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伊坂幸太郎や池井戸潤より売れている!?あなたの知らないラノベの世界

伊坂幸太郎や池井戸潤よりも売れている、ライトノベル作家がいた

書籍のジャンル別売上ランキングを調べていて気づいたのですがライトノベルは日本の売れている文芸小説よりも全然売れています。作家別の年間売上を見るとこのようになっており、この黄色い色がついている方々はラノベの作家の方々なのです。

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一般的には知名度がある伊坂幸太郎や池井戸潤よりも、大森藤ノというラノベ作家さんの方が書籍の売上的には上なんですね。
ということで、予想外にライトノベルの市場が大きかったことにびっくりしたので深堀りしてみたところ、意外とライトノベルが身近だということが判明しました。
ライトノベルを読んだことはなくても、ドラマ「ビブリア古書堂の事件手帖」や「掟上今日子の備忘録」などの名前は知っていますよね?実はこれ、全て原作がライトノベルなのです。他にも「涼宮ハルヒ」というタイトルは皆さん聞いたことあると思いますが、アニメ作品だと思っていたら、原作はライトノベルでその後アニメ化されていたのです。
ライトノベルを積極的に読まない層にとっては「ドラマ」や「アニメ」作品として認知されている作品の原作は、ライトノベルであることが多いようです。まさにメディアミックスというやつですね。(ちなみにアニメからスタートしてライトノベル化される例も。)

このように、ライトノベルから始まり、その後ドラマやアニメに展開するなどして市場が成長してきたようですが、実はここに来てラノベ市場がシュリンクしていると言います。

本当はむしろ拡大しているライトノベル市場

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「Matsuの日記」 よりグラフ引用
http://d.hatena.ne.jp/Matsu23/20150420/p1

こちらは、出版月報 2015年3月号「特集 2014年文庫本マーケットレポート」より作成したというグラフのようですが、確かに2012年の284億円を頂点にして下降気味になっています。
色々なネットの情報を見ると「ライトノベルが似たような話ばかりになり、質の薄いコンテンツが量産された」というコメントもありましたが、紙から電子書籍にシフトしているのが要因だと思います。

この記事によると、2012年度時点で角川グループ運営する電子書籍サイト「BookWalker」ではライトノベルの売上比率が50%と発表されており、角川グループ全体の電子書籍売上は24億円に登る見込みだとあります。

角川グループの電子書籍ビジネス、年間24億円規模に(2012年度)
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1304/25/news086.html

さらに2014年時点の以下記事には、角川グループの電子書籍の売上についてこんな記述があります。

大きな成長を見せたのはネット・デジタル関連部門である。売上高は216億400万円と29.7%と高い伸びとなった。電子書籍配信の「BookWalker」の売上げが前年の3倍になるなど、電子書籍事業の成長が牽引した。
出典:http://www.animeanime.biz/archives/19854

2012年度から2014年の2年あまりで電子書籍の売上規模が10倍近くに膨らみ、ライトノベルの扱い比率が高い「BookWalker」も倍以上の速度で成長していることが分かります。このライトノベルの2015年度の売上ランキングを見てもトップ10のうち7作品を角川のレーベル(電撃文庫、角川ビーンズ文庫、メディアワークス文庫)が占めているため、角川の電子書籍のラノベが急伸しているということは、ライトノベル全体が急伸しているということになります。

ということで、ライトノベルの販売が伸び悩んでいるというグラフに戻ると2012年の284億円が2014年に225億円にヘコんでいる(その差59億円)のですが、角川の電子書籍の伸びを見ると、紙でライトノベル買っていた層が電子書籍に移っているだけで、むしろその層はさらに拡大しているように思えます。

ということで、電子書籍を含めてライトノベル市場はまだまだ拡大しているように見えるのですが、結論としては角川グループがすごいということでした。電子化も上手くいっているので、ラノベについてはこの先10年は安泰なのではないでしょうか。

