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メディアから情報を取り除いた時に、残るもの。

メディアの特色(フィルター)を通した世界を読者に見せる

メディアというのは媒体なので、何かを介してあることを伝える器なのです。この“あること”というのが、情報にあたります。
そして、この何かというのがメディアがもつ一種のフィルターであり、このフィルターのさじかげんが、メディアがもつ特色であると言えます。

このメディアが持つフィルターは、特に紙の媒体にとっては重要性が増しています。“情報”を伝える点においては、圧倒的にウェブの方が有利だからです。
実際にフィルター(媒体の特色)が弱い紙媒体は、どんどんウェブに優位性を奪われて休刊したり部数が減少し続けています。映画情報を扱っていたぴあや、レストランやテーマパークの情報を扱っていた東京ウォーカーなどがそれにあたります。
今は、映画を観に行こうとしたらネットで上映時間を検索しますし、レストランに行こうと思ったら食べログを見るわけです。

では、メディアのフィルターが有効に機能している雑誌とはどれでしょうか。例えば以前の記事で取り上げたHanakoは、リニューアルの際に雑誌を家に置いておきたい雑貨のようなイメージでリニューアルしたと言います。Hanakoで頻繁に取り上げられるのがカフェ特集ですが、カフェの情報なら食べログでも見られるわけです。
しかし、食べログになくてHanakoにあるのは、世界観を作って読者が雑誌を見ている時間を演出していることです。

Hanakoの読者層の女性が好きそうなカフェ、レトロだったり、可愛らしいスイーツが並ぶ店舗をセレクトし、プロのカメラマンによる作品のような写真で紹介していきます。
だから、Hanakoを見ている人は単に情報を求めているわけではなく、読んでいる時間そのものを演出してくれる雑誌に価値を見出しているのです。

このように定量的な情報を、読者が好きそうな切り口(Hanakoであればカフェ)という視点で切り取り、それを雑誌の世界観とともに再構築することが、雑誌のフィルター(特色)であると言えるわけです。

この雑誌のフィルターをつくる作業は、いわゆるブランディングになります。対象読者層の選定、読者層が好む情報の選定、その情報をどのような文体とどのような写真で綴るか、その行程の全てが雑誌の空気感を醸成して、フィルターが形成されます。メディアのフィルターを通した見た世界を、読者に提示しているのです。

雑誌ではファンの獲得だったゴールが、webでは集客に

むかしの雑誌はこのフィルターの色が強く、それに共感した読者のコミュニティが形成されることで、一種のカルチャーが作られていました。

このあたりの媒体のフィルターについては、紙の編集者であれば暗黙知として持っている感覚かと思いますが、web媒体出身の編集者には伝わりづらいことになります。
それは、紙の媒体は、毎号読み続けてくれるファン(読者)を獲得することがゴールであるのに対し、web媒体の場合は検索ワードごとに自社メディアに誘導させるかという、情報の最適化がゴールになってるためです。

web媒体が効率的にこれを突き詰めた結果、ユーザーはいち早く目的の情報にアクセスすることが出来るようになったため“情報”だけをウリにしていた雑誌はどんどんwebに読者を奪われていきました。
ただ、webメディアはアクセスは肥大しているものの、かつての紙媒体のようにファン(読者)を獲得出来ているかというと懐疑的です。
以前の「MERY」は著作権の問題はあったにせよ、購読者層と同じ年代の大学生に記事を作らせることによって、読者層が求める切り口を提供し、ファン(読者)を獲得出来ていたように思いますが、かつての「MERY」のように読者層に支持されているwebメディアが果たしてどれほどあるでしょうか。

しかも、今はひとつのコンセプトで対象読者をくくることが容易でした。年代、性別によって人生をいくつかのモデルパターンに分けられたからです。しかし、生き方が多様化した今、ライフスタイルで読者層をくくることは難しくなっています。(しかし、紙の雑誌は頑張ってライフスタイルでくくろうとしています。)
web媒体においてもこのフィルターを持つべきなのか、そしてライフスタイルの打ち出し以外で読者に対してフィルターを提供出来るのかは、メディアにとって重要な課題なのではないかと思います。

マンガアプリに見る、従来のデバイスのUIを引き継いでしまう現象

スマホが登場した時、ページをめくるインターフェースが多かった

従来のデバイスのインターフェースは、次の世代のデバイスまで引き継がれる傾向があります。

例えば、スマホが登場したばかりの頃は、紙をめくるようなインターフェンスのサービスがけっこうありました。

電子書籍は、本を電子化したものなので、ページめくりがあります。しかし、本来はインターネットに制限はないため、ページ送りしなくても良いわけです。
なので、一定期間たった後に、noteなどスマホに最適化されたインターフェースのサービスが登場しています。

スマホの登場で、一番影響を受けるコンテンツは漫画です。すでに各社が出している漫画アプリは数百万ダウンロードを超えており、大変人気です。
漫画というのは、出版社の歴史も長いので、非常に従来のインターフェースに引っ張られる傾向にあります。

