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多チャネル化するアメリカの雑誌に見る、メディアのトレンド

note更新しました。
アメリカのメディアはすでにmagazineではなくbrandと表記されて多チャネル化されています。各メディアのトレンドを追ってみました。数千万もリーチする生物や地政学のカルチャー誌「National Geographic」がすごい。アメリカの知識階級はこういう一般教養に親しんでいるということ。

多チャネル化するアメリカの雑誌に見る、メディアのトレンドhttps://note.mu/media_labo/n/n03e11b0a3517

マンガアプリに見る、従来のデバイスのUIを引き継いでしまう現象

スマホが登場した時、ページをめくるインターフェースが多かった

従来のデバイスのインターフェースは、次の世代のデバイスまで引き継がれる傾向があります。

例えば、スマホが登場したばかりの頃は、紙をめくるようなインターフェンスのサービスがけっこうありました。

電子書籍は、本を電子化したものなので、ページめくりがあります。しかし、本来はインターネットに制限はないため、ページ送りしなくても良いわけです。
なので、一定期間たった後に、noteなどスマホに最適化されたインターフェースのサービスが登場しています。

スマホの登場で、一番影響を受けるコンテンツは漫画です。すでに各社が出している漫画アプリは数百万ダウンロードを超えており、大変人気です。
漫画というのは、出版社の歴史も長いので、非常に従来のインターフェースに引っ張られる傾向にあります。

漫画の多くは右から左にコマ割が移行しますが、スマホで見るときはこのコマ割りが小さくてセリフが読みづらい傾向にあります。

スマホで観るのに適したコマ割りは、上から下へと視線が流れるコマが大きいものです。
最近はスマホ用に描かれた漫画は、このインターフェースに従っています。

アプリになっても引き継がれる”連載モデル”

さらに特徴的なのは、出版社各社が出している漫画アプリが“連載”というインターフェースに準拠していることです。
全ての定期的に発刊される漫画雑誌は、全て漫画が連載という形をとっています。
なかには、数十年も連載している漫画もあるわけです。

だから、出版社がスマホを使って漫画コンテンツを発信しようとすると、前提として連載ありきになります。
実際、ジャンプなどの漫画雑誌は、連載型が中心です。毎日何がしかの漫画が更新されていきます。

しかし、実は漫画コンテンツ的に一番多くのユーザーを囲いやすいのは連載型ではなくストック型になります。
ピッコマがこのインターフェースにおいてもっとも成功していると思われますが、最初の何話かを無料にしておき、それ以降は24時間に1話だけ読めるチケットを発行します。
続きが気になる人は、課金をすると続きが読めるようになります。
(結末間際の数話も、課金前提となります。)
このようになストック型だと、漫画アプリを訪問したユーザー全員を対象として購読率や課金率がかかっていくことになります。

一方、連載型の場合は、連載するうちに一定量づつ購読を止めでは脱落する人たちが出始めます。
しかも、無料になるのは最新話であるため、フリーミアムにするコンテンツのさじ加減を、期間で調整していることになります。
仮にその漫画が100話あったとしたら、そこにいたるストーリーは有料課金が前提なので読む気力がそがれるのです。

一方ピッコマのようなストック型だと、一日一話は無料で読めることが分かっているため、継続率が高くなり、継続率が高いということは課金をしてくれるユーザーの母数が増えるということなのです。

このように、継続率や課金率といった係数で考えるとピッコマのようなストック型のインターフェースが有効なのですが、出版社的には今まで連載型で漫画を発信し続けヒット作を育て、ストックしたコミックで課金するという一連のモデルがベースにあるため、ストックしたコンテンツを無料で読ませることに心理的ハンドルが高いのです。

このように、インターフェースは、前世代のデバイスに加えて、従来のビジネスモデルや慣習にも強い影響を受けます。

そのモデルを崩して新しいハードデバイスに最適化するのは、たいてい新しい新興勢力になります。

雑誌メディアによる、ライフスタイルの啓蒙が終わった理由

恋も仕事も頑張るOLを啓蒙してきた、赤文字系ファッション誌


2000年代くらいまでは、雑誌メディアはライフスタイルを啓蒙し、それに啓蒙されて読者側もライフスタイルを形成していく時代が続いていたと思います。
例えば、Cancamであればコンサバ系OLとして仕事もそこそこ頑張りながら、恋も頑張る(だから、ファッションは男性の視点を大切に)っていうライフスタイルを啓蒙してきたと思うんですね。OLさんがよく読むこれ系の赤文字系雑誌の特徴として、30日着回しコーデみたいな特集がほぼ毎号ついてくるんですが、ファッションだけを見せるのではなくてライフスタイルとセット(そして主に恋愛面にスポットを当てる)の読み物になっています。
例えば月曜日のコーデは”後輩ののんちゃんと仕事終わりにバーへ繰り出す!素敵な男の人に声かけられちゃった。”とかいう見出しとともに、モデルのコーデを紹介しています。火曜日のコーデは”今日は大事なプレゼン。やる気がある日は、パンツスタイルで。”などと、書類を抱えているモデルのコーデが紹介されます。

このような感じでコーディネイトが紹介されていくのですが、全体のテーマとして「恋も仕事も頑張るOL」みたいなライフスタイルを啓蒙しているんですね。

雑誌ごとに読者層のペルソナが設定されているため、例えば光文社の「Mart」だったら”子供が数人。コストコに買い物に行きつつ、ルクルーゼでおもてなし料理を作る主婦”みたいなペルソナを設定し、そのペルソナに合わせたライフスタイルを啓蒙していると思うのです。(LEONだったら、年収何千万以上のちょい悪オヤジの啓蒙エトセトラ、エトセトラ。)

ライフスタイルの啓蒙に欠かせないインフルエンサーの存在


このように、雑誌というものは想定した読者のペルソナに合わせたライフスタイルを啓蒙し、読者もそれに感化されてきました。このしくみにおいて重要なのが、インフルエンサーの存在です。先ほどのCancamでいえば、雑誌の啓蒙するライフスタイルを実践するエビちゃんというモデルがいることにより、雑誌への信頼性が強くなるのです。

このように、インフルエンサーによってライフスタイルを実践する偶像を提示してきたのですが、今現在において、もはやライフスタイルを啓蒙する時代は終わったように感じています。それは、なぜでしょうか。