※角川は正式名称カドカワ株式会社ですが、耳慣れないので角川と表記しています。

ブーム成熟後は「ブーム」×「コンセプト」で新コンテンツを

AKB以降のアイドルブームが成熟に達した結果

AKBが「会いに行けるアイドル」というコンセプトを打ち出して「会いに行けるアイドルブーム」が生まれた結果、各地でご当地アイドルなどが頻繁に握手会やイベントをやるようになりました。このように「会いに行けるアイドルブーム」にプレイヤーが大量に参入するため「会いに行けるアイドルが流行ってるよね」というブームが形成されるのですが、成熟していくと、それ単体ではなかなか注目されなくなります。
その後起こる現象は、新しいコンセプトを掛け合わせることです。

たとえば「ドール(お人形)」をコンセプトにしたアイドルとか、「サブカルチャー」をコンセプトにしたアイドルとか、なんと「釣り」をコンセプトにしたアイドルまでいるんですね。これは基本となる「アイドル」にさらに新しいコンセプトを掛け合わせて独自性を確保しようとしているわけです。

・アイドル×「ドール(お人形)」
・アイドル×「サブカルチャー」
・アイドル×「釣り」

1つのジャンルがブームを経て飽和になると、別の物事と掛け合わせて独自性を確保するフェイズになります。そして、そのカテゴリは細分化していくのですが、この現象が進んでるいるなと思うのが「食マンガ」です。

「孤独のグルメ」以降、大量に生まれた食マンガ

そもそも「食マンガ」自体がかなりニッチだったのですが、「孤独のグルメ」が注目されはじめたあたりから、かなり「食マンガ」が増え始めました。今では前述のアイドルのように、別のコンセプトを組み合せた食マンガがたくさん登場しています。
(そもそも「孤独のグルメ」自体が、「食」× 一人飯 という掛け合わせですが。)

例を挙げるとこんな感じで食マンガって色々な掛け合わせで作品がめちゃくちゃ広がっているのです。

・食 × お取り寄せ = 「おとりよせ王子 飯田好実
・食 × ラーメン = 「ラーメン大好き小泉さん
・食 × 戦争 = 「戦争めし
・食 × 簡単ひとりレシピ = 「花のズボラ飯

と、このように広がりを見せる食マンガなのですが、ハッとさせるられる組み合わせの食マンガを見つけてしまいました。

・食 × ヤクザ

です。(なんだ食 × ヤクザって。)
タイトルも「紺田照の合法グルメ」という、いかにもなタイトルなのですが、料理好きの新人組員の台所にスポットを当てた作品。本編を読んだことはないのですが、ネットの情報を見ると「大葉は合法ハーブの中でも最高」というセリフや、レンコンを「野菜界のリボルバー」と呼ぶなど、たまらんフレーズが頻出していて、話題になっているようです。

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出典:http://www.magazine-r.co/comics/20/
「大葉は合法ハーブの中でも最高」など、たまらんフレーズが頻発するヤクザ料理マンガ「紺田照の合法レシピ」

というわけで「アイドル」や「食マンガ」など、一定のブームの流れが出来た後は、別のコンセプトとかけ算にしたコンテンツが流通し、その組み合わせが秀逸な物は話題になると思うのですね。
この組み合わせの妙を考えるのが、企画の勘所と言えるのかもしれません。

「ONE PIECE」は年間1千万部も売れてる!?書籍のジャンル別売上を調べてみた

紙の本が売れない中、売れてる本ってどのくらい売れている?