漫画の多くは右から左にコマ割が移行しますが、スマホで見るときはこのコマ割りが小さくてセリフが読みづらい傾向にあります。

スマホで観るのに適したコマ割りは、上から下へと視線が流れるコマが大きいものです。
最近はスマホ用に描かれた漫画は、このインターフェースに従っています。

アプリになっても引き継がれる”連載モデル”

さらに特徴的なのは、出版社各社が出している漫画アプリが“連載”というインターフェースに準拠していることです。
全ての定期的に発刊される漫画雑誌は、全て漫画が連載という形をとっています。
なかには、数十年も連載している漫画もあるわけです。

だから、出版社がスマホを使って漫画コンテンツを発信しようとすると、前提として連載ありきになります。
実際、ジャンプなどの漫画雑誌は、連載型が中心です。毎日何がしかの漫画が更新されていきます。

しかし、実は漫画コンテンツ的に一番多くのユーザーを囲いやすいのは連載型ではなくストック型になります。
ピッコマがこのインターフェースにおいてもっとも成功していると思われますが、最初の何話かを無料にしておき、それ以降は24時間に1話だけ読めるチケットを発行します。
続きが気になる人は、課金をすると続きが読めるようになります。
(結末間際の数話も、課金前提となります。)
このようになストック型だと、漫画アプリを訪問したユーザー全員を対象として購読率や課金率がかかっていくことになります。

一方、連載型の場合は、連載するうちに一定量づつ購読を止めでは脱落する人たちが出始めます。
しかも、無料になるのは最新話であるため、フリーミアムにするコンテンツのさじ加減を、期間で調整していることになります。
仮にその漫画が100話あったとしたら、そこにいたるストーリーは有料課金が前提なので読む気力がそがれるのです。

一方ピッコマのようなストック型だと、一日一話は無料で読めることが分かっているため、継続率が高くなり、継続率が高いということは課金をしてくれるユーザーの母数が増えるということなのです。

このように、継続率や課金率といった係数で考えるとピッコマのようなストック型のインターフェースが有効なのですが、出版社的には今まで連載型で漫画を発信し続けヒット作を育て、ストックしたコミックで課金するという一連のモデルがベースにあるため、ストックしたコンテンツを無料で読ませることに心理的ハンドルが高いのです。

このように、インターフェースは、前世代のデバイスに加えて、従来のビジネスモデルや慣習にも強い影響を受けます。

そのモデルを崩して新しいハードデバイスに最適化するのは、たいてい新しい新興勢力になります。

女性向けサービスの出稿は、断トツでインスタグラム


女性向けサービスの出稿は、段ドツでインスタグラムが効果良いですね

タイトル、上記の画像にて、伝えたいことは全て伝えてしまったわけですが…。
レシピットという、チャットで質問すると、レシピが返答される便利なサービスを運営しています。女性比率が9割以上なのですが、Facebookにて出稿をかけると圧倒的にインスタグラムが効果良いんですね。2、3回出稿したところ、どんどん広告の露出がチューニングされて最終的にインスタグラムにしか出稿されなくなりました。(緑=リーチ 青=CV)



ちなみに、最近インスタグラムが高齢化しているという記事がバズっておりましたが、こちらは女性における年齢別分布です。確かに25歳~34歳をボリュームゾーンとして全体に分布していることが分かります。若年層以外の商材でも、十分に効果があるわけです。

出稿する際は、インスタグラム用の正方形のクリエイティブが設定出来るので、女性向けのサービスの出稿をかける場合は、必須です。

ちなみにFacebookのネットワークの広告は、このように出稿のたびにチューニングをかけてくれるのでCPAが安定していき、広告の露出先も効果が良いものになっていくのですが、その速度が速いので初回の出稿からある程度安価なCPAで獲得出来ます。

一方、Googleさんが提供しているアプリネットワーク=UACは、数千円というあり得ないCPAで始まり、1~3か月を経てチューニングされて安価なCPAに落ち着きます。予算を全体で100万前後かけられるのであれば、UACへの継続出稿もアリでしょう。

いずれにしろ、細かく設定しなくてもクリエイティブにさえ気を使っておけば、アドネットワーク側がチューニングしてCPAが安価に落ち着いていきます。
となると、広告代理店の役割とは…という時代になってきましたね。

シーチキンでマーケティングしみてる。マーケティングの考え方とは。

日常の気づきからマーケティングがはじまる

ある日、シーチキンってすごいやつなのではないかと思いました。シーチキンを使った有名レシピ、無限ピーマンをご存知でしょうか。ピーマンにシーチキンをまぜてチンしたものです。
世の中には、シーチキンを使った美味しいレシピがあふれています。シーチキンを食べている時に、実はシーチキンってすごいのではないかという気付きを得ます。マーケティングの起点は、日常の気づきや違和感から出発するのです。

気づきをデータで確かめる

しかし、気づきは気づきでしかありません。マーケティングの重要な要素として、気付きをファクトデータを持って正確にとらえるという作業に移行します。
シーチキンという商品カテゴリはすでに成熟市場でしょうから、シーチキンを販売している会社内での売上シェアを調べてみます。(ここで、ググった結果、シーチキンという名称ははごろもフーズだけが使える名称であり、正しく商品カテゴリを表すのであればツナ缶であるということが判明します。しかし、ツナ缶におけるシーチキンのシェアは5割を超えているようなので、シーチキンはツナ缶カテゴリを代表するもので良いでしょう。)