ライフスタイルの細分化と、個としてのインフルエンサー


ひとつには、ライフスタイルが細分化しすぎて、読者のペルソナがはまらなくなったということです。今の時代、働き方の種類や結婚をするしない、子供を持つ持たない、個人の経済状況にいたるまで、ライフスタイルが細分化しています。ある程度右肩上がりの経済成長があり、中央値をくくれる時代はペルソナが有用だったのですが、今の時代はペルソナを設定しようとしても、個人のライフスタイルや趣味嗜好が細分化しすぎているため、くくれなくなっているのです。

さらに、インスタやTwitterなどのインターネットサービスが台頭したことにより、個人のインフルエンサーがメディアの力を借りずとも力を持てるようになりました。雑誌メディアに醸成されたインフルエンサーと、個人で立つインフルエンサーには大きな違いがあります。個人で立つインフルエンサーは、誰からも啓蒙されずに自分を自分で売り込んでいる強いインフルエンサーであるということです。雑誌メディアに影響を受けていた読者は、メディアが啓蒙するライフスタイルに憧れ、それを体現するインフルエンサーにも憧れていた構図ですが、個人で立つインフルエンサーに惹かれるフォロワーは、個人が持つパワーそのものに惹かれています。

このように、雑誌メディアが長らく保ってきたライフスタイルの啓蒙と、それを体現するインフルエンサーを掲げるという手法が終わりを迎えたのではないかと思っています。
今後の雑誌含めたライフスタイル系のメディアの方向性については、思うところがあるのですが、それはまたの機会に書いてみたいと思います。

メディアのKPIをPVにしてない?目的別で考えるKPIの立て方

メディアを新しく開設する際に数値計画を作ると思いますが、メディアだからといって安易に主要KPIをPVにしてはいけません。メディアを作る際のKPIの立て方を解説します。

何のためのメディア?KGI(目標)を決めてからKPIを考えよう

まず、主要なKPIを設定するためには、KGI(目標)が何であるかを決める必要があります。KGIが「アドセンス入れて広告で稼ぐ」だった場合は、最も重要な指標はPVということになります。

では広告で稼ぐのであれば主要KPIがPVのみで良いのかといえば、そんなことはありません。例えば、KGIが「記事広告で稼ぐ」だった場合、PVとともにUU(ユニークユーザー数)が必要になってきます。広告主は、どんな人がメディアの読者なのかな?というデモグラフィックが必要になるからです。ですから、広告記事を掲載出来るだけのPV在庫はもちろん必要ですが、このメディアは月間300万ユニークユーザーの主に”主婦”が訪問するサイトですよ、と言えた方が広告主的にも「うちの製品にマッチしたデモグラだな」ということになるわけです。

特定の広告主の製品にマッチしたUUが集まるバーティカルなメディアであることによって、メディアパワーが小さかったとしても広告記事におけるPV単価を保てるわけです。

つまり、記事広告をメインに考えた場合は、メインのKPIはUU(およびUUの質)になるのであり、サブKPIがPVということになります。

課金型メディアにおける重要KPIは?

課金型のメディアの場合は、UUが最も重要な指標であり広告を入れない限りPVは(ビジネススキーム上は)どうでも良いことになります。

そして、UUに紐づいて最も重要となるKPIが課金転換率と退会率になります。課金転換率は、UUが課金UUに転換する率です。この転換率が高ければ高いほど、メディアに訪問する人たちが課金ユーザーに転換しやすいということになります。

そして課金転換率よりもある意味大切かもしれないKPIが退会率です。これは課金ユーザーが課金を止める退会率の係数です。この退会率を低く抑えれば抑えるほど課金ユーザーが増えやすいということになります。(バケツの穴をふさぐイメージです。)

また、この課金退会率と紐づいて重要なのが平均課金期間でしょう。課金ユーザーが平均してどのくらい課金ユーザーであったかという指標です。この指標が重要なのはLTV(ライフタイムバリュー。1ユーザー生み出す売上。)が算出出来るからです。例えば課金ユーザーの平均課金期間が6か月として課金額が月1,000円とした場合、6か月×1,000円でLTVは6,000円ということになります。

(蛇足ですが、こんなに重要な指標なのに、そのへんにある計測システムで平均課金期間が取得出来たことがありません。たぶん顧客データベースと紐づくからでしょう。と思って調べてみたら、このブログに1/解約率で平均継続期間を割り出せるという数学的証明がされていますね。)

ということは、原価や宣伝販促費などを合わせて、1人あたりにかけて良いお金は6,000円未満ということになり、LTVから宣伝広告費などを割り出せるのです。

ECサイトの場合のKPIはUU?

ECサイトやECサイトに紐づく重要なKPIはやはり、UUになるのでしょうか。これはECサイトが扱う商材によって変わってきます。高額で購入回数が少ない商品であればUU、低額で購入回数が多い商品であればセッション数といったように商材によってKPIを分けても良いでしょう。

例えば、車は高額商材なので、一度買ったら普通は10年以上は買い替えないでしょう。この場合、一度コンバージョンすれば良いのでUUを指標にします。しかし、月の間に何度もサイトに訪問しそうな商材ー、例えば生活消費財などの場合はセッション数をKPIにしても良いでしょう。(もっと厳密に設計するのであれば、UUをメインKPIに置き、それにに紐づくセッション数でも良いと思います。)

ということで事業別に考えるKPIの立て方です。どんな場合でもKPIはKGIに紐づくという基本的姿勢が大事だと思います。

サーチコンソールでメディアのSEOをハックしよう

だいたいメディアをやられている方は、サーチコンソールを入れているというケースが多いと思います。サーチコンソールでのSEOの最適化の仕方を解説します。

まず、サーチコンソールの役割としてGoogleさんにちゃんとインデックスされているかなどをアラートしてくれる機能がありますが、今回は検索結果の表示回数やCTRなどから、タイトルやコンテンツの最適化を分行う手法をご紹介します。
サーチコンソールから検索トラフィック>検索アナリティクスに進むと、登録しているサイトの表示回数やらCTRやらが出てきます。
このページを一番下までスクロールするとダウンロードボタンがあるので、ダウンロードしましょう。このファイルをソートしながら、分析を進めます。

