、絶対スマートフォンなんて流行らないよ」というのが見方が大方でした。しかし、iPhone&Androidは爆発的に普及し、デバイスの主流になろうとしています。(てゆうかほとんどなっています。)

iモードを研究していたというAppleは「appストア」というアプリマーケットを開設。2009年には登録アプリケーションが10万本を突破、ダウンロード数は20億本を突破し、世界最大のコンテンツマーケットとして成長します。同様にAndroidも「googleplayストア」を開設し、現時点で世界のコンテンツのプラットフォームはこの2社にほぼ独占されています。

さて、市場を成長させてきた日本のCPはどうなったでしょうか。当然、キャリア手動のコンテンツマーケットのシェアはシュリンクするので、自動的にiPhone&Androidのマーケットに参入しようとします。それでは、5500億のコンテンツ市場のシェアは、そのままスマートフォンのマーケットに移動したのでしょうか。

プラットフォーマーが変える、ゲームのルール

こちらのブログによると、全世界の4大アプリストアの第1四半期における総売上高は、22億ドル(約2,180億円)だそうです。“全世界の売上高”で、です。

調査会社Canalysの発表によると、「App Store」「Google Play」「Windows Phone Store」「BlackBerry World 」の4大アプリストアの第1四半期における総売上高は、22億ドル(約約2,180億円)。アプリのダウンロード総数は、134億本にのぼったとのことです。

明らかにキャリア手動のプラットフォームに比べて、売上がシュリンクしてしまっています。今までCPという業種で会社を運営してきたのに、スマートフォンの普及により、明らかに食えなくなっているCPが存在するということです。

なぜ、このような現象が起きるかといえば、App Store&Google Playのストアが、基本が無料アプリだからです。(有料アプリのシェアは小さく、年々シュリンクしています。)無料が前提であれば、フリーミアム課金をするか、広告で収益を上げるしかありませんが、アプリは全世界で100万本以上存在するので、広告配信で潤沢な収益を上げることが難しいことは容易に想像できます。

キャリア手動のプラットフォームは、「300円前後の有料モデルが前提」というルールでした。そして、ユーザーは「モバイルの情報サイトにはお金を払うことが当たり前」という習慣を埋め込まれていたので課金に抵抗がなく、市場はぐんぐん成長したのです。

新しく登場したプラットフォーマーは、そのゲームのルールを変えてしまいました。CPも、キャリア手動のプラットフォームで培ったノウハウが生きず(むしろ邪魔になったくらいでしょう)、全員が0地点に戻ってしまったのです。

appstoreの登場からまだ6年しか経っていませんが、ウェアラブルデバイスが普及すると、またもプラットフォームのルールが変わる可能性があります。極端な話、シェアを取ったデバイスのプラットフォーマーが「コンテンツのマーケットストアはやりません」と宣言したら、非常に辛いことになるのです。

ただ、ゲームのルールが変わったことにより、もたらされた恩恵というものもあります。例えば「CocoPPa」やカメラ系アプリなどのジャパニーズカワイイ系のアプリがダウンロード数を伸ばしていますが、これはマーケットが全世界対応というルールに代わったおかげです。

そして、世界のコミュニケーションプラットフォームになろうとしている「LINE」が生まれたのも、ルールが変わったおかげです。キャリア手動のプラットフォームでは基本的にHTMLベースの情報系コンテンツがほとんどでしたが、アプリに代わったおかげでより技術的に高度な動作が出来るコミュニケーションソリューションを作ることが出来たのです。
そもそも、キャリア手動だったら「無料メッセンジャーアプリ」というコンセプト自体が否定されていたしょう。

「Galaxy Gear」にLINEが標準搭載されることが発表されたり、「Google Glass」では「path」をはじめとする一部アプリケーションは既に稼働出来るようになっている等、いろいろ動きがあるようですが、各プラットフォームが、ゲームのルールをどう変えるかという点に注目したいと思います。
ネットの情報によると、「Google Glass」についてはアプリ内での課金を認めないのでは?というのもあるので、情勢はどんどん変わっていくような気がします。

最後に、どれだけルールが変わっても、すたれないサービスがあります。クックパッドです。クックパッドはフィーチャーフォンからスマートフォンに変わっても、ユーザーがスイッチしてくれた数少ないサービスの一つです。生活に密着していて、ユーザーが感情移入しているサービスは、デバイスが異なってもユーザーは必ずついてきてくれます。

そういう意味でいうと、本当にコモディティを脱してコンセプトの時代になったのだなと思うところです。

※1MCFの2010年度調査による。モバイルコマースも含めると1兆5千億ほど。

(@toriaezutorisan)
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議論や調査をするよりもプロトタイプ作ろう

しゃもじ仮説の上に仮説を積み重ねる。

最近、必要のない議論が多すぎるなって思うんですよね。よく広告代理店の人とかもクリエイティブについて2時間も3時間も話し合ったり、数十万とか数百万とかかけてユーザーインタビューをしたりしています。

でも、中には意味のない議論が多く含まれているような気がします。例えば「この新サービスを使う顧客は誰だ?」という議論が起こって、意見が飛び交います。みんなの意見を集約してペルソナを作り、どういうシチュエーションでそのサービスを利用するのかなどをねっこり話し合って、分厚い資料が積み重なっていきます。

でもこの意見って、仮説であって、仮説に仮説を積み重ねているだけで、仮説の確認を誰もしてないんですよ。土台の仮説がそもそも間違っていたとしたら、全てやり直しになっちゃうのです。

議論をするよりモノを顧客に見せよう

なので、時間をかけて議論するよりは、簡単でいいから手を動かしてテスト用のプロトタイプ作った方が良いと思うんですよ。で、想定しているユーザーに「これ使ってみたい?」と聞けばいい。ニーズがマッチしてたら「使ってみたーい」となるし、あるいは「こんなの全然使いたくない」という反応でも良い。
全然使いたくないプロトタイプが目の前にあるということは、「こういうのだったら、使うんだけどなー」というユーザーの声が引き出せるのです。

市場調査で「あなたの理想のしゃもじは何ですか?」という質問をしても、まず本音は出ません。ユーザーは、四六時中しゃもじについて考えているわけではないし、しゃもじを使う瞬間の人は無意識だからです。だから、しゃもじについての真実が知りたければ、作り手が理想的だと思うしゃもじを作って、手に持たせてみる方が早いのです。手に持たせてみれば、

「あ、これだったら使いやすい。」
とか
「このしゃもじ使いにくいですね。ああ、持ち手が短いんですよ」
とか、

テストプロダクトを起点にして、潜在的なユーザーの課題や本音が浮き彫りになってきます。その声をフィードバックしてまたテストプロダクトの方向性の舵を切れば良いのです。

特にユーザーインターフェースについては、机上で議論するよりプロトタイプ作った方が一発です。ということで、最近は発案するとともに即座にプロトタイプを作るようにしてます。

よく使うツールとしては、NAVERまとめを使って「こういう視点のメディアがあったら読みたい?」とか、簡単なHTMLを組んで触れるようにしたり、HTMLがおっくうな場合はPOP等を使ってアプリのモックを作っています。

ということで、議論する前に手動かしちゃおうよという提案でした。

素晴らしいプロトタイプ作成アプリ「POP」について