ということで、はごろもフーズのIRを見てみましょう。
(マーケティングにおける情報収集において、有効なデータのひとつがIR情報です。売上や利益の推移のみならず、各事業の主要KPIが決算報告書にて開示されている場合が多いからです。)

ということで、2018年3月期のはごろもフーズのIRを見てみます。

はごろもフーズ株式会社
平成30年3月期決算短信
https://file.swcms.net/file/hagoromofoods/dam/jcr:7edf4618-7cc0-43b9-a918-1f58514ef87e/140120180514437179.pdf

はごろもフーズにおける家庭用食品売上高は635億5,111万円ですが、そのうちツナカテゴリの売上は342億7245万円です。家庭用食品売上に占める割合は43%にのぼります。
シーチキンのツナ缶におけるシェアが5割以上ということは、ざっと計算して700億前後のツナ缶が年間に流通しているということになります。こちらの市場調査レポートによるとツナカテゴリの2017年の市場規模は790億円となっています。

多種多様な志向に対応した商品の育成進む
農産・畜産・水産加工品・乳油製品74品目の加工食品国内市場を調査
https://www.fuji-keizai.co.jp/market/17028.html

この結果を見ても、シーチキンはすごいやつと言えそうですが、比較対象の軸を増やす必要があります。それは、同じような商品セグメントとの比較をすることです。データは、比較をして初めて意味が生じます。

先ほどのレポートの中で、20品目の水産加工品(魚肉ハム・ソーセージや海苔など)の2017年の市場規模は8,703億円となっています。ということは、ツナは20品目の水産加工品全体の市場規模の9%を占めるということになります。ということは、ツナ以外の水産加工品に比べて、単純計算でツナは2倍すごい(流通している)ということになるうですね。

これで肌感覚で感じた「ツナってすごいやつなんじゃないか」が、ファクトデータによって「すごいやつだった」ことが実証されました。

得られたファクトを、仮説を以って抽象概念化する

さて、ツナがすごいやつであることが分かりました。だいたいのリサーチやマーケティングレポートは、ここで終了していることが多いです。ツナはすごいやつでした。以上。

マーケティングにおいて重要なのは、この後です。日常の気づきや違和感をデータで確かめ、事実として確定させる。その後、このファクトを仮説を以って抽象概念化するのです。
なぜツナは水産加工品セクションにて、強い商品カテゴリになっているのでしょうか。以下のような仮説が導き出されます。

・副菜の具として、ツナ缶が向いている

ツナ缶を使う時、何に使うでしょうか?ふつうはサラダに入れたり、炒め物に混ぜたりします。そう、ツナ缶はそれ単体で主役になることはありません。だいたい主菜に加えるもう1品として、副菜に活用されることが多いのです。
副菜に使われるということは、食材の登場回数が多いということになります。週に2回以上夕飯にハンバーグを食べることは少ないと思いますが、ツナ缶は副菜に”投入される”ものなので、月曜はサラダに混ぜて、金曜日は炒め物に混ぜて、と週に2回以上食卓に登場してもおかしくありません。

この点を中小概念化すると、ツナの強みのひとつは

〇副菜に対する混ぜ物である=ゆえに食卓での登場回数が主菜よりも多くなる

という仮説が立てられます。

さらに、ツナに対してもうひとつの仮説が導き出されます。無限ピーマンのレシピにおいて、ツナは具のひとつですが、味付けとしても機能しているのです。ツナはマグロの油缶なので、オイルとともに塩味が足されています(最近はノンオイルも流行りですが)。ゆえに、ツナ缶は、具のみならず味付けの調味料としての役割もになっているのです。

これを補間するデータもあります。以下の総務省のデータを見ると、年間支出額が成長軌道にのっているのはお酢とドレッシングの2つのみです。お酢は健康志向のトレンドが影響していると思われますが、ドレッシングは買ってきてそのまま野菜にかけられる調味料です。オイルや食塩を混ぜ合わせてドレッシングを作るよりは、買ってきてそのまま使えるドレッシングが使われているということです。

調味料への支出
http://www.stat.go.jp/data/kakei/tsushin/pdf/23_9.pdf

また、下記データによると2014年頃まで合わせ調味料の市場が伸びていることが分かります。個々の調味料を使うよりは、それひとつで済ませられる調味料の利便性があがっているのです。

メニュー用調味料、成長加速 市場規模5%増 640億円規模へ
https://www.ssnp.co.jp/news/seasoning/2014/09/1409290003518850.html