発行部数が減少していると言われる紙の本ですが、いったいどのジャンルが人気なのか、なかなか分かりづらいですよね。先日読んだブログで「ビジネス書は売れているけど、コラムは全く売れない」という文言を目にして、売れ筋ジャンルの本を調べてみました。

まず「日本の出版統計」を見てみると、書籍の売上は96年の1兆数百億円をピークに下がり続けており、2013年には8,000億円を割っています。16年間で2,000億円以上縮小しているのが分かります。

01 出典:http://www.ajpea.or.jp/statistics/

では2015年のジャンル別売上ベスト5を見てみます。オリコンの「文芸(小説)ランキング 1位~10位」のベスト5をグラフにしてみると「火花/又吉直樹」がダントツの223万部を売り上げていますが、2位以下を見るとだいたい20万部前半から後半であることが分かります。

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では次に、売れているビジネス書がどのくらいのレンジが見てみます。紀伊国屋書店の「2015年の政治、経済書籍の売上ランキング」に入った本のうち、発行部数をグラフにしたものがこちらです。

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発行部数が2015年前半時点なので、もう少し伸びている可能性はありますが、7万部から15万部のレンジになっています。ビジネス書は文芸に比べて半分以下しか売れていないように見えますが、ビジネス書を購入する人の1年あたりの購入册数は文芸書よりも高いことが想定されます。つまり、購入者の母数は少ないけれど、購入回数は多いというソーシャルゲーム的な購入者の構造になっていることが想定されるので、ビジネス書全体で見ると文芸書にひけをとらないのかもしれません。

そして、「ライトノベル」というランキングがあったので見てみると、けっこうすごい結果になっています。上位5位の部数が25万部〜32万部のレンジとなっており、なんと文芸書籍よりも売れているんですね。ここまで「ラノベ」市場が大きいことを知っていましたか?

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伊坂幸太郎や池井戸潤よりも、売れている作家がいた!

ちなみに、文庫の作家別売上というものもあったので、こちらをグラフにしてみました。

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黄色い色がついている方が、ライトノベル作家と推定される方々ですが、なんと一般的な知名度はダントツだと思われる伊坂光太郎さんより売れている作家が3人もいるのです。そのうちの2名は、湊かなえさんより売れており、そのうちの1名は「下町ロケット」の池井戸潤さんよりも売れているのですね。伊坂光太郎も湊かなえも池井戸潤も、一般的には人気作家として認知されてますし、著書が何作も映画化・ドラマ化されています。しかし、一般的な知名度はなくとも、彼らより売れているライトベル作家が存在するのです。
これもまた、先ほどの「ビジネス・経済書」と同じく「購入者数の母数は少ないけれど、購入回数は多い」という構造になっていることが想定されます。さらに、ライトノベルはシリーズ物になっている物が多く、1年のうちに同シリーズの本が2〜3冊以上出版されるようなので、一度ファンになると同シリーズをずっと購入し続けるという構造になります。それ故、一般的な知名度が高い作家さんより、ライトノベル作家の方が発行部数でいうと上になるのですね。

ライトノベルと同様に、シリーズモノで年に2〜3冊以上発行される仕組みを持った書籍といえば、コミックです。コミックの売上ベスト5を見るとこのようになっています。

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最早これはコミックの売上ベスト5ではなく「ONE PIECE」の売上ベスト5になっています。「ONE PIECE」が1巻出版されると、300万部前後売れるということですね。よく「ONE PIECE」の発売日の早朝に、店舗の外に特設コーナーを作って手売りしている書店員の姿を見かけますが、こんだけ売れるんだったらやるよねという話です。

以前、作者の尾田栄一郎先生が、ストーリーのキリが悪いので12話分を1巻に掲載したいと集英社に依頼をしたところ、巻末にて「集英社からは今後はもう二度とないと思えと怒られました」と明かしています。(それまでは、1巻10話程度と思われる。)
確かにこの売れ方を見ると、話を1巻分に詰め込んでしまうと、コミックの出版册数が減るわけで、出版社的には「もう二度とやるな」なのかもしれません…。

ちなみにコミックのランキングの5位以降は「進撃の巨人15、16、17」が並び、その下に「NARUTO-ナルト- 72」、「東京喰種トーキョーグール:re 1」、「暗殺教室 12」となっており、ベスト10より上位はいずれも100万部を越えています。

各ジャンルの平均値を比べると分かる、マンガ大国日本

ということで、ここまで出て来た各ジャンルの上位平均を比較したグラフがこちらです。(文芸の「花火」とコミックの「ONE PIECE」は抜いて平均値を出しています。)