メディアにとって有効なクエリを探そう

まず、メディアにとって有効なクエリを探すには、下記の要領でソートをかけましょう。

表示回数=大 掲載順位=低
-検索回数が多いクエリ
→有効なクエリ

掲載順が低いのにも関わらず表示回数が多いということは、クエリとして検索されている回数が多いということになり、この領域のクエリで記事が表示されれば、アクセスを取りやすいということになります。
ただ、一点注意なのはサーチコンソールはあくまでも、自社がすでに投下しているコンテンツの分析であるため、そ外側の領域については見てていないということを前提に置く必要があります。この分析を有効に行うには、少なくとも数百本程度の記事が投下されていないと見えづらいでしょう。

メディアにとって無効なクエリを探そう

次に、メディアにとって無効なクエリを探します。下記の要領でソートをかけましょう。

表示回数=低 掲載順位=高
-検索回数が少ないクエリ
→無効なクエリ

掲載順位が高いのにも関わらず表示回数が少ないということは、あまり検索されていないクエリであるということです。ただし、表記ぶれによる個々のクエリ(ひらがな、かたかな、漢字など)がこのセクションにも表示されてしまうのと、出たばかりの記事はもちろんこの数値が低くなるので、それらをスクリーニングして見ることが必要です。

ユーザーにマッチしているコンテンツを見つけよう

次に、ユーザーにマッチしているコンテンツを見つけます。下記の要領でソートをかけましょう。

CTR = 高 表示回数 = 一定量ある
→ユーザーが探しているコンテンツとマッチしている

表示回数も多く、CTRも高いということは、ユーザー一定量検索しているクエリであり、かつCTRも高いため、表示されたコンテンツにユーザーが満足しているということです。このカテゴリに属する類似の記事を量産すれば、アクセスを増やすことが出来るでしょう。

ユーザーにマッチしていないコンテンツを見つけよう

最後に、ユーザーにマッチしていないコンテンツを見つけます。下記の要領でソートをかけましょう。

CTR > 低 表示回数 = 一定量ある
→ユーザーが探しているコンテンツとマッチしていない

表示回数が一定量あるのにも関わらずCTRが低いということは、ユーザーが探しているコンテンツとマッチしていないということです。
これは以下の2通りの可能性があります。

1. そもそもコンテンツ自体がマッチしていない
2. タイトルとディスクリプションがマッチしていない

例えば「ディズニーランド」という検索クエリで良そうされるユーザーの求めるものは何でしょうか。おそらく今何のイベントをやっているか、混雑状況はどうか、チケットの価格を調べたいあるいは取得したいなどがあげられます。これが例えば「海外のディズニーランドと日本のディズニーランドの違い」みたいな雑学系記事であれば、混雑状況やチケットの情報を知りたいユーザーはクリックしないわけです。
これが「1. そもそもコンテンツ自体がマッチしていない」にあたります。このように単語ごとにユーザーが何を求めているかの心理状況を考える必要がありますが、サーチコンソールからGoogleの検索結果画面が見られるので、チェックすると良いでしょう。前後に並んでいる他サイトの記事タイトルなどが参考になります。

また、「タイトルとディスクリプションがマッチしていない」についてはタイトルに検索ワードが入っていない、タイトルが分かりづらいなどがあげられます。この場合もサーチコンソールからGoogleの検索結果画面を見て他サイトなどを参考に、タイトルを付け直すと良いでしょう。

これもユーザーの検索している心理状況を考えてタイトルをチューニングする必要があります。例えば「風邪 予防」というクエリであれば、ユーザーは風邪の予防方法を知りたいわけです。
となると、以下2つのタイトルを比べるとBの方がCTRが高くなることが予想されます。

A「現役医師に聞いた。これからの冬に気を付けたい風邪の予防方法7選」
B「風邪の予防方法を現役医師に聞いた!手洗いからマスクの選び方まで」

Aの場合は風邪の予防という知りたいワードに行くまでに、手間の文章を読まなければならないため、ユーザーは他の分かりやすい検索結果をクリックするからです。

ということで、サーチコンソールを使ったSEOのハック方法をご紹介しました。

Youtubeからレシピ動画まで。急成長する動画プラットフォーマーたち。

2012年あたりから、毎年動画元年と言われて来ましたが、2017年の今になり、動画プラットフォーマーたちが台頭してきています。現状の動画コンテンツにおけるプレイヤーと、今後の市場予測をしてみました。

Youtube「アマチュア×短尺」から、Netflix「プロ×長尺」までの歴史

現状の動画コンテンツのプレイヤーを「プロ×アマチュア」「短尺×長尺」のマトリックスにすると、このような形になります。


まず、最初に立ち上がった動画コンテンツのプラットフォームは左下の「アマチュア×短尺」でした。Youtubeが2005年にサービスを開始し、翌年に日本でニコニコ動画が立ち上がります。
一般の投稿者が動画をアップするCGMプラットフォームとして2000年代後半以降ユーザー数を伸ばし、今日でのYoutube巨大なの利用者数は10億人を超えており(※1)、動画プラットフォームとして存在を確立しています。

次に著しい成長を見せたのが右上の「プロ×長尺」のエリアです。月々定額を支払うだけで映画やテレビ番組が見放題になる「Netflix」が1999年に月額定額制を開始、「Hulu」が2011年にサービスを開始しています。2017年現在「Netflix」の全世界における会員数は9,000万人を超えており、いまなお会員は拡大しています。
この「プロ×長尺」のエリアにおいては、映画やテレビの版権の獲得など、莫大な投資を必要とするためプレイヤーがしぼられます。(こちらの記事によると、2016年はNetflixはコンテンツに50億ドルを投資し、2017年はそれを越える60億ドルを投資する予定だそうです。)ストックの動画コンテンツにおける世界的な勝者は「ネットフリックス」と見て良いのではないでしょうか。
さらに国内では2016年4月に「AbemaTV」が開始され、開始から1年で週刊利用者数が500万人を突破するまでに伸びています。(※2)国内プレイヤーである「AbemaTV」においても年間200億円の投資をすると発表しているため、版権の買い付けやコンテンツの制作費に莫大な投資が必要であることが分かります。

これらのプレイヤーに共通するポイントは、テレビや映画などの版権モノを獲得して放送しつつも、近年ではオリジナルコンテンツに力を入れている点です。
特に「Netflix」においてはその傾向が顕著であり、ケヴィン・スペイシー主演、デヴィッド・フィンチャーが監督を務めるハリウッド映画ばりのオリジナルコンテンツ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」など独自のコンテンツに注力しているのです。
「ハウス・オブ・カード」の制作にあたっては、視聴者層に認知度のある主役をデータの面から探るなどマーケティングに注力しており、契約者数獲得のために第1シーズン全13話を一気に配信するなどの大胆な施策を行っています(※3)。