ということで、ツナのふたつめの強みとして以下があげられるでしょう。

〇他の食材と合わせることで、調味料にもなる

抽象概念化を、具体化して転用する

ということで、ツナ缶が強い理由について、下記の抽象化した仮説が得られます。

〇副菜に対する混ぜ物である=ゆえに食卓での登場回数が多くなる
〇他の食材と合わせることで、調味料にもなる

この抽象化した概念を他の市場や商品に当てはめて、具体的に転用することではじめて今までのリサーチやマーケティングの概念が生きてきます。

例えば、同じ水産加工品の缶詰といえば「鯖缶」があげられます。「鯖缶」も人気の缶詰であることは間違いありませんが、流通量でいえばツナ缶よりは劣るでしょう。
先ほどの抽象概念を「鯖缶」に当てはめると、2つとも条件として欠落しています。その理由は何でしょうか。仮説になりますが、それは鯖缶の形状に寄ります。
ツナ缶はフレーク状ですが、鯖缶はサバの形状をとどめており、自分で身をほぐせば混ぜ物にも出来ますが、どちらかというと主役感が強いのです。
ツナ缶はフレーク状にすることで、暗に「混ぜ物ですよ」アピールが出来ているんですね。

この公式に当てはめると、鯖缶もフレーク状にして混ぜ物であることをアピールすれば、食卓での登場回数が多くなる可能性がありそうです。

さらに、これは魚介類ではなくて他の食品カテゴリに当てはまるとどうなるでしょうか。例えば、漬物を作っているメーカーがこの概念に注目して商品開発をした場合、漬物を細かく粉砕し、つけ汁ごと商品化することが考えられます。漬物が細かく粉砕されているのでおにぎりの具にもなりますし、炒め物やサラダのアクセントにもなります。そして、つけ汁が調味料の役割を果たしてくれるのです。

このように、マーケティングは日常の気づきや違和感からはじまり、その気づきのデータによるファクト化、抽象概念化、概念を具体化して転用するというステップを踏みます。

この抽象概念を引き出しにたくさん入れておくことが、すぐに役立つアイデアの引き出しとなります。

私たちが「Tポイントカードを持っていますか?」と聞かれ続けた理由

ファミマを訪れる多数派は、Tポイントカードを持っていないか、ポイントを意識していない

ファミマで「Tポイントカード持っていますか?」って聞かれてイラっとした人はけっこういると思うんですよ。一回や二回ならまだしも、行くたびに聞かれると「だから、持ってねーっつてるだろー」っていう気持ちになるのも、いたしかたないわけです。
(最近は、あまり聞かれなくなった気もしますが。)

実際にTポイントカードを持っている人がどのくらいいるか調べてみたのですが、なんと5,981万人もいるんですよ(2016年時点)。
この資料によると、日本の総人口の47%が持っている計算になります。

カルチュア・コンビニエンス・クラブの取組みについて
(Tカード/Tポイント物価指数)
http://www.stat.go.jp/info/kenkyu/sss/pdf/161014_shiryou2.pdf

しかも、20代~70代に絞ると持っている比率はさらに高いわけです。ここまで、みんなが持っている割に存在感が薄い気がするのは、Tポイントがファミリーマート他の様々なサービスと提携しまくっているため、提携のサービスに入会すると自動的にTポイントカードの機能がついてくるためでしょう。Tポイントカードを持っている意識は薄いが、結果として持っている層が多いのではないでしょうか。

ちなみに、ファミリーマートの来店客数は1日に1,000万人とあります。(2014年時点)

ファミリーマートアニュアルリポート
http://www.fu-hd.com/ir/library/annual/document/fm/fm2014.pdf

ものすごいざっくり計算すると、来店者のうちの半分くらいはTポイントを保持している形になります。
(総人口には赤ちゃんなども含まれるため、実際Tポイントを所有している割合はもっと高くなりますが、ざっくりで言うと。)

そして、店員が「Tポイントカードを持っていますか?」という問いが有効なのは、Tポイントカードを持っていてポイントを貯めているけれど、出し忘れている人です。
来店客の内訳を整理すると

1そもそもTポイントカードを持っていない(来店者のうち半分弱くらい)
2Tポイントカードを持っているが、ポイントを貯めてない(来店者のうち半分強のうちのX割程度)
3Tポイントカードを持っていて、ポイントを貯めているが出し忘れた(来店者のうち半分強のうちのX割程度)
※冒頭のグラフ参照。

ということになり、少なくとも1と2で全体の6~8割くらいは占めるのではないかと思うわけです。ということは、「Tポイントカード持っていますか?」という一言で便益を受けるのは全体の2~4割ということになります。
残りの6~8割は「毎回聞かれるとイラっとする」のクラスタなのではないでしょうか。

ということで整理すると、お客さん全員に「Tポイントカードを持ってますか?」と聞かない方が良いと思うのですが、なぜ聞かれてきたのでしょうか。Tポイントカードを引き合いに出しましたが、nanacoだとかWAONだとか、そのほかポイントの類は全て「お持ちですか?」と聞かれます。

クレームや問い合わせによって、少数派の声が大きく見える

それは、2~4割のポイントを集めている顧客によるクレームが怖いからではないでしょうか。だいたいのポイント系カードは、会計後の後付け処理が出来ない(OR大変)な仕組みになっているようです。ポイントを熱心に集めているお客さんの方が、会計が終わった後に「ポイントついてなかったよ!」というクレームが入ることが多いことは容易に想像されます。