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こうやって見ると本当にコミックが強い。日本って本当にマンガ大国だなーと思います。マンガ雑誌(コミック誌)と単行本(コミックス)を比較してもこのようになっています。

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出典:http://www.ajpea.or.jp/statistics/

これを見ると、マンガ雑誌(コミック誌)の売上は減少していますが、単行本(コミックス)の売上は2000億円ちょいで横ばいになっているのです。単行本(コミックス)に関しては、まだまだ紙の本を定期的に購入する流れが続いていることになります。しかしコミックランキングの1位〜4位までが「ONE PIECE」で、5〜7位までが「進撃の巨人」であることを考えると、めちゃくちゃ売れている作品と全く売れない作品の2極化が進んでいることが想定されます。

ということで、まとめるとこのような形です。

・書籍の売上は減少し続けている(96年あたりの1兆数百億円をピークに2013年には8,000億円を割る)
・下がった母数の中でも一部の超ヒット作品とそうでない作品の2極化が続く
・ライトノベル市場が意外と大きそう
・単行本(コミック)においては横ばい傾向なので、定期的に紙の単行本を買う習慣がある
・購入者は少数でも、購入回数が多くなるジャンルは有利(さらにそれがシリーズ物だと年間の購入単価が上昇する)
・単行本(コミック)は、2〜3ヶ月に1回は新刊が出る上に購入者のパイも大きいので、最も年間の売上数が大きくなる
(・が、上記により漫画家は手塚治虫先生の時代より過酷な労働になっているため、健康が心配。尾田栄一郎先生はあのスケジュールのまま健康を維持出来るのだろうか。もうちょっと冨樫義博先生のスタイルを取り入れてもいいのかもしれない。)

個人的には、エッセイがすごく好きなのですが、これを見る限りきっとエッセイは売れても数万部、中には数千部というのもザラなのでしょう。書籍の話に限らず、全体のパイが縮小する中で、一部大勝ちするコンテンツとその他大勢に別れているというのは、全てのコンテンツに共通するテーマなのかなと思いました。

ちなみに、最近マンガ系のスマートフォンアプリが多いのも、これを見ると頷ける結果ですがライトノベル系のスマートフォンアプリってあるんでしょうか。ターゲットが若年層で、かつ一度購入するとサブスクリプションモデルで提供し続けられそうなので、ライトノベルをアプリで定期購入型にするというのは良いプランかもしれないなと思いました。
テキストのみでいうと、かつてエブリスタとかもありましたが、ライトノベルは文章と同様に絵師も重視されると思います。スマートフォンになって表示領域も拡張しているので、リッチなイラストとテキストをパッケージにして有料課金してもいけそうですね。

※グラフはオリコンの2015年 年間本ランキングと推定部数を参考にしています。
※「政治」「経済」は 紀伊国屋年間ベストセラーを参考に、部数を調べて推定値を掲載しています。

出典一覧
http://www.oricon.co.jp/special/48458/13/ http://www.oricon.co.jp/special/48458/14/ http://www.oricon.co.jp/special/48458/10/ http://www.oricon.co.jp/special/48458/5/ https://www.kinokuniya.co.jp/c/20151201123023.html http://www.niigata-nippo.co.jp/sp/more-ct/blog/enjoy-winter/045839.html http://qbiz.jp/article/54265/1/ http://www.kadokawa.co.jp/company/release/detail.html?id=2016202139 https://www.atpress.ne.jp/news/75073 http://mediadata.diamond.ne.jp/static/admin/wp/wp-content/uploads/2010/10/DiamondNEWS_vol6.pdf http://fukui.keizai.biz/headline/95/ http://www.j-magazine.or.jp/magadata/index.php?module=list&action=list&cat1cd=2&cat3cd=20&period_cd=1