先ほどの「AbemaTV」においても、バラエティ番組などのオリジナルコンテンツに力を入れています。これらのプレイヤーたちが、オリジナルコンテンツに注力し、コンテンツホルダーとしての力をつけるということは、テレビ局や映画会社の立ち位置が相対的に弱まるということになります。
これらのプレイヤーの最終目標は、テレビというプラットフォームの代替えを目指しているのです。(そしてNetflixはアメリカ国内においてはすでに、5,000万を超える契約を獲得しています※4)

また、この領域における次のトレンドは「ライブ配信」です。スポーツ動画の配信を行う英国発のサービス「DAZN」は、Jリーグの全試合中継の配信を開始しています。「AbemaTV」もサッカーチャンネルを開設しています。「AbemaTV」の人気コンテンツを観ると上位を占めているのはアニメ作品、もしくはアーティストやアイドルなどのライブ配信なので、今後ともライブ配信は動画コンテンツにおける重要なファクターとなるでしょう。

SNSの分散型メディアの追い風が吹く「プロ×短尺」の動画

ここに来て勢いを増しているのが「プロ×短尺」の動画プラットフォームです。国内の主なプレイヤーは女子向けのハウツー動画の「C CHANNEL」や料理レシピ動画の「クラシル」、「デリッシュキッチン」などがあります。

いずれのプレイヤーも大型の資金調達を行っており(C CHANNEL=13億円、クラシル=総額37億円、デリッシュキッチン=6.6億円※5※7)、月間再生数を大きく伸ばしています(C CHANNEL=6億6000万回(うち5億回が海外)、クラシル=1億2000万回)。

成長の追い風となっているのが、各種SNSなどでも動画を公開しており、分散型メディアになっている点です。特に各社ともFacebookには力を入れており、現状のFacebookのいいね数はC CHANNEL=845万、クラシル=113万、デリッシュキッチン=142万となっています。
以前にブログでも書いたのですが、動画コンテンツにとって最も後押しになった要因は、高速回線の普及もありますが、再生ボタンを廃止したことだと思っています。「動画アプリ「Vine」が流行ったのは、再生ボタンを廃止したから動画アプリ「Vine」が流行ったのは、再生ボタンを廃止したから」にもあるのですが、6秒動画を投稿出来るCGMプラットフォームとして盛り上がったVineは、再生ボタンを廃止しており、スクロールして動画にフォーカスされると自動的に動画が再生されるインターフェースになっていました。
Facebookなどが、動画に注力した際も、このVineの成功を見て同じようなインターフェースを採用したのではないかと思っています。動画にフォーカスすると、自動的に動画が再生されて動きが出るため、動画の閲覧率が飛躍的に上がります。もしもここに再生ボタンがついていたら、再生率は10倍以上違ったことでしょう。

ということで、今最も注目されている動画プラットフォーム「プロ×短尺」の動画のカテゴリですが、全て「暇つぶしになるハウツー動画」であることがポイントです。現在ガールズ、レシピ動画という2つのジャンルしか出現していないため「暇つぶしになるハウツー動画」のジャンルが数年以内にいくつか登場するかもしれません。

また、「プロ×短尺」の動画はFacebookなどでの訴求がしやすいため、海外展開も考えられます。実際に「C CHANNEL」の6億6000万回の月間再生数のうち5億回は海外となっています。(※6)

順風満帆ではない動画プラットフォーマー

このようにまとめると見ると、動画プラットフォーマーは順調に成長しているように見えますが、順風満帆ではありません。「Netflix」も2016年度第4四半期で国内外合わせて500万人の会員が増加し、投資家の予想を上回りましたが2016年中は投資家の「Netflix」への成長は懐疑的であり、株価は低迷していました

「C CHANNEL」も、サービス開始当初は今のようなハウツー動画がメインとなるコンテンツの構成ではありませんでした。クリッパーと呼ばれるインフルエンサーの女子たちの動画がメインで、今のようにハウツー動画として作りこみはされていなかったのです。

再生数のグラフを見ても、2015年中は再生数が伸び悩んでおり、2015年12月以降にオリジナルのハウツー動画を強化したところから再生数が急に伸びているようです。



このように、順調に再生数を伸ばしているように見えても順風満帆ではなく、以下コンテンツとプレイスにおける以下の条件が揃って初めて成長軌道に乗ったようです。

・コンテンツ=数分で見られる暇つぶしのハウツー動画
・プレイス=各種SNS(Facebookなどが動画ソリューションに注力)

このように動画や新しい技術などが来る来ると言われる場合、全ての条件を待っているうちに、競合に越されてしまうため、見切り発車のままスタートしてコンテンツをチューニングし、サービス拡大のための外部条件が揃うタイミングを待つ、ということが必要になるのですね。
2012年にnanapiさんが若手社会人向けのハウツー動画サービス「nanapi Biz」をリリースしていました。新しい技術を要するコンテンツはタイミングが早すぎても遅すぎてもダメと言いますが、これはタイミングが早すぎた例だったのかもしれません。

次の成長領域はどこか?

動画プラットフォームにおける次の成長領域をまとめると、このようになります。

「プロ×長尺」
・オリジナルのコンテンツ化が進み、テレビとの代替えがはじまる
・ライブ配信が加速し、ライブ配信における新しいプレイヤーが出現する可能性も

「プロ×短尺」
・「暇つぶしになるハウツー動画」において新たなプレイヤーが出現する可能性
・海外展開が加速

そして、この4象限において「アマチュア×長尺」のプレイヤーが出現していないことに注目です。「素人に尺の長いクオリティの高いコンテンツを作れるはずがない」というバイアスがここに存在しています。ビジネスデザイナーの濱口秀司さんはバイアスの裏を突く「ブレイク・ザ・バイアス」を提唱されてフラッシュメモリの開発に成功されています。

この「アマチュア×長尺」のエリアについてブレイクを起こせるコンテンツの在り方を考えてみるのもありかもしれません。

※1
https://www.youtube.com/yt/press/ja/statistics.html
※2
https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/info/detail/id=13182
※3
http://toyokeizai.net/articles/-/38551
※4
https://news.yahoo.co.jp/byline/satohitoshi/20170418-00070057/
※5
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000019382.html
http://jp.techcrunch.com/2016/06/09/every-raised/
http://thestartup.jp/?p=16980
※6
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO15495750Z10C17A4000000?channel=DF180320167066
http://www.mylifenews.net/food/2017/04/delykurashirutvcm.html
※7
http://jp.techcrunch.com/2017/01/19/20170118netflix-blows-out-the-fourth-quarter-after-setting-itself-up-for-a-huge-end-of-the-year/