すると、店側としては「クレーム入るから、マニュアルで”ポイントはお持ちですか?”」と全員に聞きましょうというマニュアルを作るわけです。
そうすると、来店者全員が「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれることになり、結果として全体の大多数を占めるお客さんの便益を下げる結果になるのです。

この、母集団の構成は少ないけど声が大きい顧客の声が通りやすいというのは、近年顕著にみられる傾向です。CMや企業が作ったプロモーションムービーなども、100万人が見て99万9,900人がOKだと思ったとしても、100人からクレームが来たら放映中止になります。

これが、私たちが「Tポイントカード(に限らず)ポイントカード全般を持っていますか?」と聞かれ続けていた理由かと思います。この原因をさらに一歩深掘ると、担当部署(あるいは管理者)が上から怒られたくない、ということになります。
「ポイントカードを持ってますか?」と聞くオペレーションを止めて、数百人から「ポイントカードを出し忘れた。」というクレームなり問合せが来た場合、上から怒られるのは担当部署だからです。
大多数の人たちが「ポイントカード持ってますか?」と聞かれたくないと思っていても、サイレントマジョリティの声は可視化されないので、見えやすいクレームや問い合わせを優先して対応してしまうわけです。

ゆえに、こういった事象を解消するには、経営層くらいまで上の人たちが「サイレントマジョリティ」を大切にした方が良いよね。という意識がないとなかなか難しいのかと思います。

ちなみに、問い合わせやクレーム対応回避以外で、いちいち聞く場合もあります。それはポイントカードなどの販促をしたい時です。マルイなどは、クレジットカードの収益構造が大きいため、毎回マルイのカードを持っているか聞かれますし、持っていないと都度営業をかけられます。これも、人によっては止めてほしいと思うでしょうが、企業にとっては販促活動なのです。

異様に長い会議時間を、半分に短縮する方法

会議時間が異様に長くなる理由

日本の会社って会議時間が異様に長いのです。それを回避するためには、ツリー型の議論を取り入れる必要があります。
ツリー型議論とは、全員が議題に対してツリー(階層)を意識して議論を行うことです。

例えば、会社の懇親会の企画をしたとしましょう。メンバーで集まって、懇親会の企画と詳細を詰める会議をします。
以下の議論の中で、ツリー型議論を乱しているのは誰でしょうか。

Aさん「懇親会は、飲み会のイメージでしょうか?それとも、ゲームなどのコンテンツも入れましょうか?」
Bさん「確かにコンテンツを入れても良いかもしれませんね。」
Cさん「コンテンツの中身はビンゴとかですか?それとも、グループ別に出し物を行う感じですか?」
Aさん「あまり具体的なイメージはないですね。」
Cさん「ビンゴを行うのであれば、ビンゴセットを持っているので持って行けます。景品は別途手配する必要がありますが。」

この中でツリー型の議論を乱しているのは、Cさんです。

この会議の中で第1階層になる議論は、懇親会では飲み会とするか、それともコンテンツを入れるかという議論です。

〇飲み会とするか、コンテンツを入れるか(第1階層)
└飲み会とする
└コンテンツを入れる

しかし、Cさんの話はコンテンツを入れた場合の実行プランの話をしているので、第2階層の話に言及しています。

■飲み会とするか、コンテンツを入れるか(第1階層)
└飲み会とする
└コンテンツを入れる
└どういったコンテンツが良いか?⇒ビンゴをする(第2階層)

Cさんがビンゴの実行プランについて、この後5分ほど話をしたとしましょう。しかし、5分ほど話が進んだ後で誰かが「ただの飲み会で良くないですか?」という話をして、皆が合意したとします。そうすると、ビンゴについての話をした5分間が無駄になるわけです。

会議の場でこれが非常に多くみられる兆候で”今どこの階層の話をしているか”を意識しないと、階層を下った各論の話をしだす人が出て、無駄な時間が多くなるのです。

階層ごとの議論を意識することで、会議時間を半分に短縮

では、冒頭の例ではどう議論を進めれば良かったのでしょうか。まず、第1階層の議論である「飲み会とするか、コンテンツを入れるか」を決める必要があります。それを決定した上で、第2階層以降の議論に入るべきです。

まず、飲み会とした場合とコンテンツとした場合のメリットデメリットを議論し”コンテンツありの方が良い”となったとします。
これを以って第1階層の議論に決着がつくので”どういったコンテンツが良いか”という第2階層の議論に進むのです。さらに、そのコンテンツを決めた後に”どのように準備するか?”という第3階層の議論に進みます。

■飲み会とするか、コンテンツを入れるか(第1階層)
└飲み会とする
└〇コンテンツを入れる
└どういったコンテンツが良いか?(第2階層)
└どのように準備するか?(第3階層)

これを見ると、冒頭のCさんの議論が全てをすっ飛ばして、どのように準備するか?という第3階層の議論まで飛躍していることが分かります。

このように、階層ごとで決議を取る前に階層を下りて各論を話してしまうと、無駄な発言と議論が多くなるのです。個人的には、日本の会議における議論の無駄の7割は、これが原因だと思っています。
このツリー型議論を導入することにより、会議時間は半分以下に減らせるでしょう。