もしも今、女性向けメディアを立ち上げるとしたら

ファッションのベーシック化によって、メディアは女性の最大公約数が取れるように

キュレーションメディアを見渡して最も上手くいっているのは、女性系のファッションメディアです。「MERY」とか「4meee! 」とか「Locari」とかですね。なぜ上手くいっているかといえば「女性系のキーワードは検索数がめちゃくちゃ多い」上に、習慣的に見るクセがつきやすいジャンルだからです。

先日女性誌が全般不調ながらも、30代向けファッション誌「CLASSY」は8年間で10万部も部数を伸ばして29万7千部に、40代向けファッション誌の「VERY」も同じく7万部以上部数を伸ばして31万1千部となったという記事を書きました

グラフ1

このあたりの年代の人たちは「雑誌世代の最後の世代」と言えるかもしれません。また8年くらい経ったら、この世代が後ろにスライドして40代雑誌、50代雑誌は部数を保っていると思いますが、この後の世代が続かないので20代、30代向けの雑誌は部数を減らしていくと思われます。

代わりに今の20代、30代は女性向けキュレーションメディアやコーディネイトアプリなどを参考にしていると思います。かつてファッション誌は年齢に加えて属性(赤文字系、青文字系、ラグジュアリー系)が細かく別れていたため、多種多様な雑誌が存在していましたが、今となってはファッション自体がベーシック化したため属性の差異がなくなってしまいました。それゆえ「MERY」などのファッションキュレーションは、女性の最大公約数を囲えているが故に成長し続けています。
ここに多少のブラックボックスがあると思っていまして、いくらファッションがベーシック化したといっても「MERY」や「4meee! 」は20代前半くらいの若年層寄りの印象を受けます。(ママ向けのメディアで「4meee! 」の仲間の「4yuuu」というのがありますが、可処分所得がある程度ある専業ママ的な印象を受けます。)
最近の30代あたりの女性の話を聞くとけっこう「何を着て良いのか分からない」という話をしていて、このあたりの働く女性ターゲットのファッションメディアを立ち上げれば、一定数のターゲットを囲えるのではないかなと思っています。
30代前半のあたりの女性は、パッケージングされたファッション誌に対する親和性が高いため「これはあなたのためのサイトですよ」的な世界観をWebで作ってあげれば、メディアをトップページから訪れてくれる優良な常連さんになってくれる可能性が高いのです。
プロモーションもFacebookページを用意して、年齢セグメントをかけて広告配信を行ないます。だいたい規模としては月間100万UU〜300万UUくらいまではいけるのではないかなと思います。

ということで今女性向けファッションメディアを立ち上げるとしたら、30代前半向けの女性ファッションメディアにセグメントして、常連さんになってもらうことを目指すなという話題でした。

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メディアを観てくれるお客様を、一見さんと常連さんで考える

集客の仕方が全く異なる、一見さんと常連さん

メディアを作る際、一見さんと常連さんで考えることが重要なのかなと思います。まず、一見さんをターゲットにしたメディアは何が必要でしょうか。飲食店で考えると、一見さんで成り立つ場合は「立地が圧倒的に良い」という条件になります。銀座など繁華街の一角や、人通りの多い観光地など、常に大量の新規顧客が流れて来る立地でなければなりません。
これをメディアに当てはめると、Yahoo!ニュースなど巨大ポータルサイトのニュース記事が当てはまります。集客をしなくてもお客さんは毎日店の前まで来てくれるのです。不特定多数のたくさんのお客さんが来てくれるので、万人に興味のある素材を扱う必要があります。今だったら「マイナス金利」など、皆が気になる経済ニュースだったり、「SMAPの解散報道」など、国民皆が興味があるニュースを主に提供するのです。最近はYahoo!ニュースなどの他、各種ニュースキュレーションアプリもこの「立地が圧倒的に良い」メディアとなっています。