Yahoo!トップに掲載されるニュースコンテンツについて考える

執筆した原稿(あるいは手掛けたプロダクト)が「Yahoo!トップ」「LINEニューストップ」「NewsPicks総合TOP」に載ったことがある私です。
というちょっとした自慢ですが、こういったメガニュースポータルのトップに掲載されるニュースコンテンツについて考えてみます。
まず、ニュースポータルのトップに載るには以下の手順をたどります。

・メディアに掲載される

・ニュースポータルの担当者にキュレーションされる

プレスリリースを配信する時、担当者はニュースポータルの担当者にキュレーションされることをゴールとして配信するわけです。しかし、キュレーションされるためには、まずはメディアに掲載されなければなりません。

まず、基本的なメディアに掲載されるためのお作法はこちらの「LINEニュースTOPに掲載される、プレスリリースの送り方LINEニュースTOPに掲載される、プレスリリースの送り方」を参考にしてみてください。今回は、これをふまえた上で、ニュースポータルに掲載されやすいコンテンツについて考えてみます。

ちなみに、掲載されやすいコンテンツについて、もともとニュースバリューがあるという条件は除外します。任天堂やAppleが新製品を発売したら、間違いなくニュースポータルのトップに掲載されるので、特に工夫をする必要はないのです。

掲載されやすい条件1:世の中の共通知をひっくり返す

世の中の共通知というものは、なかなか更新されないものです。そういう「人々がこうだと思っていた」情報のギャップをつくニュースは人々の「びっくり」を誘えるため、ニュースポータルに掲載されやすい上に、さらにその後拡散されやすいのです。

この条件にハマって「NewsPicks」の総合TOPに掲載され、1日で10万PV以上のアクセスがあった記事がこちらです。

80万部が11万部になった「cancam」。売れない雑誌の共通点とは?

「cancam」と言えば、2000年代半ばにいっせいを風靡し、エビちゃんOLというトレンドまで生み出したファッション誌です。世の中の人々の共通知はそこで止まっていたので、80万部が11万部かよ!というギャップを前に押し出すことで人々の「びっくり」を誘うわけです。

掲載されやすい条件2:普遍性を持つ個人的見解

ありのままの事実というよりは、圧倒的な個人的見解の方が、人々の興味をひきやすいように思います。そして、その圧倒的に個人的見解が、読了後は普遍性を持つというのがポイントです。

以下はかつてYahoo!トップに掲載された記事ですが、mixiとFacebookの構造(UI)を比較した上で、そのUIの違いは両社の組織の違いが影響しているかも、ということを示唆したものです。

広場型のmixi、フィード型のFacebookと組織の関係

UIの違いというのは、誰にでも分かる違いですが、それが両社の組織構造の違いに起因するのではないかという指摘は、個人的な見解です。この個人的な見解が含まれていて、かつハッとさせながらも「確かにそうかもしれない」と思わせるような要素があると、ポータルに載りやすいように思います。

掲載されやすい条件3:文脈的に成立したネタコンテンツ

これは、Yahoo!というよりは、LINEのような若年層中心のニュースポータルに向いていますが「ネタコンテンツ」も載りやすいコンテンツかと思います。こちらは、先日弊社にてリリースしたゲームのニュース記事で、LINEのおもしろ・ネタカテゴリのトップに掲載されました。

『桃太郎』の物語を書き換える! スマホ向けアプリ「こんな桃太郎はイヤだ」がめちゃシュール

そして、このネタコンテンツを考える際に大事なのが「文脈的に成立した」ネタであることが、一般媒体、ひいてはニュースポータルに取り上げられやすいという点です。

「こんな桃太郎はイヤだ」というタイトルは、どんなコンテンツであるか分かるためには、以下のような感じで1段階発想を進める必要があります。

こんな桃太郎はイヤだ

普通の桃太郎に対しての、アンチテーゼで発生するお笑いである

このように、桃太郎という単語についての文脈理解の上に立つ、おもしろコンテンツなのです。メディアの記者さんたちは、国語能力が発達しているため、このような文脈理解が成立するネタコンテンツを受け入れやすいように思います。

掲載されやすい条件4:人は無条件に何かを褒めたい

人は、無条件に何かを批判したいのと同時に、何かを褒めたい生き物なんですね。ですので、全面的に何かを翔さんするコンテンツというのはとてもバスります。特に今の時代は「NewsPicks」もあるので、企業が大きく再生した記事なんていうのは「ここまでの圧倒的努力がV字回復を可能にした」などというコメントともに取り上げられて、圧倒的にバズります。

以下は以前書いた「富士フイルム」のV字回復についての原稿ですが、上記のロジックによって相当バズりました。ちなみに、条件1「世の中の共通知をひっくり返す」と関連して「あの企業がそんなに業績が良いとは!」というギャップとくっつくと、さらに効果が倍になります。

無理ゲーを勝ち抜いて、売上を1.5倍にした富士フイルム
※本稿とは関係ないですが、先日会計に不手際があったことが指摘されており、その後が気になります。

掲載されやすい条件5:新しい視点を加える

これまで4つのポイントを紹介してきましたが、だいたい全てに共通しているのが世の中がこうだと思っている定常的な視点に対して、新しい視点を提示することがポイントなのかと思います。世の中の共通知をひっくり返すのも、普遍性を持つ個人的見解も、ある一つの見方に対して新しい視点を提示しています。
弁護士ドットコムさんが、世の中の事件やニュースを取り上げて、法律的な解釈を原稿にして配信していますが、この「解説」というのも新しい視点を提示しているのだと思います。(池上彰さんのニュースの解説も同じことですね)

ということで、ニュースポータルに掲載されやすい条件をいくつかご紹介してみました。

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食べログの限界

食べログは、失敗したくない人のためのグルメサイト

私自身もお店を探す時によく食べログを利用するのですが、食べログのキャッチコピーは「お店選びで失敗したくない人のためのグルメサイト」なのです。

食べログは”食べ歩きの経験が豊富なレビュアー”のレビューに重点を置いたレビューサイトです。”食べ歩きの経験が豊富なレビュアー”は「批評家としてのレビュー」的な傾向が生じます。