ツリー型議論を進めるには、司会者が発言をシャットダウンすることが必要


このようにツリー型で進めるためには、司会の役割が非常に重要になります。具体的には、階層外の話題を持ち出した人の話をいったんシャットダウンすることです。
冒頭の例でいえば、Cさんが「ビンゴを行うのであれば~」と話し出した瞬間に「まだ、飲み会にするかコンテンツを入れるかが決まっていないので、先にそれを決めてからにしましょう」とシャットダウンして議論の階層を引き戻すのです。

ツリー型の議論が出来ない人は、冒頭のツリー構造が頭の中にないので、常に脱線しがちになります。そういった人が会議に毎回参加する場合は、司会がその都度シャットダウンする必要があります。
実は、現実的にスムーズな議論を進めるためには”ツリー構造を理解できる人たちだけで、議論する”が一番スムーズな議論進行になるのです。

また、ツリー型の構造理解を養うために最適なのは読書です。しかもビジネス書ではなく、物語です。物語を理解するには、文脈を読み取る能力と、それを頭で整理する力が必要となります。小さいころから物語を読んでいる人は、自然とこのツリー型に物事を分解出来る能力が身についているのです。

ということで、ツリー型議論のすすめという記事でしたが、ツリー型に議論を進められないメンバーでの会議をするたびに、内心けっこうげんなりしています。

UI無限ループにハマらないための、ハンバーグ・ブロッコリー理論

先日こんなツイートをしたのですが、UIのためのUIの話が多い気がしています。


UIってやろうと思えばどこまでも出来るので、どのタイミングで妥協して出すか(実装に係る工数も含め)という着地点を探すのが重要だと思っています。

よくあるのが、UIを洗練させるためにリリース時期を伸ばすことです。確かにUIは大切なのですが、延々UIを洗練し続けてUI無限ループに陥ってしまうことがあるのです。UI無限ループに陥らないためのハンバーグ・ブロッコリー理論を提唱します。

そのプロダクトにおいて、UIはハンバーグか?ブロッコリーか?

まず、UIをどこまで掘り下げるかを考えるにあたり、作ろとしているプロダクトにとって、UIがハンバーグ(主菜)に当たるのか、ブロッコリー(副菜)にあたるのかを考えます。

例えばツイートの例にあったマンガアプリの場合のハンバーグ(主菜)は、もちろん漫画コンテンツそのものです。コンテンツそのものに比べればUIはブロッコリー(副菜)です。
ハンターハンターの最新話が読める使いにくいマンガアプリと、名も知らない漫画しかない使いやすいマンガアプリがあったとしたら、使われるのは断然前者です。

もちろん、両方良くするに越したことはないのですが、リソースは限られています。
戦略というのはリソースの最適化ですから、リソースが限られている場合はハンバーグ(主菜)に多く割くべきです。もし1,000万あったとして、500万をUIデザインに割いたら、500万をコンテンツの獲得に割くことになります。この場合はUIデザインに割く費用を最小限にとどめて、コンテンツの獲得にほぼ投下するべきでしょう。

ということで、コンテンツが主役の場合はUIに割くよりはコンテンツの獲得にリソースを割いた方が効率が良いわけです。

UIそのものが、ハンバーグになる場合

しかし、UIそのものがハンバーグである場合は、UIそのものが価値になりますから妥協をしてはいけないということになります。例を挙げるとSNSやメッセージングアプリなどがそうです。これらにとっての価値は、人々が発信するメッセージなどですが、そのメッセージの発信と受取という行為が、かなりの頻度で行われるため、UIそのものがハンバーグになります。

同様に、ソーシャルゲームなどのゲームアプリなども、UIそのものがゲームというコンテンツの一部に内包されるため、ハンバーグであるということになります。

また、ニュースアプリなどもUIそのものに注力する必要があります。先ほどの漫画アプリと比較すると、ハンバーグはニュース記事そのものではないかと思われますが、ニュースアプリは細切れのニュースをキュレーションして配信しているプラットフォームそのものに価値があるので、ニュース記事をいかにまとめるか、それをどう見せるかというUIが重要だからです。

また、UIがハンバーグになる場合は、利用頻度が著しく高いサービスであるという点があります。マンガアプリは、マンガを選んでしまえば、マンガを読むという導線を辿り、一日に何度もアクセスするものでもありません。しかしSNSやメッセージアプリ、ニュースアプリなどは日に何回もアクセスすることになります。
利用頻度が高いということは、UIに少しでも気持ち悪い点があると、離脱のポイントになるからです。

ということで、UI無限ループに陥らないためのハンバーグ・ブロッコリー理論でした。

バナーのデザインで、アプリ広告のCPIを4倍改善

レシピットというチャットでレシピの質問が出来るアプリを運用しています。たまにプロモーションをかけているのですが、予算がないアプリの広告といえば、なんといってもFacebook広告です。

ということで、数種類のクリエイティブで広告出稿してみたのですが、CPI(アプリ1件あたりのインストールにかかる広告費)に4倍もの差が出るんですね。
この3つのクリエイティブのうち、もっとも獲得効率の良いクリエイティブはどれでしょうか。