しかしこの時、お客さんは「どこが提供しているニュースか」ということを気にして観ていません。あなたが訪れた観光地で食べたうどん屋の店名を覚えていないのと一緒です。

それでは、立地があまりよくない場合でも一見さんに来てもらう方法はあるでしょうか。それは、強い言葉を使って声高に主張することです。例えば死ね、とか殺す、とかいう言葉は、強い言葉ですが汚い言葉でもあります。強い言葉たちを並べたり、極端な主張をしたりして、通りを歩いている人になんだろうと記事をクリックさせるのです。

こういった記事をそのとき興味本位で観たとしても、その記事を出しているメディアに再び訪れようとは思えません.だから、こういう記事の提供元は、一見さんを逃さないために、もっと強い言葉を使って同じようなサイト間で記事名をクリックしたら別のサイトへ飛ばしたりしています。

大切なことは、常連さんが好む「空気感」を形成すること

それでは、常連さんが来てくれるメディアとは、どんなメディアでしょうか。それは「こういう人に来て欲しい」という常連さんたちが、「週に何度か通いたくなる空気感」を形成できているかということになります。
例えば銀座のハイボールが有名なバーに通う常連さんは、そもそもハイボールが好きな上に、お店の暗い照明や流れるジャズなど雰囲気も好きなのかもしれません。地元のカフェに通う常連さんは、本が読みやすい柔らかい椅子が好きなのかもしれません。この「空気感」を形成する要因ひとつひとつを組み合せて、来て欲しいと思う常連さんに「何かいいなぁ、ここ」と思ってもらう必要があるのです。

「空気感」を形成するには、メディア全体としてのコンセプトから始まり、記事を作る際の視点、原稿の言葉遣いなどひとつひとつの要素に波及します。その要素を紡ぎ合わせて、ひとつの「空気感」を形成するのが編集長の役割と言えるでしょう。
例を挙げると、お酒好きのミドルエイジな男性に見て欲しいメディアを立ち上げたとします。まず、記事の選び方としては、ミドルエイジが好みそうなアルコール(ワイン、ウイスキー等)のおすすめの飲み方や、仕事帰りに立ち寄れる小粋なスタンディングバーの情報など、対象に向けたものをセレクトします。そして、原稿中であえてお酒用語の解説等を丁寧にしません。既にお酒がある程度好きで、飲み慣れている人を対象にしているからです。この一定のワードが理解できる人が読めるメディアというのは、ある種のコミュニティ感の演出にも繋がります。(ラグジュアリーファッション誌もそうですね。)

そして、ターゲットとなる常連さんに「ちょっとうちに寄っていきませんか」と声をかけるのはFacebookです。メディアのFacebookページを用意して、コンテンツをある程度投稿したら、対象の年齢、性別、興味属性を設定して広告配信をしましょう。お酒好きな人のタイムラインに、メディアの情報が流れることになり、何度も接触するうちにメディアを認知してくれるようになります。(Twitterはどちらかというと「強い言葉」で作られたネタを楽しむ一見さん的なソリューションです。)

そして、結論としてはYahoo!ほどのポータルではない限り、マネタイズの観点から見てもメディアは常連さんに来てもらうことを目指すべきです。しかし、目先のPVを追うあまり、しばしば一見さん向けの原稿を出したりしてしまいがちです。例えばさきほどのミドルエイジ向けのお酒メディアが、突然「デキる男の激モテテクニック。駆けつけ3杯でショットを煽れ」みたいな「強い言葉」を使った記事を出したりします。これがたまたまTwitterあたりでバズってそこそこPVが来たとしても、この記事を見ているのは「強い言葉」に惹かれた一見さんなので、常連さんにはなってくれません。
そして、常連になりつつあったお客さんは、この記事を見て「なんか、変わっちゃったね。この店」と静かに去っていくのです。というのは、最近話題になった雑誌クウネルのリニューアルもそうなのかなと思います。
今までは「クウネル」から醸し出る空気感を気に入っていた常連さんが「あ、ここはもう自分の好きな場所じゃないんだ。」と感じた瞬間をまざまざと目にしたような気がしました。(代わりに新しい空気感を好む常連さんがつくといいですが。)

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大規模リニューアルを図ったクウネル。
▼Amazonに寄せられたレビュー