つまり、単純に「おいしーい」ではなくて「この南イタリア特有のパスタは~」のように、料理を体系的にとらえた上での批評や「接客がいただけない」などのサービスの視点もレビューに影響してくるため、上位にいるお店は「料理やサービスにおいて体系的見地から批評された場合に遜色ない店」ということになります。
食べログ3.5神話というのもありますが、実際このようなレビュー方法であれば「上位にいる店はだいたい皆美味しい」=お店選びで失敗しないということになります。

逆に、お店や料理が個性的な場合は、レビューがばらけるため、評価されづらい傾向もあるでしょう。
有楽町のガード下に店をかまえる「ミルクワンタン」のお店は、「酒場放浪記」にも登場したお店なのですが、その名の通りミルクにワンタンを入れたメニューが出てくるわけで、このような個性的なお店は評価が分かれるのです。

ミルクワンタン 鳥藤 (トリフジ)
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130102/13021709/

ふわっとした目的では選びづらい

また、食べログはふわっとした目的でお店を選ぶのも難しい作りです。これは、食べログ特有というよりは、目的を言語化して検索対象をカテゴライズしなければいけないインターネットの宿命に寄ります。
この4象限において、おいしさを求めていて、ふわっとした目的がない人には非常に食べログは向いています。

tabe01

しかし、ふわっとした目的がある場合は、目的がふわっとしているため検索が難しいのです。ふわっとした目的とは例えば「最近野菜が不足しているので、野菜たっぷりのご飯が食べたい」などです。

これを検索しようとすると「野菜 ごはん」などで検索し、上手く出てこない場合は「和食 定食」などの他キーワードに切り替えて検索することになります。しかし、このワードで検索するとマクロビ的なカフェが出てきがちですし「和食 定食」だと煮魚定食的な定食屋が出てきます。私はこういったワードで恵比寿に絞って検索したのですが、なかなか目的のお店が出てきませんでした。

結局恵比寿を歩いていて、野菜をたくさん使った和食のランチを出すレストランを見つけたのですが、よく見ると「自然食」というタグがついてるので「恵比寿 自然食」と検索すれば出てきたのですね。しかし、自分の目的を自然食と言語化出来なければ検索が難しいわけです。

キッチン わたりがらす
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13133712/

ちなみにこのふわっとした目的でお店を探すには、チャット型のアプリ「ペコッター」があり、こちらでは言語化しづらい目的を文章にして人に尋ねるということが可能になっています。

ペコッター

受動的に目的を持っている人に向けたメディアが、ネットでは手薄

ふわっとした目的が「能動的」である場合と「受動的」である場合があります。能動的な場合は先述のペコッターなどを活用出来るのですが、そこそこふわっとした目的は持っているけれど情報に対して受動的な人は検索すらしません。
tabe02 そういった人にアプローチ出来ていたのは、紙メディアです。例えば雑誌「Hanako」は”美味しくて可愛いカフェ”や”コスパ十分な都内の女子向けレストラン”など、コンセプトを定めて飲食店の特集を組みます。ターゲットに向けて選定したお店の情報を届けることで、受動的にうっすらとした目的を持っている人に選定した情報を届けているのです。
これが「東京カレンダー」であれば”お金をけっこう持っているリッチ層がプライベートで通いたいお店”などのゆるい目的でくくることになったりします。

このように紙メディアは、言語化できない緩い目的やコンセプトを、キュレーションして読者に届けています。WEB上でも、食についてのメディアはあるのですが、ソース元がネット上での検索なので、だいたい有名店が並んでおり、並んでいるお店が代り映えしないことが多いようです。

レビュアーが訪問しないお店のレビューはない

これはCGMサイトなので当たり前なのですが、レビュアーが訪問しないお店のレビューはありません。レビュアーは、食べ歩きに慣れている人たちなので、そこそこ有名なお店や、ある程度知名度があるお店が中心になってきます。
そうすると、自分の家の近所数十メートル先にある喫茶店などは、点数すらつかないわけですが、意外と地元のこういう店に掘り出しものがあったりします。

新大久保に美味しい海鮮韓国料理屋があり、友達を連れていくと必ずリピートするお店があります。しかし、位置が奥まっているのと、お客さんがほとんど韓国の方々ばかりということもあり、いまだに点数すらついていません。
ということで、レビューが一件もついていない店の中に、掘り出し物のお店が眠っているのかもしれません。

ということで「食べログの限界」というタイトルで書いてきましたが、それでも失敗する確率を抑えてお店を探すのは食べログが一番ですし、私も活用しています。
さきほどの4象限の食べログでカバー出来ていないポジションや「レビュアーが訪問しないお店の情報はない」という地域情報などに、飲食店情報の鉱脈がまだあるのかもしれません。レビュアーが訪問しないということは、地域コミュニティになじんでいるお店である可能性が高いですが、その最たるものがスナックだったりするわけで、スナックの情報サイトなどもニーズがあるのかもしれませんね。

メディアはどこに向かうのか2 〜ネットメディアにコミュニティ(ビオトープ)は存在するか?〜

先日「メディアはどこに向かうのか 〜ライフスタイルの先導から共感へ〜」という記事を書いたが、雑誌メディアに限定した内容だった。
内容をまとめると、雑誌メディアは、メディアが提示する色眼鏡(コンセプト)を支持する人たちが集まり、コミュニティ(ビオトープ)化していたが、2000年代後半以降はそれが解体されたという内容となっている。

ニワトリが先か卵が先かという話になるが、雑誌メディアにおけるコミュニティ(ビオトープ)の解体は、ネットメディアの成長と比例している。ネットメディアの隆盛にはコミュニティ(ビオトープ)は、存在するのだろうか。

コンテンツは、入れ物(ソリューション)によって変容する

コンテンツが入れ物(ソリューション)によって変容するというのは、長らく変わらない真理だ。例えば動画というコンテンツは、映画館という入れ物の中では2時間くらいの長さが妥当だった。その後テレビという入れ物が登場すると、お茶の間に集まった家族が楽しめるように30分や1時間尺くらいの番組が多くなった。そしてネット動画が普及している今となっては、人気の動画は1分程度の尺になった。入れ物の箱(ソリューション)が映画→テレビ→ネット(スマホ)という風に変容するに伴い、動画コンテンツはどんどん短い尺になっている。
それでは、メディアは紙という入れ物からネットに移行するにあたって、どのような変化があったのだろう。