正解は、真ん中の料理を並べたクリエイティブになります。


一番左の主婦と思われる女性のクリエイティブが¥287なので、女性のクリエイティブに比べると3倍効率が良いことになります。
また、一番右のアプリのイメージ画面とアイコンの組み合わせが¥402なので、4倍効率が良いことになります。

さて、CPIを低く抑えるためにバナーのクリエイティブに必要なこととは何でしょうか。

アテンションを取るための工夫をする

まずはバナーに目を留めてもらわなければならないので、アテンションを取る工夫をします。工夫の内容としてはバナーを動画クリエイティブにする、色味が強い写真やイラストを使う、人物を登場させるなどがあります。これらの工夫によってインプレッションを増やすわけです。
(最も効果が出やすいのが動画のクリエイティブで15秒尺ほどの短いものをおすすめします。)
この条件に当てはまるのが、左右2つのクリエイティブになります。しかし、それでも獲得効率で見ると3倍もの差がついています。それはなぜでしょうか。

サービスのイメージと合致したクリエイティブを使う

ユーザーがクリックしてランディングページやインストールページに飛んだ際、バナークリエイティブと本サービスのイメージに差があると離脱が多く発生します。
そのため、サービスのイメージとクリエイティブを合致させた方が、離脱が少なくて済むのです。このケースでいうと、レシピアプリなので食べ物のクリエイティブはレシピアプリというサービスとイメージがリンクするので、離脱が少なくなることが想定されます。

このように、CPIを低く抑えるためには、サービス内容とギャップのないデザインにすることが有効です。アプリプロモーションに限らず全般に言えることですが、ペットショップであれば犬や猫のクリエイティブ、重機の会社であればブルドーザーのクリエイティブを使うなど、そのものズバリのクリエイティブでサービスとのイメージをリンクさせた方が獲得効率が格段に良くなります。

よくありがちな失敗として、アテンション(クリック数)のみを意識してクリエイティブを過激にしてしまう(ゲームにおけるエロさの強調など)がありますが、これはクリック数が増えてもその先にて離脱が増えるので、やはりサービス内容とクリエイティブのイメージを合致させておくことが大変重要になります。

雑誌メディアによる、ライフスタイルの啓蒙が終わった理由

恋も仕事も頑張るOLを啓蒙してきた、赤文字系ファッション誌


2000年代くらいまでは、雑誌メディアはライフスタイルを啓蒙し、それに啓蒙されて読者側もライフスタイルを形成していく時代が続いていたと思います。
例えば、Cancamであればコンサバ系OLとして仕事もそこそこ頑張りながら、恋も頑張る(だから、ファッションは男性の視点を大切に)っていうライフスタイルを啓蒙してきたと思うんですね。OLさんがよく読むこれ系の赤文字系雑誌の特徴として、30日着回しコーデみたいな特集がほぼ毎号ついてくるんですが、ファッションだけを見せるのではなくてライフスタイルとセット(そして主に恋愛面にスポットを当てる)の読み物になっています。
例えば月曜日のコーデは”後輩ののんちゃんと仕事終わりにバーへ繰り出す!素敵な男の人に声かけられちゃった。”とかいう見出しとともに、モデルのコーデを紹介しています。火曜日のコーデは”今日は大事なプレゼン。やる気がある日は、パンツスタイルで。”などと、書類を抱えているモデルのコーデが紹介されます。

このような感じでコーディネイトが紹介されていくのですが、全体のテーマとして「恋も仕事も頑張るOL」みたいなライフスタイルを啓蒙しているんですね。

雑誌ごとに読者層のペルソナが設定されているため、例えば光文社の「Mart」だったら”子供が数人。コストコに買い物に行きつつ、ルクルーゼでおもてなし料理を作る主婦”みたいなペルソナを設定し、そのペルソナに合わせたライフスタイルを啓蒙していると思うのです。(LEONだったら、年収何千万以上のちょい悪オヤジの啓蒙エトセトラ、エトセトラ。)

ライフスタイルの啓蒙に欠かせないインフルエンサーの存在


このように、雑誌というものは想定した読者のペルソナに合わせたライフスタイルを啓蒙し、読者もそれに感化されてきました。このしくみにおいて重要なのが、インフルエンサーの存在です。先ほどのCancamでいえば、雑誌の啓蒙するライフスタイルを実践するエビちゃんというモデルがいることにより、雑誌への信頼性が強くなるのです。

このように、インフルエンサーによってライフスタイルを実践する偶像を提示してきたのですが、今現在において、もはやライフスタイルを啓蒙する時代は終わったように感じています。それは、なぜでしょうか。

ライフスタイルの細分化と、個としてのインフルエンサー


ひとつには、ライフスタイルが細分化しすぎて、読者のペルソナがはまらなくなったということです。今の時代、働き方の種類や結婚をするしない、子供を持つ持たない、個人の経済状況にいたるまで、ライフスタイルが細分化しています。ある程度右肩上がりの経済成長があり、中央値をくくれる時代はペルソナが有用だったのですが、今の時代はペルソナを設定しようとしても、個人のライフスタイルや趣味嗜好が細分化しすぎているため、くくれなくなっているのです。