お気に入りの小さなビストロが、改装のためしばらく休んでいた。
新装開店で行ってみたら、店名が同じだけの別の店になっていて。
素材にこだわって丁寧につくられていたメニューは一新されて、
よその店でも食べられるような個性のない料理が並んでいる。
出典:http://www.amazon.co.jp/product-reviews/B019P1VY1S/ref=cm_cr_pr_btm_link_3?ie=UTF8&showViewpoints=1&sortBy=recent&pageNumber=3

ということで、メディアの設計を考える上では、常に常連さんを意識するべきというお話でした。

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メディアブランディングをするために、ウェブメディアに必要なこと。

先日のブログにて「メディアとは世の中のモノやコトにメディアという色つきのフィルターをつけて、見せること」だという内容を書きました。そして、このフィルターの色の種類や強さが、メディアのブランディング力となります。
メディアのブランド力がある代表的なものは、マガジンハウスの「ブルータス」などの雑誌です。雑誌は1つの特集について1冊という風にパッケージされているので、メディアの特色を打ち出しやすい構造になっています。しかし、WEBメディアは1つの記事単位で記事が流通する仕組みになっています。ゆえに、メディアブランディングがしづらいのです。ウェブメディアで、どうメディアブランディングをしていけば良いかを考えてみたいと思います。

1 記事で扱うコンテンツの内容と視点。それがメディアの空気を形成する

まずは扱うコンテンツの内容です。「麻素材、トートバック、リンネル、陶器のマグカップ」と言われたらどことなくナチュラル系の雑誌を思い浮かべるのではないでしょうか。逆に「レースワンピ、ヒールパンプス、ファーバッグ」とい言われたらファッション誌かつ、赤文字系の雑誌かなと思うのではないでしょうか。これら、どういう内容を扱うかの選別によってメディアの方向性が定まってくるのですが、さらに大事なのはそれをどういう「視点」で届けるかということです。

例えば、指輪特集があったとして、赤文字系雑誌、ナチュラル系雑誌、ラグジュアリー系雑誌の3誌が特集を組んだとします。この点において扱うコンテンツの内容は「指輪」という点で一緒になりますが、見出しをつけるとこんな感じになります。

●赤文字系雑誌
「クリスマス本番!彼氏へのおねだリングはどれにする?」

●ナチュラル系雑誌
「不格好な風合いがやさしい。クリエイターによる1点ものの指輪たち」

●ラグジュアリー雑誌
「セレブに愛される。ハリーウィンストンの秘密」

赤文字系雑誌の得意技といえば、モノの名前と名詞を組み合わせて造語を作ることです。「おねだり」と「リング」を組み合わせた「おねだリング」というのは、実際赤文字系雑誌で目にしたきゃっち。ナチュラル系雑誌は、それほど高価格帯ではないモノの背景や良さを訴えかけます。そして、ラグジュアリー誌は、高級ブランドとセレブとの関係や、ブランドの歴史を語りたがります。

ということで、コンテンツの内容が一緒でも、その視点によって全く記事の方向性は変わってきます。この視点の切り方は「メディアとしてこう行きますよ」というメディア側のメッセージでもあるのです。Webメディアではよく、記事単位で流通するため、メディアを印象づけようと末尾にキャッチコピーを入れるというハック的な技がありますが、それはコンテンツの内容と視点が一貫していて初めて効果が出てくると言えます。

2 力を入れるべきソーシャルは、だんぜんFacebook

そして、メディアへの流入経路のひとつとしてソーシャルがあると思いますが、力を入れるべきは今のところ断然Facebookです。以前にFacebookとTwitterの違いを説明したのですが、Facebookはより自分自身に関わりある情報がタイムラインに流れてくるとユーザーが認識するプラットフォームです。Facebookに流れてくる情報は、共感を得やすいのでメディアブランディングがしやすいのです。
具体的にはFacebookページを作成して「いいね!」を獲得することになりますが、年齢、属性といったデモグラフィックとともに、キーワード単位での興味セグメントが切れるため、広告配信を的確に行いやすくなっています。(しかし、キュレーションメディアは、のきなみFacebookに力を入れているため、単価は上昇気味です。)