ネットという入れ物によって変容したメディア

ネットメディアになってから、メディアはこのように変わった。

1 メディアとしてのコンセプトを打ち出し辛くなった

雑誌メディアは、1冊の本から成る。これは、1つの本として全体の流れを作りやすい構造だ。1冊の雑誌の中で起承転結をつけることにより「私たちのメディアはこうだ」というコンセプトを打ち出し(色眼鏡をかけ)やすい構造になっている。一方、ウェブメディアは、細切れの記事単位で構成されている。そして読者は、検索結果で表示されたり、ソーシャルでシェアされた個別の記事単位を閲覧することになる。メディア全体の中で起承転結をつけることは難しく、一定のコンセプトに沿った文脈を個別の記事に載せることになる。ウェブメディアの記事は、情報が情報として流通することを目的とされた箱なのだ。(前回の記事にもあるが、雑誌メディアも情報を情報として流通させる形態に変化してきており、雑誌のウェブ化と言えるかもしれない。)
しかし、複数の記事単位で構成されたウェブメディアでも「私たちの媒体はこうだ、こういうコンセプトだ」という色を少しづつ載せることは出来る。読者は、グーグルの検索結果やSNSでシェアされた記事に接触し、それが複数回行われるうちに、そのメディアを気に入ってトップページをブックマーク(あるいはアプリをダウンロード)するかもしれない。

2 ライフスタイルの提示から、読者へ寄り添う形へ

雑誌メディアの特徴は、メディアが主導するライフスタイルやロールモデル(Hanako世代、エビちゃんOL)を提示することだった。メディアの主導により、ファッションだったり、ライフスタイルにおけるブームが作られていた。しかし、ウェブメディアはライフスタイルやロールモデルを提示することはなく、読者の共感を誘うようなコンテンツがメインとなる。(これも前回の記事にあるが、雑誌メディアも最近はこういう流れがある。)

これはウェブの集客方法に起因する。ウェブメディアの集客方法はSEOかSNSでの集客に2分される(が、ほとんどSEOだ)。SEOで集客を行うということは、読者の検索需要がある記事を逆張りして作るということになる。すでに読者が読みたいというニーズがある記事を作成するのだから、読者の共感を誘うコンテンツがメインとなるのだ。ソーシャルの場合でも「いいね」をするということは、共感を抱いているということだ。いずれにしろ、共感を誘うコンテンツを作れるかどうかがカギになる。

ネットメディアにコミュニティ(ビオトープ)は存在するか?

ネットメディアにコミュニティ(ビオトープ)は存在するのだろうか。前回のブログをアップしたところで佐々木俊尚さんにツイッターで紹介していただき、こんなコメントをいただいた。


ネットメディアはバーティカル化し、そこでコミュニティ(ビオトープ)は形成されるという。しかし、私の個人的な感覚では、コミュニティ(ビオトープ)を形成しているバーティカルなネットメディアが、どれなのか良く分からない。例えばクオリティの高い1次情報メディアはあるかと思うと、それはあると思う。例えば、音楽情報を提供する「音楽ナタリー」がそうだ。代表の方の書籍も読んだことがあるが、ナタリーは記者自らが原典にあたり、情報が足りないと思えば電話などでも追加取材をしているという。しかし、コミュニティ(ビオトープ)を形成しているかといえば、そうでもない。それは、情報の網羅性にある。ナタリーは、ジャパニーズポップスからアイドル、ロックバンドに至るまでありとあらゆる音楽ジャンルの情報を網羅している。それは、読み手が見たいコンテンツを提供するというナタリーの編集方針でもあるらしいのだが、情報を網羅しているだけに、読者のスタンスは好きな音楽情報の入手先であり、コミュニティ化はしていないように思う。
ネットメディアの「オモコロ」も大変に面白いメディアではあるが、そこでコミュニティが形成されているかというと、そうでもないと思う。「オモコロ」は、カルチャーの枠を超えて万人が心の奥底でフフッとなれるコンテンツを提供しており、読者は「オモコロ」のフフッとなるコンテンツを見て、フフッとなっているだけな気がする。

と、考えた時、コミュニティ(ビオトープ)を形成しているバーティカルメディアとは、一体どこにあるのだろうか。それは、存在するのだろうか。
ここまで書いておいてなんだが、きっと私の知らないところで、それは存在するのかもしれないと思う。ネットメディアが紙メディアに比べて大きく異なる点は「それを好きな人はよく知っているが、知らない人は知らない」というタコツボ化である。雑誌「BRUTUS」の発行部数は10万部に満たない(96,805※)が、「BRUTUS」に熱心なファンがいてとても偉大な雑誌であることはもっと多くの人が知っている。雑誌メディアは、実際の発行部数が小さかったとしても、外部の人々によるブランドの認知はされている。だから、周囲を見渡せば、あそことあそこにコミュニティ(ビオトープ)があるんだなということが分かる。

しかし、ウェブメディアは見渡してもコミュニティ(ビオトープ)の形成はわからない。おそらくそれが月間100万人の訪問があったとしても分からない。きっと月間1,000万人が訪問くらいになって、初めて外部の人たちが「こんなメディアがあるのか」と認知するレベルなのだと思う。
ということで、バーティカルなウェブメディアのコミュニティ化(ビオトープ)は、それぞれにひっそりと進行しているのかもしれない。

http://www.j-magazine.or.jp/data_002/m2.html

メディアはどこに向かうのか 〜ライフスタイルの先導から共感へ〜

メディアって何だろう

昔から雑誌が好きで、書店の雑誌コーナーに通っては、ラックの上から下まで目についた雑誌を手に取り、ページをパラパラをめくっていた。雑誌メディアとは何だろうと、改めて考えたときに、一番当てはまるメタファーは「色眼鏡」なのかと思う。

ヨガといえば、女性がフィットネス的に楽しめるアクテビティだ。しかし、ヨガはその昔、オウム真理教の影響もあり、うさんくさい目で見られていた。しかし、2004年にヨガの専門誌「Yogini(ヨギーニ)」が創刊されると、体に良くて痩せてキレイになるフィットネスとしてブランディングされ、一気にヨガ市場が拡大したのだという。LINEの田端さんのインタビューで見かけたエピソードだ。

この「Yogini(ヨギーニ)」というメディアが果たした役割は、ヨガというアクティビティを、「痩せてキレイになれる」「体に良い」「オシャレ」というフィルターをつけて見せてあげたことだと思う。「ヨガはオシャレで体に良いよ」という色眼鏡をかけてあげたのだ。色眼鏡をかけるとは、メディアが特定のテーマに対して、読者に提示する視点を提供してあげることであり、メディアが支持されているということは、メディアの色眼鏡(視点)を装着したいと思う人が多いということだ。