さらに、インスタやTwitterなどのインターネットサービスが台頭したことにより、個人のインフルエンサーがメディアの力を借りずとも力を持てるようになりました。雑誌メディアに醸成されたインフルエンサーと、個人で立つインフルエンサーには大きな違いがあります。個人で立つインフルエンサーは、誰からも啓蒙されずに自分を自分で売り込んでいる強いインフルエンサーであるということです。雑誌メディアに影響を受けていた読者は、メディアが啓蒙するライフスタイルに憧れ、それを体現するインフルエンサーにも憧れていた構図ですが、個人で立つインフルエンサーに惹かれるフォロワーは、個人が持つパワーそのものに惹かれています。

このように、雑誌メディアが長らく保ってきたライフスタイルの啓蒙と、それを体現するインフルエンサーを掲げるという手法が終わりを迎えたのではないかと思っています。
今後の雑誌含めたライフスタイル系のメディアの方向性については、思うところがあるのですが、それはまたの機会に書いてみたいと思います。

2018年現在において、ヒマであることの希少性

ヒマであるということは、小さな可能性に触れる機会が多いということ


2018年現在、だいたいの人は忙しいと思うんですね。その上で、ヒマであることは恥ずかしいと感じていると思うんですね。
さらに言うと、忙しいことがひとつのアイデンティティになっているケースも多いと思います。特に男性の場合は、会社への精神的なコミット具合が高いので、コミットメントを図るひとつの指標としての忙しさがあります。ゆえに忙しいということは、会社組織へのコミットメントが充足しているという状況だからです。

しかし、2018年現在においてヒマであるということは、実は希少性が高くて良いことなんじゃないでしょうか。

ヒマであることの第一のメリットとして、自分が興味を持った何かにふらっとコミットしやすいという点があります。誰かからライブに行こうとか何か誘われたとして「平日は電車あるうちに帰れないから無理」と断る必要がないので、ふらっと誘いに応じやすいのです。ヒマであるということは、自分がまだ出会っていない小さな可能性に触れられる前提状況を作っていることになります。
ライブに出かけてみて運命の音楽との出会いがあるかもしれませんし、日常に落ちている小さな可能性みたいなものをキャッチできる機会が多いんですね。

ヒマであることの第二のメリットとして、時間があるから自分への投資だったり好きなことに使う時間があるということがあります。忙しいと思索の時間が取れませんが、ヒマな場合は考えにふける時間が取れるので、今までの振り返りをしたり、これからのことを考える余裕があります。ヒマだったら、本を読む時間も確保できるでしょう。

ということで、ヒマであることはけっこうメリットがあると思っているのですが、タイトルを「2018年現在において」とわざわざつけているのは、ヒマであることに希少性があるのは、今だけなのではないかと思っているからです。
有史以来、人類は生きるために忙しい生活を送ってきたのだと思いますが、AIなどの到来によりAIが人の仕事を代替するなどと言われており、いよいよ総人類ヒマ社会というものが到来しそうな予感です。


ヒマ社会の到来と、ヒマ下手な日本人


そう遠くない将来に、人類がみなヒマになる時代が来るような気がしていますが、日本人はとてもヒマ下手なのではないかと思います。先ほどの組織へのコミットメントが強い云々のくだりもあり、ヒマであることに罪悪感すら感じてしまうからです。欧米にはバカンスといって長期的にぼーっとする、まさにヒマを作りにいく休暇制度がありますが、日本人は数日の有給休暇の取得すら罪悪感を感じてしまうのではないでしょうか。

ヒマになった人たちは何をするかといえば、ロシアの文豪の小説にそのヒントがあるように思います。トルストイの「アンナカレーニナ」を読むと、主人公の一人であるリョーヴィンは貴族の生まれなので、親族はみな有閑貴族です。貴族たちは毎日お茶をしながら、本を読んで哲学やらなんやらの高尚な議論をしています。
しかし、この本に登場する有閑貴族は、お金があり、かつ小さいころから高等な教育を受けてきたので哲学などを論争する下地があるのです。つまり、ロシア文学に登場するような貴族は、幼いころからヒマになるための準備をしてきたとも言えます。

そんな中、もし現代の日本人がヒマになったら、どうして良いか分からなくなるでしょう。さらに、ヒマになったことにより忙しさという心のよりどころが失われて、アイデンティティの危機を迎える人もいるかもしれません。
という状況の到来から逆算すると、2018年現在においてヒマであるということは、すでにその時代を迎える準備が出来ており、自分のアイデンティティの要となりそうな小さな可能性にリソースを渡せる状況にあるということになります。

ということで2018年現在の今、ヒマな人は希少性が高いとともに、時代を先取りしているとも言えます。人間、突然ヒマになってしまうと延々とインターネットを見つづけたり、ヒマを上手く扱うことが困難になるでしょう。来るべきヒマ時代に向けて、ヒマになる訓練をしておくべきなのかもしれません。