ということで、webメディアでメディアブランディングをするための2つのポイントを挙げてみました。

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メディアとは、フィルターを通してモノゴトを観せること

鎌倉の日帰りホテル「ホテル ニューカマクラ」が人気の理由

鎌倉といえば、外国人観光者や関東近郊に住む人々が訪れる観光地として人気なスポットです。鎌倉駅のほど近くにあるのが「ホテル ニューカマクラ」という素泊まりのホテルです。公式サイトによると、戦前は格調高いホテルだったそうで、芥川龍之介と岡本かの子の出会いの地であったそうです。(ちなみに公式サイトには、派手なサービスや宣伝することなく、ひっそりと時を刻んだこのホテルが共感を得ているのは、その魅力にハマってしまったファンたちの口コミによるものだとか。的なことが書いてあるのですが、公式サイトなのに「○○だとか。」と、まるで他人事のように書いているのが良いですね。)

10年ほど前に、この素泊まりのホテルに泊まったことがありまして、確かに建物や内装がモダンだし歴史を感じさせるのですが、素泊まり食事なしにしては高いし、お風呂は共用だし、という感じでした。
なぜ、このホテルに泊まったかと言うと、本屋で立ち読みしたファッション誌「SPUR」に掲載されていたからです。ホテルの内装の写真が見開きで大きく掲載されていて、光と陰影が幻想的な感じで表現されていたのです。
この写真を見て「ホテル ニューカマクラ」に泊まってみたいと思ったのですが、これは「SPUR」というメディアの力によるものだと言えます。もし、タウンワーク誌に掲載されていたら、ただの旅館情報に見えたでしょう。しかし、「SPUR」というラグジュアリーファッション誌というフィルターを通してこのホテルを観たからこそ、素敵に輝いて見えたのです。

このように、メディアとは世の中の有象無象のモノゴトを、メディアの色がついたフィルターを通して見せる役割があると言えます。このフィルターは、メディアのブランド力とも言えるかもしれません。

メディアは、今は注目されていないモノやコトに、スポットライトを当てられる

このメディアというフィルターの中でも、強力なものが「ブルータス」というフィルターです。「近江屋洋菓子店」という、戸棚から出てきそうなイチゴたっぷりのショートケーキが名物の洋菓子店がありますが、「ブルータス」の「美味しいケーキの教科書」の表紙になりました。昔ながらの洋菓子店に「レトロ可愛い」というフィルターをかけることによって、そこに行ってみたいという気持ちを喚起してくれるのです。

そう考えると、メディアは、今のところ誰にも注目されていないモノ・コトを、メディアというフィルターをかけることによってスポットライトを当てることが出来るツールです。ちなみに、「ブルータス」No812はスナック特集で、表紙には大きく「スナック好き。」と書かれており、「糸井重里が語る、我が青春のスナックとスナック芸。」に始まり「編集者が福岡にスナックを作りました」(作った後、そのスナックはどうなったんだろう。)、「ご当地スナック事情。」とスナックづくしの一冊です。

ケーキという題材は、ブルータスでなくとも雑誌やウェブメディアに掲載されていれば「行ってみたい」を喚起できそうですが、スナックをフィーチャーして「行ってみたい」を喚起できるのは、ブルータスだからこそと言えるのではないでしょうか。

紙メディアは一連の流れがあるので、一つの特集を打ち出しやすく、メディアのフィルターを表現することが出来ます。しかし、webメディアは記事単位で流通するので、メディアとしてのフィルターを確立しづらい立ち位置にあります。次回は、ウェブメディアのフィルターはどう作るべきなのかについて、解説してみます。

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出典
http://www.newkamakura.com/room.asp
http://matome.naver.jp/odai/2142296127875383901
http://magazineworld.jp/brutus/brutus-812/