吉祥寺も自由が丘も、定量的にはただの街だけれど、Hanakoという雑誌メディアの色眼鏡をかけると「探索するのが楽しいオシャレな街」ということになる。

メディアとはコミュニティ(ビオトープ)だ

「メディアの色眼鏡」をかけたいという人が集まってくると、メディアはコミュニティ化する。コミュニティにあらずとも、なんとなく同じ色眼鏡をかけた人たちが集まってきて、それぞれのビオトープ(生息圏)が出来る。例えば、Hanako世代という言葉があるけれど、1980年代後半に20代だった女性は、雑誌Hanakoによって消費傾向に影響を受けていたという。自分が好きなものを買って、自分が好きなところへ旅行に行く。そんな自由な消費スタイルという色眼鏡をメディアが打ち出すと、それに影響を受けた層がゆるく集まってビオトープ(生息圏)のようなものが出来る。

メディアのコミュニティ(ビオトープ)化には、2つの手法がある

メディアのコミュニティ(ビオトープ)化に至るには2つの手法がある。1つ目は、メディア自身が色眼鏡を定義し、それを啓蒙すること。先ほどの80年代の「Hanako」における自由な消費スタイルなどがそれにあたる。さらに、2000年代半ばに赤文字系雑誌の「Cancam」を通して流行した「エビちゃんOL」も、コンサバ系OLファッションに身を包んで髪の毛はゆるい巻き髪をするという色眼鏡を定義して啓蒙していた。ロハスで自然な暮らしを提案する「リンネル」や「クウネル」と言った雑誌も”ロハスで自然な暮らし”という色眼鏡を読者に提供している。

この手法を広めるにあたって有効だったのが、メディアの色眼鏡の象徴(アイコン)となる人物を設定することだ。例えば、「Cancam」の「エビちゃんOL」の象徴(アイコン)は文字通りモデルの蛯原友里であり、ビオトープにいる読者たちは「コンサバOLになりたい=蛯原友里が象徴」という明確なゴールが出来る。

コミュニティ(ビオトープ)を形成する2つ目の方法は「体系的な知識を必要とする閉じたサロンを作ること」だ。雑誌で言うと音楽雑誌の「ROCKIN’ON JAPAN」を読んでいる人たちは「かなり音楽に詳しい人」であり、日本の音楽シーンの歴史年表がある程度体系的に頭に入っていて話が出来る(どこそこのバンドは、どこそこのバンドを影響を受けている)前提になる。
その雑誌を読んでいることが、コミュニティ(ビオトープ)に入るための入場券になるのだ。同様に「STUDIO VOICE」を読んでいる人は、サブカルチャーに詳しく、日本のサブカル誌についての知識がある程度体系的にある前提となる。
(体系的な知識を必要とする という前提でいうと政治経済ニュースにも当てはまり、NewsPicksもこの構造にハマる気がする。)

メディアのコミュニティ(ビオトープ)化の終わり

メディアが読者に色眼鏡をかけて、コミュニティ(ビオトープ)化していたのは、2000年代半ばくらいまでだったと思う。2000年代後半以降はメディアを取り巻く定義は激変した。それは主に以下の点に集約される。

1.数十万人たちをくくれる色眼鏡が消滅した

現在において「Hanako世代」や「エビちゃんOL」など、メディアの色眼鏡をかけたビオトープ圏をくくれる言葉は存在しなくなった。人々の消費行動やライフスタイルを、一つの大きな枠で括られなくなったのだ。言い換えると、人々はライフスタイルにおけるロールモデルを必要としなくなった。cancamは最盛期は80万部を超えており、購読者層はコンサバエビちゃんOLを目指していたが、現在において数十万人をひとくくりに出来るメディアの色眼鏡や、象徴としてのロールモデルは存在しない。

2.体系的な知識を必要とするサロン的メディアは解体された

体系的な知識を必要とするサロン的メディア、例えば映画雑誌や音楽雑誌などは次々と廃刊となり、特定のジャンルにおいて濃い知識を持ち寄って、サロン的に動いていたメディアは解体された。2000年代にはミニシアターブームもあり、都市部には「ある程度カルチャーを分かっておくべき」的な空気感があったが、現在においては「面白ければいいじゃん」的なノリで体系的な知識が必要とされるメディアは皆無に等しい。

メディアはどこに向かうのか

コミュニティ化(ビオトープ)が終わったメディアは、色眼鏡を読者にかけるのではなくて、単に「情報」を提供し始めた。特にファッションにおいては、ファッションの潮流がベーシック化になる流れを受けて、逆に色眼鏡を設定することが購読者層獲得にマイナスに働くからだ。ファストファッションの台頭により、ファッション誌はGUなどのプチプライスのアイテムをメイン特集にするなど、読者の消費環境に寄り添った特集記事を”情報”として提供し始めた。(これは、2000年代まではメディア主導でライフスタイルが作られていた動きから見ると、真逆の動きと言える、。)
もしくは、雑誌に特典付録という麻薬的なアイテムをセットにすることにより、紙メディアの部数を伸ばそうと試みた。

このように、雑誌がライフスタイルについてのロールモデルを主導する時代は終わり、消費者の消費行動に即した等身大の「情報」を提供するようになった。(そして、それは消費者に受け入れられ、雑誌を定期的に購読する層であった現在の30代、40代をターゲットとしたファッション誌などは部数を伸ばしている。)

しかし、一部の雑誌は今もまだそれぞれの雑誌固有の色眼鏡を提供し続けて、読者はその色眼鏡をかけたいと親密な関係を結んでいる。「ブルータス」といったカルチャー誌や部数を維持している「Hanako」などもそうだ。主婦向けの「Mart」なども主婦たちのコミュニティが形成され、そこから新商品が登場している。
これらを見ていると、読者は雑誌が提供するロールモデルに従っているのではなく、雑誌の提案するポリシーや空気感に「共感」を抱いているように感じる。成功しているカルチャー誌のキモは、メディアが提案するポリシーや空気感を「共感」を持って受け入れてもらえることが大事なのではないだろうか。

▼続き
メディアはどこに向かうのか2 〜ネットメディアにコミュニティ(ビオトープ)は存在するか?〜